幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

60 / 84
遂にきました、クソコテ様覚醒の時間。

先ずはジャブと行きましょう。


幼女とギリシャの邪神たち

 あしゅら男爵の襲来から二日、Z-BLUEの全部隊は科学城塞研究所へと集結していた。

 

 理由はトリスタンとイゾルデ、あしゅら男爵との最後の決着をつける為だ。

 

 すでに機動部隊は研究所を中心に展開し、その指揮とフォローの為に戦艦たちも轡を並べている。

 

 そんな中、私はドラゴンズハイヴの中でその様子をジッと見ていた。

 

 本音を言えば戦力として出たかったけど、生憎と私はドクターストップが掛かっている身。

 

 あしゅら男爵と会ってなかったら、ここにだって連れて来てもらえなかっただろう。

 

 例の機械獣覚醒もあるし、ここは大人しく人間レーダーをしておかねば。

 

『気合十分なようだな、甲児』

 

『はい。もう迷いはありません』 

 

 竜馬さんの問いかけに甲児お兄さんは静かに言葉を返す。

 

 通信モニター越しにも、その目には強い覚悟の光が宿っているのが分かる。

 

 そしてマジンガーからも今までのように荒ぶる感じはしない。

 

 神様も今回の戦いは甲児お兄さんに任せるつもりのようだ。

 

『でも、さやかさんは寝不足みたいね』 

 

『そんな事ありませんよ!』

 

『冗談よ。ちょっと意地悪したくなっただけ』

 

 張り詰めていく空気の中、スズネ先生が妙な事を言ってさやかさんが慌てて否定する。

 

 冗談と言っているが……ん? んん?

 

 なんだろう、前まで意味が分かったような気がするのに今はさっぱり思い浮かばないぞ。

 

「……たなかのおじちゃん、どういういみ?」

 

「ミユちゃんにはまだ早いですね。気にしなくていいですよ」

 

 隣にいた田中司令に尋ねてみたが、何故か苦笑いではぐらかされてしまった。

 

 むむ……前まで分かっていたという確信がある分、余計に気になって来たぞ。

 

「……スズネせんせ、どういういみ?」

 

『え!?』

 

 という訳で通信機から直接本人に聞いてみたのだが、何故か聞かれたスズネ先生は慌て始めてしまった。

 

『スズネ先生……』

 

『やめてくださいよ、ミユの教育に悪いですから』

 

『これが教壇だったら一発アウトよ、スズネ』

 

『ご…ごめんね、今のは大人向けのジョークなの。ミユちゃんも大きくなったら分かるから!』

 

 ヒビキさん、にぃに、ヨマコ先生と冷たい目を向けられたスズネ先生が何だか落ち込みながらそう返してきた。

 

 むぅ……気になるけど、これ以上の追及はスズネ先生が大変な事になりそうだ。

 

 今回は矛先を収めておこう。

 

 そんな事を考えていると、チビが私の頭にパイルダー・オンしてきた。

 

 今日の服はあしゅら男爵との決戦という事で、神様から貰ったマジンガー風の和装にしている。

 

 なのでチビを頭に乗せるとしっくりくるのだ。    

 

『ありがとうございます、スズネ先生。おかげでリラックスできました』

 

『これで実力を全て出せそうです』

 

 そんな落ち込むスズネ先生に笑顔で言葉を掛ける甲児お兄さんとアルトさん。

 

 皆の緊張が解れたのならスズネ先生も本望だろう。

  

『決戦という事で入れ込み過ぎないか不安でしたけど、大丈夫そうですね』

 

「相手はじり貧のあしゅら男爵です。普段通りにやれば勝てますよ」

 

 ミサトお姉さんの言葉に気の抜けた笑顔で応える田中司令。

 

 けれど、本当にそうだろうか?

 

「…………」

 

『疑問が残るか?』

 

「ああ。ミユ、君はどう思う?」

 

 そんな事を考えていると、モニターに浮かんだWILLという仮面さんと話していたF.S.さんがこっちへ訊ねてきた。

 

「……トリスタンとイゾルデ、べつのもくてきある……とおもう」

 

 温泉で彼が見せた覚悟は、この戦いに勝つとかそんな物じゃないような気がする。

 

 もっと深い、信じるモノに背を向ける罪を背負うような……

 

 いったい彼は何を考えているのだろうか?

