幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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お待たせしました、最新話にござります。

前書きとあとがきのネタが思い浮かばねえ。

次もがんばりますので、よろしくお願いします


幼女と大阪と世紀末

 どうも、体調不良から復活した幼女です。

 

 目が覚めると宇宙怪獣との戦いから3日が経ってました。

 

 ちなみにシュバルツさんはまたしてもドロンしており、リシュウのお爺さんから『明鏡止水の心を身に着けるのだ!』という伝言が残るのみ。

 

 助言は大変ありがたいのですが、幼女にはサッパリでございます。

 

 たしか東方のおじちゃんが極めていたとか何とか言ってた気がするけど、あんな超達人の技を覚えろとか無茶ぶりすぎないだろうか?

 

 次に漂流者の皆さんはZ-BLUEで保護する事になりました。

 

 皆も次元は違えど地球の危機は見逃せないという事で、私達に協力してくれるそうだ。

 

 ありがたや、ありがたや。

 

 ヱクセリオンの方は乗員不足という事で、いったん大統領直属部隊のソルブレイヴス預かりになるんだってさ。

 

 私が目を覚ました時にはもう出発しちゃってたから、お別れの挨拶が出来なかった。

 

 じぃじ、副長さん、薄情な小娘ですまぬ。

 

 さて、改めてZ-BLUEに加わってくれた漂流者の皆を紹介しておこう。

 

 まずは剣豪お爺ちゃんことリシュウ先生。

 

 あの星形君はグルンガストっていうらしい。

 

 なんでも先生の世界ではあのロボットが4タイプ造られていて、ウチにあるグルンガストは最初に造られた零式なんだってさ

 

 先生は薩摩示現流の達人で、斬艦刀ってトンデモ剣は先生かお弟子さんしか使えないそうだ。

 

 例の明鏡止水に関しては、先生が指導してくれるって言ってくれたよ。

 

 やる事は座禅と剣の素振りなんだってさ。

 

 うん、がんばるます!

 

 次に鳥さんロボことサイバスターの操者であるマサキ・アンドーさん。

 

 どこかヒイロさんに似た声なこの人は、ちょっとぶっきらぼうだけど明るくて優しい人だ。

 

 何時ものように『まだまだチビなんだから、戦場なんかに出ないで大人しくしとけ』と言われたが、その辺はツッコまないでもらえるとありがたい。

 

 このサイバスターは魔装機神っていうロボットの一体らしい。

 

 魔装機神というのはラ・ギアスという異世界で魔術と錬金術を使って作られたロボットの最高位に当たるもので、サイバスターは地・水・火・風の四大属性の風を司るんだってさ。

 

 最初に出会った時に私が感じ取ったサイフィスって、サイバスターに力を貸している精霊さんの名前だったのだ。

 

 私が彼女の名前を出して優しそうなお姉さんって言った時は、マサキさん滅茶苦茶驚いていたなぁ。

 

 あと、サイフィスさんは魔術を掛けられない為に本当の名前を隠しているそうだ。

 

 だから人前で呼んだらダメなんだってさ。

 

 それでも心の中で呼ぶくらいは大丈夫だろうから、皆の旅路が上手くいくように『御利益ください』と心の中で祈っておいた。

 

 それとマサキさんはニャンコを連れてロボットに乗っていた。

 

 同乗していたのは黒猫と白猫で名前はクロとシロ。

 

 捻りもへったくれもないよ!

 

 しかもこのニャンコ達は言葉を話せるオマケ付き。

 

 ぶっちゃけニュータイプなんて一瞬で霞むレベルの凄さである。

 

 そして一団のキワモノ、バンチョーことミチル・ハナテンさん。

 

 ロボットもバンチョーなら中身も番長という、まさかのマトリョーシカ状態でした。

 

 リーゼントに丈の長い学ランという古風な不良スタイルの彼だけど、厳つい顔に似合わず面倒見のいい人だった。

 

 私が3日間も倒れていた事を本気で心配して、『あんま無茶すんなよ。お前は小さいんやから、面倒事は大人に丸投げしたらええねん』と頭を撫でてくれた。

 

 そして彼の乗機であるバンチョーロボことGバンカランは本当に武器が無い。

 

 メンチビームの他には手足と補給物資が入った袋で殴る蹴るだけという、なんとも男らしい機体だ。

 

 ひーちゃん的には欠陥機らしいんだけど、ミチルさんのイメージと合い過ぎて全然そんな風に思えないんだよねぇ。

 

 そしてトリを飾るのは猿渡ゴオさんと葵杏奈さんのゴーダンナー夫妻。

 

 そう、杏奈お姉さんとゴオさんはなんと夫婦だったのだ!

