幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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今日のネオジオン

 営倉から引き出されたフル・フロンタルは憲兵に左右を挟まれて、総帥室へと通された。

 その先で待っていたのはもう一人の自分と言うべき男、シャア・アズナブルだ。

「フロンタル。貴様はフィフス戦の際に敵であるギレンへ肩入れし、総帥である私に牙を剥いた」

「そうですな」

 シャアの言葉に悪びれる事なく頷くフロンタル。

 その太々しさにシャアの額に青筋が浮かぶ。

「本来なら銃殺が妥当なのだが、諸事情によりそうはいかん」

「でしょうな。地球の事を思えば貴方は絶対に私を殺せはしない」

 そう鼻で笑ってみせるフロンタル。

 普段ならば内心怒りに燃えるシャアだが、今日はその気配はない。

 むしろ清々しいまでの笑顔である。

「とはいえ、あれだけの事を起こした貴様を無罪放免とはいかん。同時に牢屋で無駄飯を食わせる訳にもな」

「ではどうすると? 一兵卒として使い潰しますかな」

 そんなフロンタルの言葉を今度はシャアが逆に鼻で笑う。

「貴様には今からメンデルコロニーへ行ってもらう」

「メンデル……たしか遺伝子工学の実験場でしたな」

「ああ。そこで男を辞めてアイドルをやれ」

「……は?」

 あまりにもぶっ飛んだシャアの命令にフロンタルは一瞬言葉が出なかった。

 男を辞める? アイドル? いったいどういう事だ!?

「貴様の薄汚いモノを切り落とせば、例の性的虐待疑惑に対する懲罰になる。そしてアイドルとして愛嬌の一つも振りまけば、落ちたネオジオンの評判も少しは取り戻せるだろう。一石二鳥とはこの事だな」

 なんという悪魔の発想だろうか?

 この男、まるで自分に人権など無いと言わんばかりではないか!

「随分と酷な事を言ってくれる。だが、そんな暴挙を私の親衛隊が許すかな?」

「その心配は無用だ。奴等は一足先にメンデルに向かっている。貴様のチームメンバーとしてな」

 あまりの手回しの速さに言葉が出ないフロンタル。

 こうなればと逃走という手を打とうとしたが、それも屈強な憲兵によって阻まれてしまった。

「ああ、貴様に関しては顔と声はそのままだ。無許可とはいえ私から受け継いだ物を捨てられるは業腹なのでな、それ等で思う存分キャピキャピのアイドルソングを熱唱するがいい」

「……私に道化になれというのか?」

「今までネオジオンに与えてきた損害を思えば安いモノだ。それに貴様は器になるつもりなのだろう? それが偶像になったところで大した違いはあるまい」

 なんとか逃れようと暴れるフロンタルの抗議を切って捨てるシャア。

 そして最後に彼は絶対零度の視線でこう言った。

「お前は自分は殺されないとタカをくくっていたようだが、世の中には命を奪わずとも社会的に尊厳的に人を殺す手段は山とある。今まで私を甘く見てきたツケは、身体でタップリと払ってもらうぞ」

 必死に暴れるフロンタルだが、憲兵が首筋に撃ち込んだ薬液によって意識を失い、引き摺られながら総帥室を後にした。

 残されたシャアは晴れ晴れとした表情で隣に控えるナナイへこう言った。

「本当に清々しい気分だ。例えるなら新年の朝に日の出を見ながら卸したての下着を履いたかのような」

「大佐のご気分が晴れて何よりですわ」

 などと笑顔で話すシャアは知らない。

 この決断がネオジオンとプラントの間に起こる戦乱の引き金になるという事を 


幼女と千客万来

 天地左右真っ白な中に黒い無機質なサーバー機器が数多と立ち並ぶ奇妙な空間。

 

 そこで兜甲児は自分を少しだけ成長させた青年と向き合っていた。

 

「つまり暴走したマジンガー、いやマジンガーZEROは本当に神だっていうのか」

 

「そうだ。マジンガーZが存在するあらゆる次元で進化を繰り返す事で因果律に手を掛け、無限に等しい力を得た無数の己を統合した機械の魔神、それがマジンガーZEROだ」

 

「ゼウスは……俺のマジンガーの中にいたゼウスはどうなったんだ?」

 

「排除された」

 

 平然と答える兜青年に甲児は思わず鼻白む。

 

「ゼウスは正しきシンカの過程を辿り高次生命体へ至ったもの、たしかに地球人類からすれば神と呼べる存在だろう。しかしZEROの力はそれを遥かに上回る。彼が本気で除こうとすれば抗えるものではない」

 

「そんな……いや、たしかにそうかもしれない」 

 

 これまで何度もあった暴走、その際に感じた荒々しい力は光の神を超えると言われても納得せざるを得ないものだった。

 

「今までならZEROが目覚めた時点で世界は終わりを迎える。差異世界の記憶を見たお前なら理解できるだろう」

 

 兜青年の言葉に甲児は蒼褪めながらも頷く。

 

 マジンガーZが世界を滅ぼす光景は、今まで黒鉄の城と共に地球の護り手であった彼には悪夢と言えるものだ。

 

 強靭な精神を持つ甲児といえど、そのショックは容易く拭えるものではない。

 

