幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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ある日のカイエンさん

カイエン「くとぅるふ・ふたぐん! にゃるらとてっぷ・つがー! しゃめっしゅ しゃめっしゅ! にゃるらとてっぷ・つがー! くとぅるふ・ふたぐん!」

ミコノ「カイエン! しっかりして、カイエン!!」

 病床で怪しい呪文を泡を吹きながら叫ぶカイエンと、その様子を嘆くミコノ。

 彼が正気に戻すにはSAN値チェックで百面ダイスを2つ振ってピンゾロを出す事だけだ!!


幼女と天災博士

 どうも、日本第二の都に滞在中の幼女です。

 

 先程まで異世界が世紀末という衝撃の事実に慄いていたのだけど、今はロボットを使ったガチ喧嘩にビックリしております。

 

『いてまうぞ、ボケェ!!』

 

『あわびゅっ!?』

 

 モヒカン集団のロボットに鉄拳を叩き込んでいるのは、ご意見無用な番長ロボを駆るミチルさんだ。

 

 食らったグラフドローン(モヒカンリーダーが言うには全部『極』という字が入るんだって)は錐揉み回転しながら星になりました。

 

『ヤロウ! よくもゲイラを! 食らえ、惨駄亜(サンダー)……』

 

『雑魚はすっこんでろっ!!』

 

『めっちゃぁぁっ!?』

 

 そして両手に込めた電撃をバンカランに放とうとした別のグラフドローンを、豪快な飛び蹴りで頭から地面に串刺しにしたのはなんとマジンガーZである。

 

『おじいちゃんが造ったマジンガーが寸胴だぁ? ダサいだぁ!? もう一回言ってみろ、コラァ!!』

 

『ぎゃああああああっ!?』

 

 そして刺さったドローンに超合金Zの足で容赦なくストンピングをかます甲児お兄さん。

 

 熱血だけど優しい普段の彼からは想像もつかない残虐ファイトである。

 

 なおこうなったのは、戦闘前に行われた舌戦でモヒカンの一人が『そんな寸胴でダッサい魔装機に乗った奴なんざ目じゃねえぜ!!』とマジンガーを笑ったから。

 

 聞いた時は私も陰蜂を呼んでやろうかと思ったよ。

 

 けど、次の瞬間に発言者へ突き刺さったマジンガーの全力パンチ、そこから相手の首を掴んで頭部連続殴打という斜め上の攻撃に怒りもすっ飛んでしまった。

 

 マジンガーを馬鹿にされて甲児お兄さんはキレちゃったみたいで、やってる事が完全にヤンキーである。

 

 それに勢いづいたミチルさんも敵陣に飛び込み、今のロボット大乱闘になっちゃったのです。

 

 ……正直言って私達はついていけません。

 

『ねえ、ゴオちん。あれってロボット使ったただの喧嘩だよね?』

 

『これってどうなんだ? 喧嘩? 私闘? 都市を守ってるから防衛戦なのか? ……俺達は参加していいのか?』

 

 プロロボット乗りなゴオさんと杏奈さんは、今の状況に戸惑っている。

 

『なあ、爺さん。アンタは参加しないのかよ?』 

 

『若い者どうしのヤンチャに手を出しては大人げなかろう。ケツの青い内は無頼も必要よ。そういうお主は行かんのか?』

 

『……これ以上、ラ・ギアスを誤解されたくねえ』

 

 リシュウのお爺ちゃんが発した質問返しにマサキさんは苦い表情で答える。

 

 そうだね、私の漏らしちゃった妄想のせいでマサキさんの世界は名前まで『羅・義亜須』って感じだし。

 

『ミユ、これ以上ダメなイメージを広めニャいで』

 

 ごめんよ、クロちゃん。

 

 さて、そんな私はと言うと保護者から参加禁止命令が下ってしまいました。

 

「……にぃに。ミユ、たたかわなくていい?」

 

『ああ。あんなチンピラ同士の喧嘩に関わっちゃダメだ』

 

 兄よ、それだと甲児お兄さんやミチルさんもチンピラになるんだけど…… 

 

『相手は二体だ! 押し負けんな!! こっちもデカいのブチ込んでやれぇ!!』

 

『ミサイルですかい?』

 

『愚かヤロウ!!』

 

『へべっ!?』

 

 おや? 親分らしきモヒカンが副官のスネオヘアーの機体を殴ったぞ。

 

 もしかして、仲間割れかな?