 

 しかも杏奈お姉さんは16歳の現役高校生というではないか。

 

 ゴオさんが29歳というから一回り以上違う歳の差カップルだ。

 

 この事を聞いた時は、漂流者組の他の皆もゴオさんを犯罪者扱いしそうになっていた。

 

 実際は杏奈お姉さん曰く、ゴオさんに彼女が猛アタックして結婚できる年になった途端にゴールインしたそうなんだけどね。

 

 ちなみに『ゴオちん』は杏奈お姉さんが旦那様を呼ぶときの愛称で、そういう名前ではなかった。

 

 なので、私がゴオちんさんと呼んだ時は物凄く微妙な顔をされてしまった。

 

 全員の紹介が済んだところで、今度は私が目を覚ました後の事について語ろう。

 

 まず大問題である脱走の件なんだけど、これについては何とかお許しが出ました。

 

 というか、逆に私が艦長さんをはじめメンバーの皆から謝られた。

 

 どうやら私の出生やギレンに利用された姉妹の事もみんな知ったらしく、そんな事があってはテンパっても仕方ないと納得されたみたい。

 

 むしろ子供に対するケアが足りな過ぎたと反省したんだそうな。

 

 私としてはこんな幼女を保護してくれているだけでありがたいので、謝られてもむしろ困るんだよね。

 

 なんか謝り慣れてそうなオットー艦長はともかくとして、ジェフリー艦長やクォーターのオペ娘さん達にブライト艦長に頭を下げられた時は実際ビビったし。

 

 オードリーお姉さんなんか、まさかの土下座だよ?

 

 別室に連れ込まれて聞いた話だと、あの人ってギレンの姪でジオンのお姫様だって言うじゃないか。

 

 そんな人が幼女に敗北のベストオブベストなんてしてはいけません!

 

 皆からの謝罪については、ロクな事情の説明もせずに軍高官のサイガスにキレた私も悪いという事で喧嘩両成敗で終わらせました。

 

 というか本人が望まない謝罪って、ただの精神的プレッシャーなんだぞ!

 

 あんな雰囲気が続いたらもう一回倒れる自信があるわ。

 

 あと、びっくりしたのは皆が集まっている場所に飛んできたチビの仕出かした事だ。

 

 あの子、アルベルトっていうアナハイムのお偉いさんと会社のお話を盗み聞きしてたみたいで、録画していたその一部始終をみんなの前で流しちゃったのだ。

 

 しかも内容が私とハロを連邦の上層部の権力を使って捕まえて、UGセルを悪用して兵器を造ろうなんて内容だったから、さあ大変。

 

 私が3日寝込んでいた事で過保護のスイッチが入っていたシン兄はガチキレ。

 

 瞳孔が開き切った憤怒の形相でオジサンに襲い掛かってしまった。

 

 カミーユさん達がなんとか止めてくれたんだけど、オジサンは下膨れだった顔がパンパンに腫れるぐらいにボコボコになってしまった。

 

 私の事を思っての暴走なのは重々承知だけど、シン兄は正規の軍人だ。

 

 さすがに民間人をボコにするのはいただけない。

 

 騒ぎの後、シン兄は営倉っていう牢屋に入る事になり、オジサンはこのまま隊にいるとシン兄に殺されかねないという事で、早急にアナハイム本社にお帰りいただいた。

 

 オットー艦長曰く、アルベルトのオジサンと一緒に悪巧みをしていたマーサ・ビスト・カーバインはアナハイムの重役で財界でもトップレベルのセレブらしい。

 

 それが実験体欲しさにオーブ国籍の私の誘拐を画策していた事は強烈な醜聞であり、バレると地位を揺るがす程ヤバいスキャンダルだそうだ。

 

 なのでチビが持っている映像データがあれば、アナハイムの方もシン兄の暴行も含めて無茶はできないんだってさ。

 

