幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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お待たせしました、最新話更新です。

これだけ書いてまだ時獄編が終わらないという恐怖。

さすがスパロボ、ボリュームがダンチだ!!


幼女のわりと人生最大の危機

 地球連邦軍パナマ基地。

 

 数日前まで世界の変革という建前で私怨を振りまき、連邦軍からこの基地を奪取したコーディネーターの過激派達。

 

 彼等は狩られる側の恐怖を味わっていた。

 

 魔王の名を持つ血色のガンダムによって。

 

『はははははははっ! どうしたよ! お前等新人類なんだろ? 人間より上位種なんだろ! だったら俺を殺してみろよ!!』

 

『クソッ! うろたえるな! いくら頑強だろうと相手はモビルスーツだ! ビーム対策には限界がある!! 撃ちまくれ!!』

 

 手にした凶悪な形をしたスレッジハンマーでザク・ウォーリアーをジャンクにしたガンダム。

 

 パイロットの狂気を感じさせる挑発に、迎撃機動部隊の隊長は怖気づく隊員たちに活を入れる。

 

 そして放たれる幾条もの閃光。

 

 しかしビームの群れを前にしても紅いガンダムは欠片も怯む様子を見せない。

 

『はっはぁ! ちったぁ面白くなってきたじゃねえか!!』

 

 それどころか真正面から破壊の嵐へとその身を躍らせた。

 

 通常、モビルスーツの装甲でビーム兵器を受けるのは不可能だ。

 

 それはアフターコロニー製のガンダムという一部の例外を除けば、多元世界でも変わらない。

 

 オルトロスなどの高出力ビーム砲ならそのガンダムも撃墜とまでは行かなくとも破壊は可能だろう。

 

 しかし背面のブースターを全開に吹かして突撃する深紅のガンダムはその常識を覆す。

 

『こんなヌルい弾幕じゃあ俺は止まらねえよぉ!!』

 

 なんとビームを全て弾き返したのだ。

 

『馬鹿なっ!?』

 

 あまりの光景に目を見開いた指揮官だが、その隙が命取りになった。

 

『ちょいさぁっ!!』

 

 大上段に振り上げられた紅いガンダムのスレッジハンマーが彼の乗るグフの頭を粉砕、そこから流れるように仰向けに倒れた胴体部のコクピットへ二撃目が叩き込まれたからだ。

 

『はははははははははっ!!』

 

 そうして死に体になったグフを高笑いと共に何度もハンマーを叩き付けるガンダム。

 

 蒼かったグフの機体は破損部から噴き出るオイルと立ち込める土煙で見る間に茶褐色に染まっていく。

 

 それはまるで人間の死体が泥と血に塗れていくかのようだった。

 

『はっ! なにをしている! 隊長を助けろ!!』 

 

 機動兵器同士の戦いにしてはあまりにも血なまぐさい光景に動けずにいた部下たちだったが、いち早く正気に戻った一人の声に動き出そうとする。

 

 しかし次の瞬間、音頭を取っていたザクの全身にレアアロイ合金で出来た散弾の雨が突き刺さる。

 

『ちぃとばかり遅かったなぁ』

 

 前面を穴だらけにされて仰向けに倒れるザクの先には、背を向けたままオイルを滴らせるスレッジハンマーを肩に担いだガンダムが、逆の手で硝煙を燻らせるショットガンの銃口を向けている。

 

『お前等の隊長はこの通り、ご臨終だ』

 

ぐしゃぐしゃの鉄屑となった上官の機体を踏みつけながら、ギロリと自分達を睨む翡翠に光るデュアルアイ。

 

 それは狂暴だった過激派の面々を怯える子羊の群れへと変化させる魔眼だった。

 

『やっぱ最高だなぁ! ガンダムはよぉ!!』

 

 しかし彼等が戦意を喪失したところで血染めの戦鬼は止まりはしない。

 

『コイツなら思うがままに戦争ができらぁ!!』

 

 目の前にガン首揃えて並んでいる獲物を全て食い尽くすまで。

 

 

    

 

 どうも、シンジお兄さんの変わり具合にポカンな幼女です。

 

 剣を大上段に構える初号機から伝わる気迫は、ヤシマ作戦の時に見た自分を信じられなかった儚げな様子は欠片も無い。

 

 さっきの切っ先宣言だってガチの本気だって、たぶんニュータイプの力が無くたって分かる。

 

 どうやらリシュウのお爺ちゃんとやっていた剣術修業が原因みたいだけど、ちょっと変わりすぎじゃないかな?