 

『ダサい事言ってんじゃねえ! 相手も素手ならこっちも素手だ!! 漢なら拳一つで勝負せんかい!!』

 

『ヒャッハー! さすがはリーダーだ!』

 

『よーし、プラーナを全部拳に回せぇぇ!!』

 

『へへへ、ハジキなんて必要ねー! てめーなんか恐かねぇ!! 野郎、ぶっ殺してやらぁ!!』

 

 モヒカンリーダーの宣言に、団員モヒカンたちの乗るグラフドローンは両手に電流を纏って突撃していく。

 

『……うわぁ、完全にエネルギーがオーバーロードしてる。あれ、一発殴ったら絶対壊れるよ、拳が』

 

 暇なのか敵機の解析をしていたひーちゃんがドン引きしている。

 

 機体を犠牲にして戦いを挑むとは、なんて恐ろしいんだろうか。

 

「……あれがラ・ギアス。しゅらのくに」

 

『だから違う!!』

 

 だって、『惨駄亜(サンダー)・那苦琉!!』とか『双撃雷功拳!!』とかいって殴ってるよ、あのモヒカンたち。

 

 きっと羅・義亜須の本土には『南斗人間砲弾』とか『華山角抵戯』とか『大乗南拳』とか怪しい流派の武術があるに違いない。

 

 まあ、彼等のそんな攻撃も超合金Zやバンカランの装甲には通じないみたいで、自分の腕を砕いた後でカウンターを食らって吹っ飛んでるけど。

 

 さて、好き勝手に暴れまわるマジンガーとバンカラン。

 

 その姿は二人共もの凄く活き活きしているように見える。

 

 ミチルさんはイメージ通りというか通常運転っぽいんだけど、甲児お兄さんはなんかヤバそうなんだよね。

 

 マジンガーの背後に髑髏とか地獄とか……あと物凄く人相の悪い二人の男の人がめっちゃ楽しそうに笑ってるんだけど、あれって何なんだろう?

 

 もしかしてアレもマジンガーの可能性……どうしたの、チビ?

 

 え、違うの?

 

 マジンガーはZ一つでいい?

 

 ……それもそうだね。

 

 さて、割とどうでもいい事を考えている内に団員モヒカン達は全滅してしまった。

 

 ちょっと心配だったのでモニターをズームしてみたんだけど、彼等は自力で機体から脱出してスクラップになった愛機を嘆き悲しんでました。

 

 かなりボコボコにされていたはずなのに……さすが世紀末を生きるモヒカン達、タフネスが凄い。

 

『残ってるのはテメエ等だけだ』 

 

『ワイのシマ狙ったケジメ、キッチリ付けてもらおか』

 

 そして団長モヒカンとスネオヘアーの副長と対峙する甲児お兄さん達。

 

 しかし団員の殆どが倒されたにも関わらず、団長モヒカン達は諦めてはいないようだ。

 

『図に乗るんじゃないっすよ! お前等が倒したのは晨明旅団でも最弱!』

 

『俺達の本当の怖さを知るのはこれからだぜ!』

 

 なんてセリフを吐きながら、団長モヒカン達はミチルさん達へ襲い掛かる。

 

 ちなみに撃墜されたモヒカン達からは『副長ひでぇ!?』という抗議の声が上がってるんだけど、いいんだろうか?

 

『先手は貰ったぁ! 覚悟はできてんでしょうなぁ!!』

 

 先制で飛び出したのは副長が乗る四足歩行ロボット。

 

 奴は物凄い勢いでマジンガーへ突撃すると、その前面にトゲトゲのコンペイトウみたいな鉄球が付いた腕を生やした。

 

『死んでもらいやす! 猛虎突殺撃!!』

 

 そしてマジンガーのお腹にトゲトゲの腕の一撃を加えると、胴体の上にある砲口から火炎を吐き出したのだ。

 

『決まった! モロだ!!』

 

 業火を吐き出しながら勝利宣言をする副長。

 

 しかし、それは大きな間違いだった。

 

 壁のようになった紅蓮の炎を突き破って現れた黒鉄の剛腕。

 

 それは副長の乗る機体の頭を掴むと地面から引っこ抜くように持ち上げてみせる。

 

『ゲ…ゲェーーーーーー!? 猛虎突殺撃を食らって生きてるなんて!!』

 

『アタマ取られて騒ぐんじゃねえ』

 

 そう、副長の機体を頭上高々と持ち上げてみせたのは無傷のマジンガーZだった。

 

 あ、また甲児お兄さんが地獄的な波動に染まってるぞ。

 

『お楽しみは……これからだぁ!』     

 