「だが今回は今までと違う点は一つある」

 

「ミユちゃんのことだな?」

 

「そうだ。ZEROはあの子供を自らの巫女と定め、その為に力を振るっている。あの子がいる限り安易に世界を滅ぼそうとはしないだろう」

 

 そう結論付けると兜青年は甲児に右手を差し出してくる。

 

「奴が人と寄り添うのは恐らくこれが最初で最後だ。だからお前に頼みがある」

 

「頼み?」

 

「ZEROと共に戦ってくれないか?」

 

 兜青年が発した思わぬ提案に甲児は思わず固唾を呑む。

 

 幾度となく並行世界の自分を飲み込み、時には殺めた魔神。

 

 ある世界では光子力研究所を始め守るべき全てを吹き飛ばし、また別の世界は地球を火の玉に変えた機械の化け物。

 そんな恐ろしいモノと歩め、目の前の自分はそう言っているのだ。

 

「ZEROを悪の兵器として生み出したのはおじいちゃん。そして『負けてはならない』という呪いを掛けて彼を魔神へ変えたのは他でもない俺達だ」

 

 最終にして原初の魔神は兜家の業から生まれた。

 

 それは本来ならこの甲児は知る事のない事実だ。

 

 しかし同時にそれは『マジンガーZを駆る兜甲児』には逃れられない宿命でもある。

 

「けれどZEROにもZや他のマジンガーと同じく正義を重んじる心がある。あの子の為に動く奴を見て俺はそれを確信した」

 

「ZEROに正義の心……」

 

 兜青年の言葉に甲児は今までの戦いやZ…いやZEROが見せた並行世界の自分とマジンガーZとの絆を思い出す。

 

 ミユの為に何度も力を振るい、ゼウスではなく自分を見ろと言ったZ。

 

 それは数多の世界を滅ぼした最終の魔神とは明らかに異なるモノだった。

 

「ZEROを恐れてはならない。ZEROを拒絶してはならない。人の心無しでは破壊の権化となるのは、どのマジンガーでも変わらないのだ」

 

 兜青年の言葉に甲児の中にあった恐怖や疑念は少しづつ消えていく。

 

 そうだ。

 

 心無い者の手に渡ればZでもグレートでも、そしてまだ見ぬマジンガーであろうと暴力装置に成り果てるのは自明の理だ。

 

 だからこそ彼等を悪魔にしない為に、マジンガー乗りはその頭脳や心とならねばならない。 

 

「魔神の身体に人の心が宿って初めてマジンガーとなる。俺達の経験を全て託そう、だからお前はZEROを御する最強の兜甲児となってくれ」

 

「ああ!」 

 

 その事実に気付けば甲児に迷いは無かった。 

 

 兜青年の手を取った瞬間、甲児の意識に数多の経験が駆け巡る。

 

 人類の大半を殺めた超人じみたドクター・ヘルとの死闘。

 

 神ではないミケーネの戦闘獣に味わわされた敗北。

 

 宇宙から来た亡国の王子と共に侵略者との戦い。

 

 敗北があった。

 

 勝利があった。

 

 しかし結果がどうあれ、楽な戦闘など一つもなかった。

 

 並行世界の兜甲児が流した血と涙、その全てが甲児の力となる。

 

 そうして全てを受け取った瞬間、甲児は奇妙な空間から姿を消した。

 

「あとは頼むぞ。おそらくは最も離れた世界の俺」

 

 兜青年はそう言うと、仕事は終わったと言わんばかりにサーバーの一つへ腰かけるのだった。

 

 

 

 

 アロー、アロー。

 

 神様道場の師範(飾り)を務める幼女です、押忍!

 

 神様対Z―BLUE戦も佳境に入って来たと思うんだけど、いまだに黒鉄のボディに傷は付いていません。

 

 刹那さんと手合わせした後から、ニュータイプの共感能力に加えて波みたいなモノで薄っすらとだけど相手の思考が読めるようになってきたんだよね。

 

 これってもしかして、シュバルツさんの言っていた『めいきょーしすい』という奴なのだろうか?

 

『行くぞ、マジンガーZERO! 俺達の力を見せてやる!!』

 

『出力の事は気にするな、赤木!』

 

『思い切りブチかましてやりなさい!』

 

 ゴッドシグマを超高速で放つ左右のハイキックコンビネーションで倒すと、赤木さん達の気合と共にダイガードが身体からぶつかってきた。

 

 しかし神様はそれを片手一つで受け止めて見せる。

 

『ダイガードの突進が簡単に受け止められるなんて!?』

 

『ジェネレーターは最大でぶん回してる! これ以上の出力は無理だぞ!!』

 

【脆弱なり。一度はハリボテとなったものなど、この程度か】

 

 桃井さんや青山さんの驚愕の声が響く中、そう見切りをつけると神様はダイガードの赤い身体を切り裂く為に手刀を大きく振りかぶる。

 

『まだだ! 負けてたまるかっ!! 例えハリボテだって! 軍人じゃないサラリーマンだって! 平和は守れるんだ!!』

 

 ダイガードと自分の全力を出しながら、赤木さんが放つ魂が籠った叫び声。

 

「……ちがう」

 

 けれど私はそれを否定する。

 