 

『シンジ君…あなた……』

 

『ミサトさん、ブライト艦長。奴等が隙を見せたら僕が斬りかかります。その時は畳みかける戦術を考えてください』

 

 戸惑いを隠せないミサトお姉さんの声に決意のこもった声でそう返すシンジお兄さん。

 

 ヤシマ作戦の時に色々と悩んでいた面影なんてもうないよ!

 

『獣を断ちし一刀、見事。よく考えたな、シンジよ』

 

『すみません、先生。まだ未熟なのに勝手な真似をして』

 

『よい。武とは創意工夫無くして発展せぬ物、技の練りを見れば付け焼刃でない事はよくわかる』

 

 そんなシンジお兄さんに嬉しそうにしているのは、お師匠様のリシュウお爺ちゃんだ。

 

 うん、弟子が強くなったら嬉しいのは当たり前だよね。

 

『なんにせよチャンスだ! 総員、アルテア軍を撃退せよ!!』

 

 そんな中、ブライト艦長の指示が私達へ飛ぶ。

 

 幸いというべきか、シンジお兄さんが行った初手のインパクトで相手の動きは鈍い。

 

 このチャンスを逃す手はないよね。

 

『エタニティフラットを破る実験にはシェリルとランカも協力してくれているんだ! その邪魔をされてたまるかよ!!』

 

 艦長の声を受けて飛び出したのは新しい機体に乗ったアルトさんだった。

 

 今までのバルキリーを大きく上回る速度でジオフロントの空を駆ける赤と白の機体は、敵の前衛を務めていた蜘蛛ロボをミサイルの雨で蹴散らすと、その後ろに控えていた丸い頭の人型をレーザー機銃を叩きこむ。

 

『総員、アルトに続け! 奴等をここから叩き出すぞ!!』

 

『行こう! アンディ、ゼシカ!!』

 

『うん!』

 

『おう! 奴等にはMIXの居場所を吐いてもらわないとな!!』

 

 それに触発されてZ-BLUEの皆も攻勢を掛ける。

 

『くっ! 各員、迎撃態勢を取れ!! レア・イグラーを手に入れなければ、我等に待っているのは滅亡のみ! この戦、負けられんぞ!!』   

 

 それに対して片腕を失った向こうの指揮官機が仲間達を鼓舞する。

 

『マーズフラッシュ! はぁぁぁぁっ!!』

 

『ぐわぁっ!?』 

 

 けれど、エースを欠いたうえに指揮官が手負いの軍に皆は止められない。

 

『ふははははははっ! 穴蔵の中にいらっしゃーーーい!! これぞドリルと触手を使った全く新しいアーツ!! 歓迎しよう、盛大にナァであーる!!』

 

『エッチィはずの触手がドリルが付いただけで凶悪な武器に早変わりロボ!!』

 

『穴の中は俺達の独壇場だ! 行くぞ、ヴィラル!!』

 

『ここならば埋葬の心配もあるまい! 安心して地獄へ行け!!』

 

 敵味方入り乱れての乱戦の中、アルテア軍は次々に撃破されていく、

 

 というか、ウエスト博士の作ったロボは何なの?

 

 中央にジュアッグの身体が生えたでっかい花みたいなのが、地中から先端にドリルが付いた緑の触手を出しているんだけど。

 

『ラフレシアにジュアッグとドリルをくっ付けるとか、私の目でも見抜けなかった。というか、この世界にラフレシアなかったはずなのに、どっから持ってきたのアイツ?』

 

 多分茎の部分もドリルなんだろうね。

 

 なんか、怪しい光線出しながらギャンギャン回ってるし。

 

 あの博士のドリルに対する情熱は何なんだろうか?

 

 知らない間にシモンの兄貴とも仲良くなってるしさ。

 

 そんな事をポヤポヤと考えているけど、もちろんサボっているわけじゃない。

 

『イズモ様! ここは僕に任せて退いてください!!』

 

『だが……!』

 

『カグラもやられた上に貴方も手負いです! この状況で勝てるほど奴等は甘くありません!! イズモ様を失えばアルテアの民は終わりなのですよ!!』

 

『……すまん!!』

 

 私が狙うのは、指揮官機が逃げる中、他の人型に指示を出しているオレンジ色だ。

  

 あそこから感じるMIXお姉さんによく似た気配、きっと彼女に関係があるに違いない。

 

「……えい」 

 

『うあぁっ!? な…なにが!!』

 