 そして、そのままパワーボムのように副長の機体を地面へ叩き付けるマジンガー。

 

 もちろん彼の超パワーでそんな事をされては、旧式らしい魔装機がもつはずがない。

 

 見事にスクラップになってしまった。

 

 まあうん、マジンガーはスーパーロボットの中でも特に頑丈な機体だし仕方ないね。

 

 そして一方のミチルさん。

 

『オレ様に狙われたのが運の尽きだったなぁ』 

 

 団長モヒカンはロボットの拳を胸の前で撃ち鳴らすと、バンカランへ猛然と襲い掛かる。

 

『全部粉砕波のパワーを両手に込めたまま、全力で殴る!!』 

 

 そんな気合の籠った声と共に、団長の乗る魔装機の拳は黄土色のオーラを纏って右左右左とバンカランへ突き刺さる。

 

『これが新必殺技! 全部粉砕拳だぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 そして雄たけびと共に団長ロボはバンカランを大きく後方へ吹き飛ばした。

 

『ミチル!?』

 

『アイツ、大丈夫なのか!?』

 

 オーラが籠っている所為か、激しい爆発を残して後退していくバンカランの様子にマサキさんとゴオさんが心配の声を上げる。

 

 ミチルさんは大丈夫だろうか?

 

『ふん。腐ってもアタマ張るだけあるのぉ。なかなかええ拳持っとるやんけ』

 

 そんな心配を他所に現れたバンカランは表面装甲が焦げただけで目立った損傷は見られない。

 

『ば…バカな!? 俺の新必殺技が……』 

 

 慄く団長モヒカンをしり目に団長ロボの目の前へと戻って来たバンカランは、大きくその拳を振りかぶる。

 

『礼代わりや。本気でドツき回したるわぁっ!!』

 

 そして右ストレート、襟首掴んでのゼロ距離メンチビーム、頭突きで地面に叩き付けられたところを例の補給物資袋でタコ殴りというバンカラン必殺のフルコースが炸裂した。

 

 あの巨大番長は武装は少ないものの、その頑強さとパワーはスーパーロボット顔負けだ。

 

 そんなのにボッコボコにされては、シロちゃん曰く魔改造された魔装機でも耐えられるわけがない。

 

 顔面がひしゃげ、手足はもげ、ひーちゃんも修理不可能とさじを投げるレベルで壊れてしまった。

 

 それでもパイロットは生きて這い出てくるんだから、その辺は流石というべきだろう。

 

「く…くそぉっ! 現地人め、なんて凶暴な奴等だ!?」

 

「り…リーダー! どうしやす? このままじゃあアッシら異郷の地で飢え死にですぜ!?」 

  

 そんなリーダーに寄り添う副長と団員達。

 

 なんというか憎めないキャラだけど、街を襲おうとした事は見過ごせない。

 

「……にぃに、どうする?」

 

『全員捕まえて、警察行きかな』

 

 ならばと人間用サイズの捕縛ネットを用意していると、リーダーが大声を上げた。

 

「心配すんな! 俺達には奴がいるだろうが!! ハカセ、出番だぞ!!!」

 

 その声が響き渡ると、彼等の背後で小山ほどに大きく土が盛り上がった。

 

 そしてそこから現れたのは……えっと、ドラム缶に先端にドリルが生えたマジックハンドが何本も付いた謎のロボット? だった。

 

『ふははははははははははははッ! 皆様、お待たせしました! 貴方の街のマッドサイエンティスト! ドクター・ウエスト!! ドクター・ウエストでございまぁぁぁぁぁぁすっっ!!』

 

 そしてそのドラム缶の頂上では緑の髪の男の人が絶叫しながらギターを掻き鳴らしている。

 

 というか、あの揺れの中で叫んで首を前後にメッチャ振りながらギターを弾くって普通に凄い。

 

「……おお~」

 

 突然のスーパープレイに幼女ボディもチパチパと拍手を送っている。

 

「そこな幼女、拍手センキュー!! 声援の礼として『教えて! ダウジン君完全版・初回特典:ドクター・ウェスト等身大セクシー抱き枕』をプレゼントするのであーる!!」

 

「……ありがと」

 

 うん、何故私が幼女だと分かる?