「……サラリーマンだって、ちがう。サラリーマンだから、へいわをまもれる」

 

 『めいきょーしすい』を身に着けたからか、こうしているとダイガードの気持ちが伝わってくる。

 

 一度は現役を退いて非戦闘用になったダイガード。

 

 そんな自分にもう一度人を護らせてくれたのは、かつて自分が助けた子供だった。 

 

 彼はずっと自分への憧れを持ち続けていた。

 

 その為に防衛大学へ入ったのに、軍へ行く事なくサラリーマンになった。

 

「……ぐんじんさん、ハリボテになったダイガードにのらない。あかぎのおにいちゃん、ダイガードにのりたいからサラリーマンになった。サラリーマンだからダイガードにのれた」

 

『ミユちゃん……』

 

「……ダイガードとみんながへいわまもれたの、サラリーマンだから。だってじゃない」

 

 だからこそダイガードは頑張った。

 

 徐々に戦闘用へ戻っていく中、他のスーパーロボットより性能が劣っても赤木さんの熱い思いにこたえる為に踏ん張り続けた。

 

 赤木さんが乗るからこそダイガードは限界を超える。

 

『なんだこれ……ジェネレーターが限界のハズなのに、出力が上がっていってる』

 

 赤木さんの声と共に翡翠色の瞳に強い光が灯ると、ダイガードは神様を少しづつ押し始める。

 

『ウソでしょ……本当にダイガードに意志があるっていうの?』

 

 そんなダイガードと赤木さんだから、人機一体の先にあるモノに指を掛ける事が出来る。

 

『きっとそうだ! ヒビキが前に言っていた、大切に扱った物には魂が宿るって!! だったら皆を護って来たダイガードに魂が無いワケがない!!』

 

 そうして今までにない力を見せて神様を押し始めるダイガード。

 

 さっきまで片手で止めていた神様も、今では両手を使ってダイガードと掴み合っている。

 

『いくぞ、ダイガード! 俺達は平和を守るサラリーマンだ!』

 

 このまま神様の言う可能性の光を見せるかと思ったその時だ。

 

【小癪】 

 

「……あ」

 

『うわあああああっ!?』

 

 なんと神様はダイガードの突進力を逆手に取って、一本背負いで地面へ叩き付けてしまったのだ。

 

 神様、ダイガードと赤木さんって今可能性の光を見せようとしたよね?

 

【力とは如何なる時も素早く出さねばならぬ。あのように時間がかかっていては意味は無し!】

 

 私も実戦経験があるから言ってる事は分かるんだけど、そこまで求めたらハードル高くないかな?

 

【獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすという。甘やかすだけでは如何なる才でも腐り果てるのみ!!】

 

 そう言われると巫女的には返答に困ってしまう。

 

 パイルダーの中で思わず頭を抱えていると左手から一条、二条とビームが飛んでくる。

 

 このプレッシャーはカミーユさんか。

 

『ミユ、マジンガーを止めるんだ! このマシンは危険だ、君が乗っちゃいけない!!』

 

 そう言いながらランチャーを構えるゼータガンダム。

 

 その狙いは右の太ももだ。

 

 銃口から放たれる薄桃色の光条を紙一重で躱すと、その動きを踏み込みへと転じた神様はゼータに向けて掌を放つ。

 

 けれどカミーユさんも一角のエースパイロットだ。

 

『ちぃっ!』

 

 ランチャーを盾にしてその一撃をやり過ごす。

 

 破片が宙を舞う中、距離を取ろうとするゼータに返しの左拳を放とうとする神様。

 

 けれど、右から発射されたビームの精密射撃がそれに待ったを掛ける

 

 マシンガンみたいな射撃なのに、頭、足、そして振ろうとしていた左腕と正確に食らいついてくる凶悪さはアムロ大尉か!

 

『連携だ、カミーユ! 一人で立ち向かえる相手じゃない!!』 

 

 私の感覚を頼りに神様がビーム弾を打ち払う中、カミーユさんにそう声を掛けるアムロ大尉。

 

 そうして別の事に気を掛けていたからか、光弾の一発が黒鉄の身体に当たることなく通り過ぎていく。

 

 誤射、それとも牽制? ……いや、これは違う!

 

 そう予期して目で追うと、その先には宙を舞うバズーカの弾倉が!

 

「……かみさま、うしろ!」

 

【猪口才な!】

 

 私の声に距離を取る神様と一瞬遅れて起こる大爆発。

 

 さすがは鬼畜天パ流マスター! 何時の間にあんな仕掛けをッ!?

 

『また言ったね?』

 

「……ぴぃっ!?」

 

 パイルダーの通信画面に笑っている筈なのに背後に暗黒オーラを背負ったアムロ大尉が映る。

 

 なんというプレッシャー!

 

 お股がまた緩くなっちゃう!?

 

 そして私がブルっている間に、フィンファンネルが何時もより鋭い軌道でこちらを包囲している。

 

 更にはひーちゃんのダインスレイブと相良軍曹のラムダドライバの力場を込めた弾丸が飛んできた!

 

 さすがにこの状態では神様だって躱す事は出来ない。

 

 だったら、ここは私の出番だ!