 

『やはりこの戦い、裏があると見た方がよいようだな』

 

「しかしそれを解き明かすには時間が足りん。今は迎え撃つしかあるまい」

 

 WILLとF.S.さんがそう結論付けた時、ブリッジに警報が鳴った。

 

「機械獣軍団、来ました」

 

 そして研究所の敷地内に姿を現す機械獣の軍団。

 

 その最後尾にいる一体の頭に乗っているのはあしゅら男爵だ。

 

『来たか、あしゅら!』

 

「ふふふ…兜甲児! そしてZ-BLUEよ! 我が有終の美を飾る為にここに集まった事に礼を言おう!」

 

 普通の人なら落ちたら一溜まりもなさそうな高さで悠々と腕を組むあしゅら男爵。

 

 その姿は自身の最後を語るとは思えない程の覇気を纏っている。

 

「だが、このあしゅら……タダでは死なん。一人でも多く冥府への道連れとしてくれようぞ!!」

 

 あの時の覚悟の正体を探ろうとするものの、その言葉からは読み取ることは出来ない。

 

「やめよ、器の小娘。貴方には為すべき事がある。その力を無駄に使うな」

 

「ひゃっ!?」

 

 明らかに私の方を見て、そう告げるあしゅら男爵。

 

 この距離で感づかれるとは考えなかったので、思わず変な声が出てしまった。

 

『あしゅら! ミユちゃんに何をした!?』

 

「あの娘が悪戯をしようとしていたので釘を刺しただけよ。これでも巫を務めた身だ、他者からの感応波を察知するくらいは出来る」

 

『あしゅら男爵! お前はミユに何をさせようとしているんだ!』 

 

「貴様等の知るところではない! ゆけ、機械獣軍団! 奴等ごと科学要塞研究所を破壊せよ!!」

 

 にぃにの言葉に答えを返す事無く、あしゅら男爵は機械獣へ指示を出す。

 

 彼の言葉に従って、機械獣やタロス像は地響きを上げて皆へと突進を始める。

 

 そんな彼等の前に立ち塞がる巨体があった。

 

「なにやら黴臭い遺物がたくさんであるな! だが、そういったモノはブラックロッジで見飽きたのであーる!!」

 

 それは頭の上でギターを掻き鳴らすウェスト博士を乗せた破壊ロボだ。 

 

『博士、準備万端ロボ! さっさとこっちに戻ってくるロボ!!』

 

 そんな博士はエルザお姉さんの声に従って破壊ロボの中へと引っ込んだ。

 

 というか、戦場なんだから外に出たら危ないって!

 

『エルザよ! これは幼女に納品する前の最終チェックである!! 不備が無いかしっかり見るであるぞ!』

 

『博士の発明は大概不備が出るロボ』

 

『辛辣ぅっ! 誤解してはいかん! 吾輩の発明はマシンの限界に挑んでいるのだ! だからこそ……』

 

『その辺はどうでもいいロボ。そんなワケでポチッとな』

 

 エルザお姉さんが何かのボタンを押すと、破壊ロボのマジックハンドが全て天を向いた。

 

 そして背部ユニットがドラム缶ボディの頂点へと移動すると、何やら珍妙奇天烈な変型を行った末に巨大なドリルになったじゃないか!

 

『うひゃーははははははっ! どうだね、幼女よ! これが特製超絶マッハドリル『女の子だって暴れたい!!』であーる!』

 

『ドリル全開! 突貫ロボ!!』

 

 文字通り一つのドリルとなった破壊ロボは、底から炎を上げてミサイルのように機械獣の軍団へ突っ込んでいく。

 

 皆が唖然とする中、シモンの兄貴だけが『アイツ、分かってるな!!』と目を輝かせている。

 

『くらぇぇぇぇい! プ●キュア必殺! 地獄のネジ回しぃぃぃぃっ!!』

 

『粉砕! 玉砕!! 大喝采ロボーーー!!』 

 

 そして数多のタロス像や背後に控えていた機械獣を粉砕しながら敵陣をゴリゴリと切り裂いていく破壊ロボ。

 

 うん、すっごい威力だ!

