幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
結果は炎ジュン【支援パーツ】×3!
もしかしてこれはクソコテ様の怒りなのだろうか?
ドラゴンズハイヴの指令室。
そこではクラッシャー隊司令の大塚長官、ドラゴンズハイヴの責任者である田中司令、同整備主任であるセイミー、そしてF.S.がWILLと対話を行っていた。
「ではWILL、君も1万2000年の輪という言葉に憶えはないのかね?」
「どこかで聞いた事はある。……だが、思い出せないのだ」
大塚の問いかけに太古の文明が作り上げた人類の観察者は苦い声を返す。
「やっぱり、ジェミニスによる記憶操作の影響なの?」
「無機生命体であるWILLさんの記憶まで操るとは……いやはや、ジェミニスの力は恐ろしいですね」
それを聞いてセイミーが漏らした呟きに田中がどこか気の抜けた声で感想を漏らす。
エタニティー・フラットにバアルの襲来と地球を脅かす様々な現象が牙を剥く中、Z-BLUE地上部隊の首脳部はパラダイムシティの権力者だったゴードン・ローズウォーターが遺した『1万2000年の輪』というキーワードを解くのに躍起だった。
しかし、その為の情報はあまりにも少なく、彼等が総力を結集しても足踏みを続けるしかなかった。
「頼む、WILL! なんとしてもその言葉の意味を思い出してくれ!!」
そう大塚がモニターに浮かぶ無機質な仮面に懇願した時だった。
突如として指令室の扉が破られたのだ。
「なにごとだ?」
F.S.をはじめとして敵襲かと各員が身構える中、モクモクとあがる埃のむこうから謎の奇声が鳴り響く。
「ふははははは! 行く先々でDIE喝采! 伝説の狼もワオーン!と叫ぶ天才科学者・ドクタァァァ・ウェスト参上なのであーる!! 大塚とかいう長官はここにいるであるか?」
「わ…私がそうだが」
どこからどう見ても頭がおかしい奇人の登場にちょっぴりビビる大塚。
そんな彼の心中など知った事かとズカズカと踏み込むと、ウェストは白衣の胸ポケットから何かを差し出した。
「ウム、なかなか貫禄を備えたオッサンである!! ここで会ったがはじめまして! わたくし、こういう者ですので面接お願いします」
「わりと普通ッ!?」
登場とは打って変わって名刺を差し出すウェストに思わずツッコミを入れるセイミー。
「大塚長官。彼は?」
「ミユちゃんが現地でスカウトした人材……らしい。あぁ、たしかに面接の約束をしていたな」
例の話に夢中で時間を忘れていたよ、と薄くなった頭を照れ隠しに掻く大塚。
「面接と言うが…どうやって合否を決めるつもりだ?」
「そうですね……。彼は天才科学者と言っていましたし、この問題について意見を貰いましょうか」
F.S.の問いに田中は思わぬ提案を持ちかける。
「よかろう。この大天才ドクター・ウェストの前では、いかなる難題もバルサンでポイ! なのである」
「実はな、この宇宙では1万2000年周期で何かが起こっているらしい。そして地球を覆い始めた時間停止の結界であるエタニティ・フラット、そして知的生命体の天敵たるバアルの襲来もこれと係わりがあるようなのだ」
「ふむふむ、とりあえず資料を片っ端からカモン! 意見云々はそれを見てからなのである!!」
そう言うとウェストは用意されたドラゴンズハイヴの中にある関連資料に片っ端から目を通していく。
まるで漫画のような頭がおかしい速度でスライドする画面に唖然とする周囲を他所に、彼は膨大な資料を15分程度で全て見終わってしまった。
「資料を読み解くに、この宇宙は1万2000年周期で滅びと再生を繰り返しているようであるな」
「な…なに!?」
そして出した答えは誰も予想だにしないモノだった。
「な…ならば、エタニティ・フラットは滅びの予兆だというのか!?」
「データが少なすぎて断定はできんが、吾輩にはむしろ滅びから守る為のモノと思えるである。もっとも、時間が進まない世界で人間が生きていける可能性はナッシング。閉じ込められれば真綿で首を絞めるように、緩慢な滅びが待っているであろうな」