 

「……チビ、あれやる」

 

 頭上のチビにそう声を掛けると私は意識を集中する。

 

 思い出すのはインベーダーと戦った時の感覚。

 

 あの時、私は夢で見た青い髪の女の子と同じように光子力を操って見せた。

 

 今は『めいきょーしすい』のお陰か、あの時よりもハッキリと力の流れを感じる事が出来る。

 

 だったら、光子力に意志を通す事も不可能じゃない!

 

 イメージを固めると同時に響く轟音。

 

 ファンネルの粒子砲が、超音速で放たれた鉄杭が、そして青白い力を宿した弾丸が次々に着弾する。

 

 けれど、それは神様の身体じゃない。

 

 その前に築かれた黄金色の障壁にだ。

 

「……やった」 

 

 全ての攻撃を防ぎ終わって障壁も消える中、傷一つ無い神様に私はパイルダーの中で小さくガッツポーズを取る。

 

『あれだけの攻撃を受けて無傷だと!? マジンガーを基にしているとはいえ、あそこまで堅固なのか!』

 

『違います、軍曹。着弾の瞬間、マジンガーの周辺にバリアが確認されました』 

 

『あの一瞬、強い意識の増大を感じた……。今のはミユの仕業か』

 

『あのチビ助がフォローしてるんだろうけど、ミーちゃんの力って敵に回るとスッゴイ厄介だぁ!』

 

 驚く軍曹の言葉を訂正するアル君。

 

 そしてアムロ大尉はこちらに隙が無いか、冷静に観察してくる。

 

 それとごめんね、ひーちゃん。

 

 手足や胴体を狙ったみたいだけど、やっぱりダインスレイブはヤバいと思うの。

 

 さて、今さっき私がやったのは神様の身体を巡る光子力に干渉して、サイコフィールドのように障壁へ変化させる事だ。

 

 名付けて光子力バリアである。

 

 え、その名前ダメ?

 

 光子力バリアって割れるの?

 

 そんなやり取りを神様としていると、今度は左手から狙撃の一射が飛んでくる。

 

 弾丸の大きさからして、放ったのはМSやヴァルキリーじゃない。

 

 気配を探ると三機のエヴァの姿が見えた。

 

『行くわよ、ナナヒカリ! エコヒイキの狙撃で動きを止めている内に、あの化け物に目のモノ見せてやるわ!』

 

『わかった! けどミユちゃんが乗ってるから手加減はしないと!』

 

 そんな中、薙刀を持った弐号機とナイフを手にした初号機が突進してくる。

 

 この三機の中で一番警戒するべきはシンジさんだ。

 

 シンジさんは普段は大人しいお兄さんだけど、ヤシマ作戦やブリュッセル攻略戦の時のように、ここ一番の爆発力は群を抜いているからだ。

 

 クマさんが暴走した時だって、一番長くフィールドで月光蝶を阻止し続けたのはシンジさんらしいしね。

 

 神様との戦いの中で追い詰められて窮地を乗り越える事が出来たなら、条件をクリアする目は十分にある。  

 

 あと私の直感が囁くのだけど、シンジさんはメンタル的に成長しないといけない気がする。

 

 このまま行くとエラい事をやらかすような、そんな予感がするんだよねぇ。

 

 シンジお兄さん達が成長する壁となる為にも、まずは零号機の狙撃を黙らせないと!

 

 そう考えてレイお姉さんの意識を読もうとした私は、筆舌に尽くしがたい光景を目にする事になった。  

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

(ミユを取り返してモフる)

 

(プニプニのお腹をモフる)

 

「ひゃあああああああっ!?」

 

 ネコ耳を付けた私のお腹にレイお姉さんが顔を埋めて、ひたすら頬ずりし続けるという謎映像!

 

 あの人はいったい何を考えているんだ!?

 

『よし、あのチビはエコヒイキの妄想を読んで怯んでるわね! 狙い通りよ!!』

 

『い…いいのかなぁ、こんなやり方で……』

 

 やられた!

 

 アスカお姉さんめ、ちょくちょく助けてくれて感謝していたのに、こんな悪辣な罠を仕掛けていたなんて!

 

『どっせぇぇぇぇぇい!』

 

 女の子としてはどうかと思う気炎を吐きながら、薙刀を振り下ろしてくる弐号機。

 

 けれど、その刃は円を描く神様の左腕によっていなされると、返しの右拳が腹部の赤い装甲を打ち砕いた。

 

『きゃああああああっ!?』

 

 某全裸のように衝撃映像で私を封じた策は素直に尊敬するけど、それだけでこちらを封じたと思うのは間違いだ。

 

 何故なら私が無くても神様は自分で動くのだから。 

 

『うぅ……』 

 

 ギロリと睨む神様に思わず腰が引ける初号機。

 

 修羅場慣れし始めたとはいえ、少し前まで普通の人だったシンジさんには神様の威圧は辛いだろう。

 

『怖いけど……逃げちゃダメだ! 逃げたら何も守れない! 友達も仲間も大事な人も!!』

 

 けれどシンジさんはギリギリのところで踏み止まった。

 

 自分の恐怖を振り切るような叫びと共に初号機は腰に差した刀を抜き放つ。

 

 その型はなんと示現流の蜻蛉!