 

『アレをハロに積むの? なんかすっごくバカっぽくて嫌なんだけど……』

 

 あー、まんまるにドリルって、ハロが使ったら別のモノになりそうだよね。

 

『ところで博士、これってどうやって止めるロボ?』 

 

『エルザ、何を言っているのであるか。ドリルの生きざまは直進行、後退のネジは外しているのである。という訳で脱出!!』

 

 ウエスト博士が言うや否や、巨大ドリルから射出される脱出ユニット。

 

『い…いかん! 誰かウェスト博士たちを回収しろ!!』 

 

『なにやってんだ アンタは!?』 

 

 にぃにが高機動モードで回収すると、次の瞬間には破壊ロボは敵のど真ん中で馬鹿みたいな威力で自爆してしまった。

 

『あれもう特攻兵器じゃん。何考えてんの、アイツ』

 

 ……ウェスト博士、申し訳ないけど受け取りは拒否させてもらいます。

 

 さて、やり方はどうあれ、敵陣に大きな打撃を与えたのは事実だ。

 

 もちろん、歴戦の勇士である皆はそんな隙を見逃しはしない。

 

 明らかに進撃のスピードが鈍った機械獣軍団に地球最強の部隊が襲い掛かる。

 

『ワッ太! さっきの会話、あしゅら男爵はまだミユちゃんを狙っているのかもしれない! 気を付けて!!』 

 

『分かってるって! ミユは機械獣をパワーアップさせちゃうからな!』 

 

 鉄人が殴り飛ばしたタロス像をジャベリンで串刺しにするトライダー。

 

『ゴオちん、どうするの?』

 

『杏奈、お前は戦艦の護衛をしながら皆の援護射撃! 前線は俺達が支える!!』

 

 言葉と共に飛び出したゴオダンナーの後ろで、手のひらからエネルギー弾を飛ばすゴーオクサー。

 

『МS各機はタロス像を狙え! 敵に陣を立て直させるな!!』

 

『なにあれ、頭おかしい! 私のアルパにも付けてもらおうかな!!』

 

『やめなさい!!』

 

『……あの娘は出撃していないのだな』

 

 アムロ大尉の号令でМS、ヴァルキリー、AT、ナイトメアがタロス像に向けて一斉に砲撃を開始する。

 

 というか、気が付けばクェスお姉さんや黄色と緑の指揮官な人も合流してる。

 

 あと、緑の四枚羽な機体がこっちを気にしているけど、どっかで知り合ったっけ? 

 

『あの博士が切り開いた道を利用せん手は無い。タケル君、マジンガーの道を拓くぞ!』

 

『はい、リシュウ博士!』

 

 そしてウェスト博士がドリルで削り取った敵陣の裂け目に突っ込むグルンガストとゴッドマーズ。

 

『シモン、俺等も行くぞ! ヨーコは援護射撃頼むぜ!!』

 

『ああ! ドリルの事なら負けてられないからな!!』

 

『二人共気を付けなさいよ!』

 

 キタンのお兄さんの金ぴかロボと突っ込んでいくグレンラガン。

 

 彼等の行く手を阻もうとするタロス像は、ヨマコ先生が乗るロボが頭に付けた大砲で吹き飛ばしていく。

 

 ドラゴンズハイヴの横に付いているって事は、私を気にしてくれてるんだよね。

 

 ありがたや、ありがたや。

 

 こうなっては如何に機械獣軍団と言えど、皆を止めるのは至難の業だ。

 

 鋼の剛腕が唸り、凶悪な得物が空を裂く度に彼等は容易く打ち砕かれていく。

 

『あしゅらぁぁぁぁぁっ!!』

 

「来たか、兜甲児! 迎撃せよ、ダブラスМ2! ガラダK7!!」

 

 全速力で突っ込んでくるマジンガーの前に立ち塞がる頭に鎌を生やしたドクロ顔の機械獣と緑色をした二首の機械獣。

 

 けれど、頭の鎌を取って斬りかかろうとするドクロ顔に真ゲッター1の大斧が襲い掛かる。

 

『甲児! こっちは任せろ!!』

 

『はい!』

 

 そしてマジンガーもアイアンカッターで緑の機械獣の脇腹を切り裂いた。

 

『ダンクーガが最後のタロス像を撃破!』

 

『機械獣軍団、消耗率90%を突破しました!』

 

「戦況はわが軍が優勢、このまま押し込めますかねぇ」 

  

