幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 碇シンジが新たなスキルを習得しました。

 スキル『薩摩兵児』

・気力120で発動。

・一の太刀の威力が2倍(デメリット・一の太刀を放った際、相手の反撃を受けると通常の3倍のダメージを食らう。「一撃になんもかも込め、後の事なぞ考えるな」)

・相手に向かって進む際、移動力+5(デメリット・後退はできない)

・攻撃を行う際、命中+30、回避-30の補正が掛かる。

・性格が超強気に変化。



幼女と謎の娘さん

 

 うす暗いネルフ指令室。

 

 そこでは司令である碇ゲンドウが自分の机でいつものように頬杖をついており、副指令の冬月は部屋の脇に備わったソファに座って詰将棋の本を読んでいた。

 

 先程までサードの命令違反を叱責していた為か、部屋の空気はあまり良いものではなかった。

 

 そんな中でゲンドウは重々しく口を開く

 

「冬月」

 

「なんだ?」

 

 名を呼ばれて本から視線を外す冬月。

 

 しかしゲンドウは彼の方を見ようとはせずに言葉を続ける。

 

「先程シンジが私に言った『チェスト・ネルフ』とはどういう意味だ?」

 

 普段の鋼鉄を仕込んだような声音ではなく、どこか震えがあるゲンドウの問いかけに冬月は顎に手を当てる

 

「おそらくは『チェスト関ヶ原』と似たようなものだろう」

 

「なんだ、その『チェスト関ヶ原』というのは?」

 

 聞き慣れない言葉に眉を顰めるゲンドウ。

 

 そんな彼を見ながら冬月を続ける。

 

「関ヶ原の戦いで撤退を余儀なくされた薩摩藩主の島津氏が伝えた言葉だ。一説では『関ヶ原での屈辱を忘れるな』という解釈がなされているな」

 

 冬月の説明にゲンドウはゴクリと固唾を呑む。

 

「つまり……」

 

「ネルフから受けた屈辱を忘れるな。即ちお前をブチ殺すという事だろうな」

 

「……」

 

 あまりにも過激すぎる意見に二の句を継げられないゲンドウ。

 

 しかし参号機との戦いで見せた変わり果てた息子の姿を思えば、一笑に付すなどできようはずがない。

 

「右も左も分からない子供を訓練も無しに実戦へ放り出し、さらには世界最強の部隊に入れて死線を何度も潜らせてきた。挙句の果てには仲間を切り捨てる策の強要だ。親子でも殺される理由としては十分だな」

 

 そんなゲンドウの内心など知らぬとばかりに今までの罪状を並べ立てる冬月。

 

 その顔には何故か諦めとも悟りとも取れない表情が浮かんでいる。

 

「ふ…冬月」

 

「彼は薩摩兵児としての薫陶と鍛錬を受けているようだ。エヴァであの一刀を撃たれたらネルフ本部は受け切れんし、仮にエヴァから降ろしてもどんな手を使ってでもお前を殺しに来るぞ」

 

 そこまでか!?

 

 そこまでのことなのか!?

 

 血のつながりがあれば何をやっても慕われると思っていたゲンドウは組んだ両手の中で盛大に口元をひきつらせた。

 

「早目に遺言は書いておけよ。万が一のことがあったら計画は引き継いでやる」

 

 そう言うと冬月は指令室を後にした。

 

 暗い部屋で一人残されたゲンドウは、唯一持っていた妻の写真に向けてこう問いを投げる

 

「……何故だ、ユイ」

 

 もちろん、写真の中でほほ笑む妻は答えを返してくれなかった。

 

 

 

 

 使徒によるEVA参号機強奪事件の後始末に追われるZ-BLUE日本部隊。

 

 この手の事案で最も役に立つであろう男、ドクター・ウエストは箱根を離れて再び大阪へ来ていた。

 

「相変わらず貧乏天元突破な生活に勤しんでいるようであるな、大十字九郎」

 

「屋上のプレハブ小屋って……ダーリン、アーカムシティより貧乏になってるロボ」

 

「うるせえ、ほっとけ! 地球圏最強部隊にスカウトされたお前等とは違うんだよ!!」

 

 その用件は同郷にして宿敵である大十字九郎とアル・アジフへの面会だった。

 