突飛な意見に周囲が黙り込む中、珍しく顔を不快そうにしかめながらウェストは言葉を続ける。
「あとはこの1万2000年周期というのも何やら怪しいのである。何者かが裏で糸を引いている可能性も十分にありうる」
『裏で糸を引いている? 君は今宇宙の滅びと再生が起こると言っていたではないか。それでは理論が矛盾している』
WILLの投げかけた疑問にウエストはフンと鼻を鳴らす。
「お前達は誰から1万2000年の話を聞いたであるか? これを知っているという事はその者は滅びを乗り越えたという証明であろう」
『…なるほど』
「もっとも定められた滅びを否定して、尚且つそれだけの長命を得たと考えればその者は邪神か何か、おおよそロクでもないモノに成り果てたに違いあるまーい。お前達もその手の奴等に気を許さない方がいいであるぞ。この世には死ぬよりも辛い地獄は確かに存在するであるからな」
そう笑うウェストの目の奥に浮かぶ冷たい光は、先ほどの奇人っぷりとは別の深淵を覗き見た別種の狂気を知る者のそれだ。
大塚はこの一件で彼の知識と知能を高く評価し、晴れてドクター・ウェストとエルザはZ-BLUEの仲間入りを果たすのだった。
◆
場所は変わって地球上のテロ組織を裏から操るアマルガムの本部。
そこではレナード・テスタロッサがモニターに映る金髪碧眼の軽薄かつ蛇のような狡猾さと執念深さを感じさせる男と話し合っていた。
「それでもぬけの殻のミスリルを襲撃して例のクマちゃんを取り戻したわけだが……これでよかったのか、スラオシャ?」
『ええ。アレは僕達にとって必要な物です。いつまでも格納庫のテディベアにしておくわけにはいきませんからね。それより、デナン・ゲーの評判はどうですか?』
「傘下のテロ組織からは好評を貰っているよ。あの手の組織に属しているМS乗りはジオンの人間が多い。コクピット回りをジオニック式に設定しているのがミソだな。ところでフィフス・ルナの時に使ったオールズモビルだっけ? あれは出さないのか?」
レナードの問いにスラオシャと名乗る男は不敵に口角を釣りあげる。
『あれらはちょっと細工を施す予定なんですよ』
「細工?」
『ええ。何の因果か、オールズモビルのデザインはジオンだけでなく、現在ザフトの主力となっているセカンドシリーズにも酷似してますからね。ガワだけでもそちらに近づけてやれば面白い事になると思いませんか?』
「なるほど、旧ジオンに加えてコーディネーターの過激派がって形か。上手くやればブルーコスモスの残党も息を吹き返すかもな」
『幸いなことに現状に不満を持つコーディ共は何人か押さえてますからね。ソイツ等の声明の一つでも流してやれば、ネオジオンと戦争中の今なら更なる混乱を煽れます。しかも奴等が使っているのが旧式のジンではなく、現在主力のセカンドシリーズと来れば猶更だ』
スラオシャのコーディネーター嫌いに小さく肩をすくめたレナード。
しかし、彼が目の前の男と話す理由はこんな事ではないのだ。
「ところで例のUGセルだっけ。あれってウチに回してもらえないのかい?」
そう切り出すと上機嫌に笑っていたスラオシャの目から笑みが消える。
『あれに手を出すと? やめておいた方がいいですよ。アレは特別な才が無ければ使いこなせません』
「感応能力だったっけ? それならウチにも専門の部門があるさ」
『ラムダドライバの研究班ですか。あんな誰でも使える程度の代物では、とても足りませんよ』
呆れたように首を左右に振るスラオシャにムッとなるレナード。
自分の感情を顔に出す取引相手の幼さを内心で嘲笑いながらスラオシャは続ける。
『アレを完全に制御する為には現存するニュータイプを遥かに超える感応力、もしくは超人じみた精神力と生命力が必要です。それが無いモノが扱おうとすれば、待っているのは生き地獄ですよ』
言葉と共に通信ディスプレイの左半分に現れた光景、それを目にしたレナードは思わず息を呑んだ。
何故ならそこにはナニカに汚染されて骸骨同然になった人間が、機械に囚われながら怨嗟の声を上げていたからだ。
