幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 筆が乗ったお陰か、早めに仕上がりました。

 これも執筆中のBGMを厳選したおかげでしょう。

―――クソコテ様大暴れの時のBGM選び―――

『守護神-The guardian』しっくりこない。

『感じてKnight』これも違う。

『マジンガーZ / INFINITYバージョン』明るすぎ。イメージが合わない

『FIRE WARS』ちょっと近づいてきたかな? けどもっと暴力的に

『マジンカイザー・魔神降臨』 やっぱり違う、ヒーローっぽすぎる

『The Gate of the Hell』……これだ!!

 ちなみにThe Gate of the Hellは『マジンカイザー・死闘暗黒代将軍』序盤で世界中がミケーネに蹂躙されている時のテーマである。

 つくづく正義のミカタが性に合わないのね、クソコテ様


幼女と怒りのかみさま

 眼前に広がる仮想宇宙の中、私は専用に改装されたコクピットのペダルを踏み込む。

 

 本当なら姉さまの温もりが残る場所に手を加えたくなかったけど、スーパーコーディネーターを叩き台に戦闘特化へと調整された私はあの人ほどの感応能力は持たない。

 

 それに設計コンセプトの所為でこの身体は12才相当まで成長させられている。

 

 姉さまが使っていたままでは、コクピットに座る事もできなかった。

 

「遅いですわよ」

 

 モニターの隅でこちらへ銃口を向けるガンダムМKⅡを、右手のビームキャノンで射抜く。

 

 するとZガンダム、百式、メガライダー、そしてこの世界には存在しないZZガンダムが此方へ牙を剥いてくる。

 

 宇宙の闇を焼くビームの集中砲火を背面のリボンストライカーを調整して切り抜け、私はある時代でガンダムチームと呼ばれた一団へ切り込んでいく。

 

 展開したビームソードで、まずは機動力を活かして間合いを詰めてきたZをすれ違い様に胴を両断。

 

 その勢いのまま、いまだにメガバズーカランチャーから足を外していない百式を得物ごとビームキャノンで葬る。

 

 メガライダーの粒子砲を援護に突っ込んでくるZZガンダム。

 

 だが、あんな恐竜МS相手に正面から殴り合うつもりはない。

 

 後退し距離を取ったところでリボンストライカーをモーフィングでランドセルへと変更。

 

 そしてミサイルランチャーでチャフ付きのスモークを焚く。

 

 それで奴等の足が停まった瞬間、放つのは最大武装である口部超大型粒子砲だ。

 

 ハイメガキャノンの五倍、戦略兵器であるコロニーレーザーと同等の出力を誇るこのビームの前では、如何にZZでも為す術はない。

 

 モニターを焼く閃光が終わると、残ったのは全てが消え去った漆黒の空。

 

 それを映すモニターに『МISSION CLEAR!』の文字が浮かぶと、コクピット内の電気が落ちてハッチが開く。

 

「見事だ。もはや第一次ネオジオン抗争を制したガンダムチームも敵ではないな」

 

 外に出ると白い軍服に独特の髪形をした胡散臭い男が拍手を送って来た。

 

 この男はパプテマス・シロッコ、そのコピー体だ。

 

「相手はモビルドール。たとえパイロットの行動データを組み込んでいたとしても、本物には程遠いですわ」

 

 アレに乗っていたのがジュドー・アーシタを始めとするシャングリラの少年達なら、ここまで簡単に倒す事は出来なかっただろう。

 

「それよりも何の御用かしら? 貴方達が私に声を掛けるなんて」

 

「例の部隊が新たな負のシンカ存在と接触した。君も戦場を見た方がいい」

 

 負のシンカ存在……この時期ならあしゅら男爵が呼び出したミケーネの神々だろう。

 

 その答えが頭に浮かんだ瞬間、私の心が大きくざわついた。

 

 シナリオならマジンガーZの敗北はあるものの、Z-BLUEは犠牲者を出す事無く撤退する事が出来る筈だ。

 

 けれど、これは現実。

 

 定められた物語のように上手くいく保証はない。

 