 それを聞いた私は、このデータをセイラお姉さんの所へ送っておいた。

 

 『もし私やシン兄に何かあった時は公表してね』というメッセージ付きでだ。

 

 あとひーちゃんも欲しがっていたので渡しておいた。

 

 サイガス事件があるから少し不安だったけど、自衛の為と言われたら仕方ないよね。  

 

 それとカイエンさんが精神的ショックでぶっ倒れたらしい。

 

 アマタさんが言うには陰蜂を見た途端に錯乱したとか何とか。

 

 お守りを渡した時の会話を思うに、もしかしたら例の絶望予知に陰蜂が登場していたのかもしれない。

 

 なんでも精神薄弱状態の者は戦闘には参加させられないので、アクエリア市の実家で療養するらしい。

 

 ミコノお姉さんも付き添いで隊を離れるそうなので、アマタさんはガックリと肩を落としていた。

 

 お見舞いに行きたいところだけど、私が行ったら逆効果になってしまうだろう。

 

 仕方が無いので、ここでカイエンさんの一日でも早い回復を祈る事にしよう。

 

 

 

 

 さて、現在私は地球へ向けて進路を取っている。

 

 目的はZ-BLUE日本組との合流である。

 

 ああ、別に宇宙組に邪険にされている訳じゃないぞ。

 

 向こうに行く理由は私がメンタルカウンセリングを受ける為だ。

 

 ジェフリー艦長の相談で一連の事を知ったルゥ・リルリさんが『すぐにカウンセリング受けさせんかい、ボケがぁ!!』とキレたらしい。

 

 自分としてはそんなに酷い状態ではないと思うのだが、精神的に疲れていないと言えばウソになる。

 

 宇宙怪獣戦でのやべえ力の事もあるし、念のため受けておいた方がいいかもだよ。

 

『なあ、チビ助。ホンマにこの黒丸、大気圏突入とかできんのか?』

 

『そうだぞ。ミユは病み上がりなんだから、難しい事はしなくていいんだ。やっぱり俺がそっちに乗った方が良かったんじゃないか?』

 

 そんな事をポヤポヤと考えていると、通信ウインドウにミチルさんと心配そうなシン兄の顔が現れる。

 

「……だいじょうぶ。ひーちゃん、できるっていってた。ね、ひーちゃん?」

 

『大気圏突入なんてコムサイでもできるんだよ。私の分身たるハロが出来ない訳ないじゃん!』

 

 トサカの下に映る不安そうな顔に、私とひーちゃんは揃ってドヤ顔で答えてあげる。

 

 というか、シン兄がこっちに来ても私を抱っこして精神安定剤代わりになるくらいしかやる事ないよ?

 

 ハロって腰のカッチンを使った完全思考制御だし。

 

 まあ、シン兄がひーちゃんドレスを着るっていうなら話は別かもしれないけどさ。

 

『デスティニーも単体突入できるから安心しなよ! あと落ちたらヤバい機体ってあったっけ?』

 

『たしか零式は大気圏離脱・突入は可能にしておったのう。マニュアルを調べておくか』

 

『ゴオちん、私達ってできたっけ?』

 

『無理だ』

 

『マジンガーは……出来そうだなぁ。この頃妙な機能が増えてる気がするし』

 

『サイバスターは出来るよニャ』

 

『でもマサキが方向音痴過ぎて、一人だと何処へ行くか分からニャいわ』

 

『うっせー!』 

 

 こんな感じで、私と一緒に来てくれているのは元漂流者組の皆とシン兄、甲児お兄さんである。

 

 宇宙組はネオジオンの動向に目を光らせないといけないので戦力は割けないし、かといって私一人で地球へ行かせるわけにはいかない。

 

 そこで白羽の矢が立ったのが現在宙ぶらりんのリシュウ先生達、それと何が何だか分からない内に宇宙に来てしまった甲児お兄さんである。

 

 あとシン兄はアナハイムおじさんを殴った罰として、宇宙組から私の護衛に転向となりました。

 

 え、罰じゃなくてご褒美だって?