 という訳で、私が気合の声を上げると彼女(?)の乗るロボットは四肢の関節から爆炎を上げてその場へ崩れ落ちる。

 

 これこそが私がガチたんに乗っている間にひーちゃんが考えてくれた新兵器、『見えないファンネルミサイル』である。

 

 この武器はクリアファンネルにミラージュコロイドを塗したものだ。

 

 ひーちゃんが言うには、ミラージュコロイドって推進剤を使うと剥がれちゃうらしいんだよね。

 

 私が使ってるのはUGセルで改良したものだから多少吹かしても剥がれないけど、それでも推進剤の熱とか光で気づかれる可能性があるのでラムダドライバの斥力を使って動かしているのだ。

 

 ラムダドライバって強いイメージが重要だから、何気にサイコミュと相性がいいんだよね。

 

 ひーちゃんのサポートのお陰もあって、推進剤を使わなくても普通のファンネルみたいにスイスイ動かせるのだ。 

 

『MIXY!?』

 

『一体何が…ぐわぁっ!?』

 

『よそ見してんじゃねえ!!』

 

 そして、すかさずミラージュコロイドを解除したハロビットを使ってダルマになったオレンジ色の機体を回収した。

 

 あとナイストマホーク、竜馬さん。

 

『くそっ!? 離せ!!』

 

 他の内蔵火器をドリルでガリガリ潰されながらこちらへ運ばれてくるオレンジの人型。

 

 私は中で必死に暴れるパイロットへ通信を繋げる。

 

「……MIXおねえさん」

 

『僕はMIXじゃない! MIXYだ!!』

 

 そう叫ぶパイロットの顔はヘルメットで見えない。

 

 けど、今の怒りの感情で分かった。

 

 彼女は間違いなくMIXお姉さんだ。

 

「……ウソついてもミユ、わかる。しってるでしょ?」

 

『……ッ!?』

 

 うん、そこで口を押さえちゃったら自白してるのと同じだよね。

 

 どうして彼女がアルテア軍に協力しているかは分からないけど、そこは大人にお任せだ。

 

 まずはMIXお姉さんをクォーターへ運ぼう。

 

「……ジェフリーかんちょ」

 

『どうした、ミユ?』

 

「……MIXおねえさん、つかまえた。このオレンジのなかにいる」 

 

『なんだと!? マジか!』

 

「にゅっ!?」 

 

 私と艦長の通信に割り込んできたのは、アクエリオンにいるアンディさんだった。

 

『アイツは…MIXは無事なのか!?』 

 

『ぼ…僕はMIXYだ! MIXなんかじゃない!!』

 

 そんなアンディさんの声にMIXお姉さんまで反論を始める始末。

 

 幼女としては言い争われるとどうしようもないので落ち着いてほしいです。

 

『二人とも落ち着け! MIXに関しては敵対組織に加担していた疑いもある、事情が分かるまでは捕虜として拘束する!』 

 

『そんな!?』

 

『これは決定事項だ! 文句は受け付けん!! ミユ、その機体を早くクォーターへ運んでくれ。エコーズは格納庫にて待機。MIXが機体から救出され次第、拘束して営倉へ移送せよ』

 

『了解しました』

 

 なんだかんだと言い争っていたMIXお姉さんとアンディさんだけど、ジェフリー艦長の一喝で大人しくなった。

 

 うん、あのオジサンはいい人なんだけど顔が怖いからね。 

 

『なんであのニット帽は文句言ってたんだろうね? 敵軍の一員になってたら裏切り者って警戒するの普通でしょ』

 

「……アンディさん、MIXおねえさんすき」

 

 あの人ってその手の感情が大きいみたいで、MIXお姉さんと言い合いしててもガンガン伝わるんだよね。

 

 アムロ大尉達もその辺は気づいているから、割と苦笑いして見てたことあったし。

 

 ともかく拉致された仲間が救出できたのは良い事だ。

 

 あとはニアお姉さん一人、この調子で助けてしまおう。

 

 そんな風に気合を入れていると、私の直感センサーが嫌なモノを捉えた。

 

「……ミウ!」

 

『このタイミングで……鬱陶しい!!』

 

 そして空間を歪めて現れたのはジェミニス残党軍を率いるガドライトのジェミニア。

 

『ガドライト!』

 

『久しぶりだな、イミテーションボーイ。ま、今回用があるのはお前さんじゃないんだけどな』

 

 ジェミニアの姿に敵意をむき出しにするヒビキさん。

 

『それに随分と見なかったクマ公もいるじゃないか。あのクソガキは黒い球にいるとして、誰がその趣味の悪い機体に乗ってんだ?』

 

