幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 今回は趣味に走っちゃった。

 反省も後悔もしていない


幼女とガチたん

 

 ミユがメンタルケアの為に地球へ降りる少し前、トワノミカゲは発見した神話型アクエリオンの最終調整に入っていた。

 

「この力があれば、お前の再誕も早まるだろう。その時は再び彼女に会わせてやるからな」 

 

 彼の翼で再び世界に生まれ出る時を待っている我が子へ、ミカゲは慈愛に満ちた表情で語り掛ける。

 

 彼と彼女とそして息子、その三人が神話型アクエリオンに乗り込めば、例え相手が御使いでも遅れは取らない。

 

 その確信がミカゲにはあった。

 

 そうして長年封印されていた不具合を取り払い、地球へ向けて出発しようとした時だ。

 

「ぐ…うぅっ!?」

 

 ミカゲはコクピットの中で右の羽の付け根を押さえて苦鳴を上げた。

 

 何者かが自分の身体へ干渉する怖気と痛みに思わず鳥肌を立てるミカゲ。

 

 しかし無粋な手が何を目的としているのかを悟った瞬間、ミカゲは目を見開いて叫んだ。

 

「やめろ! その子に触れるな!! その子は私と彼女の……!?」  

 

 しかし彼の怒声は最後まで続かなかった。

 

 それを嘲笑うように彼の翼の一つが漆黒に染まると、憤怒の激情に反してミカゲの口から出たのは耐えがたい激痛だったからだ。

 

「ぐ……ぐおおおおおおおっ!?」

 

 彼を襲うモノを何と表現すればよいだろうか?

 

 例えるならば、強制される産みの苦しみと言ったところだろう。

 

 そうして黒く染まった羽根と漆黒の粘液を撒き散らしながら、それはミカゲの中から現れた。

 

「始めまして、お父さん。いや、この場合はお母さんと言えばいいのかな?」

 

 それは肉感的な身体から妖艶な雰囲気を醸し出す美女だった。

 

 長い黒髪に真紅の目、そして黒い粘液をところどころに張り付けたその肢体は男ならむしゃぶりつきたくなるだろう。

 

 だがしかし、少しでも目端の利く者ならば彼女に触手を伸ばそうとは思わない。

 

 何故なら妖艶な雰囲気の奥に隠されているのは、吐き気すら通り越す程に歪で醜悪な邪神の気配だからだ。

 

「き…貴様! 何者だ!?」

 

「僕は……そうだねぇ、ナイアとでも呼んでもらおうか」

 

 ベクターソルのコクピットコンソールに突っ伏し、自分の背に腰かける妖婦を睨みつけるミカゲ。

 

 人間なら屈強な戦士でも恐怖に竦むその視線を受けても、ナイアが浮かべるのは嘲りの笑みだ。

 

「そんな目で見るなよ。君には感謝してるんだぜ」

 

「感謝だと?」

 

「そうさ。本当なら旧神・黄金王(ウルターラトホテップ)のいるこの世界には僕は干渉できない。奴と僕は根本では同じ存在だからね」

 

「何を……言っている!?」

 

 自分の上で訳の分からない事をべらべらと喋る女に、ミカゲは萎えた身体に鞭を打って異能を放つ。

 

 ビル一つくらいなら一撃で倒壊できるサイコキネシス、だがそれはナイアが軽く手を振るうだけで消え去ってしまう。

 

「無理はしない方がいい。今の君は僕に力の殆どを奪われた状態だ。現に、この程度の力を振るっただけで息も絶え絶えじゃないか」

 

 平然とのたまうナイアにミカゲは音が鳴るほどに歯を食いしばる。

 

「さて、話の続きだ。手が出せない僕がどうしてこの宇宙に来れたのか? それは君があの子と契ってくれたお陰だよ」

 

 そう嗤うナイアにただでさえ色素が薄いミカゲの顔は紙色になる。

 

「あの子の年齢を思えば、この手を使うチャンスは絶望的だった。けれど君は思わぬ方法でそれを解決してくれた。心を触れ合わせる事で相手の因子を使って孕むなんてね、本当に便利な種族だよ」

 

「貴様ッ! あの子に……私達の子供に何をした!?」

 

「肉体をいただいたのさ。オタクの坊ちゃんの身体は私にとってこの上ない依り代となるからね」

 

 蠱惑的にそして醜悪な笑みを浮かべるナイア。

 

 しかし力の殆どを奪われたミカゲは歯を食いしばる事しかできない。

 

「ああ、魂の方は返してあげるよ」

 

 そんな彼にナイアは右手に乗っていた淡く白の光を発する光体を差し出す。

 

 するとその光体はミカゲの傍にフラフラと飛んでいくと、彼を案じるかのようにその顔に寄り添った。

 

「彼には何もしていないから安心するといい。私としても彼女の不興を買うのは避けたいしね」

 

 そう言うナイアにミカゲは絞り出すように問いを放つ。

 

「貴様は……いったい何が目的だ!?」

 

「もちろん、この宇宙を救う事さ」

 

 憎悪に満ちたミカゲの視線を受けながら不敵に笑うナイア。

 

 彼女が消えたベクターソルのコクピットでミカゲが久方ぶりの呪詛を紡ぐ。

 

「……ナイアといったな! 貴様は絶対に許さん!! どこまでも追い詰めて惨たらしく殺してやる!!」

 

 それは恋をする者として、そして親として正しき憎悪であった。

 