 

 というか、ダウジン君はともかくセクシー抱き枕はいらないや。

 

「博士、小さい女の子に卑猥な物を送るのは犯罪ロボ!」

 

「へべっ!?」

 

 相手のテンションに驚いていると、ウエスト博士とやらは後ろに現れた黒い帽子を被ったエメラルドの髪のお姉さんに頭を殴られた。

 

 すっごく痛そう。

 

 というか、うつ伏せに倒れた博士からドクドク血が流れてるんだけど……

 

「……だいじょうぶ?」

  

「心配ご無用ロボ。博士はクマムシ並みにしぶといから、この程度ではくたばらないロボ」

 

 つい出てしまった問いかけに返って来たお姉さんの答えは辛辣だった。

 

「エルザ、何をするであるか」

 

「身内が性犯罪者になるのは勘弁ロボ。事前に止めたエルザの思いやりに感謝するロボ」

 

「なにを言うかと思えば、吾輩は大十字九郎のように少女に欲情する性癖はありませーん。それはともかく……」

 

 エルザお姉さんの言葉に反論しながら何事も無かったかのように起き上がると、ウエスト博士は私達の機体をジッと見つめ始めた。

 

「うーむ……純科学技術でここまでの物を作るとは、この世界の科学者もなかなかやるであるな。錬金術だの魔術だのは食傷気味だったので実に新鮮である」 

 

「あの野盗共の機体も結局は魔術がらみだったロボね」

 

 博士達がそんな事を言っていると、ドラム缶ロボの下からモヒカンリーダーの声がした。

 

「ハカセ、なにやってんだ! 早くコイツ等をなんとかしろ!!」

 

 あまりにエキセントリックな登場だったから忘れてたけど、この人達敵だよ。

 

『なんや、新手の漫才コンビの売り込みとちゃうんか』

 

『俺も大阪だからそういうのかと思っていた』

 

 そういうとモヒカン軍団を退治した二人はドラム缶ロボにファイティングポーズを取る。

 

「吾輩としては貴様等の持っていた産廃寸前のブツよりもあちらのロボットが気になるのだが……ヘイ! そこな幼女!!」

 

「……なに?」

 

「まだ小さいからぶっちゃけて聞くが、そちらはお金持ちであるか?」

 

 突然の質問に私は思わずハロの中で首を傾げる。

 

 そちらという事は、多分Z-BLUEの事を言っているのだろう。

 

「……にぃに。Z-BLUE、おかねもち?」 

 

『あー……軍の独立特殊部隊だから予算はある方だと思うぞ。一応ワッ太の会社や21世紀警備保障も付いてるし』

 

 そういえばそうだった。

 

 というか、どうしてそんな難しい事を私に聞くのかな。

 

「……おかね、あるみたい」

 

「ふむ。ならば、キミに幸運をあげよう! 今なら一億年に一度と呼ばれた天才科学者たる、このドクター・ウェストと助手のエルザを雇えるチャンス!! 研究予算を用意してくれるなら吾輩特製超絶マッハドリル『女の子だって暴れたい!!』がついてくるのであーる!!」

 

「「「「「えええええええええっ!?」」」」」」 

 

 さすがにコレには私だけじゃなくて、ここにいる全員がビックリである。

 

 というか、普通戦う相手に自分を売り込んだりする!?

 

「ちょっと待て、キ●ガ●野郎! ここまで食わせてやった俺達を裏切る気か!?」

 

 一番ショックを受けているであろうモヒカンリーダーが抗議の声をあげるけど、ウエスト博士はそれを鼻で笑うのみ。

 

「な~にが食わせてやったであるか! 貴様等は固いパン一つでガラクタ同然の機体をやれ修理しろだの、角を付けろだのと吾輩をこき使うだけではないか!! 異世界に一文無しで放り出されたばかりなら兎も角、新たなスポンサーゲットのチャンスが来た今ならトサカが卑猥なモヒカン族などに振る尻尾はないのである!! ケンシロウに『あべし!?』されてから出直してくるがいいわ!!」

 

 ……それだと出直せないと思うよ。

 

『気の早い御仁だ。儂等はまだ雇ってやるとは言うてはおらんのだがなぁ……』

 

 喧々囂々と怒鳴り合うウエスト博士とモヒカンリーダーを見ながらそう呟くリシュウ先生。

 

 けれど、それにひーちゃんが待ったを掛けた。

 

『雇った方がいいよ。アイツ、性格と使い方に難はあるみたいだけど、本当に天才みたい』

 

「……ほんと?」

 

『うん。今あのドラム缶ロボを解析してみたけど、びっくりするほど色々凄い。スクラップとか粗大ゴミを材料によくあんなの作ったものだと思うよ。まあ、完全に技術の無駄遣いだけどさ』

 

 ひーちゃんがここまで言うなら問題ないんじゃなかろうか。

 

 そんなワケで保護者のにぃにへ相談してみる。

 

