幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
携帯が熱いよ、親方!!
この怒り、晴らさでおくべきか!!
というワケで息抜きに書いてみました。
次からは本編をがんばるんで、箸休め程度で見てもらえれば。
どうも、違う世界で救援活動中の幼女です。
私達は現在BETAなるキモい侵略者から救い出した九州地方の住民を乗せて、宇宙を旅しています。
「……みんなのようす、どう?」
『今のところは問題ないよ。怪我人や病人は艦内都市の病院へ入れたし、他の避難民も仮住居としてマンションやホテルを当てがっているからね』
ヱクセリオン級戦艦『はるかぜ』の艦長席に座った私が問いかけると、傍らにあるデスクの窪みにハロ・ビーの身体をはめ込んだひーちゃんが答えてくれる。
この船に乗り込む様子を見たけど、彼等の多くは殆ど着の身着のままな酷い状態だった。
少しでも避難生活の疲れや不安を癒してくれたらいいと思う。
「そう言えば、九州を守っていた軍関係者も一緒に乗せましたわよね。その方々は大人しくしているのですか?」
『そっちは怪我人は病院で他の人間は部隊用の詰め所にいてもらっているよ。許可の無い場所に入ったらペナルティって連絡もしてね』
「それで何人の翅無しが警告を破ったのだ?」
『今のところ5人。破った人は【この者、不法侵入者】って札を首に掛けて亀甲縛りで詰所の前で吊るしてあるから』
ミウとミカゲさんの問いに返ってきたひーちゃんの答えに、私は内心で頬を引きつらせる。
ペナルティが何気にエゲツない。
まあ、破った方が悪いんだけど根に持たないでくれるといいなぁ。
◆
さて、私がこんな事をしている理由に関してだけど話は3日ほど前に遡る。
多元宇宙全体を巻き込んだ聖戦を私達家族は誰一人欠ける事無く戦い抜いた。
宇宙は【超次元世界】として新たなスタートを切り、それに伴いZ-BLUEも解散してメンバーはそれぞれの道を歩き出した。
ただの幼女に戻った私は、オーブの駐在武官となったにぃにやミウ達と共に平和を謳歌していた。
そうしてルナさんとにぃにの結婚式に参加したんだけど、式も終わって眠っていると異なる世界からのSOSを受け取ってしまったのだ。
その内容は『タケルちゃんを助けて』である。
件のタケルちゃんというのは何者かは分からないけど、とある事情からこの手の声を私は無視できない。
なので、ひーちゃんが造ってくれたヱクセリオン級戦艦『はるかぜ』に乗り込み、ゲートを通って救援要請があった世界へと漕ぎだしたわけです。
今回の我儘についてきてくれたのは親友のひーちゃんにミウ、そして何処からか話を聞きつけたミカゲさんにマジンガーZのフィギュアをご神体にした神様だ。
私達がやってきた並行世界は、西暦と言う元の多元世界から見ると少なくとも数百年は昔の地球。
ここはBETAって謎の異星生命体(ミウ曰く資源発掘用の生体重機なんだってさ)に侵略を受けていた。
彼等は物量で世界中の軍隊(この地球は惑星統一国家はまだ無くて、多くの国が存在しているらしい)圧倒しており、人類側もその侵攻を止める事はできずにいた。
拠点であるネオジャパン式コロニー『豊芦原瑞穂国』を整備する傍ら情報を集めた私達は、九州にBETAが侵攻したという一報を受けて助けに向かう事にした。
声の主が言っていた【タケルちゃん】が日本人なら、日本を攻めさせる訳にはいかないからね。
BETA自体は宇宙怪獣を始めとする多元宇宙で戦った敵に比べると非常に弱かった。
ハロやクマさんはもちろん、ひーちゃんが半ば数合わせで作ったモビルドールのサーペントでも問題なく倒せるほどだ。
その代わりと言っては何だが数が凄い。
いや、数億とかいうアホみたいな数だった宇宙怪獣の本陣に比べたら全然マシなんだけどさ。
それでも引っ切り無しに現れる十万近い群れというのは、私とミウにミカゲさんだけでは手に余った。