 

 

 

今日のネオジオン

 

 その日、ネオジオン総帥シャア・アズナブルは万感の思いを込めてこう言った。

 

「───フロンタルを抹殺する」 

 

 その言葉に過去から現在まで続く奴が引き起こした不祥事や炎上事案の尻拭いがフラッシュバックし、思わず頷きそうになるナナイ。

 

 しかし、絶対にそれが出来ない訳を思い出してギリギリのところで首を止めた。

 

「大佐、例の件がある以上あの男は殺れません」

 

 そう返した後、口惜しさに奥歯を噛み締めるナナイ。

 

 ぶっちゃけた話、殺せるのならマイノット基地で起こったセクハラ爆弾の時点で腹を切らせている。

 

 あの男の所為でシャアとネオジオンが失った物を考えれば、手足をバクゥ(プラントからの輸入品)に括りつけて、古代中国のように八つ裂きの刑に処してもおかしくないほどだ。

 

 社会的生命に加えて最愛の妹やライバルに後継者、さらには仲間達からの信頼。

 

 組織で見れば多くのパトロンと大義、あとは離反していった優秀な隊員達。

 

 これだけのモノを失ってもなおフロンタルを殺せないのは、ひとえに奴がエタニティフラットを破る唯一の術である時空修復の特異点の片割れだからに他ならない。

 

 それを今になって覆したという事は、なにか画期的な手を思いついたのだろうか?

 

「大丈夫だ、ナナイ」

 

 どこか期待が籠ったナナイの忠言に、まるで悟りを開いた仏僧のように穏やかな笑みを浮かべるシャア。

 

「それはZ‐BLUEと『明日の私』が何とかするさ」

 

 そして赤い彗星と呼ばれた男が吐いたのは、組織の運営者として言ってはならない類の言葉だった。

 

「待ってください、大佐! それは何の解決にもなってないのでは!?」

 

「もういいじゃないか、アイツを殺そう。私達は頑張った……頑張ったんだ。だが、奴の害悪性はそんな我々の努力を遥かに超えていた。あの男を消さなければ、クロノ排除もへったくれも無いんだよ」

 

 焦るナナイに死んだ目で『ははは』と乾いた笑いを漏らすシャア。

 

 その視線には、ニュース報道の中で炎上を続ける連邦軍トリントン基地の様子が映し出されていた。

 

 あれをやったのは地球に潜伏していた旧ジオン残党軍。

 

 エタニティ・フラット解決までと連邦と停戦していた中での凶行だ。

 

 当然各国首脳陣はドン引き。

 

 オーブやコロニー連合体などの中立国からは非難の声が上がり、連邦からは『殺すぞ、クソが!』という素晴らしいメッセージが殺到している。

 

 あの停戦を結ぶ為に連邦の狸共へ、いったいどれだけ頭を下げて金をバラまいてきたと思っているのか。

 

『こんなフザケた真似をして遊んでいる赤い彗星など信用できん! 我々は自らの手で連邦を打ち破って積年の恨みを晴らすのだ!!』 

 

 時勢も読めず怨恨のみで騒ぎを起こした負け犬が、テレビの中で声高らかに吼えている。

 

 そして奴が指で指し示す先には舞い踊るフロンタルのアップを映すモニターがあった。

 

「ナナイには分かるまい! 何度も社会的に殺される苦痛が!」

 

 もちろん分かる筈がない。

 

 というか、そんな物を何度も味わうのはこの男くらいだろう。

 

「フロンタルは影武者などではない! 私を殺しに来たドッペルゲンガーなのだ!!」

 

 更には謎の妄想を口にするシャア。

 

 彼に掛かる心労は頭を振り乱す度にパラパラと落ちる金糸が如実に表していた。

 

「大佐、おいたわしい……」

 

 『だからこそ殺られる前に殺るのだ!』と錯乱するシャアをその胸で慰めていたナナイ。

 

 しかしそんな献身を受けながらも、彼女の意中の相手はキュピーンと何かを察知して妙な事を口走る。 

 

「はっ! 凄まじいバブみを持つ私の母や妹、そして姉になれる逸材がいるような気がする!!」

 

「そういうところですよ、大佐!!」

 

「ロリッ!?」

 

 それを聞いたナナイは渾身の力を込めて、自らの主にブルドッキングヘッドロックをかましたのだった。

 

 

 

【第二の人生】過酷な世界を生きる転生者を応援するスレ【地獄変】

 

657 名無しの転生者

 

前の相談者は酷かったな

 

 

658 名無しの転生者

 

ハイスクールD×Dの転生者は結構いるけど特典が『夜叉鴉』の那智武流だからな

 

 

659 名無しの転生者

 

せめて人間として生きていける覚醒レベルなら救いもあったろうに、まさかの発動と同時に完全体ときた

 

 

670 名無しの転生者

 

精神も『那智武流』の在り方に侵食されて、悪魔として蘇ったイッセーとアーシアを『反造』判定で土に還しちゃうし

 

せっかく主人公の弟っておいしいポジに生まれたのに台無しでゴザル 

 

 

671 名無しの転生者

 

最後の書き込みで何もかもを無に還したって言ってたけど、夜叉鴉ってそんなに強いの?