「……にぃに、スカウトしたい」

 

『ちょっとエキセントリックすぎないか?』

 

「……ミユ、ビデオでみた。はかせ、みんなあんなかんじ。それにわるいひとじゃない」

 

 ゲッターを作った早乙女博士って言う人とか、ゴッドシグマを作った風見博士だっけも結構アレだよね。

 

『うーん……大塚長官に聞いてみるか』

 

 そうしてシン兄に交渉を任せて待っていると、街の方から小さな影が現れた。

 

「魔力を感じたから鬼械神が暴れてるのかと思って来てみれば、あの野郎の仕業かよ!」

 

 ウエスト博士のドラム缶ロボを見ながらウンザリとした声を出す空を飛ぶ人。

 

 銀髪に少し青白さすら感じる白い肌、黒いぴっちりとしたスーツに身を包んだ彼に私は見覚えがあった。

 

「……いきだおれのひと」

 

「む! 九郎、あの黒い球体には先ほどの娘が乗っているようだぞ」

 

「なに!? あの嬢ちゃん、魔術師だったのかよ!?」

 

「いや、ここにある機体は白銀の物を除いて、全て科学技術だけで組み上げられた物だ。鬼械神ではない」

 

「てことは、あの野郎を除いて魔導書持ちの魔術師がこっちに来たわけじゃないって事か」

 

 よくわからないけど、行き倒れさんには込み入った事情があるらしい。

 

『マサキ! あの男、すげぇ魔力を纏っているニャ』

 

『信じられニャいわ。地上人ニャのにルオゾールより上だニャンて……』

 

『おい、テメエ! いったい何者だ!?』

 

「何者って、ただの探偵だよ! つーか、嫌な奴を思いださせる声だな!!」

 

「珍しいな。あの機体、高位の精霊から加護を受けているぞ」

 

 あ、よく見たらペンダントをくれたお姉さんが小っちゃいマスコットみたいになってる。

 

 あれはいったいどういう事なんだろう?

 

 そんな事を考えていると、ウエスト博士がテンション爆上がりでギターを弾き始めた。

 

「誰かと思えば我がライバル、大十字九郎ではないか! ちょうどいい! ここで会ったがバルバロッサ!! この簡易製作型破壊ロボRX78『進め、環境汚染! レッツリサイクル!』で貴様を倒し、新たなパトロンへのプレゼンにしてやるのであーーーる!!」

 

 そしてドラム缶ロボから放たれるミサイルって……ちょっとぉ!?

 

「……だめ」

 

 さすがに生身の人間が銃火器を食らうのは見過ごせない。

 

 私はハロビットを展開して、ドクターの放ったミサイルを迎撃した。

 

「むむっ!? 幼女よ、なんのつもりであるか!?」

 

「……ひとにむかってミサイル、だめ」

 

 私はそう返すと、盾になるように行き倒れ改め大十字さんの前へハロを移動させる。

   

「すまねえ、嬢ちゃん!」

 

「……いい」 

 

 さすがに生身の人間が爆砕する様なんて、幼女は見たくないのであります。

 

『ミユちゃん、その人と知り合いなの?』

 

「……おなかペコペコでたおれてた。ミユ、たこやきあげた」 

 

 杏奈お姉さんの問いに答えると、何故かみんなの大十字さんを見る視線に冷たい物が混じるようになった。

 

『それって行き倒れって事じゃないか』

 

『チビ助、そういうのは警察に届けるんや。どんな人間か分からんのやから、ホイホイ餌あげたらアカン』

 

「いや、仕方ねえだろう! いきなり訳の分からない世界に飛ばされて、持ってた金も使えないから無一文だったんだぞ!? しかも戸籍無いからって働くこともできないしさ!!」

 

 甲児お兄さんやミチルさんの言葉に半泣きで反論する大十字さん。

 

 その様子に皆は次元漂流者なら仕方ないと納得したようだ。

 

 あと、ミチルさんの忠告は胸に刻もうと思います。

 

 ミステリアスだった大十字さんが残念な人物だとバレたところで、今度は博士がトンデモない爆弾を投下してきた。

 

『大十字九郎。まさかと思うが貴様、ロリからペドという人として超えてはならないK点越えを狙っているのであるか?』

 

 うん、どういう事だろうか?