 もっとも、大十字探偵事務所と手書きの登りが一本立った雑居ビルの屋上に立つプレハブ小屋を見た時は、ウエストは作画崩壊するほど爆笑してエルザは涙をぬぐったが。

 

「それで、汝達は何をしに来たのだ?」

 

「君を笑いに来た、そう言えば満足であるか?」

 

「ぶっ飛ばされてえのか、この野郎!!」

 

 聖人ですらブチキレかねない嘲笑を浮かべるウエストに思わず拳を固める九郎。

 

 この程度の煽りは何時もの事なので、お互いのパートナーが動じる事は無い。

 

「エルザ達はダーリンをスカウトしにきたロボ」

 

「俺達をか?」

 

「うむ。貴様にたこ焼きを恵んだ幼女を覚えているであろう」

 

「かの娘か。また妙な手合いに目でも付けられたか?」

 

「そこの魔導書の言う通り、あの子は少々厄介な星回りにいるようなのである。吾輩や貴様がいるとなれば、奴等がこの世界に手を伸ばしてくる可能性は高い。それ故に化け物退治の専門家であるロリコンたんつぼっ!?」

 

「テメエは余計な事を言わねえと死ぬ病気にでも掛かってんのか!!」

 

 さりげない失言に探偵事務所の看板となった登りでウエストをしばき倒す九郎。

 

 プラスチックの竿がいい感じにしなる為か、その一撃でウエストは頭からコンクリの床にめり込んだ。

 

「つまり、あの娘は邪神にすら目を付けられる可能性がある。だから妾達を引き込もうという訳だな」 

 

「その通りロボ」

 

 逆さの人柱のようになったウエストに代わってアルとエルザは話しを続ける。

 

 九郎にしてもアルにしても、そういう事情なら参加するのは吝かではない。

 

 実際にこの世界で邪神の影を感じている彼等とすれば、厄介な因果を抱える娘を放っておくわけにはいかないからだ。

 

 しかし件の部隊に加わるとなれば、彼等は一つ大きな問題を抱えていた。

 

「実はな、今デモンベインは修理中なんだよ」

 

「そうロボか?」

 

「うむ。中枢機関や術式は無事だが外装や四肢はこの世界に来る際に大破してしまった。自己修復の術式を走らせておるが今は歩く事もできん」

 

 苦虫を噛む九郎とアル。

 

 しかし、そんな二人の悩みを笑い飛ばす男がここにはいた。

 

「心配ご無用であーる! その程度の問題、この一億年に一度の大天才、ドクタァァァァァァ! ウエストには赤子の手をナデナデする程度に容易いことなのである!!」

 

「いや、捻るんじゃなくて撫でるのかよ」

 

「しかし、どうする? デモンベインは今や完全な鬼械神、かつてのように貴様が修理するわけにはいくまい」

 

「世の中にはこんな言葉がある! 代替え機と!!」

 

 そうしてウエストがボタンを押すと、天から巨大な影が降臨したのだった。

 

 

 

 

 どうも……なんて言ってる場合じゃない!

 

 腐肉塗れのモビルアーマーと対峙している幼女です!!

 

 大統領やドーリアン外務次官たちがいる議事堂へまっしぐらなザリガニロボ・ゾンビ。

 

『な…何なのコイツ!?』

 

『この感じ……もの凄く気持ち悪い』

 

『悪意が…渦巻いている。ジオンだけじゃない、例のザフトの兵達の物まで』

 

 飛行形態になったファさんのメタスとフォウさんの乗るバイアランが両手のビーム砲でけん制を行い、その直後にゼータガンダムが巨大砲台から太いビームを放つ。

 

 身体の大きなザリガニロボは躱す事も出来ずに全て食らうんだけど、それで飛び散ったのは特徴的な赤い装甲だけだった。

 

 中の腐肉は少し焦げた程度……いや、それも再生している。

 

『奴はダメージを受けていないのか!?』 

 

 なんとも気持ち悪い光景に驚くアンドレイ少尉。

 

 その声を耳にしながらも私はザリガニロボが放つ憎悪の念が膨れ上がるのを感じていた。

 

「……こまった」

 

『どうしたの、ミーちゃん?』

 

「……あれ、こうげきうけると、ぞうおがおおきくなってる」

 

 ザリガニロボの中で渦巻く連邦への恨みは健在だ。

 

 放っておいたら確実にヤバい事しか起こらないと思う。

 