「こ…これは……」
『UGセルを侮った者の末路です。ちなみにコレ、自己増殖して感染していきますからね。生きる屍の仲間入りをしたいというなら、相応の値段でお譲りしましょう』
「い…いや、やめておく」
『そうですか。Mr.Agのご気分も優れないようなので、今回の商談はここまでにしましょう』
顔色を無くしたレナードを一瞥すると、スラオシャはプツリとモニターから消えた。
そうして何も映さなくなった画面を前に、レナードは思わぬ光景を目の当たりにしたとは言え怯んでしまった自分に対する怒りを噛み殺す。
「俺を見下しやがって……俺達に使えないのなら、使える人間を用意すればいいだけだ! 見てろよ!!」
人一倍プライドの高い少年、その視線の先には封印されていた猛獣の表皮が機材の中で氷漬けにされていた。
◆
どうも、熱海にある『くろがね屋』という旅館で逗留中の幼女です。
現在、私は部隊を離れて熱海の温泉で湯治を行っておりますです、はい。
様子を見に来てくれたシン兄の言葉通りなら、Z-BLUEとネオジオンの交渉は終わった頃だろうか。
私の為に地上に降りたのに、すぐに宇宙へトンボ返りとか申し訳なさすぎる。
まあ、シン兄は私と温泉を楽しめない事を悔いていたみたいだけど。
私としてもシン兄と入れる内に、一度くらいはお風呂に入ってみたいものである。
さて、私達が地上部隊と合流したのは今から3日前の事だ。
極東支部に停泊していたドラゴンズハイヴへ到着した私は、すぐさまルゥさんの元に送られた。
そして待っていたのは各種カウンセリングと健康診断。
数時間に及ぶ検査の結果、精神的疾患とかそういったものは無いものの、心身ともに弱っているのは否めないと言われてしまった。
なにより私的にショックだったのは、この幼女ボディがとっても小っちゃかった事だ。
現在私の背丈は102cmなのだが、なんとこれは4歳になったばかりな子供の平均身長ときた。
さらに私が6歳にしてはちっちゃ過ぎる事に関しては、医療関係や子育て経験のある人が気づいていたらしい。
ただ、次元漂流者という事で以前の環境が良くなかったんだなと思い、これから食育などで改善していけばいいと様子を見ていたんだそうな。
そんな風に温かく見守られていたとは、幼女としては頭が下がる思いです。
しかし自称6歳、実年齢1歳(ソースはひーちゃんが引き継いだクマさんのデータ)、肉体年齢4歳とは我が身ながら何ともややこしいものだ。
そうしてショックを受ける私に告げられたのは、部隊を離れての療養だったのです。
理由としては精神面もそうだけど、肉体的な負担が無視できなかったこと。
こちらとしては自覚がなかったけど、消化器や何やらにストレス等の影響が出始めていたらしい。
もう少しダメージが蓄積したら固形物を受け付けなくなってたかも、なんて言われた時は本気でゾッとした。
それに加えて人造生命体という事でどんな不具合が出るか分からないことから、当面は養生しなさいとのことだった。
私としても命大事に+健康第一だったので、そう言われては文句は言えない。
大人しく荷物を纏めていたんだけど、その後が大変だったんだよねぇ。
ブライト艦長達が私の出生を地上部隊と共有しちゃったから皆の過保護が凄い。
スーパーロボットのパイロットって、みんな心の優しい熱血漢が多いから凄く心配してくれた。
ゲッターチームは弁慶さんが私を戦闘要員から外せって言いだして、それを竜馬さんが『甘やかすな! コイツなら、それくらい乗り越える!』って反論して喧嘩を始めるし、隼人さんは宇宙怪獣やインベーダーなどの大物狩りだけに出したらどうだって折衷案を出していた。
超能力者のタケルさんは『精神が乱れてるな。やっぱり休んだ方がいい』って謎の診断をしてくるし、ダンクーガの二組は私を造った組織は叩き潰しておくから、安心して休めってさ。
シモンの兄貴は彼女のニアさんの手料理を持ってお見舞いに来てくれたし……そういえば食べた後の記憶が飛んでるんだけど、アレってどういうことなのだろうか?