 

 

672:名無しの転生者

 

反則も反則。

 

この世が出来た時から存在する生と死の管理者だからな。

 

「ひとつの世に一人の那智武流」の法則がある限り何をされようと絶対に死なないし、触れるモノは物質だろうがエネルギーだろうが、それこそ霊魂でも土に還っちまう

 

 

673:名無しの転生者

 

オーフィスだろうとグレートレッドだろうと命がある以上は絶対に勝てない

 

一方的に無に還されるだけ

 

 

674:姉さま命

 

なんかヤバい転生者が来てたみたいだね

 

『夜叉鴉』とか懐かしすぎでしょ

 

 

675:名無しの転生者

 

姉さま命、生きてたのか!

 

 

676:名無しの転生者

 

生還おめ!

 

 

677:名無しの転生者

 

幼女と再会はできたか?

 

 

678:姉さま命

 

バッチリさ!

 

これを見よ!!

 

【ミユに頭を抱きしめられてアへ顔を晒すミウ・目に黒線あり】 

 

 

679:名無しの転生者

 

これが姉さま命のお姉さんか 

 

つーか、ちっちゃ!

 

 

680:名無しの転生者

 

姉さま命が乙女がしてはいけない顔をしている件

 

 

681:名無しの転生者

 

お前はメイドラゴンの才川リコか

 

 

682:名無しの転生者

 

とはいえ幼い身体から滲み出るこのバブみ……

 

ふつくしい

 

 

683:名無しの転生者

 

俺もなでなでされてぇ!

 

 

684:姉さま命

 

>>680

 

姉さまだから仕方がない

 

>>682 683

 

コイツ等はバラバラ……ですわ 

 

 

685:名無しの転生者

 

お前等、コイツの基礎人格が誰か忘れたのか?

 

 

686:名無しの転生者

 

ヤベえ姉御に殺られたくなかったら自重しろ

 

 

687:名無しの転生者

 

姉さま命のシスコンぶりは今に始まった事じゃないからいいとして、何かあったのか?

 

 

688:姉さま命

 

そうだった

 

すまないがこれを見てくれ

 

【踊り狂う去勢された全裸の姿】 

 

これをどう思う? 

 

 

689:名無しの転生者

 

ぎゃあああああああっ!?

 

 

690:名無しの転生者

 

眼が…眼がァァァァァッ!? 

 

 

691:名無しの転生者

 

幼女達の温かい抱擁がアゴい笑顔に汚染されていく……

 

 

692:名無しの転生者

 

なんか実写ガンダムゲーしたくなった

 

 

693:姉さま命

 

フル・フロンタルとネオジオンがエラい事になってる

 

このままではアクシズ落としなんて無理かもしれん

 

 

694:名無しの転生者

 

ちょっと待ってくれ!

 

どうしてこうなった!? 

 

 

695:姉さま命

 

シン兄さまに聞いた話だと、こんな感じ

 

①インダストリアル7付近でフロンタルがロンドベル隊に襲撃を掛けて来た時、姉さまが奴から全裸でアゴい笑顔を浮かべながら勧誘されるビジョンを受信する=フロンタル、ロンドベル内で変態認定される 

 

②ネオジオンが連邦から核ミサイルを奪取しようとマイノット基地を襲った際、核の運搬先を共感能力で探そうとした姉さまがフロンタルからアンジェロと【ホイホイチャーハン!】している映像を受信。姉さまがギャン泣きしながら戦場にいる全員に発信した所為で、フロンタルがロリコン・ホモという人間のクズ認定される。同時に何故かシャアの人望も下がる

 

③姉さまと偶然出会ったセイラ・マスがNTの共感能力でマイノット基地の惨劇を知ってブチキレ。クマから引き継いだ思念データを映像化した物と、Z‐BLUEの証言に姉さまの精神科治療カルテを証拠に、アストライア財団を使ってフロンタルとシャアを告訴する

 

④ネオジオンの世間における評判が垂直落下。スポンサーのモナハン・ハバロも人体実験とかで逮捕される。シャアが姉さまへの性的虐待の懲罰で、フロンタルと親衛隊を性転換&アイドル化。使った曲がラクスの『静かな夜に』のアレンジだったせいでプラントガチキレからの宣戦布告←今ここ

 

 

696:名無しの転生者

 

フル・フロンタルが災厄過ぎて草

 

 

697:名無しの転生者

 

え、なにこれ?

 

幼女ルートってこんな話あったっけ!? 

 

 

698:名無しの転生者

 

あるわけねーだろ!

 

こんなシナリオ出したらT監督とS社がブチキレるわ! 

 

 

699:名無しの転生者

 

というか、姉さま命はこんな騒ぎになるまで気づかなかったのか?

 

 

700:姉さま命

 

システムの管理下にいた時は、基本的に外部とは遮断されていたからね

 

姉さまを見張ってた監視も共感能力のイメージとかは捉えられないし、それ以前に奴等は必要最低限の情報しかくれなかったもん

 

 

701:名無しの転生者

 

あーうん、そうだよな

 

こんな不祥事を必要とか思わんよな

 

 

702:名無しの転生者

 

情報統制って洗脳の初歩だしな

 

 

703:名無しの転生者

 

それで相談したい事って?

 

 

704:姉さま命

 

姉さまが全裸にトラウマを持っているみたい

 

その映像を見た時も半泣きでおもらしするくらいショック受けてたし

 

とりあえず軍属から外された全裸を合法的に抹殺する方法を 

 

 

705:名無しの転生者

 

いや 殺しちゃダメだろ 

 

 

706:名無しの転生者

 

アイツ、一応エタニティフラットを破る為の特異点だから 

 

 

707:名無しの転生者

 

それよりも幼女のおもらしについて詳しく 

 

 

708:姉さま命

 

>>707

 

ブッ殺すぞ

 

 

709:名無しの転生者

 

安定のシスコンで安心した

 

 

710:名無しの転生者

 

というか、今Z‐BLUEってどの辺よ?