 

『よくぞ踏み止まった。彼の魔神を前にして、その胆力は見事じゃ!』 

 

『トウゴウ先生!』

 

 そして背後のブースターを吹かしながらシンジさんの隣に斬艦刀を蜻蛉に構えたグルンガスト零式が現れる。

 

 もしかして私が温泉でポヤってた間にシンジさんはリシュウのお爺ちゃんに弟子入りしていたのか!?

 

『綾波の嬢ちゃんが足止めしている今が好機! 儂が教えた通り一刀に全てを懸けよ!!』

 

『はいっ!』

 

 リシュウのお爺ちゃんからの発破に初号機が構えた刀身が赤い光を宿す。

 

 ヤバい、あれってATフィールドだ!

 

『『チェストォォォォォッ!!』』

 

 神様の反応速度を信じて、私は光子力を両腕に集中させる。

 

 そして左右から振り下ろされる剛の剣!

 

 神様が掲げた両腕にそれが食らいついた瞬間、巻き起こった衝撃が大気を震わせる。  

 

『ぬぅっ!』

 

『止められた!?』

 

 ギリギリと軋みを上げる刃と黒鉄の腕、けれど二人の剣は黄金の光に阻まれて神様の腕を切り裂くことは無かった。

 

【この威力、暗黒大将軍とやらの剣に匹敵しよう。だが、神を断つにはまだ足りぬ!】

 

 両腕が二つの刃を弾くと同時に振るわれる剛腿。

 

 神様が放った旋風脚によって、初号機とグルンガストは大きく吹き飛ばされる。

 

【夢魔の女王よ、我が巫女を穢すな】

 

『きゃんっ!?』

 

 そして着地を踏み込みとして放たれる正拳、それが生み出した衝撃波は零号機を弾き飛ばしてしまった。

 

 先ほどレイお姉さんから来た妄想に神様はおこだけど、巫女的には猫扱い無しならスキンシップはOKです。

 

 そんなこんなで連戦に次ぐ連戦だけど、無傷だしまだ元気いっぱいな神様とは違って私的にはかなりキツくなってきた。

 

 なにせ相手は地球最強のパイロットと超兵器たちだ。

 

 いくら操縦は神様任せでニュータイプ+めいきょーしすいがあっても、精神的疲労が半端ないのだ。

 

 けれど、そんな私にため息も吐かせてくれないのがZ―BLUEである。

 

 今度は戦線復帰してきたカミーユさんがビームサーベルを抜き放って現れた。

 

 薄紅色の光がゼータを包み、その光を糧として刀身を伸ばすビームサーベル。 

 

 ならばと私は目を閉じて神経を集中させる。

 

 チビを通して私が送ったイメージに従って、光子力がその姿を変えていく。

 

『うおおおおおおおっ!』

 

 裂帛の気合と共に振り下ろされる赤い光の刃、それを防いだのは神様の指先から伸びた黄金の光だった。

 

『なにっ!?』

 

 これぞ光子力を集積して刃へ変換したライト・セイバー!

 

【見事。これも我が新しき可能性か】

 

 攻撃転用はぶっつけ本番だったけど成功してよかった!!

 

 ビームと光子力が火花を上げながらしのぎを削っていると、お互いの意志で出力を増したためかカミーユさんと意識が繋がった。

 

「ミユ、どうしてこんな事に手を貸すんだ!」

 

「……このさき、つよいてきいっぱい。みんな、つよくならないといきのこれない」

 

 こう返すとカミーユさんは思わずと言った感じで口をつぐむ。

 

 それより、こうして繋がってみるとカミーユさんの意識に気になるところが見えてきた。

 

 なんというか、彼の感覚が宇宙にいた頃より鈍いのだ。

 

 もちろんニュータイプが地球に来ると、宇宙より感覚的なモノが下がるのは経験上知っている。

 

 それでもカミーユさんのそれはかなり重症に見えてしまう。

 

「……カミーユおにいさん、ちきゅうにがて?」

 

 とりあえず訊ねてみるとカミーユさんは少し口ごもった後で小さく頷く。

 

「……あ、ああ。どちらかと言えば好きじゃない」

 

「……どうして?」

 

「重力に心が、魂が縛られる気がして息苦しいんだ」

 

 なるほど、そんな感覚になるのか。

 

「その感覚は理解できるな。お前もそう感じていたのか」

 

 声がした方向を見ると、そこにはアムロ大尉の姿が。

 

 共感能力の相乗で、彼も巻き込んでしまったのだろうか?

 

「アムロさん」

 

「けれどその事は忌避しない方がいい。余計な事を感じ取らない事も人と付き合う時には必要になる。ところで───」

 

 カミーユさんにアドバイスをした後、アムロ大尉はこちらを向いた。

 

「例の鬼畜天パというのはどういう事かな?」

 

 その顔にはさっきと同じく黒い笑みが!?

 

「……フィ、フィフスでシャアがいってた。たたかいかた、きちくすぎるって」

 

「……あの野郎」 

 

 目を逸らしながらそう答えると笑顔が一転して能面のようになるアムロ大尉。

 

 ごめんよ、シャア。

 

 今度の戦いはきっとアムロ大尉がマジだろうから、頑張って生き残ってください!

 

 思わぬところで生命の危機に晒されたけど、話題はそこじゃないんだよ!