 Z-BLUEにもしものことがあれば身を寄せている姉さまも……

 

「どうかしたかね?」

 

 思考の海に沈んでいた私は、シロッコの言葉に慌てて気を引き締める。

 

 この男は優れたニュータイプだ。

 

 迂闊に感情を露にすれば、心の内を読まれかねない。

 

「なんでもありませんわ。モニタールームへ参りましょう」

 

 揺れる心を無理やりに押し殺して、私はトレーニングルームの扉を潜った。

 

 今のうちに少し私の事を語っておこう。

 

 私はミウ。

 

 ジェネレーション・システムが推し進めるG世界保全プロジェクトの一つ、『マザーハーロット計画』の完成体。

 

 そして、この世界の行く末を知る転生者だ。

 

 

 

 マザーハーロット02・ミウは第三次スーパーロボット大戦Zにおいて、DLCで追加される主人公ミユ・アスカの妹に当たる。

 

 姉さまことミユ・アスカは出生や身に降りかかる激動の運命から、セツコ・オハラやケイジ・タチバナと並んで不幸キャラとしてファンの間で名を馳せている。

 

 4歳(実質は1歳)の幼女ということもあって、ファンから買った同情は二人よりも多いだろう。

 

 そんなミユを大いに曇らせた存在が彼女のクローンにして妹であるミウだ。

 

 原作でのミウは登場するや否や姉に対して激しい憎悪をむき出しに襲い掛かってくるバーサーカー系のキャラクターとして描かれている。

 

 必ず救い出してみせるとずっと気にかけ続けた妹が、自身の愛機を奪って殺しに来るのだ。

 

 当時のミユに掛かる精神的ダメージは筆舌に尽くし難いものだろう。

 

 ミウが現れる度に目に見えて元気が無くなっていくミユの様子は、プレイヤーにとっても胸に重くのしかかるモノだった。

 

 そしてミウが姉を憎んでいた理由もキツイ。

 

 彼女は自分に名を与えて赤ん坊の時に抱いてくれた母親をミユに奪われたと周りの人間に教えられており、母を奪い返す為にあそこまで姉を憎んでいた。

 

 しかし彼女に温もりと名を与えたのは、データ取りの為に暗示と量子転送でラボへ呼ばれていたミユ自身だったのだ。

 

 そのすれ違いはまさに悲劇だった。

 

 真実も知らずに求め続けたモノを憎み続けた哀れな少女は、一度はビーストへミユを取り込んだものの、その中でシンカに覚醒したミユにコアであるベアッガイを奪い返されて討たれる事になる。

 

 今わの際に姉の感応力に触れたミウは、憎んでいた彼女こそが自分の求め続けた人だと知る。

 

 最後に彼女がこぼした「おねえ…ちゃん」という言葉、それは妹を失って悲しみに沈むミユへの呪いとなった。

 

 それからの彼女は身内や仲間を失う事を極端に恐れるようになり、そういった危機には周りの言葉も顧みる事無く、我が身を削って悲劇を防いでいく。

 

 そして最後には度重なる無理で風前の灯となった命を燃やし尽くし、超神Zと化したアドヴェントと共に因果地平の彼方へと消えるのだ。

 

 この結末故にファンのミウに対する評価は【はた迷惑なメンヘラ】と【周りに踊らされた哀れな少女】の二つに大きく割れている。

 

 私としては実質的に一年も生きていないのに、あそこまで過酷な運命を背負った彼女を被害者だと思っている。

 

 さて、そんなヘヴィな定めを背負ったキャラに私は生まれ変わってしまったわけだ。

 

 少し前までヲタクライフを満喫していた女子高生に課せられるにしてはハードルが高すぎやしないだろうか?