 

 

711:姉さま命

 

今はミケーネ戦のダメージを修復する為にメリダ島と日本で部隊を二つに分けてる

 

私達はメリダ島行き

 

 

712:名無しの転生者

 

ああ、旧ジオン残党軍との戦いになるルートか

 

 

713:名無しの転生者

 

原作だとアムロに刺客を送ってたのに、どうしてこうなったんだ全裸ぇ……

 

 

 

 

 どうも、ドクターストップがまだまだ解けない幼女です。

 

 日本を離れて数日、私達は無事にメリダ島へ辿り着く事が出来た。 

 

 そして今日は強化が終わったゲシュペンストのテストである。

 

 艦から発進した漆黒の機体は進化したフライトユニットの慣らし運転からフルスロットルの好調で、各種武装の作動も問題なし。

 

 何だかんだ言っても心配だったんで、これには幼女も一安心だ。

 

 いっしょに見ていたアストナージさんが言うには、スペック的にはゼータ以上なんだってさ。

 

 ただ、ちょっと気掛かりな事もあったりする。

 

 私には青空と大海原の間を舞うゲシュペンストがこう言っているように見えたんだよ。

 

 自分にはまだ先がある、そしてその力が必要になるって。

 

 神様道場が終わってからというもの、私はメカの気持ちが何となく分かるようになった。

 

 多分『めいきょーしすい』の影響なんだろうし、一緒に戦う機体達の気持ちが分かるのは素直に嬉しい。

 

 けど、こういう時は判断に困るんだよねぇ。

 

 私はあくまで被保護者な幼女でありますことよ?

 

 だから『OK、パワーアップ!!』とはいきません。

 

 なのでこういう時は持ち主に相談である。

 

 人機一体という言葉もあるんだしさ、パイロットと機体の間に秘密を挟むのはよくないもんね。

 

「……ギリアムおにいさん」

 

「RVの仕上がりは上々だ、ありがとう」

 

 テストを終えて降りていたギリアムさんに声を掛けると、イケメンさんの清々しい笑顔を返ってた。

 

 お礼を言われるのは嬉しいけど、機体の方が納得してないのですよ。

 

「……ゲシュペンスト、いってる。まださきがあるって」

 

「なんだって?」

 

「……XN」

 

 ゲシュペンストから伝えられた単語を聞くと、ギリアムさんはすごく怖い顔をする。

 

「それもゲシュペンストが言っていたのか?」

 

「……ん」

 

 私が頷くとギリアムさんは少し悩む素振りを見せた後でこう言った。

 

「すまないが強化は少し待ってくれ。必要なら声を掛ける」

 

「……わかった」

 

 どうやらギリアムさんとXNには何やら事情があるようだ。

 

 こういうのに許可なく踏み込むのはマナー違反と幼女は学びました。

 

 なので、ここは華麗にスルーしておこう。

 

 話は変わるけど、日本からメリダ島へ着くまでの間に部隊の方にも少し変化があった。

 

 それはネオジオン出向組の3人がアクシズに帰ったことだ。

 

 理由はプラントの襲撃に備える為だってさ。

 

 クェスのお姉さんは『大佐、大丈夫かな?』とシャアの事を心配し、黄色と緑の指揮官機に乗っていたギュネイさんは『俺はこんな下らない戦争をする為にネオジオンに入った訳じゃない!』って愚痴ってた。

 

 あと緑の四枚羽なMSに乗っているマリーダさんだけど、分かれ際に私の頭を撫でながら『妹と仲良くな』って言ってくれたんだ。

 

 凄く優しい撫で方で気持ちよかったんだけど、その時少し寂しいと羨ましいって思いが伝わってきたんだよね。

 

 たしかミウとじゃれ合っている時もこっちを見てたっけ。

 

 その事を思い出した私はマリーダさんに屈んでもらうと、頭を抱いて撫でさせてもらった。

 

「……マリーダ、いいこ、いいこ」 

 

 なんてミウにするみたいに撫でたら、何故か物凄く泣かれた。

 

 大人の人が本気で泣くのを見るのは初めてだったのでビビったけど、ここで退いてはあまりにも情が無い。

 

 なんとか踏ん張った私はマリーダさんが泣き止むまで頭を撫で続けたのだ。

 

 その後、マリーダさんは気恥ずかしそうに赤くなった目を拭うと『すまなかった』と言って去っていった。

 

 彼女にも何か訳があるんだろうけど、そこに踏み込むのはマナー違反だ。

 

 私のペッタンな胸が少しでも役に立ったのなら良しとしよう。

 

 そんな別れを挟んでメリダ島に来た私達は、ミスリルの基地で機体の大修理を行う事になった。

 

 機動兵器だけじゃなくて戦艦まで手入れするとあって、メカニックの皆は大わらわ。

 

 さらには封印していたクマさんもウチにあるという事もあって、テッサお姉さんも大騒ぎだった。

 

 聞けばアマルガムが基地を襲撃した時に盗まれたらしいので、ミスリルの皆が驚くのは当然だよね。

 