なので私は相手を全滅させるのではなく、九州の人達をはるかぜに乗せて避難させる方法を取ったのだ。
最初は本州まで送り届けるつもりだったんだけど、避難してきた皆が『難民になっては生きていけない』と訴えてきたのでコロニーへ連れて行く事に。
なにせ『豊芦原瑞穂国』は日本列島と同じ広さだもん。
私達だけが住むにはあまりにも大きすぎるよね。
日本政府にはまだお話していないけど、緊急事態なんだから仕方がない。
コロニーへ着いたら改めて連絡する事にしようっと
◆
日本帝国軍九州方面防衛隊の司令官だった島津義信准将が『豊芦原瑞穂国』のコロニーへ来て一週間が経った。
「ようやく上へ報告らしい報告が出来そうだな」
「そうですね。この一週間は怪我人やら避難民のことやらが修羅場でしたし、そもそも一体どこへどんな風に説明したらいいんだって感じでしたもんね」
副官の佐藤大尉の声を聴きながら日本帝国軍人に貸し出された軍事施設の司令室、そのデスクで島津はグッと伸びをする。
大陸から侵攻してきたBETAによって地獄と化した九州。
彼等や在日米軍も死力を尽くしたものの奴等の膨大な物量による蹂躙を止める事は出来ず、勝利はおろか非戦闘員を本州へと逃がす事も儘ならない状態に追い込まれた。
本来なら九州にいた者達はBETAの腹に収まる運命だったのだろう。
しかし、そんな悲劇を覆す救いの手があった。
それは全長2キロを超える空中戦艦とそこに搭載された超兵器の数々だった。
彼等は九州に侵攻していたBETAの一群を蹴散らすと、避難の為に集められた住民はもちろん自分達や在日米軍の生き残りを乗せて九州を脱出した。
当初は台風で航行できない脱出船の代わりに本州へ送る予定だったのだが、難民生活に不安を覚えた避難民達が救いを求めた事で彼等のコロニーへ向かう事となったのだ。
帝国軍人たる自分達は本来なら国から離れるべきではない。
BETAの日本侵攻が開始された今なら猶更だ。
しかし民衆達が救いの主から理不尽な扱いを受ける可能性は否定できない。
万が一の際には護り逃がす為の人員も必要となる。
そう考えた島津は部下と共に旅路を共にすることを決めたのだ。
しかし、そんな懸念は見事に外れる事となった。
「そう言えば、【おひいさま】はどうしている?」
佐藤にそう問えば彼は笑顔でこう答える。
「ファクトリーで造った医薬品をカーゴで病院に配達しているようですよ」
このコロニーではファクトリーと呼ばれる施設で様々なモノが生産される。
木材に鋼材、軍事物資に医療品などだ。
それを使えるのは【おひいさま】ただ一人だけである。
おひいさまとはお姫様から転じた言葉で良家の娘さんや育ちの良いお嬢様、またはそういう雰囲気の女性などを指す言葉だ。
島津を始めとする軍人や住民達は、このコロニーの所有者を親しみを込めてそう呼んでいるのだ。
「そうか。また入院している爺さん婆さんが喜ぶな」
「あの子はお年寄りのアイドルですからね。ウチの婆ちゃんも今度はいつ来るのかって私に問い合わせてきましたから」
少々口下手ながらも素直で聞き上手な彼女が入院生活で暇をしている老人達に可愛がられる様が容易に想像でき、島津は思わず笑みを浮かべる。
「しかし、こんなとんでもない代物を造ったのがあんな小さな子だとはな」
「本当ですよ。自分は絶対に筋骨隆々のオッサンだと思ってましたからね」
佐藤大尉と軽口を叩きながら、島津はここへ辿り着いた初日の事を想い返していた。
彼が『豊芦原瑞穂国』の所有者と初めて出会ったのは、コロニーへ帰港した船から降りた時だった。
船内で世話役を担っていた球形ロボット(ハロというらしい)に促されて部下や避難民と共に広場へ行けば、コロニーの所有者から挨拶があるというではないか。
これだけの技術と軍事力を持つ輩とはどんな屈強な猛者なのか、それ以前に人間の姿をしているのか?