 オペレーターの人達の報告に田中司令が満足そうにうなずいている。

 

 たしかに勝敗の天秤は私達に傾いているように見えるけど、私はそれを喜ぶことが出来なかった。

 

『ミーちゃん?』

 

「……ちょっとさむい。ぎゅってさせて」

 

 戦場の中に渦巻く凶悪な思念、以前にも感じた酷く血生臭いそれが酷く背筋を冷やすのだ。

 

 指令室の大型モニターには残された2体とマジンガーたちが戦っている姿が大映しになっている。

 

 真ゲッターとマジンガーの猛攻に傷ついていく機械獣。

 

 そんな彼等を見ていると脳裏に響く声があった。

 

 それは勇猛な雄叫び。

 

 宇宙の中で眼前に群がる使徒を前にしても、一歩たりとも退く事の無い機械の神が挙げる裂帛の気勢。

 

 神に仕える数多の戦士の中でも特に強く勇ましい彼は、『勇者』の名を冠する戦士だった。

 

「……あ!」

 

 第三新東京市の時のように何かが繋がった感覚がしたと思った時には遅かった。

 

 無機質な洞だった機械獣の瞳に強烈な意志の光が宿っていたのだ。

 

『ワレラ…われ…は…まけぬ』

 

『機械獣がしゃべった…だと!?』

 

『コイツはどういうこった!』

 

『気を付けろ隼人、弁慶! こうなった奴等は手強いぞ!!』

 

 真ゲッターの斧を真正面から押し返すドクロ顔。

 

『このミは…ユウシャ! グンをヒキい、イチバンヤリをカカげるモノ! ゆえにハイボクはユルされぬ!!』

 

『クッ! ミユちゃんと接触していないのに、なんで!?』

 

 そして緑の方はマジンガーの放った光子力ビームを二つの頭に付いた目からビームを発射して受け止めた。

 

「まさかガラダブラの魂が目覚めたというのか!? ぬかった! あの娘と生死渦巻く戦場の思念があれば当然の事だというのに……!」

 

 この展開はあしゅらにも予想外だったみたいだ。

 

 そして二体の機械獣は猛攻を開始する。

 

『ぬぅん!』

 

 鍔迫り合いから左足を大きく引いて、身体を半身に切り返すドクロ顔。

 

『うおっ!?』

 

 全力で刃を押し込んでいた所にその対象が消えた事で、真ゲッターは空中でつんのめるように体勢を崩す。

 

『もらったぞ!』

 

 そこを狙うのは緑の顔の一つに付いた双眸から放たれたビームだ。

 

『ぐおおっ!?』

 

 胴体に直撃を受けて吹っ飛ばされる真ゲッター1。

 

『竜馬さん! このおぉぉっ!!』    

 

 竜馬さんが攻撃を受けた事に激昂して殴りかかるマジンガー。

 

 しかしその拳も緑色は真正面から受け止める。

 

『ゼ…ウス…』

 

『なに!?』

 

『ゼウス! ゼウス! ウラギりモノめぇ!!』

 

『ぐわぁっ!?』

 

 そのまま背負い投げでマジンガーを地面に投げつけると、その腹を思い切り踏みつけてしまった。

 

 そしてドクロ顔がマジンガーへ鎌を投げつけようとしたところで、彼に斬りかかる巨人がいた。

 

 それはリシュウのお爺ちゃんが操縦するグルンガストだ。

 

『ぬぅ、我が太刀を止めるか!』

 

『なんたるゴウケン! だが、アイテにとってフソクなし!!』

 

 両手の鎌を交差する形で斬艦刀を受け止めたドクロ顔に、リシュウのお爺ちゃんは後ろに跳んで間合いを取る。

 

 睨み合う二体の巨人、片方は両手の鎌を腰溜めに下げて前傾姿勢。

 

 もう一方のリシュウのお爺ちゃんは示現流の基本である蜻蛉の型を取る。

 

『薩摩示現流、リシュウ・トウゴウ』

 

『ミケーネのユウシャ、ガ…ガガ…ガラダ……』

 

 決闘のように…ううん、あれは決闘なんだろう。

 

 互いに名乗りを上げるリシュウのお爺ちゃんとドクロ顔改めガラダ。

 

 けど、ガラダの方がぎこちなかったのはどういう事なのだろう?