ノリコお姉さんはヱクセリオンの事を聞いて凄く驚いていた。
なんでもガンバスターを乗せていた艦の一つだったんだって。
そしてタシロ艦長と副長さんの事も知っていて、守ってくれてありがとうとお礼を言われてしまった。
あと、グランナイツや竹尾ゼネラルカンパニー、21世紀警備保障のみんなからはお見舞いにお菓子をもらいました。
どんな生まれでもお前は仲間だって言ってくれたのは嬉しいんだけど……正太郎君、鉄人やオックスと一緒くたにするのは如何なものかと。
エヴァの皆は、レイお姉さんが相変わらずだった。
いきなり抱き上げて、私のお腹に顔を埋めてスーハー、スーハー深呼吸された時はどうしようかと思った。
あのお姉さんはスキンシップが独特だってわかってるだけど、前振り無しにいきなり実行に移されるとさすがにビックリする。
本人曰くミユ成分の補給作業らしいんだけど、この時ばかりは『変態かっ!』と頭を叩いて止めてくれたアスカお姉さんに感謝したよ。
それからミサトさんを交えて色々話してさ、その時にシンジお兄さんは『僕達がいるから、辛いなら逃げていいからね』って言ってくれたんだよ。
なるほど、たしかに逃げていいって言われたら逃げたくなくなるわ。
あとアスカお姉さんから『アンタはどうするの? 人形のままでいる? それとも創造主に牙を剥く?』って真剣な顔で聞かれたので『……へいわのためにたたかう。いもーと、とりもどす』って答えたら何故か上機嫌になった。
うーむ、何か思うところでもあるのだろうか?
その後も地上部隊から何くれと世話を焼かれた私は、甲児お兄さんのお母さんが経営しているというこの宿で湯治をする事となったのだ。
くろがね屋の従業員さんって、人相は悪いけど優しい人ばっかりなんだよね。
クロスさんは私と会うと抱っこして運んでくれるし、安さんは花火を見せてくれる。
銃で凄い曲撃ちを披露してくれたジャンゴさんに美味しい料理を作ってくれる先生。
ゆかたの着付けなんかを手伝ってくれるお菊お婆ちゃんに、さりげなくこっちの様子を見てくれる女将さん。
他にも時々来ては可愛がってくれるタケルさんのお母さん。
甲児お兄さんの弟さんであるシロー君と、ガールフレンドのローレライちゃんもよく構ってくれている。
ローレライちゃんはアンドロイドらしく、ひーちゃんとも話が合うようだ。
◆
そんなこんなで続いている私の湯治生活なのだが……
「ふぅ……いいお湯ね」
「……ぽかぽか」
保護者としてお世話をしてくれているのが、ただ今私を太ももの上に乗せて頭を立派なお胸の間に挟みながら共に温泉へ入っているヨマコ先生だ。
正直、今のZ-BLUEから戦力を削るのは申し訳ないと思う。
しかしこっちは肉体年齢4歳児、一人で温泉に入ったら背丈が足りずに溺れるし、先生が作ってくれたお刺身も食べれないのだ。
こんな幼児を保護者無しで預けるのは、くろがね屋の皆にも迷惑が掛かるだろう。
そんなワケで地上部隊から保護者を募ったところ、ヨマコ先生が立候補してくれたのだ。
小学生の教師をしていたからか、ヨマコ先生は私の事を何かと気に掛けてくれている。
再会した時には、『泣きたいときは泣いていいの』ってギュッと抱きしめてくれたしさ。
ミウを助けるまで泣かないと決めた私の涙腺も、あの立派なお胸に挟まれて人肌の温かさを感じたらダメだった。
ギャン泣きした事に関しては恥ずかしいやら、身体をよごして申し訳ないやら居たたまれない気分でいっぱいだった。
そんな事があったからか、私は自分でも思った以上にヨマコ先生に心を開いているようだ。
……この頃、ドンドン精神年齢が身体に引っ張られてるような気がするんだけど、だいじょうぶだよね?