 此方の事情を説明して納得してもらったけど、ミウに飛び火しないかと正直ドキドキでした。

 

 そんな騒動も何とか収まり、今はこうして新生ゲシュペンストのテストも無事に終わったわけだ。

 

「君はもしかしたら人の上に立つような人間なのかもしれないな」 

 

 心配事を一つ片づけて所用の為に別のハンガーへ向かっていると、こんな声が聞こえてきた。

 

 視線を向ければ、そこにはオードリーさんを囲むようにバナージさんとリディ少尉。

 

 カツさんとハサウェイさん、あとはタクヤさんにミコットさんが話をしている。

 

 声からするに、今の発言はリディさんのものだろう。

 

「あ! ゲシュペンストのテストはどうだった?」 

 

 なにやら難しい事を話しているなと思っていたら、タクヤさんが私に声を掛けてきた。

 

「……だいせいこう」

 

「そっかー! 俺も見たかったなぁ!! 他の機体を整備してて今までネェル・アーガマの格納庫にカンヅメだったんだよ!!」

 

 タクヤさんってゲシュペンスト改造の設定を決める時にいたもんね。

 

 色々と意見を出してたみたいだったし、その辺も気になってたんだろう。

 

 そんな事をポケッと考えていると、オードリーさんがこちらに来た。

 

「マリーダのこと、ありがとうございます。貴方のお陰で帰る時の彼女の顔は随分と明るくなってました」

 

「……おやすいごよう」

 

 ミウやレイお姉さんの反応から察するに、私のぷくポンなお腹は癒し成分が含まれているようだ。

 

 それが活かされるのなら持ち主としても本望である。

 

「マリーダはきっと貴女とミウさんに亡くなったお姉さんと自分を重ねていたのでしょう。だからこそ、あの時は貴女に甘える事が出来たのだと思います」

 

「……ミユはねぇね。ギュッするのとくい」

 

 そう胸を張った瞬間、私の脳裏に閃くモノがあった。

 

『私の母や妹、そして姉になれる女性がいるような気がする!!』

 

「……シャア?」

 

「シャアがどうかしましたか?」 

 

「……ううん」

 

 思わず口を衝いた呟きにオードリーさんが問いかけてくるけど、私は首を横に振る。

 

 フロンタルならともかく、シャアはあんな事言うはずないよね。

 

「ミユちゃん、少しいいかな?」

 

 プルプルと頭を振って妙な感覚を振り払っていると、今度はハサウェイさんが声を掛けてきた。 

 

 何だか知らないけど構われているなぁ。

 

「……なに?」

 

 そう問い返すと彼は少し口ごもった後で、意を決したように言葉を紡ぐ。

 

「僕にガンダムをくれないか!」

 

「……ん?」

 

 そんなハサウェイさんから出た言葉は、あまりにも斜め上の要求だった。

 

「君はモビルスーツをパワーアップできるんだろう? だったら僕のジェガンもガンダムに出来る筈だ!」

 

「ハサ! お前クェスがネオジオンに帰ったからって!」

 

「カツ兄さんには分からないよ! 僕はシャアからクェスを取り戻す! そのためにはガンダムが必要なんだ!!」

 

 止めようとするカツさんの言葉に耳を貸そうとしないハサウェイさん。

 

 その強い意志はビンビン伝わってくるんだけど、簡単にいいよとは言えないよね? 

 

 けれど、その沈黙がハサウェイさんには気に食わなかったらしい。

 

「なんで黙ってるんだよ!? アムロさんやカツ兄さん達は簡単に変えたじゃないか! どうして僕じゃダメなんだ!!」

 

『そりゃあ実績が無いからでしょ』

 

 どう言ったものかと考えていた私の代わりに答えを返したのは、抱っこしていたひーちゃんだ。

 

「……実績だって?」

 

『そう。アムロ大尉たちは言うまでもなく、カツさんだって二度の大戦を潜り抜けたベテランパイロット。対する君は前のフィフス・ルナ戦が初陣だったよね?』

 

 ひーちゃんの指摘に苦い顔で黙り込むハサウェイさん。

 

 まあ、実績って話になると私も大きい事は言えないんですけどね。

 

 やらかしも多いし。

 

『そんな素人に毛が生えた程度の人に、ガンダムなんて渡せるわけないじゃん。それに君って私達からしたら恩人の子供なんだよ。それを死地に放り込むなんて輪を掛けて無理に決まってるでしょ』 

 

 立て板に水を流すように言葉を並べるひーちゃんに怯むハサウェイさん。

 

 ぶっちゃけ、私達がダメだって思う理由は主に後半なんだよね。

 

 恋は盲目なんてよく言うけれど、ハサウェイさんに何かあったらブライト艦長は立ち直れないだろうし。

 

 というか、クェスさんがシャアを選んだのならこのお兄さんが口出ししても仕方なくない?