 

 そう言えば、イメージの彼は緑と一体化していた。

 

 もしかしたら合体していないからなのだろうか?

 

『『参る!』』

 

 そして炎を上げて相手へと襲い掛かる両者。

 

 走りながら両手の鎌を左右に大きく開くガラダの狙いはグルンガストの首だ。

 

 本当なら左の鎌で攻撃を受けて右の鎌で相手を斬り付けるのだろうけど、斬艦刀は片手で受け止められるモノじゃない。

 

 そう考えて攻撃に全振りしたのだろう。

 

 けれど彼の思惑は永遠に叶う事は無かった。

 

『チェストォォォォォッ!!』

 

 何故なら鎌の射程距離に入る前に、電光石火の速度で巨刃が降って来たからだ。

 

『な…なに!?』

 

 二の太刀要らずといわれる示現流。

 

 それを極めたお爺ちゃんの一撃はガラダの予想を遥かに超える速度だったのだ。

 

 咄嗟に頭上へ鎌を交差して掲げたモノの、斬艦刀はその鎌ごとガラダの頭を叩き割った。

 

『ミゴト…だ……』

 

 そう言い残して爆散するガラダ。

 

『あと半歩、踏み込みが浅ければ飛んでおったのは儂の首であったわ。この立ち合い、決して忘れぬぞ』 

 

 そう息をつくリシュウのお爺ちゃん。 

 

 あの一瞬の戦いはそんな接戦だったのか……。

 

『まさにゴウのモノよ! ワがセツジョクはオノがテでソソがせてもらうぞ!』 

 

 ガラダがやられた事にリシュウのお爺ちゃんの元へ向かおうとする緑色。

 

 けど、その足を黒鉄の指が握りしめる。

 

『俺に背中向けてどうしようってんだ?』

 

 不穏な空気を纏いながら立ち上がったマジンガーは、緑色の足を引っ張って引き倒すとジャイアントスイングを掛ける。

 

『ぬおおおおおおっ!?』

 

『獣野郎が! 調子こいていられるのも此処までだぜ!!』

 

 そして緑大きく投げ捨てると、物々しい音を立ててマジンガーの全武装の発射口が開く。

 

『大盤振る舞いだ! 全弾持って行けぇ!!』

 

『ぐわあああああっ!? おのれゼウスめぇ!!』

 

 光子力ビームをはじめ、各種ミサイルやサザンクロスナイフにブレストファイヤーをくらった緑色は圧倒的な破壊の嵐の中で爆散した。

 

 もうこれで敵はいないハズなのに、私は酷く嫌な予感がした。

 

『ミーちゃん、大丈夫? 顔色が悪いよ』

 

 ここにいてはいけない。

 

 そんな確信があったのだ。

 

「……たなかのおじちゃん、みんなをにがして」

 

「なんですって?」

 

「……すごくいやなこと、おこる」

 

 私は意を決して田中司令に声を掛ける。

 

 けれど、勝利を目前にした彼は戸惑うばかりで動こうとしなかった。

 

 そして、それが決定的なロスになってしまう。

 

『どうだ! あしゅら!!』

 

「やはりこうなるか」

 

 甲児お兄さんの勝ち誇った声に、地上に降りたあしゅら男爵は小さく笑みを浮かべる。

 

「甲児! あしゅらを止めろ!」

 

 それを怪訝そうに見ていた皆に思わぬ声が響き渡った。

 

 モニターに映っていたのはくろがね屋の女将さん、甲児お兄さんのお母さんだった。

 

『か…母さん! どうしてこんな場所に!?』

 

 突然戦場へ現れた女将さんに驚きを隠せない甲児お兄さん。

 

 その様子を見ながら、あしゅら男爵はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。

 

「最後まで付き合ってくれた代価だ。一瞬だけ、時の牢獄を破ってやろう」

 

「……え!」 

 

「なんだと!」

 

 その宣言に驚きに包まれるブリッジ。

 

 解除方法が分からないエタニティフラットを破るという宣言を聞いたのだから当然だ。

 

「礼を言うぞ、兜甲児。お前達のお陰でミケーネの神官、トリスタンとイゾルデはその使命を果たす事が出来る!」

 

「神官の使命……まさか!」

 