 どうしたものかと考えても、私のミニマム脳みそで妙案が浮かぶはずも無し。

 

 そんな風にウンウン頭を悩ませていると、今度は後ろからガチたんの頭上を越えて三条のビームがザリガニゾンビに叩き込まれた。

 

 いったい誰がとカメラを回すと、そこにはクマさんとデスティニー、そしてゲシュペンストが空を飛んでいた。

 

『なんなんだよ、ありゃあ! シャンブロがあんな風に化けるなんざ聞いてねえぞ!!』

 

『み…ミウ、その喋り方どうしたんだ?』

 

 今までとはガラッと変わった乱暴な言葉遣いをするミウに驚くにぃに。

 

 実際私もコクピットの中で「ぴっ!?」と妙な声をあげてしまった。

 

 お…おちつけ、私!

 

 たとえ喋り方が変わっても個性の一つ! 可愛い妹には変わりない!!

 

『その辺にしておけ、二人とも。敵はまだ生きているぞ』   

 

 ギリアムさんの言葉にモニターをザリガニロボへ向けなおすと、半分くらい無くなった装甲を腐肉で補強した奴が先程の攻撃など意にも介さないと言わんばかりに街道を進んでいる。

 

『あれはいったい何なんだ? 生物か? それとも機械なのか?』

 

『そこまでは俺にも分からん。だが一つだけ分かることがある』

 

『ソイツはなんだ……ゴホンッ! なんなんですの?』

 

『あれは害意を持つ人非ざるモノが関わっているという事だ。巨人の亡霊か悪魔かは知らんがな!!』

 

 にぃにやミウの言葉にそう返すと、ゲシュペンストは構えていたメガバスターキャノンを放つ。

 

 ゼータガンダムのビーム砲に勝るとも劣らない紫色の閃光、それは赤い装甲をさらに削ったけど腐肉を減らすことは出来なかった。

 

『魔術による措置か、物理攻撃に高い耐性があるようだ。サイバスターもこちらに来ていれば……』

 

『マサキ達は日本だもんな。呼べば来るかもしれないけど間違いなく道に迷うだろうし』

 

 通信モニターに映るギリアムさんとにぃにが苦い顔を浮かべる。

 

 そんな中、ミウがこちらへ通信を繋げて来た。

 

『姉さま、大丈夫ですか?』

 

「……ん。ミウはへいき?」

 

『私は問題ありません。ですが、あの敵と相対するのは姉さまには負担でしょう。私でも怨嗟の声が聞こえるほどの負の想念を纏っているのですから』

 

「……だいじょうぶ。ミユ、おまもりある」

 

 そう言って私はカラスさんスーツの襟を開けて首飾りを引っ張り出す。

 

 五芒星を象った黄金のペンダント、これは大阪でアルお姉さんからもらったものだ。

 

 お守りと言われているのは伊達じゃなく、これを付けているとあの手の悪い物を見ても結構平気なのだ。

 

『綺麗なペンダントですわね。それはどこで?』

 

「……たおれていたひとに、たこやきあげたおかえし」

 

 そう答えるとミウの顔に驚きが浮かぶ。

 

 うん、やっぱり返礼としては高すぎるよね。

 

 もう少し話をしたいところなんだけど、今は和気あいあいとしている暇はない。

 

 あの化け物はどうしたものかと再度考えを巡らせていると、脳裏に声が響いた。

 

(聞こえるか、娘!)

 

「……アルおねえさん?」

 

 突然のことに思わず言葉が漏れる。

 

『どうしたの、ミーちゃん』

 

「……おおさかであったおねえさん、テレパシーしてきた」

 

 ひーちゃんに何があったか伝えると、私は交信する為に集中力を高める。

 

(そうだ! 尋常ではない邪気を感じたので、タリスマンを通して汝に念話を送っておる! 今どこにいる、そして何があった?)

 

 矢継ぎ早に問いかけてくるアルお姉さんに私はしどろもどろになりながら答えを返す。

 

 幼女ボディは念話でも口下手なのだ。

 

(なるほど、状況は理解した。では視覚を同調させよ。妾もその怪異を見定めたい)

 

(……どうするの?)

 

(タリスマンを核として念ずるがいい。汝ほどの感応能力があれば難しくはあるまい)

 

 なるほど、早速やってみよう。

 

 ペンダントトップである五芒星に意識を集中させると、目の辺りが少しムズムズする感覚があった。

 

 多分、これが視覚共有というものなのだろう。

 

(……できた?)