 

 いやいや、仮にもザフトのエースが前線を外されて幼女のお世話だよ。

 

 世間一般で見れば十分に罰だってば。

 

 そんなワケで、大気圏突入機能の無い機体はサイコハロの口の中に納まってもらってます。

 

 ハロの時から少し大きくなったとはいえ、零式を口に納められたのは私も少しビックリした。

 

 まあ、高さ調整と安定性の為に両膝ついて貰ってるのはご愛敬だよね。

 

『あ、そうだ! ミーちゃん、サイコフィールド張ってもらえる?』

 

「……ん?」

 

『実はUGセルって大気圏突入で事故った事例があるらしいの。それを繰り返さない為にも念の為、ね』

 

「……ん、まかせて」

 

 そういう事なら否は無い。

 

 アレには色々とお世話になってるからね、事故とか起きると困るのだ。

 

 そんなワケで人生初の大気圏ダイブである。

 

「突入角計算完了! 目標、日本!!」

 

「……いっきまーす」

 

 こうして流星となった私達は無事に大阪へ降り立つ事が出来た。

 

 本来ならこのまま日本組の皆がいる熱海まで行くのだけど、病み上がりな私を気遣ってくれた皆がここで休憩を申し出てくれた。

 

「宇宙からここに落ちたんも何かの縁や。ワイが大阪の街案内したるわ」

 

 大阪が第二の故郷らしいミチルさんは胸を張ってこう言くれたのだ。

 

 ならばご厚意に甘えないのは失礼という物だろう。

 

 そんなワケで私達はしばし大阪観光を楽しむ事になった。

 

 ちなみに機体の方は生駒山にミラージュコロイドで隠してある。

 

 足として使っている白色のハイエースも、森の中で放置されていたのをUGセルで修復したモノだ。

 

「すまんな、アスカ君。運転を任せてしまって」

 

「仕方ないですよ。免許持ってるの俺だけですし」

 

 ドライブの中、後部座席のゴオさんがハンドルを握っているシン兄に申し訳なさそうに頭を下げている。

 

 そうだよね、元の世界で運転免許持っていてもこっちじゃ使えないもんね。

 

「それでオオサカ市内に入ったけど、どこへ行けばいいんだ?」

 

「難波やな。キタもええけど、大阪の雰囲気味わうんやったら道頓堀のあるミナミは外せんわ」

 

 隊から支給された携帯端末片手に、顎に手を当てながら唸るミチルさん。

 

 やはり彼等の世界の大阪とは差異があるのだろう。

 

 こうして車に揺られること2時間程度、私達は道頓堀へとやってきた。

 

「……かにさん」

 

『動きが妙にリアル! というか、あのカニって旧世紀からずっと現役って本当なの?』

 

 まず目に入って来たのはお店の上に掲げられた巨大なカニのオブジェ。

 

 ソースが焼ける香ばしいや焼きカニの磯の香り。

 

 行き交う人々も多く、その殆どが関西弁バリバリの独特の雰囲気。

 

 大阪に来たのは初めてだけど、なんというか濃いなぁ。

 

「ほら、たこ焼きや。晩飯にはまだちょっと早いから、これでも食って腹もたせろや」 

 

 なんてポヤポヤしていると、ミチルさんがたこ焼きを奢ってくれた。

 

 ふむ、ありがたや。

 

「……ありがと。はふはふ……」

 

 熱いけど、皮までちゃんと味が付いていてとっても美味しい。

 

 お腹はあまり減ってないけど、ゆっくり食べる事にしよう。

 

 こうしてみんなが興味のある物を見ながらゆっくりと道頓堀を巡る。

 

 マサキさんは20歩くらい歩くと謎な方向へ行こうとするので、リシュウ先生が『腰縄でも付けるか……』とか言ってた。

 

 何度も来たというミチルさん以外はみんな興味深々で杏奈さんはインテリア系の店でゴオさんに可愛い家具なんかを見せてたし、シン兄は保存食とかサバイバル系の店を見てた。

 

 リシュウ先生は抹茶なんかを扱うお店を覗いていたし、甲児さんは普通に漫画本を買っていた。

 

 マサキさんはシロとクロにせっつかれてチュールを買っていたんだけど、あれってどうなんだろうなぁ。

 

 支払いに関しては部隊から当面の生活費が出ていたらしく、それを使ってるんだってさ。

 

 そんなこんなで私が三体のお供達とお店の入り口でたこ焼きを攻略していたその時だ。

 

 ベンチの前でぐったりと倒れているお兄さんを見つけた。

 