 

「て…テメエ、ウエスト!? いきなり何をいいやがる!?」

 

『貴様がロリコンだという事はすでに世界の真理である。だがしかし、そこな幼女は年齢的にロリにも届いていないであるぞ』

 

「……なにかちがうの?」

 

『ミーちゃんは知らなくていいことだよ。ああいうのは魂まで汚れたキモい大人の話だからね』

 

 よくわからないのでひーちゃんに聞いてみると、彼女は凄みのある声で質問を切ってしまった。

 

 ふむ、どうやら私はロリではないらしい。

 

『ちょっと待て。本当に彼はそんな人間なのか?』

 

「あ奴は【パルプ資源と子作り】という人類には早すぎるプレイを実行に移した男である! ヤバいはず───がべぇっ!?」

 

「言うに事欠いて妾をパルプ資源とは何たる言い草か! この下郎がぁ!!」

 

「アル! 急にマギウススタイルを解くな!! 落ちる! 落ちちゃう!?」

 

 ゴオさんの質問にウエスト博士が答えようとしていたら、ミニマムサイズだったお姉さんが元に戻って大十字さんも行き倒れだった時の格好になってしまった。

 

 さらには空も飛べなくなったようで、必死にペンダントをくれたお姉さんにしがみ付いている。

 

 いったいどういう絡繰りかは気になるけど落ちたら危ない。

 

 とりあえずビットを二人の足場に貸してあげる事にしよう。

 

 あと、ウエスト博士はバレーボールサイズの火炎球を食らったのにピンピンしてる。

 

 あの人は本当に人間なのだろうか?

 

「……ミユ、ロリじゃない?」

 

 という事はあの赤い全裸もロリコンじゃないの?

 

 頭から疑問が離れないので調べる為に携帯端末をポチポチしていると、ネットニュースに気になるモノがあった。

 

 それは『ネオジオンの幼児に対する性的虐待訴訟、新たな証言が集まる!』という記事だ。

 

 私が家出したり気を失っている内に、セイラお姉さんは本当にネオジオンを訴えたらしい。

 

 とりあえずニュースの動画があるので再生してみる。

 

『フロンタルの野郎が変態かだって? この手の話題は機密だの何だのって教えてもらえないと思っているだろう? だが喋っちゃうんだな、これが!!』

 

 左の黒髪を伸ばして右側は刈っている個性的な髪形をした片目の赤いお兄さんが、キャスターのお姉さんが引いているのも気にせずに話している。

 

『俺達は軍に入る前は秘密のニュータイプ研究所にいた。そして、そこには俺達の他にも多くの被験者がいたんだ。十歳くらいの女の子もな』

 

『は…はぁ……それで何があったんですか?』  

 

『あれは実験の影響を調べる為の身体測定があった時だ。丁度奴の横に並んでいた俺は見てしまったのさ』

 

『いったい何をでしょう?』

 

『奴が薄着の女の子を見て、股間に汚ぇテントをおっ立ててるところをだ!!』

 

 恐る恐る聞くキャスターに大声で怒鳴る男。

 

 その目に映る狂気に動画を見ている私もドン引きだ。

 

『あの時俺は思ったね。この男はヤバい! 将来絶対に性犯罪で捕まると。だからこそ、強化措置が終わった後で所長に言ったんだよ! あの野郎は失敗作だ、封印しろってな!!』

 

『ちょ…ちょっと待ってください。強化措置とか被験体とか……まさか人体実験を受けていたんですか?』

 

『ああ。ピーーーーーーー(プライバシー保護の為に放送できません)主導でな! だが、奴は選ばれちまった。シャアがロリコンだって理由の一点でな! その結果がこの様だ!!』

 

『うわ…うわわ……これ放送していいんでしょうか?』

 

『見たか、ピーーーーーーー(プライバシー保護の為に放送できません)!! これがお前の目が節穴だった結果だ!! 完成体の俺を失敗作と蔑ろにしたからこうなる!! 精々鉄格子の中で後悔しやがれ!!!』

 

『………以上、匿名希望のゾルたん様のインタビューでした。なお、ジオン共和国のモナハン・ハバロ外務大臣は人権侵害および違法な人体実験の首謀者として逮捕されました。モナハン外務大臣逮捕に関して、ネオジオンは胃潰瘍で緊急入院したハマーン外相に代わり、シャア総帥は「フル・フロンタルは半年前に解雇しており、当組織とは関係はない。また被害に遭った少女には謝罪の意を示す」とコメントを発しているとの事です』

 

 ……なんだかエライ事になってるけど、私の所為じゃないよね?