 

「だったら…だったら僕とシミュレーターで勝負しろ!」

 

「……う?」 

 

 けれど、ひーちゃんの意見に返って来たのはこんな斜め上の宣言だった。

 

 いや、待って待って。

 

「……どうして?」

 

「要するにガンダムを渡せないのは僕の実力が分からないからなんだろう? だったらシミュレーターで僕が勝ったら断る理由はない筈だ!!」

 

 実力云々の話じゃなくて、私達はハサウェイさんに危ない事をしてほしくないんだけど……

 

『いいよ。その勝負、受けてあげる』

 

 そんな風に困っていた私をよそに、ひーちゃんは声高にハサウェイさんの挑戦状を受け取ってしまった。

 

「……ひーちゃん?」

 

『ここは受けといたほうがいいよ。これからずっと絡まれるのもウザいし、実力で黙らせたら無茶も言わないでしょ』

 

 どういう意図かと問いを投げると、『めいきょーしすい』由来のテレパシーで答えを返してくるひーちゃん。

 

 むむ、そういう解決方法もあるのか。

 

『私達に勝ったら君の望み通りジェガンをガンダムにしてあげる。その代わり、君が負けたらジェガンがコレになるからね』

 

 そう言ってひーちゃんが目から光りを放つと、それが当たった壁に一つの姿が浮かび上がる。

 

 うーんと……なんだろう、コレ?

 

 ザクっぽい顔に頭と一体になった体は緑の楕円形。

 

 手足もヒモっぽいし、あとなんで額に『ジ』って書いてあるのか。

 

「あのさ、これって何なのかな?」

 

 戸惑いがちに聞いてくるバナージさんに、ひーちゃんは誇らしげな声でこう答えた。

 

『とある世界でジオン軍が開発した超量産型МS、サクだよ!』

 

 このサク、ひーちゃんが言うにはパーツは全部で7つ。

 

 模様うんぬんはシール1枚で表現されるという、駄菓子のおまけについてるプラモと同じレベルで造れるМSだそうな。

 

 もちろんそんな機体が高性能な訳が無く、ビームライフルどころか下手をすると頭のバルカンでも壊れちゃうんだってさ。

 

「ふざけるな! こんなの使い物になるワケがないだろう!!」

 

 当然ハサウェイさんは憤慨する。

 

 愛機をこんな愉快物体に変えられては、彼が思い描くクェスさんのナイトなんて夢のまた夢だもんね。

 

『だったら、この話はなかったという事で。ミーちゃん、部屋に帰ろ』

 

 けれど、そんな彼の怒声にひーちゃんは至極冷静に答えを返した。

 

 今回の件は私達に受ける理由は全く無いワケで、それを撤回してくれるならこちらとしても大助かりだ。

 

「待て! わかったよ、やってやるさ!!」

 

 でもハサウェイさんは意地になったみたいで、結局諦めてくれませんでした。

 

 私ってば、まだドクターストップ解けてないだけど……

 

 シミュレーター勝負だったらいいのかな?

 

 

 

 

 そんな格納庫での会話から一時間が経ち、勝負の時間が訪れた。

 

『送ったデータの慣らしをする為に時間を取ったけど、そっちは大丈夫かな?』

 

『ああ。そっちこそ例の化け物ハロは使うなよ。性能差がありすぎて勝負にならないからな』

 

「……ん」

 

 通信モニター越しに映るハサウェイさんの言葉に私はしっかりと頷いて見せる。

 

 今回のルールだとハサウェイさんはジェガンを変える予定の……たしかクスィーってガンダムを使う。

 

 対する私はハロを禁止されているので、改修が終わったばかりの第三の乗機に乗り込む予定だ。

 

『全システム問題なし! せっかくだし今回の模擬戦で操作になれちゃおう!!』

 

「……がんばる」

 

 クマさんやハロに比べて無骨なコクピットの中、ひーちゃんの励ましを受けた私はカッチンを通して機体へと意思疎通を図る。

 

 なにせこれから命を預ける事になる相棒なのだ。

 

 コミュニケーションは取っておくに越した事は無い。

 

『これはまた随分と小さなお嬢さんだ』

 

 そうして集中の度合いを深めていくと、遠くから響くように渋い壮齢のものであろう男性の声が脳裏に過る。

 

 これが『めいきょーしすい』で拾い上げた、機体の意志が発する声だとすぐに分かった。

 

『私は戦う為に生み出された。戦火で焼け爛れた大地を無限軌道で踏み固め、眼前に立ち塞がる物は全て火力によって撃滅する』

 

 彼の言葉と共に私の脳裏に浮かんだのは過酷な戦場だった。

 

 戦闘ヘリが空を飛び、見た事もない機動兵器が互いに銃火を交える。

 

 それによって、地下に建てられた都市は瞬く間に砕かれ炎に沈んでいく。

 

 誰も彼もが己の都合で牙を剥き合う、騙し騙されが当たり前の世界。

 

 そんな中を彼はひたすらに身体を鎧う鋼と圧倒的な武器の威力を頼りに駆け抜けてきた。

 

 ある時はレーザーブレードを巧みに振るう剣豪を、またある時は高速で飛び回る隼のような射手を粉砕して。

 

 けれど、そんな彼の道行きも終わりを迎える時が来た。

 

 相手は名も知らぬ傭兵。

 

 漆黒の機体を駆る敵は彼の装甲を砕き、自慢の砲もへし折った。

 

 主と共に炎の中に消える間際、彼が望んだのはただ一つ。

 

『私はまだ戦える! 戦いたいのだ!!』

 

 今わの際にあってもなお、鎮火する事のない闘争本能の叫びだった。

 

 そんな彼の生きざまを示すビジョンが終わった後、声は私に一つの問いを投げる。

 

『さてお嬢さん、お前は何のために戦う?』

 

 何の為に戦うか……。

 

 こんな体の私が戦場に出る理由は色々とある。

 

「……いきるため」

 

 だけど究極的に言えばこれだろう。

 

 家族を失えば生きていけない。

 