 

 そして私は定められたレールを走るつもりはない。 

 

 キャラクターとしてのミユが好きだったこともあるが、何より私は彼女の温もりに救われた。

 

 死の痛みと恐怖に襲われたかと思えば、赤ん坊になって訳の分からない場所へ放り出される。

 

 そんな中でミユの、姉さまの温もりと心臓の音はどれだけ救いになった事か。

 

 仮にあのまま一人で放っておかれたら、私はきっと狂ってしまっただろう。

 

 触れ合う機会は数える程しかなかったけど、彼女は紛れもなく私にとって命の恩人なのだ。

 

 なので、姉さまにはゲームのような運命は辿らせはしない。

 

 Gシステムに生み出されたド腐れ野郎共の裏をかいて、絶対に彼女と幸せを掴んでやる。

 

 そしてあの胸の感触をもう一度堪能するのだ!

 

 実ったばかりの幼女の胸を堪能できるとか、ご褒美だろ!!

 

 ……失礼、取り乱しましたわ。

 

 その為なら脱走の時に二、三匹タマを取る事だってかまいやしない。

 

 エースだのニュータイプだの言ったところで所詮はガンダムの登場人物だ。

 

 МSに乗らなければ殺る方法なんざ幾らでもある。

 

 正直に言えば土下座で私達の運命を弄んだ事の詫びを入れさせたいが、あのプライドの塊共はキン●マを潰しても頭を下げないだろう。

 

 ……またしても失敬。

 

 頭に叩き込まれた基礎人格の所為で、興奮すると思考と口が悪くなってしまうのは悪い癖だ。

 

 姉さまに会う時の事も考えて、普段のお嬢様的な態度を崩さないようにしなければ。

 

 そんな事をつらつらと考えていると、私達はモニタールームへとたどり着いた。

 

 ここではビーストがZ-BLUEにいた際に仕込んだ極小のスパイカメラを見る事が出来る。

 

 部屋の前面にある壁いっぱいに張り付けられたモニターには、ゲームと同じ姿のミケーネの神々が映っていた。

 

 モニター越しだというのに心臓を鷲掴みにされるような圧迫感、やはりコイツ等は並の人間が相手にできる存在じゃない。

 

「太古より生きる神々か。小生も一度手合わせ願いたいものだな」

 

 もじゃもじゃ頭の御大将が抜かすたわ言を無視して私はモニターに集中する。

 

 ゲームならこの時点の姉さまはシン・アスカのコ・パイをしていたはずだ。

 

 果たして、彼等は無事にミケーネの猛攻を切り抜けられるだろうか?

 

 しかしそんな心配は次に映ったモノによって粉々に打ち砕かれてしまった。

 

「なんだあれは? データにない特機だな」

 

「マジンガーZとやらに似ているようだが随分と禍々しいな。……む、どうした02」

 

 思わずその場にへたり込んでしまった私には、ギンガナムの声も届かない。

 

「あ…あぁ……マジンガーZERO」

 

 究極のマジンガーにして最凶最悪の魔神、コイツがどうして……

 

 こちらへ見せた禍々しい笑みを最後に私の意識は闇へ落ちていった。

 

 

 

 

 どうもというか、呑気に挨拶をしている場合じゃない事態に置かれた幼女です!

 

 大変だ! 神様が本気を出してしまった!

 

 神様の怒りっぷりは今までにないもので、正直言って私でも宥められる気がしないんですけど!

 

【巫女よ、少々手荒く行く。座席に戻ってシートベルトをするのだ】

 

 今までは概念的なメッセージだったテレパシーが思いっきり伝わるようになってるし!

 

 ともかく今までの事を考えると、神様が手荒く行くとなれば周りの被害がトンデモない事になる!

 

「……チビ、みんなへにげてって、いって」

 

 頭に乗ったチビを通して、私はZ-BLUEの皆に逃げるように伝える。

 

 お願いだから巻き込まれない位置まで下がって!

 

 メッセージだけだと不安だから、こっちからもニュータイプパワーを全開にして警告だ!!

 

 なんてワタワタしていると、神様が動き出してしまった。

 

『なんだ、その変形は!? マジンガーZにそのような機構───ぐわぁっ!?』

 

 まずは目の前に立っていたグレートマジンガーを裏拳で吹っ飛ばしてしまった。

 

【紛い物に下郎、貴様等の相手は後でゆっくりとしてやる。……楽に死ねると思うなよ】

 

 縦回転しながら吹っ飛んでいくグレートにそう吐き捨てると、ズンズンと前に進んでいく神様。

 

 というか、あの人ってミケーネと戦いに来たんだよね!