 

「貴様の事だから、欲情で血走った目も『オッドアイです!』で誤魔化してエロスに奔る気であろう? キャー! ケダモノー!!」

 

「いい加減黙りやがれ、このキ●ガ●が! クトゥグアッ! イタクァッ!!」

 

 ショックから立ち直ると、再び銀髪になった大十字さんが手にしたハンドガンから緑と赤の弾丸を放ってドラム缶ロボを破壊していた。

 

「し…しまった! やはりジャンクから作った急造品ではこの程度であるか!? これも全て貧乏が悪い! 店長、一杯の掛けそばください!! 天ぷら盛り合わせも付けて!! ギャーーーーーー!?」

 

「博士、この頃カップ麺しか食べてないロボーーーっ!!」

 

 超絶早口で何かを叫びながら吹っ飛ぶウエスト博士とエルザお姉さん。

 

 というか、一杯のかけそばの話なのにどうして天ぷら盛り合わせ頼んでるの?

 

 ……それはともかくとして、ひーちゃんのお墨付きが付いた天才科学者を逃がすのは惜しい。

 

 地球を守る為には少しでも優れた人材が必要なのだ。

 

 という訳で、飛んでいく二人を用意していた捕縛用ネットで救出してみました。

 

「おお! 助かったぞ、幼女よ」 

 

 そして二人をハロの手の上に乗せると、ちょうどにぃにから連絡が来た。

 

『ミユ、一度クラッシャー隊本部に連れてきて欲しいってさ。むこうでドラゴンズハイブの田中司令を交えて面談で決めるらしい』

 

「……ん、ありがと」

 

 どうやら門前払いは食わなくて済んだらしい。 

 

「……ひーちゃん、はかせとあう」

 

『OK。それじゃあハロを地上に降ろすね』

 

 ハロを着地させて、博士たちを地面に降ろすと私はひーちゃんと共にコクピットを出た。

 

 ちなみにハロの隣にはデスティニーも下りてきており、何かあった際には動けるようにしてくれている。

 

 にぃにの過保護っぷりには頭が下がる思いです、はい。

 

 土煙と硝煙に火薬の匂いを感じながら地面を踏みしめると、博士とエルザお姉さんは煤汚れていたけどピンピンしていた。

 

 というか、科学者なのに凄い身体してるなぁ。

 

「幼女よ、君はまともな生まれではないであるな」

 

「!? どうして……」

 

 開口一番にそう言い当てられた私は思わず息を呑んでしまった。

 

「吾輩、これでもエルザの生みの親。経験上、そういった事は勘で分かるのである」

 

 そう言うと博士はこちらをジッと見ながら、私の周りをグルリと回った。

 

「ふむ、肉体と知能、それに精神性がちぐはぐであるな。おそらく何らかの事を行わせる為に記憶転写で無理に……おごぁっ!?」

 

「博士、デリカシーが無いロボ」

 

 私の正面の戻って何やらブツブツと呟く博士。

 

 そんな彼を背後からエルザさんがその頭を殴って止めてしまった。

 

 まあ、私も自分を分析されるのは困るので助かったけど。

 

「……はかせ。やとうの、めんせつうけてから」

 

「面接って、誰とやるロボ?」

 

「……おおつかちょうかん。にほんのえらいひと」

 

 そう伝えると博士はむっくりと起き出した。

 

 というか、頭から血がピューピュー出てるんだけど本当に大丈夫なの?

 

「了解したのである。大塚だか大原だか知らんが、吾輩の才を見れば向こうから土下座する事間違いなーーーーし!!」

 

 そう胸を張って高笑いするウエスト博士。

 

 自分を天才と言い切るところといい、凄い自信だなぁ。

 

「ちょっと待て! 嬢ちゃん、マジでコイツを雇う気かよ!?」

 

 なんて感心していると、天から大十字さんが下りてきた。

 

 にぃに、待って、待って。

 

 大十字さんにビームバルカンで狙いつけるのやめて。

 

「……ん。ちきゅうまもるのに、すごいひといっぱいいる」

 

 そう返すと彼もこの地球の窮状を分かっているのだろう。

 

 先ほどまでの勢いがしぼんでいく。

 

「この世界の事情は分かるが……大丈夫なのか? あの通り、天才と何とかは紙一重というかむしろ完全に向こう岸に逝った奴だぞ」

 

「……はかせ、わるいひとじゃない」

 

 そう返すと大十字さんはため息一つ吐いてこう言った。

 

「そうだな。アイツは悪人だが邪悪じゃない。お前さん達の目的がブレなきゃ制御できるかもな」

 

 そして彼はふわりと宙へ浮き上がると二ヤリと笑みを浮かべる。

 