 

(……あれは妖蛆の秘密!?)

 

 しかし私の問いかけに返って来たのは、アルお姉さんが発する驚愕の声だった。  

 

(どういうことだ? あの魔導書の所有者であるティベリウスはすでに打倒しているはず。……魔導書が新たな魔術師を選定したというのか?)

 

 どうやらむこうはあのザリガニロボをゾンビにしている原因を知っているらしい。

 

 となれば、聞くべきことは一つだ。

 

(……たおしかた、おしえて)  

 

(はっ!? そ…そうであったな。───奴は見たところ半ば鬼械神としての性質を持っているようだ。あの腐肉は魔導書による術式に因るものなので、通常の物理攻撃では存在情報を破壊できず効果が薄い)

 

(……ん)

 

(なのでこちらも同じ鬼械神か魔術理論を応用した兵器が必要となるのだが、汝であれば奴を倒す事が可能かもしれん)

 

 なにやら難しい事を並べられておつむがオーバーヒート寸前だったけど朗報が来た!

 

(そのアミュレットには破邪の術式が込められている。汝の類稀なる精神波に退魔の力を与えてくれるだろう。それを機械人形の武具に込めるのだ)

 

 なるほど、わからん!

 

 こういう時はひーちゃんに相談だ!

 

『多分アーバレストがラムダドライバを使っている時みたいに、武装にサイコフィールドを付与するんじゃないかな?』

 

 そういう事なら試してみよう!

 

 そんな訳でまずは意識をお守りに集中!

 

『サイコフィールド出力安定、ラムダドライバ・アクティブ! 力場を腕部へ集中させるよ!』

 

「……はっしゃ」 

 

 私の意思に応じて銃口が紫電を放ち、電磁加速で吐き出された短針はビームを食らってもビクともしなかったザリガニロボの腐肉を吹き飛ばす。

 

「……やった」

 

『本当に効くみたいだね。どうする、主砲で一気に吹っ飛ばす?』

 

「……まちがあぶないからダメ。それよりみんなにちから、おすそわけする」

 

 そう言う私の頭の中に浮かんだのは、ジェミニア戦で行った刹那さんとの合体技だ。

 

 例のGNフィールドを使ったら、みんなに魔除けパワーを分けられると思ったのだ。

 

『なんだ、あれは!?』

 

『あれ、もうモビルアーマーじゃないですよ! それにもの凄く嫌な気配がします!』

 

『迂闊に接近戦は挑むなよ、バナージ! 各員も遠距離戦に徹して相手を削り取るんだ!!』

 

『了解。ゼロ、奴の頭上を取るぞ』

 

『スカルリーダーより各機へ! 議事堂の避難が終わるまで奴の足止めに集中しろ! 何が飛び出してくるか分からん! 警戒は怠るなよ!!』

 

 今までジオン残党の対処にあたっていた皆も集まって、ザリガニゾンビに集中砲火を浴びせはじめる。

 

 彼等の攻撃は殆ど装甲を割るだけなんだけど、バスターライフルとかはちょっとだけ腐肉を焼き払ったりしている。

 

 どうやら高出力の武器は効果があるらしい。

 

 そんな中、私は刹那さんへ通信を繋げる。

 

「……せつなさん」

 

『ミユか。どうした?』

 

「……ジェミニアとたたかったときのみどりいろ、つかえる?」

 

 そう問いかけると刹那さんは気まずそうに顔をしかめる。

 

『すまん。ダブルオーのGN粒子は残り少ないんだ。今はトランザムバーストを使うことは出来ない』

 

「……ん。ごめんね」 

 

 そういう事なら仕方がない。

 

 ああ、そうだ。

 

 アルお姉さんの言ってた事をみんなに伝えないと。

 

「……みんな。あのかいぶつ、まほうつかう。こうげき、きかない」

 

『それはギリアム少佐から聞いている。だが、効果が薄くても足止めする為には手を緩めるわけにはいかん』

 

「……ミユ、まよけもってる。だからミユのこうげきはきく」

 

『そうか! なら君を中心にオフェンスを組み立てたい。すまないが協力してくれ』

 

「……ん」

 

 口下手な幼女ボディでなんとか説明すると、受けてくれたゼクスさんはこう提案してきた。

 