 

 敵の敵は味方じゃないのかな!?

 

【敵の敵は敵だ】

 

 ……左様でございますか。

 

 シンプル過ぎる答えに私が言葉を失う中、神様の前に立ち塞がるモノがいた。

 

 それは奴等のボスであるハーデスだ。

 

「フハハハハハ! なんだ、その禍々しい姿は? 魔へと堕ちたか、ゼウスよ!!」

 

 お化け丸出しの大口を開けて神様を嘲笑うハーデス。

 

 そんな彼へと神様は無造作に一歩を踏み出す。

 

 あ、ヤバい。

 

 またご機嫌が斜めになってる。

 

「ぐふふ……裏切者とはいえ、貴様もオリュンポス三大神の一人と言われた男。その落ちぶれた姿をさらし続けるのも哀れ」

 

 言葉と共にマジンガーを切り裂いた剣を抜くハーデス。

 

 哀れとか言ってるけど、向こうから吹き付けてくる感情は嘲りしかない。

 

「このワシが冥府へと送ってくれるわぁ!!」

 

 そしてハーデスは大上段に構えた剣を思い切り振り下ろしてきた。

 

 剣はパイルダーに直撃コース、当たれば死ぬ!

 

 だけど、私はまったく身の危険を感じる事は無かった。

 

 だって、神様が守ってくれるって言ってるのに怖がるのは失礼だもん。

 

 その証拠にエースパイロットにも影すら踏ませない切込みは、神様が無造作に振った右腕によって粉々に打ち砕かれてしまう。  

 

「ぬぅっ!?」 

 

 得物を破壊された事に驚くハーデス。

 

 けれど、そのわずかな隙は神様の前だと命取りだった。

 

 さっきの打ち込みよりもはるかに速く突き出された右腕は、ハーデスの首を鷲掴みにしてその巨体を釣りあげる。

 

「ぐおおおっ!? は…離せぇ!!」

 

 バキバキと装甲を破って食い込んでいく五指に藻掻くハーデス。

 

 そんな彼の顔を見据えて神様はこう言った。

 

【ゼウスだと? 我をそんな下等生物と間違うとは……この愚か者め!】

 

 そして放たれる光の雨のような光子力ビーム。

 

「ぐぉわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 それはハーデスに突き刺さると次々とその身体を吹き飛ばし。外れた余波は大地を抉り天を衝く光の柱を生み出す。

 

 というか、こんなに自然を壊して大丈夫なのかな?

 

【案ずるな、巫女よ。この星が滅びぬよう手加減はしてある】

 

 ……さいですか。

 

 正直言ってどうみても加減されているように見えない一撃によって、頭と右肩から右胸の半分を残して全てを吹き飛ばされたハーデス。

 

 半ば残骸となった彼を神様は上空高く放り投げると、自身も大地を抉りながら飛び立った。

 

 そしてトンデモない勢いで飛んでいくハーデスを追い抜くと、急停止した神様は両の拳を握り締めて今度は急降下を開始する。

 

「うにゅううぅぅぅ……」

 

 あまりにも急な上下運動に思わず変な声が漏れてしまう。

 

 重力制御はしてくれているんだろうけど、幼女の身にこれはキツい……。

 

 心の中でそんな泣き言を漏らしていると、次の瞬間には掛かっていたGが綺麗さっぱり消えてしまったじゃないか。

 

「……かみさま、ありがと」

 

【構わぬ】

 

 足手まといになっている幼女を気遣ってくれるとは……ここは一発お礼代わりに神様のお手伝いをせねば!

 

 深く息を吐いて意識を集中させる。

 

 思い出すのは例の光子力ロケットパンチを撃った時と同じ感覚。

 

 今回は皆の祈りは無いけど、私ひとりだって小指の先くらいのパワーになるはずだ! 