 仲間が死ねば一生引き摺るに違いない。

 

 何より、生まれた時に定められた運命が普通の子供として安穏と暮らす事を許さない。

 

 私が生きる為には戦乱を治めて、この世界を平和にしなければならない。

 

 そして同時に馬鹿な考えを持つ者に、私やミウを利用させない為に力を見せつける必要もある。

 

 だからこそ戦うんだ。

 

『悪くない答えだ。私のかつての主もお前と同じ理由で戦場を駆けた。共に轡を並べた者、敵対した者も含めて、あの戦場にいた全ての者がな』

 

 私の答えが気に入ったのか、声は上機嫌に言葉を紡ぐ。

 

 私が垣間見た過酷な戦場には、そんな人たちがいたのか。

 

『いいだろう。拾ってもらった恩もある、君を新たな主と認めよう』

 

「……ありがと」

 

 私がそう答えると、こちらの意志を汲んだ機体はゆっくりと仮想空間を前に進み始める。

 

『では行こうか、幼きレイヴンよ』

 

 彼がそう言い残すと私の意識は現実へと浮上する。

 

 全天周囲モニターにの右端に浮かぶサブカメラの映像、そこに映る右肩には先程まで無いモノがあった。

 

 それは頭に殻を被った子供のカラスが巣から飛び立とうとしているマーキング。

 

 あれはUGセルの操作で作り出した、彼なりの信頼の証なんだろう。

 

『メインシステム、戦闘モードを起動します』

 

 だったら、私も彼の戦績に恥じない戦い方をしなければならない。

 

「……ん。いく、ガチたん!」 

 

 決意と共にスロットルを開けば、けたたましい音と共にキャタピラが床材のコンクリートを削り、私の乗る機体はハンガーから決戦の場へと躍り出る。

 

 今回の舞台は屋内に組まれたロボット用の決闘場のようだ。

 

『これってバトリングを参考に作られてるみたいだね』

 

 全天周囲モニターが映す光景に感嘆の息を漏らしていると、傍らのひーちゃんが説明してくれた。

 

 ちなみにバトリングというのはATで行う賭け試合みたいなものらしい。

 

 天井に設置されたライトが照らす私の機体は、戦車の砲塔部分にロボットの上半身が生えたような無骨なものだ。

 

『なんだあれ……ガンタンクか?』

 

『ザウート……じゃないよな。ミウ、アレが何か知っているか?』

 

『あ…あれってもしかしてアーマード・コア!? しかもガチタンって、なんでなの姉さま!』

 

 ふむ、ミウはガチたんのこと知ってるみたいだ。

 

 もしかしてこの子もジェネレーションシステムっていうのに登録されていたのかな?

  

 さて、ハサウェイさんが現れるまで私とガチたんの出会いについて話そう。

 

 彼と出会ったのは日本を離れて二日目の事だった。

 

 その日私はリハビリ兼ストレス解消として、船の周りをハロでお散歩していた。

 

 すると、『めいきょーしすい』が海の中からこちらに呼び掛ける声を拾ったのだ。

 

 ハロで水中にもぐってみると、半ば残骸になったガチたんが海底に沈んでいた。

 

 普通ならスクラップだと思うところだけど、私は彼の戦いたいという願いを聞いてしまった。

 

 内容は物騒だけど、その切実な思いを無視できなかったのだ。

 

 そこでガチたんを回収した私は、ハロが生まれたクォーターの24番格納庫で彼の修理を行った。

 

 もちろん幼女にそんな器用な真似はできないので、作業の方はUGセルにお任せである。

 

 そしてゲシュペンストの改造が終わる少し前に、ガチたんの方も改修が完了したという訳だ。

 

 さて、そうしている間に反対側のゲートから高速度でガンダムが飛び出してきた。

 

 私が負けたらハサウェイさんに渡す予定のクスィーガンダムだ。 

 

『なっ!? それが君の機体なのか!』

 

「……ん。ガチたん」 

 

 ガチたんの姿を見て目を見開いて驚くハサウェイさん。

 

 この子の記憶だと普通にこういうロボットは沢山いたんだけど、何かおかしいのかな?

 

『そんなタンクモドキでガンダムと戦おうって言うのか! 馬鹿にするな!!』 

 

 そして何故か怒りだしたハサウェイさんは、ガンダムを急加速させるとこちらへビームライフルを放ってくる。

 

 一発、二発はガチたんの周りにある土を削り、三発目は真っ直ぐ胴体へ飛んでくる。

 

 けれどピンクの閃光は鋼の身体を穿つ前に、機体を包むラムダドライバの障壁によって無散してしまう。

 

『ビームが弾かれた!? Iフィールド持ちか!』 

  

 そんなの無いよ?