 私としてもそういう形で動くつもりだったので渡りに船だ。

 

 攻撃の中心に置かれるなんて初めてのことだし、ここは頑張らないといけない。

 

 そう気合を入れなおした時だった。

 

 腐肉の一部がめくれ上がり、ザリガニゾンビが何かを吐き出した。

 

 それは機械のプロペラの下に肉の塊が付いた謎の物体だった。

 

『なんだ あれは?』

 

 アンドレイ少尉の疑問の声、その答えはすぐに示されることになった。

 

 再度腐肉を押しのけて現れた眼から放たれた紫紺のビーム、それはプロペラ腐肉に当たると乱反射して辺りに構わず街を壊し始めたのだ。

 

『あれはリフレクターインコムか!?』

 

『総員回避! 食らうとどんな効果があるか分からんぞ!!』

 

 一瞬で散開して散水のようにまき散らされたビームを回避するみんな。

 

 不意打ちに近い形で広範囲攻撃を受けたのに、誰も当たっていないのは流石としか言いようがない。

 

 ちなみに私もしっかりと躱している。

 

 ここに来るまでドヒャドヒャしていたのは伊達ではないのだ。 

 

 そして相手の攻撃を一方的に受け続けるほど、うちの部隊は甘く無い。

 

『まずはリフレクターを潰す! そこっ!』

 

『……左半分は任せろ』

 

 一団の中からいの一番に飛び出したのは、νガンダムとスコープドッグだった。

 

 雨あられと降り注ぐ紫ビームを掻い潜って飛んでいくビームライフルとヘヴィマシンガンの弾丸。

 

 それは狙い違わずに宙を浮いていた肉のプロペラを撃ちぬき、次々と撃ち落としていく。

 

 どうやら機械部分はお守り効果が無くても壊せるらしい。

 

 それにしても流石はアムロ大尉とキリコさんである。

 

 普通はあの弾幕の中へ突撃なんてしないよね。

 

「……ミウ」

 

『ええ、心得てますわ!』

 

 当然私だって見ているだけじゃない。

 

 クマさんが背負うランドセルとガチたんの左肩に仕込まれた発射機構から吐き出されたミサイルは、小刻みに動いてビームを躱すと残ったリフレクターのプロペラに着弾する。

 

「……ファンネルミサイル」

 

『はい。姉さまが使うのを見たので、ビーストにも実装しましたの』

 

 なるほど、これって使い勝手いいもんね。

 

 広範囲攻撃を封じることができたけど、ザリガニゾンビがあんな真似をしてくるとは思わなかった。

 

「……ミーちゃん、たいほうつかう」 

 

『分かった。フィールドバレル・スタンバイ』

 

 これではどんな奥の手を隠しているか分かったものじゃない。

 

 だからこそ、私は街の被害に目をつむってでも奴を倒す事にした。

 

 私達ごと議事堂を吹っ飛ばせる武器があったら、とんでもないことになるからね。

 

 キャタピラの内側から姿勢制御のスパイクがアスファルトに打ち込まれ、背中に折り畳まれていた大砲が前にせり出す。

 

『座標軸固定、弾頭装填完了。バレル形成率100%。ミーちゃん、いけるよ』

 

「……ありがと。しゅほー、はっしゃ」

 

 私の指示と同時に火を噴くマスドライバーキャノン。

 

 しかし超速で襲い掛かる凶弾を前に、ザリガニゾンビは無抵抗ではなかった。

 

 前面の腐肉が左右に割れて現れる機械仕掛けの巨大な砲門、そこから放たれた高出力ビームによってドライバーキャノンの弾丸を迎撃したのだ。

 

『各員、衝撃に備えろ!』

 

『うわあああああっ!?』

 

『チィッ!?』

 

 砲弾とビームが衝突した場所から爆炎と共に衝撃波は周囲へまき散らされる。

 

「……くぅ!?」

 

『ショックアブソーバ、最大! 対閃光防御! あの弾をビームで撃ち落とすとか、ナンセンスだよ!?』

 

 私は地面にスパイクを打ち込んでいたからなんとか耐えられたけど、他の皆は後ろへ下がってしまったようだ。   

 

 そして立ち込める粉塵が晴れると、赤い装甲をすべて失って腐肉の塊になったザリガニゾンビが姿を現す。

 

 やっぱり直撃じゃないと倒せないか。

 

 どうする? こうなったら危険を覚悟で奥の手を使うか?