 

【ゆくぞ、巫女よ!】

 

「……ん!」

 

 そしてハーデスへ向かって神様は固く握りしめた両の拳を振り下ろす!

 

 機械道魔神空手・双拳地獄送り!!

 

「ぐわあああああああああっ!?」

 

 その一撃はハーデスの残された身体を文字通り粉砕した。

 

【ハーデスを名乗るならば、地獄は貴様の故郷であろう。あるべき場所へ送ってやったのだ、感謝するがいい】

 

 そう手向けの言葉を掛ける神様。

 

 一方、ボスを打ち砕かれたミケーネの神達は一様に怯えた顔をしていた。

 

「ば…ばかな! ハーデス様が……」

 

「何者なのだ、あの魔神は!?」

 

「あの凶悪さ、断じてミケーネの神ではないぞ!」

 

 好き勝手言っている彼等だけど、神様がギロリと睨めば我先にと言った感じで逃げ出そうとする。

 

【塵芥共め、逃がすと思うか?】

 

 そんな彼等へ神様は神様は大きく息を吸い込むと、猛烈な嵐を吐き出した。

 

 周囲のモノを次々に削りながら吹き荒れる風は、逃げようとしていたミケーネの神々を拘束して一纏めにしてしまう。

 

【さあ、偽神共よ。零に還る時だ】

 

 そんな彼等に右拳を握り締めた神様が突貫する。

 

 機械道魔神空手・轟殺! 烈風正拳突き!!

 

 酸によって体が弱ったところに突き刺さる神様の鉄拳。

 

「「「「「「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!?」」」」」」

 

 それは彼等を完膚なきまで打ち砕き、吹き荒れる風がその身を文字通り零へと押し流してしまった。

 

 こうしてミケーネの神々は倒れたんだけど……神様の怒りはまだ収まっていない。

 

 彼が向けた視線の先にあったのは、紅の翼を広げて宙に浮くグレートマジンガーだ。

 

 とはいえ、ミケーネはともかく彼を倒すのはどうかと思う。

 

「……かみさま、たおしていいの?」

 

 疑問に思ったので、私は神様に問いを投げてみる。

 

 こうして聞いてみる事で神様が少しでも冷静になってくれればと思うんだけど、さてどうかな?

 

【紛い物・偽物は悪だから殴って良し+下郎・悪なので蹴って良し=逝って良し】

 

 なんなの、その公式!? 

 

 と…とりあえず、アレだ!

 

 ドクター・ヘルが悪じゃないってわかったら、話し合いの余地があるかもだよ!!

 

「……ドクター・ヘル」

 

『その声はマジンガーに乗っておる子供か! 何の用だ?』

 

「……ミケーネ、たおした。ヘル、どうする? せかいせいふく、する?」

 

 さあ、どうだ?

 

『当然よ! このグレートマジンガーを量産し、マジンガー軍団を作り上げて世界を手に入れるのだ!!』

 

 ……ダメだ、これ。

 

 コクピットで高笑いをするドクター・ヘルに、私は思わず天を仰いだ。

 

 グレートを量産するってところでまた神様の機嫌が下がったし。

 

【気は済んだか?】

 

「……ん。ごめんね」

 

 そして神様が動き出す。

 

 というか、ミケーネが片付いたのなら甲児お兄さんを船の医務室へ連れて行った方が……

 

【甘やかしてはならぬ。この程度で音を上げるようでは我と共に戦う資格は無い】

 

 ぬぬ……そう言われると困る。

 

 だったら、早く片付けてね?

 

 という訳でドクター・ヘル戦に集中する私。

 

『くるか、異形の魔神よ!』 

 

 こちらの戦意を感じ取ったのか、グレートマジンガーは固く握りしめた右拳をこちらへ向ける。

 

『ミケーネを滅ぼした程度でいい気になるなよ! このグレートでもそれは可能だったのだ!!』

 

 言葉と共に先が鋭く尖っていくグレートの拳。

 

 超合金Zってあんな風に変形するんだ!?