 ざわつく味方の中、ヒビキさんが焦りが滲んだ声を上げる。

 

「察しのいい者もいるようだが、まあいい。最後に教えてやろう。ドクター・ヘルが仮想敵としていたのは貴様等でも兜十蔵でもない!」

 

『な…何を言っているんだ、あしゅら!?』

 

「奴はミケーネの遺跡を調べる中である事実に気が付いた! 神々は滅んだ訳ではなく、いつの日か蘇ると! だからこそ、神子である私達の記憶と認識を封じて光子力を欲したのだ! ミケーネの神々から人類を守る為、彼等に対抗できる唯一の力を!」

 

 それってつまり、ドクター・ヘルは人類の為に戦おうとしていたってこと?

 

「だが、お前達はそのドクター・ヘルを倒した。お陰で私の記憶と認識を捻じ曲げていた封印は解かれ、こうして儀式を執り行う事が出来る」

 

「誰か! 奴を! あしゅらを止めてくれぇ!!」

 

 女将さんの悲鳴のような声の中、私達はあしゅら男爵の成した事に息を呑む事になる。

 

「今こそ我らの命を贄と捧げよう! さあ甦れ、ミケーネの神々よ!!」

 

 なんと彼は自分でその身を真っ二つに引き裂いたのだ。

 

 まるであしゅら男爵からトリスタンとイゾルデという二人の人間に戻るかのように。

 

「ひっ!?」

 

 あまりに凄惨な光景に、私は思わず目を閉じようとする。

 

『目を背けてはならぬ! 全てを見極めよと言ったであろう!!』

 

 その瞬間、頭に響いたあしゅら男爵の声に私は閉じる寸前だった目蓋を止める事が出来た。

 

『それでよい。もう貴方は盲目であってはならぬ。奴等からこの宇宙を救うためには……』

 

 その言葉を最後にあしゅら男爵…ううん、トリスタンとイゾルデの思念は薄れて消えてしまった。

 

 そして次に私達を襲ったのは空間全てが激しく蠢くような感覚だ。

 

『この感覚は!?』

 

『時空振動が起きるというのか!』

 

 隼人さんと弁慶さんが慄く中、まばゆい光がブリッジを覆う。

 

 そして光が収まると、あしゅら男爵がいた場所に現れたのは異形の化け物達だった。

 

「…終わり…だ……」

 

 それを見て女将さんは絶望の声を上げる。

 

『なんだ、アイツら! 機械獣なのか?』

 

『あれがあしゅらの言っていたモノなの?』

 

 戸惑うボスさんとさやかお姉さん。

 

 私は奴等から異様な気配を感じていた。

 

 そう、これは宇宙魔王によく似たものだ。

 

「……たなかのおじちゃん、はやくにげる!」

 

「ミユちゃん」

 

 私が声を上げるも田中司令は呆然としたままだ。

 

 そんな事をしている間に、この空間へもう一つ嫌な気配が現れる。

 

「ついに目覚めたか、オリュンポスの神々よ」

 

『宇宙魔王!』

 

 それはブラックホールの化身、宇宙魔王だった。

 

「ほう、我を知るモノがいるとはな」

 

『しゃべった!』

 

『ミユの力なしで喋ったって事は、やっぱり機械獣じゃないんだ!!』

 

「下等な人間風情が我らオリュンポスの神々を評するか」

 

 敵の群れの奥にいるボスらしき巨人が苛立たしげに吐き捨てると、それだけで大地が震えあがった。

 

 凄い力だ、やっぱり並大抵の敵じゃない!

 

「ハーデス様がお怒りになっておられる!」

 

「三大神たるハーデス様のお気持ちを鎮めるには、あの虫けら共を駆逐する他ない!!」

 

 あまりの力に息を呑む私達に敵意を向けてくる異形達。

 

 その圧すら感じる力の中、飛び出したのマジンガーだった。

 

『虫けらだと!? 人間が虫けらだと!!』

 

「ぬぅ!? 奴は……!」

 

 ジェットスクランダーで空を切りながら敵のボス、ハーデスへと突撃するマジンガー。

 

『神だかなんだか知らないが、その虫けらの力を見るがいい!!』

 

 そして勢いのままに拳を振るおうとしたマジンガー。

 

「温いわぁ!!」

 

 けれど、それよりも速く降り注いだハーデスの剣によって袈裟切りに胴の半ばまでを切り裂かれてしまった。

 

「かみさま!」

 

 地面に叩き付けられたマジンガーの姿に思わず悲鳴を上げてしまう。

 

『ふん。あ奴の力を受け継いでいるようだが、この程度では模造品にもならんわ!!』

 

 そう言ってマジンガーを踏み躙るハーデス。

 

 一撃で甲児お兄さんが倒された事に、部隊のみんなもショックを隠せないみたいだ。

 

 というか、こんな事をしている場合じゃない!