 

 周囲を腐らせながら徐々に近寄ってくる腐肉を睨んでいたその時だ。

 

『エントリィィィィィィィッ!!』

 

 突然通信機からギターの音と共に絶叫が響き渡ったのだ。

 

 そして天から垂直落下で腐肉へ突き刺さる謎の物体。

 

 なにあれ? ロケット?

 

 いや違う、ドリル!

 

 デッカいスペースシャトルの先端にドリルが付いた特攻マシーンだ!!

 

 突然の事であっけに取られている内にも、先端をギャンギャンと回しながらより深く腐肉へ突き刺さっていくドリルシャトル。

 

 そしてそんなシャトルから投げ出されたのは、これまた両手がドリルになっているずんぐりむっくりなロボットだった。

 

『ひゃーはははははははっ!! どうであるか! これこそ吾輩がジャンク屋から40ペソで購入したゼーゴックとかいう玩具を元に、苦節3日で作り上げた破壊ロボマーク82【君の瞳にドリルクラッシャー! 愛国富士山落とし!!】であーる!!』

 

 ずんぐりむっくり……え、あれってジュアッグっていうの?

 

 ありがとう、ひーちゃん。

 

 ゴホン! ジュアッグの中で声高らかに叫ぶのは、やっぱりというべきかウエスト博士だった。

 

 あんな意味不明なモノを作るのって博士以外にいないよね。

 

『げ…げぇぇっ!? キチガ……ドクターウエスト!? なんでいんの!』

 

 あれ? ミウが凄い大げさに驚いてる。

 

「……ねぇね、スカウトした。ミウあってなかった?」 

 

『そ…そうなんですの。来てからずっと姉さまと一緒だったので会ってませんでしたわ』

 

 そういえばそうだったっけ。

 

 博士って、神様道場の後何処かに行っていて基地にいなかったからなぁ。

 

『ミユ、助けに来たロボ』 

 

 そんな事を考えているとジュアッグから通信が来た。

 

 モニターに現れたのはテンションマックスでギターを掻き鳴らす博士を後ろにしたエルザお姉さんだ。

 

「……ありがと」

 

 なんにせよ、この助っ人は嬉しい。

 

 非常識には非常識じゃないけど、ウエスト博士ならザリガニゾンビに有効な手段を思いつくかもだよ。

 

『幼女よ、君は運がいい。今日は特別にもう二人来ているのである。何をしておるか、さっさと出てこないと破壊ロボと共に爆裂四散するであるぞー!』  

   

 そんな事を考えているとウエスト博士は通信機へ向かって声を掛ける。

 

 するとドリルの柄に備わったハッチが開き、中から一体のロボットが飛び出してきた。

 

『テメエ! 宇宙から垂直落下とか何考えてやがる!! マジで死ぬかと思ったじゃねえか!!』

 

『この機体の衝撃対策はどうなっておるのだ! 妾が術式で保護しなかったらバラバラになっていたところだぞ!!』

 

 それはモスグリーンに塗られたMSサイズの機体。

 

『たぁわぁけぇ! その【デモンへイン】は2ジンバブエドルで買った旧ザクとかいうアンティークを元にした機体! 魔導書による術式制御システム等を載せたらそんなモノ入れる余裕がある訳なかろう! 貴様も魔導師なら身の安全くらい自分で確保するがいい!!』

 

 頭部から背中に流れるトサカや膝の部分に付いた巨大なシールドが特徴的なそれを見た瞬間、身体の奥底から言いようのない寒気が沸き起こってくる。

 

「……ひっ!?」

 

 どうしてだろう? あの機体、もの凄く怖い。

 

『ミーちゃん、どうしたの? 顔色悪いし心拍数も変だよ』

 

「……だいじょうぶ。ちょっとゾってしただけ」

 

 心配そうに見上げるひーちゃんのホログラフにそう答えると、私は深く深呼吸をする。

 

 なんでこんな風に思うのか分からないけど、助けに来た人を怖がるなんてダメだ。

 

 というか、アレに乗ってるのは大十字さん達なんだね。

 

『ジュアッグだなんて、よくあんな骨董品が動いてるな』

 

『というか、それに乗ってるのドクターかよ!』

 