『随分な言い様ですわね。お里が知れますわよ』

 

 クマさんの方に目を向けたガドライトの言葉に挑発で返すミウ。

 

 何時もなら即座に噴火するガドライトだけど、彼の顔に怒りが浮かぶことは無い。

 

 その代わりに示したのは醜悪なモノを見たかのような嫌悪だ。

 

『……お前等もたいがい救えないな。戦争する為にガキを生産して楽しいか?』

 

 吐き捨てるように言ったガドライトの言葉に私は思わず息を呑む。

 

『───随分と慧眼ですこと。貴方の星でも似たようなことがあったのかしら?』

 

『ああ、優秀な戦士をクローン培養しては捨て駒みたいに戦場に放り投げていたよ。どこの星でも滅びが目前となれば上がイカレるのは同じらしいな』

 

 煽るつもりで言った言葉に真剣に返されて鼻白むミウ。

 

 その瞬間、私の脳裏には培養槽で浮かぶ多くの自分を見上げるガドライトの後ろ姿が見えた。

 

 彼も色々と辛い思いをしているらしい。

 

 それはそれとして妹を汚物のように見るのは許せない。

 

「……あ、とうほうのおじちゃん」

 

『なにぃっ!? どこだ! どこにいやがる!? あの妖怪ジジイを俺に近づけるな!!』

 

 私の言葉に狼狽しながら辺りを見回すジェミニア。

 

 その姿には先ほどまでの威厳というか威圧はどこにも無い。

 

 本当はおじちゃんなんていないんだけど、このくらいの仕返しは姉として当然だと思う。

 

 そんな事をやっていると、ネルフ本部の方角から純白の機体が現れた。

 

『お前の思い通りにはさせない!!』 

 

 先程の予感が示した通り、それを駆るのはアドヴェントだ。

 

『アドヴェントさん!』

 

『随分と暇人だな、お邪魔虫! お前も見物ってか!』

 

 スズネ先生の歓声とガドライトの煽る声が聞こえる中、私は思わすため息を吐いた。

 

 彼がテンシの可能性が高い事を思えば、私もミウも迂闊なことは出来ない。

 

 地球を守る為にも、まだ目を付けられる訳にはいかないのだ。

 

『ジェミニスとアドヴェントが現れるとは、いったいここで何が起きるんだ?』 

 

 そうアムロ大尉が懸念の声を上げた瞬間だった。

 

 天から黄金の光が差し込み、ネルフ本部の真上に大きな影が現れる。

 

 それは全身金色のアクエリオンに似た機体だった。

 

『あれは……アクエリオン!』 

 

『間違いありません! あれは伝説の神話型アクエリオン!!』

 

(……おっかしいなぁ。あれってネルフ本部の地下から出てくるんじゃなかったっけ? なんで天から降ってくるの?)

 

 皆が驚く中、ミウの思念がヒュッと入ってくる。

 

 あそこにあるのはミカゲさんが言っていたもう一つのアクエリオンなんだろうけど、ネルフの地下にあるっていうのはどういう事なんだろう?

 

「……ミウ?」

 

『どうされました、姉さま』

 

「……なやみごと、そうだんのる」

 

『ありがとうございます。でも大丈夫ですわ』

 

 ふむ、普段なら思念が漏れないようにしているあの子があれだけ驚くとなれば、相当な事だと思ったんだけど……

 

 まあ、無理に聞くのはよろしくない。

 

 ミウが自分で話すのを待とう。

 

 こうして皆がもう一つのアクエリオンに目を奪われていたんだけど、その中で一人だけ別の事を考えている人がいたんだ。

 

『シンジよ、あの部隊の隊長は一惑星最強の戦士だそうだな』

 

 それはリシュウのお爺ちゃんだった。

 

『は…はい、先生』

 

『ならば相手にとって不足無し。研鑽の褒美としてお前に一ついいモノを見せてやろう』

 

 黄金のアクエリオンに気を取られていて、シンジさんの気もそぞろな答えに頷くとお爺ちゃんは斬艦刀を蜻蛉に構える。

 

 そして次に見せた光景はどう言っていいのだろうか?