興味と恐れが入り混じる中、彼等の前に現れたのは意外な人物だった。
白衣(しらえ)に緋袴という神社の巫女を思わせる衣装を着た4歳程度の女の子。
それがこの超技術溢れる施設の主だと言うのだ。
「……ミユ。はじめまして」
背中まで届く栗色の髪と同色の瞳が特徴な彼女は、自分達を見るとペコリと頭を下げた。
その年相応な子供とも思える愛らしい仕草に、自分を始め身構えていた者達は一気に毒気を抜かれてしまった。
ミユ・アスカと名乗った幼子の左右には彼女によく似た12歳程度の女の子と深紅に塗られたハロ。
そして、その背後には得体のしれない雰囲気を持つ美しい男がいた。
ミユは妹であるミウ・アスカ(姿からして姉妹逆ではないかとの質問が飛んだが、家庭の事情に踏み込むのは無粋と一蹴されてしまった)と陽蜂と名乗った深紅のハロの助けを借りて避難民たちの今後について説明を行った。
各家庭にはこのコロニーで使用できる通貨2000万クレジット分を支給すること。
コロニー内は基本的にキャッシュレスであり、身分証がキャッシュカードを兼ねていてそれを使って買い物をすること。
避難民たちはコロニー内で希望する地区に移住が可能なこと。
その際に必要な衣食住は全て彼女達が用意しているので、戸籍と住所の把握の為に住民登録を行うこと。
就業に関しては基本的に日本で行っていた職種を斡旋するが、それに不満がある場合は希望すれば別職種への就職も可能であること。
農作業は『豊芦原瑞穂国』に隣接する食糧増産用コロニー『大宜都比売神』にて行うこと。
農地は貸与だが収穫した農作物は区域を担当する農業従事者に権利があること。
地球への帰還を望む者は責任を持って送り届けること。
「しかし、おひいさまが自治権をこちら側に委ねると言った時は驚いたな」
「理由を聞いたら納得なんですけどね。さすがにあの年で政治までやられたら引きますよ」
島津達の会話にある様に、ミユは住民達を向かい入れるにあたっての統治について自分達は関わることは無いとした。
政治は選挙によって選ばれた住民の代表が議会で行う事を宣言したのだ。
これには鹿児島県知事を務めていた東郷氏が本当にいいのかと戸惑いながら問いを投げたが、『自分達には政治は分からない』『餅は餅屋』と言われれば納得するしかない。
結果、次の選挙を行うまでは暫定議会として東郷氏を中心に各知事と県会議員達が政治を担う事となった。
「このコロニーだって宇宙の中なのに海はあるし、九州地方も完全再現でしょ? 本当に開いた口が塞がりませんでしたよ」
「たしかにな」
大層に肩をすくめてみせる佐藤に島津は当時の事を思い出しながら頷く。
ミユからの挨拶の後に始まった移住はおおむね順調だった。
避難民たちは新たな住居に九州地方を選び、島津もまた故郷と同じ地で暮らす事を望んだ。
全自動のリニアモーターカーで目的地へ着いた時、九州の街並みが自分達の記憶とあまりにも同じだったことに住民たちはどよめき、島津も我が目を疑った。
主要駅周辺や天文館などの繁華街は記憶にあるものよりも未来感はあったが、仙厳園や鶴丸城跡などの旧跡や自然の数々は記憶にある鹿児島と瓜二つだったのだ。
なにより桜島とそこから立ち上る噴煙を見た時は思わず天を仰いだものだ。
もっとも、そのお陰で避難民たちはコロニーでの生活には早期に慣れる事が出来たのだが。
「月からBETAの落着ユニットがこちらへ飛んできた時は焦ったが、それもおひいさまがあっさり叩き潰したしな」
「あの黒丸。宇宙でも使えるとか、どれだけ万能なんですか」