『うむ。嫌な予感がしたから超特急で駆けつけてやったのである。五体投地して感謝するがいい!!』

 

 コミカルに右手のドリルを上げるジュアッグに感心するアムロ大尉に、ウエスト博士の登場に驚くにぃに。

 

 突然の乱入者に混乱する周囲をしり目に、大十字さんの駆るデモンへインが動き出す。

 

『さっきの件については後でブン殴るとして、今はあの化け物を何とかするのが先だ!』

 

『うむ、あれだけの瘴気と邪気をまき散らす存在だ。早急に対処せねば、この街が呪詛で汚染されて人が住めなくなるぞ』

 

 アルお姉さんの言葉に大十字さんが頷くと、デモンへインの両手に巨大な拳銃が現れる。

 

 たしかあれって大阪で博士の破壊ロボを撃ちぬいた物と同じものだったはず。

 

『そんじゃあ行くぜ、アル!』 

 

『奴を浄化するにはクトゥグアの炎が最適だ! やれ、九郎!!』

 

『イア・クトゥグア!!』

 

 大十字さんの気合が乗った呪文と共に自動拳銃は赤い閃光を吐き出す。

 

『……は?』

 

『げぇっ!?』

 

 しかし撃った直後にモニターの二人は思い切り目を剥くことになってしまった。

 

 何故なら弾丸を撃つと同時にデモンへインの左腕は肘からもげて、拳銃ごと後ろに吹っ飛んでしまったからだ。

 

『貴様等、人の話を聞いていたであるか? それの元になったのはアンティーク、骨とう品、ジャンクである。旧支配者を使役する術式の最大射撃など耐えられる筈がなかろう』

 

 唖然とする二人にむかって、さも馬鹿にした様子で語るウエスト博士。

 

 いや、そういう事は事前に言っておこうよ。

 

 思わぬアクシデントがあったとはいえ、発射には成功している。

 

 吐き出された紅い弾丸は空を裂いて腐肉の内部へ食らいつくと、紅蓮の火柱を巻き起こしてその身を呑み込んだ。

 

 さらに炎は腐肉へ突き刺さったドリルに引火し、大爆発を引き起こす。 

 

『やったか!?』 

 

『つーか、あんなヤバい爆薬を積んだモンに俺達を放り込んでたのかよ!?』

 

 天を衝く炎に期待を込めるアルお姉さんと、爆発の規模に青くなる大十字さん。

 

 しかし、ゾンビというのは得てしてしぶといモノである。

 

 炎の中からズルズルと這いずるように現れるザリガニゾンビ。

 

 ザリガニ要素は全て消え去ったその姿は、焼け爛れた肉の塊だった。

 

 その凄まじい姿に思わず息を呑んでいると、頭の中にガチたんの声がした。

 

『チャンスだ、お嬢ちゃん。今の爆発で周囲の腐海も消えて奴自身をコーティングしていた体液もオシャカになった。息を吹き返す前に一気にケリを付けろ』

 

 見れば、いつの間にやら偵察ドローンが腐肉の回りを飛び回っていた。

 

 どうやらガチたんは私達が爆発で呆気に取られている間に、アレを出していたらしい。

 

 そうだ。

 

 頼みの綱だったウエスト博士は本体を自爆に使って残っているのジュアッグだけ。

 

 大十字さんの機体も左手が壊れちゃってる。

 

 だったら私がやるしかない!!

 

「……ひーちゃん、アレやる」

 

『分かった! 全システムリミッター解除! 重力制御ON!』

 

 コクピットを囲うサイコフレームが再び紅く光る中、ガチたんは今までにない速度で突撃を始める。

 

『ミユ!』

 

「……だいじょうぶ。これできめる」

 

 もちろん、ゾンビもこちらの接近に気づいていないわけがない。

 

 奴は焼け爛れた肉を割って、中にあるレンズから拡散ビームを放ってくる。

 

『来たぞ、お嬢ちゃん! 訓練通りに行け!』

 

「……ん!」

 

 頭上から降り注ぐビームを肩に備わったブーストを操作して躱していく。

 

 この動きは周りからはガチたんがステップを踏んでいるように見えるだろう。

 

 ビームの雨を潜り抜けて懐へ入ると、奴が打った手は肉と鉄が混ざり合った剛腕だった。

 

 頭上から落ちてくる合金製の鋏、これを受けたらガチたんでも無事では済まないだろう。

 