 黒髪に白いジャケット、あとは黒いズボン。

 

 地面にうつ伏せで倒れながら手を伸ばすその様は、酔っ払いというよりも行き倒れといった感じだ。

 

 こちらとはまったく面識が無いのだが、見つけてしまった以上は放っておくのも寝覚めが悪い。

 

「くっ……ここにライカさんの教会があれば、目の前の幼女を人質に飯をタカるんだが……。というか、ここはどこなんだ? キャピタルなんて通貨、聞いたことねーよ」

 

 なにかすっごく不穏な事を言っている気がするんだけど、悪意は感じないので冗談の類だろう。 

 

 私は行き倒れさん(仮称)にたこ焼きが乗った船を差し出してみた。

 

 次の瞬間、目にも止まらない速さでたこ焼きを奪った行き倒れさんは、あっという間に船をカラにしてしまった。

 

「……たりる?」

 

「……ごめんよ」

 

 もの凄く切なそうな顔で盛大にお腹の虫を泣かせる行き倒れさん。

 

 仕方が無いので私は近くにある屋台から3つたこ焼きとお茶を買ってきてあげた。

 

 お小遣いが全滅してしまったが、これも人助けの為だ。

 

 そして目の前に差し出すとホカホカにも関わらず、ガツガツと口の中に放り込む行き倒れさん。

 

 その様子を見ていると、誰かが後ろから行き倒れさんの頭をはたいた。

 

「いって!? なにすんだよ!」

 

 振り返った行き倒れさんと共に視線を向けると、そこには白いゴスロリ風の衣装に身を包んだ薄い紫の豊かな髪を持つ13歳くらいのお姉さんが立っていた。

 

 なんだろう、この感じ。

 

 このお姉さん、人間じゃ……ない?

 

「汝は何をしておるのだ! いい年した大人が幼子から施しを受けて情けないと思わんのか!?」

 

「全く思わん! 人間はな、貧窮したら恥や外聞なんてどうでも良くなるんだ!! ヤモリを食った事が無いお前には分からんだろうさ!」

 

 正論を振りかざすお姉さんに、割と情けない事を力強く主張する行き倒れさん。

 

 あと、本当にヤモリ食べた事があるの?

 

 お姉さんも「汝は……」ってドン引きしているよ。

 

 ともかく、保護者さんが来たのなら私もお暇しよう。

 

 なんか、チビやひーちゃんも警戒しているみたいだし。

 

「……ミユ、いくね」

 

「ありがとうな。マジで生き返った」

 

 私がそう言うと、さっきまでの死にそうな顔からは想像も出来ないくらい爽やかな笑みを浮かべる行き倒れさん。

 

 あ、そうだ。

  

「……ひーちゃん。じげんひょーりゅーしゃのおやくしょ、どこ?」

 

『ここから北に900メートルくらい行ったら浪速市役所っていう大きな建物があって、そこの4階だね』

 

「……おにいさんたち、そこにいったらたすけてくれるかも」

 

「お…おう。いろいろとすまん」

 

 頭を下げる行き倒れさんを他所に、お姉さんは私に何かを差し出してきた。

 

 見ると彼女の手の上には五芒星を象った金色のペンダントが乗っていた。

 

「……これなに?」

 

「色々と骨を折ってくれた礼だ、受け取るがいい。汝はタチの悪いモノに色々と魅入られているようなのでな、それを付ければ少しはマシになるだろう」

 

 たこ焼きのお礼にしては高すぎるのではないだろうか?

 

 そう考えながら目線を向けると、こちらの意図を察したお姉さんは苦笑いと共にこう言った。

 

「心配するな、これは妾の手製だ。元手も掛かっておらん」

 

 そういう事ならば断わるのも失礼か。

 

 お姉さんからペンダントを受け取った私は早速首に掛けてみた。

 

 ……なんだろう。

 

 少しだけ心が軽くなった気がする。

 

「……ばいばい」

 

「おう」

 

「うむ、息災でな」

 

 ちょうどシン兄達がお店から出てきたところなので合流しようとしたら、後ろからお姉さんの声がした。

 

「魔蟲の女王よ、階位を登るなら急ぐがいい。貴様の契約者は相当に危ういぞ」

 

 どういう意味か聞こうと振り返ったんだけど、その時には行き倒れさんもお姉さんも風のように姿が消えていた。

 

 いったい彼等は何だったのだろう?