 

『食らうがいい、アトミックパンチ!!』

 

 ドクター・ヘルの気合の入った声と共に放たれるグレートの右拳。

 

 空を裂いて襲い来るそれに、神様は突き出した右拳を合わせる。 

 

 機械道魔神空手・牙砕!

 

 金属同士がぶつかり合う強烈な音が響き、周辺を衝撃波が駆け抜けていく。

 

 そして推進装置が切れたグレートの右腕は、全体に罅を走らせると真っ二つに割れてしまった。

 

『そ…それは機械道空手! 何故その技を!?』

 

【何故だと思う?】

 

 狼狽えるドクターヘルへ容赦なく挑みかかる神様。

 

 けれど、ドクターヘルも伊達に悪の科学者をしていない。

 

 すぐに精神を立て直すとこちらへグレートの武器を向けてくる。

 

『ネーブル・ミサイル! ブレストバーン! グレートタイフーン!!』   

 

 お腹から飛ぶミサイル、胸から出る熱線、そして口から吐き出される強風。

 

 その全てを受けても神様の歩みは止まる事は無い。

 

【温いっ!!】

 

『ぐわぁぁぁぁっ!?』

 

 そして飛び上がった神様のビンタを顔に受けたグレートは、雲の隙間から青色が顔を見せ始めた空を横っ飛びに吹っ飛んでいく。

 

【貴様ごときに我が武器を使うまでもない! このまま殴り潰してくれるわ!!】  

 

 目にも止まらぬ速度でグレートを追った神様は、体勢が整わない彼に向けて鉄拳を雨霰と叩き込んでいく。

  

『馬鹿な! 超合金NZが叩き潰されるだと!? ここまで…ここまで差があるというのか!!』

 

 拳が叩き込まれるたびに黒鉄の身体は罅割れ、内部機構が残骸となって飛び散っていく。

 

 そして数十発目の右拳を振り上げる神様。

 

 そこには今までにない程の力が込められている。

 

【見るがいい! 下郎! そして光子力の祖を騙る偽神よ!! これこそが真なる魔神の拳!!】

 

 機械道魔神空手奥義・ビッグバンパンチ!!

 

『ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

  

 渾身の力を込めて振り抜く。

 

 ただそれだけのハズなのに、神様の拳はグレートマジンガーを完膚なきまでに粉砕し、その余波は大地に信じられないほど強大なクレーターを生み出してしまった。

 

 グレートマジンガーの残骸が降り注ぐ中、クレーターの中央へ着地した神様はZ-BLUEへ視線を向ける。

 

【巫女よ、我が意を彼奴等へ伝えよ】

 

「……え?」

 

 神様は皆に言いたい事があるみたい。

 

 いったいなんだろう?

 

 とりあえずチビを通して、皆へ回線を開く私。

 

『甲児君! 甲児君!?』 

 

『返事をしやがれ、甲児!!』

 

『陽蜂がそっちにミユがいるって言ってるけど、本当なのか!?』

 

『このブリキ野郎! ミーちゃんを返せ!!』

 

 さやかさんに竜馬さん、にぃにとパイルダーの通信機が調子悪い所為か、開いた途端にメッセージが山もりだ!

 

 あとひーちゃん、神様をブリキ呼ばわりするのやめて!!

 

 そんな感じでテンパっていると、神様からのメッセージが来た。

  

【あの程度の偽神に慄くなど度し難い! 貴様等に我が巫女を預かる資格なし! 返して欲しくば我に可能性の光を示せ!!】

 

 反射的に皆へ送っちゃったけど、これってどういう事かな、神様!?         




 機械道魔神空手・クソコテ様がドクター・ヘルを乗せた時(地獄モード)に使っていた格闘術。

 手刀一発で島を切り裂き、海を割り、さらには軌道上にあった月を両断した。

 ぶっちゃけ、これがあったら武装の大半はいらないのではないかと思うほどのトンデモ威力を誇る。

 ちなみに機械道空手は永井先生が描いた『バイオレンスジャック』が元ネタ。

 次にクソコテ様が出る時に実装されないかなぁ。
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