 まあ、それも食らったらの話だ。

 

 ガチたんを叩き潰そうとした鋏は、右肩のマルチディスチャージャーから発射されたロケット弾と何処からかロケットパンチのように飛んできたドリルによってあらぬ方向に弾かれる。

 

『ぬはははははははっ! これぞドリルブーストナックル!! このミニ破壊ロボの奥の手であーる!!』

 

『撃ったっきり戻ってこないから次は無いロボ!』

 

 そしてゾンビの懐に入るとガチたんのタンク部分の装甲が展開する。

 

 そこから生えてきたのは、凶悪な杭打機を備えた二本の腕だった。

 

『隠し腕だと!?』

 

『タンクもどきにそんな物を……正気か!?』

 

 至近距離に来たからか、ゾンビの中で渦巻く残留思念の声が聞こえてくる。

 

『まさか奥の手が自分達だけの専売特許だと思っていたのか? おめでたい奴等だ』

 

 そんな驚愕の声をガチたんは鼻で笑う。

 

 そして二つの杭は容赦なく巨大な肉へと突き立てられた。

 

『『ぎゃあああああああっ!?』』

 

 ダインスレイブと同じく電磁加速で撃ち出される杭は超合金Z製。

 

 インパクトの瞬間に神様由来の光子力とお守りを介して破邪の力が備わったラムダドライバの斥力波動が先端から内部へ送り込まれる仕組みだ。

 

『さあ、踊ろうか』

 

 ガチたんのダンディな宣言と共にスロットルを全開にすれば、キャタピラと背部に備わったミノフスキードライブシステムが生み出すパワーは自分より数倍巨大なゾンビを一気に押し返し始める。

 

『パイロットへのG軽減装置全開! ミーちゃん、大丈夫?』 

 

「……だいじょうぶ。ぜんぶうつ」 

 

 隠し腕が連続でインパクトを叩きこむ中、私は両腕のダインスレイブを至近距離で叩き込みながら、左肩に備わったランチャーを起動させる。

 

 放たれたファンネルミサイルは私の意思通りに奴の背後へ回ると、次々に牙を突き立てて爆発する。

 

 それによってゾンビはさらにガチたんへ押し付けられる形になり、杭打ち機の一撃はより深い位置で威力を開放することになる。

 

 そして隠し腕に蓄積していたエネルギーを全弾撃ち尽くしたガチたんは、最後の一発でゾンビを空へと打ち上げる。

 

『今だ、お嬢ちゃん! 翼を広げろ!!』

 

「……ん!」

 

 それを追うように宙へと舞ったガチたん。

 

 背部に備わったミノフスキードライブは、余剰に吐き出されたミノフスキー粒子で翼の形をした巨大なビームサーベルを形成する。

 

 その色は漆黒、レイブンの名が示す通りカラスを思わせるものだ。

 

 そして私達は自機の数倍の幅を持つ翼で肉塊を両断する。

 

『ま…まだだ! 俺は! 私は! 僕は! ワシは! 連邦に復讐を……』

 

「……あなたたちはまけた。まけたらせんそうはおわり。だから、ゆっくりやすんで」

 

 ボロボロになって内側から爆ぜる炎の中に消えていく中、それでもなお恨み言を止めない憎悪の意思達。

 

 私がそう手向けの言葉を紡ぐと、ひときわ大きな爆発によってゾンビは欠片も残らずに消えてなくなった。

 

『コンビネーション『ダンス・マカブル』。上手くいったね』

 

「……ん。ひーちゃんとガチたんのおかげ」

 

 隠し腕を収納し、光の翼を消して地面に降りるガチたん。

 

「ひぅっ!?」

 

 これで終わりだとホッと一息ついた私は、こちらに向けられた視線に息を呑んだ。

 

 まるで体の奥を見通すようで、それでいて全てをねっとりと舐めるような不快な視線。

 

 慌ててモニターを探ると、ビルの上に立つ黒のスーツを身に着けた黒髪の女の人がいた。

 

 その人は私が見ているのを分かっていたのだろう。

 

『今回は及第点だよ。次はもっと力を目覚めさせてくれ、お母さん』

 

 そうテレパシーを送ると煙のように消えてしまった。

 

 あの人はなんなのだろう?

 

 それにお母さんって…… 

 

  

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