資源収集用として小惑星や隕石などが集積されている為か、この一週間でBETAは『豊芦原瑞穂国』にむけて月から落着ユニットを何度か発射している。
しかし、それもミユが駆る黒い機動兵器やコロニーに備わった自動防衛機構が全て撃墜しているのだ。
住民を安心させるためか、その様子は全て街や各家庭のテレビを通して放映されていた。
『豊芦原瑞穂国』へ迫る二基の落着ユニットを迎撃したのはミユが駆るサイコハロ、そしてコロニー守備用モビルドール『グルドリン』だ。
サイコハロはハロビットによるオールレンジ攻撃から凶悪なドリルを備えた拳で落着ユニットを粉砕した。
一方のグルドリンも金色のロケットの両側に二本の腕が生えた異様な外見とは裏腹に、こちらも島津達の戦術機とは次元違いの強さを見せた。
このグルドリンはヴェイガンと呼ばれる勢力が地球との戦争後期に「S&S(Simplification & Streamlining=単純化と合理化)」構想の基に開発した機体である。
爆発的な推力による圧倒的な機動性と機体前部へ取り付けられたビームスクレイパーから発射される貫通力の高いドリル状のビーム、さらにはモビルスーツすら容易く叩き潰し引き千切る剛腕を持つなど高性能を誇る。
彼等は2基目の落着ユニットへ複数で襲い掛かるとビーム砲で次々と穴を開け、その剛腕によってバラバラに解体してしまったのだ。
人類にとって悪夢の始まりとも言える落着ユニットの撃破。
それはBETAによって故郷や肉親を奪われた住民や軍人にとって、この上なく留飲を下げる事となった。
「現状で国へ帰りたいという希望者はゼロか」
「帝国軍人としては複雑ですが気持ちは分かります。お国へ帰っても何時BETAに襲われるかと怯えながらの難民生活ですからね。それなら誰だって超科学で護られた疑似故郷で人間的な生活を送る方を選びますよ」
軍や国の中枢にいる国粋主義者が聞けば憤死しそうなセリフだが、島津は佐藤大尉の発言を咎める気は無かった。
現在の日本帝国にBETAから民と国土を守る力は無い。
九州防衛戦からここへ落ち伸びてきた者達はその事実を痛感している。
それが分かっていながら国へ帰れなど、いったいどの口で言えるというのか?
己の力不足も原因の一端だと自覚がある島津としては、この結果は当然と理解していても内心落ち込んでしまう。
気分を変える為に一層仕事へ打ち込む島津だったが、一枚の申請書を見てその手をピタリと止めた。
「九州で亡くなった人達の慰霊碑を祀りたい? 申請者はおひいさまか」
その文面に目を走らせた彼は深いため息をついた。
散って逝った者達を悼んでくれるのはありがたいが、その条件はかなり難易度が高い。
彼女は死亡した兵士の家族の参加、無理な場合でも許可を得る事を願っているのだ。
たしかに遺族の知らない場所で鎮魂の儀式を行うのは配慮に欠ける事は理解できる。
しかし九州を救ったとはいえ、彼女達が戦闘に介入したことは日本帝国という国家からすると看過などできない。
緊急避難である事や九州市民からの嘆願があったとはいえ、皇帝陛下や政府への許可なく臣民を懐へ入れた件もだ。
彼女は『豊芦原瑞穂国』までの足として迎えの船も出すと言っているが、そう簡単に許可は下りまい。
自分や同郷の命の恩人の無垢な願いを叶えてやれない罪悪感を感じていた島津だが、そんな物は最後の項目を見た途端に吹っ飛んだ。
「ぎ…技術試験機!? 烈震に翔鶴だと! なんだこれは!!」
驚愕の声を上げながら頭を抱える島津。
なんと『豊芦原瑞穂国』は自分達の要求を呑むなら、ここの技術で造り上げた戦術機を贈与すると言ってきているのだ。