 

 カミーユさんのいう重力に囚われる感覚も分からない訳じゃない。

 

 私も最初に地球へ降りた時はそんな感じだったし。

 

 けれど今はそんな感じじゃないんだよね。

 

「……ちきゅうもじゅうりょくも、にんげんがいきるにはひつよう。それにちきゅうもうちゅうのいちぶ」 

 

 東方のおじちゃんの言葉を受けて、私達も天然自然の一員で地球も宇宙の一つって自覚したら、その辺のことは抜けちゃったのだ。

 

「それはそうだが……」

 

「……かんがえかた。いのちはうちゅうをささえる。ちきゅうはいのちがいっぱい、うちゅうをささえるなかま」

 

 ニュータイプだのスペースノイドだのと言っても、人間が地球由来の生き物だというのは変わらない。

 

 生まれ故郷を否定する事に何の意味があるというのか?

 

 自分が宇宙で生きる人類だと定義するのなら、地球も宇宙の一部と懐深く受け入れて生きる方がいいと思うんだけどなぁ。

 

「地球も宇宙の一つ、か。奴や今の人類に足りないのはその考え方なのかもな」

 

「皆がそう思えるなら地球人同士の争いも減るかもしれませんね」

 

「……きづくの、ひとそれぞれ。いそぐのダメ」

 

 そう告げたのを最後にプツリとカミーユさん達との共感が途切れる。

 

 同時にサーベルの光も消えたので、私も光子力を元に戻した。 

 

 さっきの対話で戦意が無くなったのかなと思ったら、そんな事は全然なかった。

 

 ゼータの身体をサイコフィールドが覆うと、さっきよりも強烈なプレッシャーが押し寄せてきたのだ。

 

『分かるぞ、ミユ! 地球も宇宙を支える命なんだ! だからこの星を人のエゴで傷つけるのは悲しい事なんだよ!!』 

 

 このパワー、侮りがたし!

 

 さっきの交信のお陰かカミーユさんの針も抜けてるし、神様の言う可能性の光としては十分だと思うよ!

 

『だから、こんな闘いは終わらせなきゃダメなんだ! マジンガーZERO! 力が見たいなら俺が見せてやる!!』

 

 そう叫ぶとカミーユさんはゼータをウェイブライダーへ変形させて突撃してきた。

 

 赤い光を伴って奔るゼータ、その機首が神様のお腹へ突き刺さろうとした瞬間───

 

【これがニュータイプの奇跡か……憶えたぞ!】

 

『う…うわあああああああっ!?』 

 

 なんと間一髪で躱した神様は、ゼータを脇に挟むとサイドスープレックスで地面へ叩き付けてしまったのだ。

 

 飛行形態のまま半ば地面に埋まって赤い光を失うゼータ。

 

 ……神様、今のって当たったうえで皆の力を認めるところなのでは?

 

【まだ足りぬ】

 

 テンシの力は知ってるつもりだけど、これじゃあ誰も乗り越えられないよ!

 

 神様判定の厳しさに思わず天を仰いだその時だ。 

 

 私は天からここへ振ってくる気配に気が付いた。

 

 なんだろう、この感覚。

 

 私……ううん人のシンカを否定する物凄く強固な意志だ。

 

「……かみさま、てきくる」 

 

【ふん、自らの可能性を閉ざした腰抜けか】

 

 神様の嘲りと共に現れたのは、蛍光緑のブロックが組み合わさった円盤のような敵の群れ。

 

 その中央には見知った人が宙を浮いていた。

 

「……ニアおねえさん」

 

『ニアっ!』

 

 私の呟きと同時にシモンさんの叫びが木霊する。

 

 敵の中心にいる彼女は、私に料理を持ってきてくれた時からは想像もつかない程に冷徹な顔をしている。

 

「そこのモノの存在は看過できない」

 

「……ミユ?」

 

「お前がそれ以上のシンカを遂げれば、この宇宙を滅ぼす要因となる。よって螺旋族共々ここで排除する」

 

 正直、これは拙い。

 

 連戦で疲れている皆では彼等の相手は厳しいだろう。

 

「……かみさま───あ!」

 

 私が皆の代わりに戦うように神様へお願いしようとすると、ニアお姉さんがいる逆の方向からまたもや気配がした。

 

 この感覚……間違いない!

 

「……ミウ!」

 

 私がそう声を上げると、大気圏から黒いМSを背負ったクマさんが降下してくる。

 

『クマだと!?』

 

『馬鹿な!? あれはミスリルで封印されていたはずだぞ!』

 

 ブライト艦長やジェフリー艦長が驚く中、クマさんから私によく似た声が響き渡る。

 

『姉さま! 姉さまはどこですの!?』

 

『姉さまって……お前まさかミユの妹か?』

 

『そうですわ! 姉さまは其方へ乗ってませんの!?』

 

 問いを投げるシン兄に食い気味に言葉を返すミウ。

 

 というか、モニターに映る妹は私より全然大きいんだけど!!

 

 あったら思い切り甘えさせてあげるつもりだったのに、この貧弱ボディでは……!

 

 いや、そんな事を悔やんでいる場合じゃない。

 

 妹が必死に求めているんだ、ここで名乗りを上げないと姉失格じゃないか!