「こら」
「……にゅ」
つらつらと考えていると、ヨマコ先生が私の額を軽く指で押した。
何事と上を見上げると、彼女の悪戯っぽい笑顔が目に入ってくる。
「またグルグル考えてたでしょ。駄目よ、ちゃんと頭を空っぽにして休まないと」
「……でもニアおねえさん、しんぱい」
聞けばシモンの兄貴の恋人であるニアさんは、アンチスパイラルとかいう敵組織の人間だったそうだ。
そして彼女は洗脳に近い措置を受けて、身柄を攫われてしまったらしい。
「大丈夫よ。ニアならシモンがちゃんと取り戻すわ。寿命が残り僅かだったフィアナも助かったんだもの、きっと上手くいく」
「……ん」
フィアナさんというのはキリコさんの恋人だ。
彼女はPSという兵器として強化された人間で、その強化された代償として寿命が2年しかなかった。
キリコさんがカルト集団であるマーティアル教団を追っていたのは、攫われた彼女を取り戻す為だった。
けれど、フィアナさんを取り戻した時には延命の為のコールドスリープを解かれ、余命いくばくもない状態だったらしい。
どうにもならないと諦めていた時、Z-BLUEミスリル方面隊の前に現れたのは東方のおじちゃんだった。
おじちゃんはキリコさんが首に掛けていた私のお守りを見ると、意気消沈しているキリコさんを殴り飛ばしたそうだ。
キリコさんをはじめ目を白黒させている皆を前に『そんな腑抜けたツラで愛する女が助けられるか、この馬鹿者がぁ!!』と一喝。
そしてお守りを使えばフィアナさんは助かると断言し、キリコさんに命を燃やして愛する者の命が続くように祈れと発破をかけた。
その結果、キリコさんの必死の祈りによってフィアナさんの命は助かったんだってさ。
ギレンの説明を受けたからわかるけど、あれってお守りの芯に使っていたサイコフレームがキリコさんの祈りを増幅して、外殻を形成するUGセルにフィアナさんのPS改造による肉体の不調を治させたんだろうね。
ひーちゃんに聞いた話だとUGセルって地球環境を修復するために造られたっていうし、生き物の身体を治すのも可能なんだろう、きっと。
そんなワケで私はキリコさんに並々ならぬ恩義を持たれる事になったのだ。
……別に気にしなくていいのに。
さて、湯治生活と聞けばのんびり湯につかるのをイメージするだろうが、ここは少し趣が違うようだ。
「ヨーコの嬢ちゃん、おチビの耳を塞ぎな」
露天風呂に建てられた壁の向こうからお菊お婆ちゃんの声がすると、ヨマコ先生は私の耳を両手できゅっと塞ぐ。
それに続いて聞こえるのは、鉄火場の音と不埒な侵入者の悲鳴だ。
「へ…変な奴がいるぞ!?」
「狼狽えるな、相手は素人だ! 本職の恐ろしさを……ぐぎゃあっ!?」
「な…なんて早撃ちだ!? 応戦だ! 総員、応戦し───がはっ!?」
「逃げても無~駄なんだな」
「だ…弾丸が曲がる!? ぎゃああああああっ!!」
「騒々しいのが玉に瑕ね、この宿は」
このくろがね屋には結構な頻度で不審者に侵入者、さらには襲撃を掛けようとする輩が現れる。
どっかのヤクザにドクター・ヘルの残党、連邦の妙な部隊やジオンなんかのテロリストなどなど。
ミスリルのテッサ艦長が来た時なんて、刺客や不審者も何時もの1.5倍増量だったもん。
お陰でここが普通の宿じゃないのはすぐに分かった。
というか、一昨日なんかクロノを引き連れてアドヴェントまでやって来たからね。
ぶっちゃけ超ビビった。
幸い、緊急でひーちゃんが作ってくれたクマさん金属製の隠れ蓑に籠ったお陰で事なきを得たけど、もし見つかってたらどうなっていた事か……。
そう言えば、アイツがここから帰る時にどこかで感じた気配がしたんだっけ。
かすかに『退け、異形の天使よ。退かないなら、ここで貴様を封神する』とか聞こえて来たんだけど、誰だったんだろう?