名前からして回収した撃震や瑞鶴を解析したのだろうが、正直これについては追求する気などない。
そもそもからして技術に差があり過ぎるから止めようが無いし、彼等の使う機動兵器の性能を見れば戦術機など研究する必要が無いのは丸わかりだからだ。
この機体も技術検証と銘打っているが、この交渉を徹す為の餌として造った代物だろう。
しかし、理由はどうあれ未知の超技術で生み出された機体は喉から出るほどに欲しい。
技術的な問題によって国産の戦術機の進化が不知火で頭打ちになっている事を知る身としては猶更だ。
「島津司令、これはチャンスですよ!! 我々の無事を報告するついでに政府の連中を説得しましょう!!」
「あ…あぁ」
手から零れ堕ちた書類に目を通した喜色満面の佐藤に適当に答えながら、島津は内心で頭を掻き毟る。
(くそぉ! なんて面倒くさい事を!! だがこれからの帝都防衛を思えば絶対に失敗は出来ん! ……恨むぞ、おひいさま!!)
島津は声なき声で呪詛を吐きながら、地球と交信が可能な通信装置へ手を伸ばすのだった。
◆
どうも、住民のお爺ちゃんやお婆ちゃんからネコ可愛がりされて困惑している幼女です。
『豊芦原瑞穂国』に九州の人達を招いて1週間が経ちました。
最初は避難疲れでぐったりしていた人達も3日ほど過ぎる頃には少しづつ仕事を始めだし、今では普通の街のように住民の皆さんは活気にあふれています。
私はコロニー中枢にあるUGセル加工製造機・通称ファクトリーで必要なモノを造ったり、小さなものは配達したりと結構忙しい。
あとはコロニーに近づく敵を倒したり、入院中の人達をお見舞いしたりして日々を過ごしています。
病院の中には病気のお爺ちゃんやお婆ちゃんの他にも怪我をした兵士さんもいっぱいいる。
中には手足を失ったり内臓の調子が悪くなった人もいるんだ。
けれどコロニーの病院はクローニング移植技術が発達している。
本人の細胞を培養して手足や内臓も作れるんだってさ。
少し時間は掛かるけど治るって聞いた時はホッとしたよ。
さて、そんな私ですが今日は兵器開発所で新型機のテストを見学しています。
轟音を上げて空を飛び回りながら模擬戦に精を出す二機の戦術機。
片方は在日米軍の軍人さんが乗る灰色のリファイン・イーグル。
もう一方は日本帝国軍人さんが乗る黄色く塗られた翔鶴だ。
ここの日本って帝国って付くんだねぇ。
元エリア11な植民地とか異星人や地底人が襲来する大魔境とか、同じ日本でも世界によって様々である。
『あのリファイン・イーグルは米軍がはるかぜに積んだF―15イーグルって戦術機を基にしてるんだ』
「……しょーかくは?」
『そっちは瑞鶴って機体だよ』
他の軍の機体を戦艦に載せるんだから誘爆とか事故が起こらないように、機体の状態を調べるのは当然なんだけどさ。
そのついでにデータを丸々調べちゃうなんて、ひーちゃんは抜け目がない。
『両方共に超鋼スチール合金のムーバブルフレームを採用して、装甲はアストレイに使われていた発泡金属装甲にしたんだ。あとは関節部もジムと同レベルの出力に調整したフィールドモーターに換えたし、跳躍ユニットもエールストライカーに使われていた大出量スラスターに変更。動力源のバッテリーもCEのモビルスーツ用のを戦術機規格に改造したのに入れ替えて、コックピットもリニアシートで耐G性能を上げたんだ!』
「……ほえ~」
となりでピョンピョン跳ねながらひーちゃんが説明してくれるけど、悲しいかな幼女は工学に弱いのです。