 

「……ミウ。ねぇね、ここ」

 

 私の言葉に神様の方を向くクマさん。

 

『ぎゃあああああああああああああっ!?』

 

 その瞬間、何故か妹は魂切るような悲鳴を上げた……ってなんで!?

 

『ね…ねねね姉さまぁ! ZEROに取り込まれてぇ!?』 

 

『落ち着け、ミウ! 彼女は無事だ! それよりも彼女が本当に君の姉なのか?』

 

 ミウの心が恐怖と絶望に染まりかけて私も焦ったけど、クマさんの隣にいる黒い機体が声を掛けてくれたお陰で冷静さを取り戻す事が出来たようだ。

 

 誰だか知らないけど感謝感激である。

 

『ま…マジだ。心臓が止まるかと思ったじゃねえか、クソが!』

 

 ……ん、今なんて?

 

 妹の口からあり得ない言葉が飛び出したような気がしたけど、そこを追求する事は出来なかった。

 

 何故ならクマさん達を追いかけるかのように、黒いМS達が次々と降って来たからだ。

 

『くっ! 大気圏に入った程度では振り切れなかったか!』

 

『あのロリババア、本当しつこいですわよ!』

 

 女性的なフォルムの濃淡の紫を基調とした機体、見た事がない筈なのに私はそれを知っていた。

 

『……レギナ』

 

 そう、あれは月の女王の僕。

 

 邪魔するモノに集団で襲い掛かり、ズタズタに引き裂く地獄の侯爵の凶悪な使い魔達だ。

 

 何故だか分からないけど、やけに肌が粟立つような感覚。

 

 それに応えたのは神様だった。

 

【我の邪魔をしようとは不遜極まりない! 愚者共よ、零へ還れ!!】

 

 怒りの声と共に頭の上で両拳を打ち鳴らす神様。

 

 これは拙い!

 

「ミウ! くろいひと! そこからはなれて!!」

 

『姉さま? やっべぇ!!』

 

『なんだこのエネルギー量は! ネオ・グランゾンを上回るだと!?』

 

 私の叫びに慌ててその場から離れるクマさんと黒いМS。

 

 そして次の瞬間に放たれたのは、全てを焼き尽くす真紅の暴虐だった。

 

『『『……!?』』』

 

 Zの時とは比べ物にならない程の威力を誇るブレストファイヤー。

 

 空を、地を、進行方向に存在するあらゆる物を焼き尽くしながら襲い掛かったそれは、レギナの群れを一瞬で蒸発させると紅い軌跡を残して天へと消えた。 

 

 皆がそのとんでもない威力に唖然とする中、神様は視線をニアお姉さんたちへ向ける。

 

 ヤバい、神様の眼光はハーデスも滅ぼした超高出力ビームだ!

 

「……かみさま、だめ!」 

 

 制止の声を上げても怒った神様のチャージは止まらない!

 

 このままじゃニアおねえさんが!

 

 どうしようと焦ったその時、甲児お兄さんの腕がパイルダーのハンドルを強く握りしめた。

 

「ニアは…あそこの女は俺達の仲間だ。これ以上俺の仲間を殺させやしないぞ、ZERO」

 

 震えが来るほどの覚悟と気合、それがにじみ出る言葉と共に起き上がる甲児お兄さん。

 

 彼はまるでZが神様になった事を当然のように、パイルダーの計器を睨みつける。

 

【少しはマシな面構えになったな】

 

「お陰さんでな。差異次元の俺達に全部教えてもらったよ。お前が何なのか、そしてお前が何をしてきたのかをな」

 

 神様の意志が光子力の文字となってキャノピーに浮かび上がり、それを見た甲児お兄さんは挑戦的な笑みを浮かべる。

 

【それでどうする。かつてのお前のようにZを作り出して我に挑むか?】

 

「馬鹿言ってんじゃねえよ。───俺のマジンガーはお前だ」

 

 甲児お兄さんの宣言にパイルダーの中の空気が軋みを上げる。

 

【我と共に歩むと? 全てを知った貴様がか】 

 

「全てを知ったからだ。欲望のままにお前を生み出したお爺ちゃん、そしてお前に呪いをかけ続けた俺達! そのケジメを全部背負ってやるって言ってるんだ!!」

 

【それは我が何を目指しているか、理解してのセリフか?】

 

「分かってるさ。だからこそ、いきなり皆を襲うなんてマネじゃなく、真っ当な方法で真正面から叶えてやる! マジンガーが最強のスーパーロボットだって信じているのは俺も同じなんだからな!!」

 

 神様の圧に一歩も引かずに交渉する甲児お兄さん。

 

 しばらくキャノピーと甲児お兄さんのにらみ合いが続くと、そこに浮かぶ光子力文字が変化する。

 

【いいだろう。だが、貴様が知る目的の他に我には為さねばならぬ大事がある】

 

「ぐあっ!?」

 

 神様がそう告げた次の瞬間、甲児お兄さんは頭を抱えて大きく身体を逸らせた。

 

 痛みに耐えるように髪の毛の中に指を食い込ませたあと、彼は荒い息を吐きながら神様に問いを投げる。

 

「い…いまのは……」

 