 

『だったら……僕にも使える筈だ! 行け、ファンネルミサイル!!』

 

 ビームが効かないと判断したハサウェイさんが次に打った手は、ミサイルの連続発射だった。

 

 この思念からすると、あのミサイルはビットみたいにパイロットの意志で動くんだろう。

 

 さすがにそんな物を棒立ちで受ける訳にはいかない。

 

「……えい」

 

 私がカッチンから思念を送ると、ガチたんの左肩に備わった短い煙突のような物からミサイルが発射される。

 

 そしてそれは空中で鳳仙花のタネのように弾けると、バラ撒かれた小さな金属弾は次々と襲い来るファンネルミサイルを撃ち落としていく。

 

『対地ミサイル迎撃機構!?』

 

『あんな物積んでるなんて、アセン渋いな!』

 

 ミサイルの炸裂音と共に聞こえてくる、オズマ隊長とミウの驚きの声。

 

 ちなみにこのミサイル迎撃機能は『タンクといったらこれでしょ!』とひーちゃんが付けた物である。

 

 あとミウはガチたんについて詳しそうなので、模擬戦が終わったら聞いてみよう。

 

『クソッ! 遠距離がダメでも懐に飛び込めば……!』

 

 さて、この対戦はある意味ハサウェイさんの身の安全が掛かっている。

 

 今の彼にあのガンダムを与えたら、下手をしなくてもネオジオンのアジトまで飛んでいきかねない。

 

 けど、ハサウェイさんだとシャアに勝つのは無理だ。

 

 下手をしたらギュネイさんにも一方的にボコられるんじゃないだろうか?

 

 それで捕虜になるならまだしも、死んでしまったら後味が悪すぎる。 

 

 だったらここで幼女に負ければ恋で茹った頭にも冷や水を浴びせられるかもだよ!

 

 ……うん、言わないで。

 

 今までのやらかしを考えたら、人の行動をとやかく言える義理じゃないのは自覚してるから!

 

『ミーちゃん、どうする?』

 

「……ミサイル」

 

 私の言葉でガチたんは右肩にあるポッドから六発のミサイルを放つ。

 

 そしてミサイルはガンダムを包囲するように、それぞれが独自の軌道をとる。

 

『ファンネルミサイル!? むこうにも積んであるのか!』

 

『当然! 誰がその機体を造ったと思ってるのさ!』

 

 ミサイルの動きに驚愕しながら突進を止めるガンダム。

 

 残念ながらオールレンジ攻撃に関しては、私の方が一日の長がある。

 

 そして、この状況で足を止めるのは悪手だ。

 

 私が念じるとガチたんの両手の代わりに取り付けられた銃口が火を噴く。

 

 そこから音速を超えて放たれるのは、短針型に改良されたダインスレイブだ。

 

 そしてダインスレイブ達がガンダムに食らいつこうとしていたミサイル達を背後から射抜くと、トリコロールカラーの機体は紅蓮の炎へ飲み込まれる。

 

『ぐぅっ!? いったい何を……!』

 

 通信越しにハサウェイさんの戸惑う声を聞きながら私は次の手を打つ。

 

「……ガチたん、たいほう」 

 

『OK! フィールドバレル展開、座標軸固定! マスドライバーキャノン発射!!』

 

 機体下部から6本の杭が機体を固定すると、ラムダドライバを使ってエネルギーの銃身が造られる。

 

 そしてその銃身からトンデモない速度で放たれるのは、ゴツい超合金Zの砲弾だ。

 

 発射と同時に衝撃波が周辺を薙ぎ払い、バレルから飛び出した砲弾は赤熱化しながら第一宇宙速度で敵へと襲い掛かる。

 

 知ってる? 第一宇宙速度って音速に換算すると推定マッハ23、時速だと28400キロなんだって。

 

 ガンダムの機動性がいくら凄くても、こんな速度でカッ飛ぶ鉄の塊を躱せるわけがない。

 

 その視界が爆炎で塞がれているなら猶更だ。

 

『うわあああああああっ!?』

 

 なのでハサウェイさんの悲鳴が聞こえてきた後、私のモニターには勝利の文字がデカデカと映る事になりました。

 

 勝負も終わってガチたんから降りると、ハサウェイさんがあんな機体を使うなんてズルだって言ってきた。

 

 けれど『ミユにまけてたら、シャアにかてない』って返したらガックリと肩を落として帰っていったよ。

 

 それでミウに聞いたら、ガチたんはACってロボットで全然違う世界のモノなんだってさ。

 

 多分、撃墜された時に時空振動に巻き込まれて海底に転移したんじゃないかって事らしい。

 

 きっとあの闘争に溢れた地下世界は、ガチたんの故郷の様子だったんだろう。

 

「姉さま! 素敵でしたわ!!」

 

「……ありがと、ミウはいいこ」

 

 こうして甘えてくるミウの頭を撫でていると、格納庫の中にアナウンスが鳴り響いた。

 

『乗組員へ連絡! これより本艦は旧ジオン軍のダカール侵攻阻止に動く! 各員は準備を怠らないように!!』

 

 どうやら新しい戦いがまた始まるみたいだ。

  

                 




ガチたん

ミユが次元転移で海底に現れたACをサルベージ、UGセルを用いて改修した機体。

機体ネームの由来はガチタンをミユが『ガチたん』という名だと勘違いした為。

ミユが乗る為に陽蜂から各種に改修が成されており、ジェネレーターはバスターマシン式縮退炉。

フレームおよび装甲には超合金Zが使用されており、フレームもサイコフレームへと換装されている。

武装は武器腕となった両腕に短針型速射式ダインスレイブ。

左肩には対地ミサイル迎撃用の散弾発射装置。

右肩には6連装ファンネルミサイル。

そして背部にはフィールドバレル式マスドライバーキャノン『OGOTO・極』が装備されている。

運用はラムダドライバのフィールドと超合金Zの防御力を駆使して敵の攻撃を弾き、火力を以て制圧するというガチタンの基本戦術となる。

問題点はラムダドライバの仕様をミユと陽蜂に頼っている為、二人が乗らないと最大武装であるOGOTO・極が使用できない事。
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