なので『強くなったんじゃないかな~』ってくらいしか分かりません。
『あとは主武装の突撃砲を90mmマシンガンにしたし、妙な形の剣も超鋼スチール合金製のちゃんとした刀に換えてヒート溶断機能も付けたんだよ』
「……ハロ、まけちゃう?」
『百対一でも負けないから大丈夫!!』
「……ん」
なら安心だ。
模擬戦も終わったみたいで、二つの戦術機は地上へ戻ってきた。
コクピットが開くとリファイン・イーグルからは金髪をオールバックにした逞しいオジサンが、そして翔鶴からは少し線の細いお兄さんが降りてくる。
「参りました。さすがですね、ウォーケン少佐」
「いや、君も任官して間がないとは思えない腕だったぞ。田上少尉」
互いに健闘を称え合うのはアルフレッド・ウォーケン少佐と田上忠道少尉だ。
ウォーケン少佐は九州で日本軍に協力して戦ってくれた在日米軍の人で、はるかぜに乗り込んだ彼等の中で一番偉い人だ。
本当なら少佐の部隊は海で待機していた戦艦に帰る筈だったんだけど、その戦艦が光線級のレーザーで沈んじゃったから途方に暮れていたらしい。
そして田上少尉は斯衛っていうお侍さんの部隊の人なんだってさ。
ウォーケン少佐は歴戦の勇士で田上少尉は経験少ない新兵さんだって聞いたし、模擬戦で終始押され気味だったのは仕方がないんだろう。
「……どうぞ」
私はお盆に乗せたスポーツドリンクを二人へもっていく。
観戦させてもらった身としてはこの位はさせてもらわないとね。
「すまない、プリンセス」
「ありがとうございます、姫様」
兵隊さん達は私の事を姫と呼ぶんだけど、何でなんだろうね?
『チビハロ達がミーちゃんの事を姫様って言ってるからじゃない?』
なるほど。
ふむふむと納得していると、頭の上にポンと大きな手が置かれた。
むむ……この撫で具合、かなり手慣れているな。
気持ちよくてつい細めてしまった目を向けると、その手の主がウォーケン少佐だという事に気が付いた。
「あの…少佐、いいんですか?」
「ああ、すまない。同じような年の息子がいるので、ついな」
田上少尉に言われて慌てて手を放すウォーケン少佐。
「……いいよ。なでなで、きもちいい」
私は気まずそうにしているウォーケン少佐達にこう返した。
なんちゃってお姫様なのでフレンドリーはバッチ来いです。
「プリンセス、一つ聞いてもいいかな?」
「……なに?」
「本当に戦術機の対価がアレでいいのか?」
少佐の問いかけに私は迷う事無く頷く。
「……ん。おかしい?」
「いや、おかしいというワケではないのだ。前線で戦った衛士としては感謝している。だが、あまりにも君達にメリットが無いのが疑問でね」
私達にメリットって、そんなの気にする必要あるのかな?
「……みんな、ちきゅうのためにたたかったせんし。かぞくにありがとう、おつかれさま、いうのあたりまえ」
多元宇宙の聖戦でも亡くなった人達の葬送はしっかり行った。
たとえ遺体が残っていなくても、故人の大事なモノをお墓に埋葬して皆で死を悼んだのだ。
それを行うのは一緒に戦場に立った仲間として、最低限の礼儀だと思う。
「地球の為に戦った戦士……。そうか、戦友達をそう呼んでくれるか」
「国ではなく地球ですか。姫様は広い視点をお持ちのようだ」
私の答えを聞いた少佐は何故か目頭を押さえて天井を向き、田上少尉は感心したように何度も頷いている。
私、変な事言ったかな?
その後、私のお願いは日米両国へと伝えられて無事にOKを貰う事が出来た。
とりあえず、セキュリティなんかはひーちゃんにお願いするとして、こっちは式典でドジしないように頑張らないと!