【それが我が巫女の本来辿るはずだった運命。我はそれを変える。その為には彼の者を簒奪された玉座へ戻さねばならぬ】

 

 恐らく神様から膨大な情報が送られたのだろう、言葉を返す事が出来ない甲児お兄さんに神様は更なる言葉を畳み掛ける。

 

【心に刻め、兜甲児。この戦乱なぞ前哨戦に過ぎぬ。真の闘いは宇宙をあるべき姿に戻した後に訪れる破壊神との一戦だという事をな】

 

「破壊…神……」

 

【あれを打ち破る為には、我も更なる力を得る必要がある。その為に数多の味方を観測し数多の敵を食らう。───貴様には付き合ってもらうぞ、地獄の底までな】

 

 そう告げると神様の気配は急速に薄れていく。

 

 神様はその制御を甲児お兄さんに任せたのだ。

 

「……ミユちゃん」

 

 チラリとこちらを見る甲児お兄さんの目は様々な感情が渦を巻いているのが分かる。

 

 思わず伸びそうになった共感能力の糸を私は慌てて押し留める。

 

 こういう時は敢えて探らないのがエチケットだ。

 

「……こうじおにいさん、どうかした?」

 

「なんでもない。今まで寝ていた分を取り返すから、しっかり掴まっててくれよ!」

 

「……いまのマジンガーはかみさま、てかげんしてね」

 

 私の言葉を背に受けながら、甲児お兄さんはシモンの兄貴を筆頭にブロックロボと火花を散らしている戦場へ飛び込んでいく。

 

 それから数分ののち、ニアお姉さんの確保はできなかったものの、謎のブロックロボ達は全てやっつける事が出来た。

 

 色々あって理解が全然追いついてないけど、戦艦に帰ったらミウを思い切り抱きしめてあげよう!

 

 

 

 

 闘いが終わった後、未だ焼け焦げた大地を踏みしめる二つの影があった。

 

 一人は日に焼けた肌に黒髪の屈強な男、もう一人は白く抜けるような肌に赤い髪が生える美女だ。

 

「どうやら上手くいったようね、トリスタン」

 

「流石は神殺しの獣と言ったところだな。第三新東京市で欠片を得られたのは幸いだった」

 

 赤髪の女が発した言葉にトリスタンと呼ばれた男は頷く。

 

 二人はかつてミケーネと呼ばれた国で神子を務めた夫妻、トリスタンとイゾルデ。

 

 『あしゅら男爵』という偽りの名を与えられ、神の復活に己を生贄にした異形の司祭が本来の姿を取り戻した存在だ。

 

「お許しください、ハーデス様。そして多くの神々よ」

 

「彼の神戦で敗れた事により歪められた宇宙で、あなた方は魔へと落ちてしまった。皆様が本来の輝ける姿を取り戻すには、偽りの身を一度滅して宇宙をあるべき姿に戻す必要があるのです」

 

 もはや欠片も残っていないミケーネの神々に、トリスタンとイゾルデは黙とうを捧げる。

 

 この結果を得る為に彼等は様々な策を打った。

 

 ミケーネ神の復活の為に世界へ混乱を撒き散らしたのも、最終決戦の折に怨敵であるドクターヘルを助け、兜剣造が密かに創り上げていたグレートの設計図を託したのもその一つだ。

 

 全ては堕天した神々の復権を望まんがために。 

 

「しかし未だに彼の娘に宿った種子は芽吹かぬか」 

 

「やはり彼奴等と接触が必要なのかもしれませんね」

 

 Z―BLUEが飛び去った先を見ながら顔を顰めるトリスタンに、イゾルデがため息交じりに呟く。

 

 まだまだ腰を落ち着けるには早いと認識を新たにした彼等だが、次の瞬間にはその表情を強張らせる。

 

「こ…この神氣は!」

 

「まさか……ミケーネの神々の他にこの地へ降臨した者がいるというのか!?」

 

 互いに背中を庇いながら周辺を見回すトリスタンとイゾルデ。

 

 そして彼等が捉えたのは片目を眼帯で閉ざし、白い髪をショートにした女子高生だった。

 

 超人的な力を付与された二人なら、赤子の手をひねるように殺める事が出来そうな少女。

 

 しかし彼等はその前に跪く事しかできなかった。

 

「さすがは神子、礼儀は弁えているようだね」

 

「貴方様は力ある神とお見受けします」

 

「我らに何か御用でしょうか?」

 

 額を地面にこすり付けながら、そう問いを投げる夫妻。

 

 それを見下ろしながら、女子高生は悪戯な笑みを浮かべる。

 

「喜びたまえ神子トリスタン、神子イゾルデ。君達は私の助手に選ばれた」

 

「助手……ですか?」

 

「そう。この宇宙を保全するためのね」

 

 思わず顔を上げるトリスタン達に、先程の笑顔を引っ込めた女子高生は語る。

 

 己の目的を、そしてその先に何があるのかを。

 

「分かりました。我々夫妻は貴方の元に下ります」

 

「どうぞ、思うがままにお使いください」

 

 その全てを聞いたトリスタンとイゾルデは再び深く首を垂れる。

 

「これで交渉成立だ。私の事はそうだなぁ……むーちゃんと呼んでくれ」         

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