「そんじゃあ俺達は退散するわ。君にもらったタコ焼きのカロリーが無くなったらまた行き倒れるしな」

 

「……ばいばい」 

 

 私が振る手に手を軽く振り返すと、大十字さんは現れた時のように高速で去っていった。

 

「あと、言っとくが俺は幼女に興味はねえ! 俺が好きなのはアルだけだ!!」

 

 最後にマスコットサイズになったお姉さんを指差して、そう叫びながら。

 

「「「「やっぱりロリコンじゃねえか!!」」」」

 

 彼等が去った後にこんなツッコミが入った事に関しては知らない方がいいよね。

 

 

 

 

 こうしてモヒカン騒動は終わったわけだけど、私達は一日大阪に留まる事になった。

 

 その理由はウエスト博士がモヒカン軍団のスクラップを使って自分のロボットを修理すると言い出したからだ。

 

 一日で大丈夫なのかと思ったけど、彼曰く余裕だそうだ。

 

 あと、例のモヒカン達はしっかり警察に御用となった。

 

 彼等も魔装機を失った状態では私達に勝てないと悟ったのだろう。

 

 連行される時は大人しいモノだった。

 

 そんなワケで私達はミチルさんが取ってくれたホテルへ向かっていたのだけど、その道中で私は高校生らしきカップルとすれ違った。

 

 一人は黒髪の大人しくて優しそうなお姉さん、もう一人は日本刀を思わせる鋭さを持った茶髪に眼鏡のお兄さん。

 

 一瞬の交差、そのはずなのに私にはそれが何倍にも感じられた。

 

 その間にお姉さんは私にこういった。

 

「この世界を守りたいのなら、もっと傲慢になりなさい」

 

 思わず振り返った時には二人の姿はもう無かった。

 

 あの時にお姉さんから感じたのは酷く大きくて、怖くて、それでいて懐かしいモノ。

 

 まるで宇宙のようだった。

 

『ミーちゃん、どうかした?』

 

「……ううん」

 

 不思議そうに問いかけるひーちゃんに私は首を横に振る。

 

 あれは気のせいなのだろう、きっと。

 

 

 

 

 ミユ達がホテルへ入った後、夜の暗がりの中から先ほどの少年と少女が現れる。

 

 少年は左手に仮面と右手に日本刀を持ち、少女は不思議な携帯端末を手にしていた。

 

「まさか、あんなに小さいとは思わなかったなぁ」

 

「よかったのか、彼女に告げずに? 手遅れになれば、この世界も取り返しのつかないことになるぞ」

 

 深くため息を吐く少女に少年は鋭く問いかける。

 

 そしてそれを受けた少女は口元に小さく笑みを浮かべた。

 

「いいの。あの子は私と違う選択をするかもしれないし、その時が来るまで干渉はしたくないんだ。それより鳴神君はいいの? こっちにもいるんでしょ」

 

「構わない。奴との因果は俺と繋がっていないし、この世界の魔を断つ剣はまだ折れていない。俺が奴を封神する事があるとすれば、それは彼等が真に敗れた時だ」

 

「そっか……」

 

 そう呟くと少女はホテルに背を向ける。

 

「がんばれ」

 

 そして振り返り、ホテルの中にいる幼い少女にエールをおくって。

 

 彼等の姿が消えて少し間を置くと、夜空を切り裂いてマギウススタイルの大十字九郎が降り立った。

 

「どうだ、アル?」

 

「一足遅かったな。もう気配は消えている」

 

 相棒の言葉に九郎は苛立ちを隠そうともせずに舌打ちを漏らす。

 

「本当に奴等だったのか?」

 

「ああ。あの気配は邪神、もしくはその眷属に間違いない」

 

 アル・アジフの言葉を受けた九郎はバリバリと長い髪を乱暴に搔きむしった。

 

「本当に勘弁してほしいぜ。まだデモンベインも完全に直ってないのによ」

 

「数多の可能性が混在する世界に飛ばされた事といい、奴の力が大きく増したことといい、状況は悪化する一方だな。我が主よ、全てを投げ出すか?」

 

 アルが発した意地悪な問いかけに、九郎は先ほどまでのしかめっ面を何処かへ放り投げた。

 

 代わりに張り付けるのは不敵な笑みだ。

 

「冗談だろ。俺の取り柄は何があろうと絶対に諦めない事なんだぜ」

 

 そして降り注ぐ月の光を見上げながら彼は宣言する。

 

「これが誰の企みか分からねえが、今回も足掻いて足掻いて最後に逆転パンチを食らわせてやるさ!!」        

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