 

 早く神様と甲児お兄さんを助けに行かないと!!

 

 格納庫へ行こうと踵を返した瞬間、頭に乗っていたチビから思念が伝わって来た。

 

 え? 神様が呼んでる?

 

『ミーちゃん!』 

 

 そしてそれを受け取った瞬間、私の身体はドラゴンズハイヴのブリッジから消えた。

 

 一瞬のブラックアウトの後で目に映ったのは、なんとパイルダーの保護シートの光景だった。

 

 椅子の上に乗って前を覗くと、そこでは半ば割れてしまったパイルダーのキャノピーと気を失った甲児お兄さんの姿があった。

 

 どうする?

 

 私がマジンガーを操縦するか?

 

 幸いと言うべきか、チビはまだ私の頭の上にいる。

 

 この子がいれば思念操作も可能なはずだ。

 

 グルグルと考えていると視界に大きく影が差した。

 

 見上げるとそこには爬虫類に人の顔が付いた神を名乗る異形の巨人が、こちらを見下ろしているじゃないか!

「所詮は裏切り者の残滓、ここで引導を渡してくれるわ!」

 

 そして手にした大鎌を振り上げる神。

 

 思わず目を瞑ってしまった私だが、死の衝撃はこなかった。

 

 何故ならその神は天から降り注いだ雷撃によって黒焦げになってしまったからだ。

 

 着地してきた雷撃を放ったモノを見て、私は思わず息を呑んでしまった。

 

 何故ならそれはマジンガーによく似たロボットだったからだ。

 

『何をしておる、兜甲児! 立ち上がれ!!』

 

「……だれ?」

 

 気絶したままの甲児お兄さんに代わって問いを投げると、お爺さんらしき声が答えを返してきた。

 

『何故子供が乗っておるのかは分からんがまあいい! 儂こそは救世の科学者、ドクター・ヘルだ!!』

 

 あれ? ドクター・ヘルって皆に倒されたって言ってなかったっけ?

 

『そしてこれこそが兜剣蔵から盗み出した設計図で造り上げたZを超えるマジンガー!』

 

 え!? どうしたの、神様!? 

 

『偉大な勇者、グレートマジンガーよ!!』

 

 どうしよう、神様がめっちゃ怒ってるよ!!

 

 などと慌てる私の思いを置き去りに、マジンガーの中から莫大な光子力が噴き出した。

 

 それは傷ついた体を瞬く間に癒し、パイルダーのキャノピーも修繕する。

 

 そして甲児お兄さんが操縦桿を握っていないのに立ち上がった魔神は、天に向けて聞く者の肝を凍り付かせる咆哮をあげる。

 

「おのれ、ゼウスの残りカスが! 死にぞこなったか」

 

 それを聞いて襲い掛かってくる神の一人。

 

 だが彼は振り抜かれた横殴りの剛腕によって文字通り粉々に打ち砕かれてしまう。

 

「な…なに!?」

 

「機械神たる我らの身体を一撃で!」

 

 その一撃の威力に驚くミケーネの神々。 

 

 それを前にマジンガーの身体は変わっていく。

 

 より逞しく、より頑強に、より大きく、より強大に。

 

 天を貫くような光子力の放出の中、七つの力を解放した神様が姿を現す。

 

「ぬぅ……貴様、何者だ!?」

 

 ハーデスの問いに私の口がひとりでに言葉を紡ぐ。

 

「……さいしゅうにして、げんしょのまじん」

 

 マジンガーZERO、降臨。         




クソコテ様の怒りゲージ

ハーデスにやられた時

■■■■■■■■□□

 怒り  激怒  魔神化

偉大な勇者登場

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 怒り  激怒  魔神化     kill them all


(地獄へ)スクランブル・ダーッシュ!!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。