そんな風にポケッとしていると、憶えのある気配が近づいてくるのが分かった。
「……ひーちゃん、チビ、あお」
『うん、私も感じた。この速度、普通の人間じゃないね』
私がそう声を掛けると、濡れないように脇に控えていたハロビー達が警戒態勢に入る。
「どうしたの?」
「……トリスタンとイゾルデ、くる」
私の言葉にヨマコ先生は慌てて私を湯船からあげると自分も脱衣所へ駆け込んだ。
気配が山間から来ているのを見るに、今道路側で大立ち回りをしているくろがね屋の皆だと手が足りない。
「……ひーちゃん」
『うん、ハロはこっちに呼んであるよ。最悪の場合、陰蜂も出すから』
そう言葉を交わした直後、男性と女性の身体を持つ異形の怪人が私達の前に現れた。
「久しいな、器の小娘よ」
「……ん」
露天風呂の壁の上に立つトリスタンとイゾルデ、いやここは敢えてあしゅら男爵と呼ぼう。
彼はまっすぐに私を見つめる。
その瞳に映っているのは何物にも揺らぐ事の無い覚悟だ。
「私は二日後に科学要塞研究所で兜甲児との決戦に挑む。お前はそれを見届けよ」
「……どうして?」
「私は神子。神に仕え、その言葉を聞く事こそが我が本分。故に分かるのだ、お前はこの宇宙で起こる全てを見極めねばならぬと」
彼が何を言いたいのか、私には分からない。
けれど、その言葉に邪心や偽りは欠片も無い事は感じられた。
そんな事を考えていると、銃声と共にプラズマ化した弾丸があしゅら男爵の顔の横を通り過ぎた。
「あしゅら男爵! ミユから離れなさい!!」
跳んできた先に目を向けると、そこには体にバスタオルを巻いたヨマコ先生が愛用のライフルを構えていた。
あしゅら男爵はそんなヨマコ先生をチラリと見ると、再び私に目線を合わせる。
「器の小娘よ、宇宙の行く末を決める時計は動き始めた。この針は誰にも止められん。そして貴方も白痴のままではいられぬのだ!」
「心に刻め! この宇宙は憎き御使い共の物でも、奴等の傀儡神の物でもない事を!」
そう言うと、彼は来た時と同じく風のように消えてしまった。
いったい彼は何を言いたいのだろうか?
ただ分かるのは、私は彼等の戦いを見守らないといけないという事だけだ。
『ミーちゃん、行くの?』
「……ん。きゅうかはおわり」
そうと決まれば、残りの二日で体調を万全にしなければ!
という訳で厨房の先生! 今日はお子様ランチでお願いします!!
分岐で幼女がやらかしたこと。
ダグザの死亡フラグへし折り(ネオジオンがスキャンダルの嵐で、宇宙部隊を追撃する暇もラプラスの箱を探す余裕も無かった為)
フィアナ生存