 

 そんな風に首を傾げていると、突然街中へ響き渡るような警報が鳴り響いた。

 

『申し上げます! ただいま、所属不明の機動兵器が街へ向けて侵攻中! 市民の皆さんは落ち着いて最寄りのシェルターへ避難してください!!』

 

「……にぃに、たいへん」 

 

「ああ、分かってる」

 

「どこのアホじゃ! ワイのシマにカチコミ掛ける奴は!?」

 

 シン兄達と合流するとここが地元のミチルさんが随分と怒っていた。

 

「とはいえ、今から機体を取りに行っておる暇もない。どうしたものか……」

 

「……だいじょうぶ」

 

『ハロはもう呼んであるよ。あと3分もしない内にここに着くから』

 

 そう、私は警報を聞いた時点でハロを動かしていたのだ。

 

「機体の遠隔操作までできるのかよ。なんでもありだな、お前」

 

「凄いね、ミユちゃん」

 

 私の素早い対応にマサキさんは呆れ、杏奈さんは頭を撫でてくれた。

 

 遠くにある愛機を呼ぶのはニュータイプの嗜みだって誰かが言ってた……気がする。

 

 そうして迎撃準備を整えて、レーダーを頼りに不届き者のところへ向かったのだが、待っていたのは予想外の敵だった。

 

『ヒャッハー! 異世界だぁ!!』

  

『なにがなんだか分からねえが、俺達【晨明旅団】の名を売るチャンスだぜぇ!!』

 

 砂煙を上げながら街へ向かって爆走するカラーリングが赤紫に統一された見覚えの無いロボット、そのパイロットたちはモヒカン・悪人ヅラ・ゴーグル・マスクと某漫画に出てきそうな野盗たちだったのだ。

 

『見ろ、マサキ! グラフドローンにベンディッド、それにバゾーダンもあるニャ!』

 

『あんニャ旧式、どこから持ち出したのかしらね?』

 

『つーか、普通の魔装機がどうして地上に出てやがる!?』 

 

 どうやら彼等の乗っている機体はラ・ギアス製の物らしい。

 

『ヘッド! あれを見てください』

 

『うんん? あの白い魔装機、どっかで見た事があるなぁ』

 

『サイバスターですよ、魔装機神のサイバスター!! この業界にいてどうして知らないんすか!?』

 

 人型の機体に乗ったボスらしきモヒカンとスネ夫ヘアーな参謀らしきオジサン達もサイバスターを知っているようだ。

 

 という事は───

 

「……ラ・ギアスはせいきまつ」

 

 私の脳裏に浮かんだのは、瓦礫と廃墟に塗れた街を彼等のようなヒャッハーが魔装機を乗り回して駆け巡る終末の世界。

 

「村だぁぁぁぁぁ!!」

 

「女と食料は奪えぇぇぇ! 男は皆殺しだぁぁぁぁ!!」

 

「ぎゃああああああっ!? 奴等、旧式なのにどうしてこんなに強いんだぁ!?」

 

「いやあああっ!? 私のレンファがこんな不細工ロボに!?」

 

 国家は滅び去り金銭は価値を失う中、唯一の法は暴力のみ。

 

「羅将だ! 羅将が来たぞぉぉ!」

 

「羅将シュウ様だぁ!」

 

「シュウ様!」

 

「シュウ様!」

 

「シュウ様!」

 

「シュウッ!!」

 

「相変わらず醜悪ですね。汚物は消毒です、グラビトロンカノン発射」

 

「あべしっ!?」

 

「ひでぶっ!?」

 

「にらればぁっ!?」

 

 そして羅将と呼ばれる超強力な魔装機を駆る魔王によって支配される世界だった。

 

『ぬぅ……何と業の深い世界か』

 

『あの漫画そのまんまの世界があったなんて……』

 

『マサキ、お前酷い世界からやって来たんだな』

 

『なんだよ、この世界!? こんなのラ・ギアスじゃねーよ!!』

 

 ポヤポヤと私の頭の中から漏れたイメージを受けて同情の視線を向ける皆に、マサキさんが必死に否定の言葉を叫んでいる。

 

 あれ、こんなのじゃないの?       

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