 

 グルンガストは静かに地面を蹴るとブースターの噴出もそして足音も無く、地上に降りていたジェミニアの懐を取ったのだ。

 

『な……!?』

 

『ぬんっ!!』

 

 そして振るわれる大上段からの一刀、それは咄嗟に掲げた剣を断ち割るとジェミニアの身体を手や足を巻き添えに左から4分の一の位置を断ち切った。

 

 これには私も驚きで口を大きく開けてしまった。

 

 だってリシュウお爺ちゃんの意思も何も感じなかったんだから。

 

『ふむ……頭から断ち割るつもりだったのだがな。咄嗟に身体を捻るとは惑星最強の戦士に偽り無しか』

 

『な…なんだ今のは!? 目の前にいきなり現れやがった!!』

 

 一足でこちらまで戻ってきた零式。

 

 そのまなざしの向こうでは断たれた場所から潤滑液と火花を散らしながら、宙に浮かび上がるジェミニアの姿があった。

 

『お主には分からんよ、若いの。今のは武に掛けた時間のみが可能とする境地ゆえな』

 

『ガドライト!』

 

『撤退だ、アンナロッタ!』

 

『なんだと!?』

 

『見るべきものは見た! それにあのジジイは妖怪と同類だ! あんな奴の前にお前を出せるか!!』

 

 傍らにあった副官機に怒鳴るように告げると、ジェミニアを始めとする部隊は次元転移で消えてしまった。

 

『ヒビキ、すまないが私は奴等を追う。地球圏の混乱の根は奴等にあるからな』

 

『アドヴェント……』

 

『次に会う時はもっと成長している事を望む』

 

 そしてアドヴェントもジェミニスを追う形で姿を消した。

 

 正直、私とミウはホッとしているけどヒビキさんって結構アドベントを頼りにしているよね。

 

 証拠も揃っていない中で敵だって言っても信じてもらえないだろうし、テンシって私達の敵であってもZ-BLUEにとってそうとは限らない。

 

 なかなかに難しい問題だ。

 

 そうして二つの乱入者が消えると、まるで気が抜けたかのように零式が膝を突いた。

 

『先生!』

 

『心配するな、今の動きで零式にガタが来ただけじゃ。念のために本気の一刀の型を仕込んでおったが、やはり関節が耐えられんかったな』

 

 その言葉に私は絶句する。

 

 強固なスーパーロボットが動きに耐えられないって、お爺ちゃんは何者なのだろうか?

 

『シンジよ、創意工夫に頼るのもよい。だが示現流の神髄は無念無想の初太刀で相手を討つ事にある。今見せたように、極めれば如何なる相手でも一の太刀を受けることは出来ん。その境地を目指して、基本を疎かにせんようにな』

 

『はい!』   

 

 そうして零式に肩を貸してクォーターへ戻っていく初号機。

 

 さて、なんやかんやとあったけど最大の問題は神話型アクエリオンだ。

 

 エレメントの皆は世界を意のままに出来るとか言ってたけど、そんな力が本当にこの機体にあるのだろうか?

 

 そんな事を考えながらアクエリオンを見上げていると、特徴的な造形の頭にあるハッチが開いた。

 

 そこから現れたのはやっぱりと言うべきか、ミカゲさんだった。

 

「ミユ! 我が君よ、すまない!!」

 

 そしてミカゲさんは私の方を見るなり、深々と土下座をしたのだ。

 

 超が付くほど誇り高いミカゲさんのトンデモ姿に、ショックのあまりポカンとする私。

 

 そしてミカゲさんは声も高らかにこう叫んだ。

 

「君と私の子が! 邪悪なるモノに身体を乗っ取られてしまった!! 父として私の不徳の致すところだ! 本当にすまない!!」

 

 ん?

 

 んんんん!?

 

 私とミカゲさんの子供?

 

 いったいどういう事だってばよ!?

 

『ミーちゃん! どういうことなの!?』

 

 ハロ・ビーから浮かび上がるホログラムでガチキレしながら、こちらへ問いただしてくるひーちゃん。

 

 むしろ私が聞きたいんですが!?

 

「……ミユとミカゲのこども?」

 

 混乱収まらない頭で何とか問いかけてみると、ミカゲさんは涙で濡れた顔でこう答えた。

 

「初めて出会った時、君は私と心を通わせただろう。その際に私は身ごもったのだ、生まれる事が無かったあの子を再誕させる為に」

 

 そう言われて私はようやく得心がいった。

 

 そうだ、堕天翅ってそうやって繁殖する生き物だった。

 

 たしか『翅の契り』だったっけ。

 

『不動! 説明!!』

 

 そしてクォーターではクレア理事長の鋭い声が響く。

 

『堕天翅は真に心を交わした者ならば、その魂の一部を交配させて子を孕むことが可能なのだ。それを翅の契りと呼んでいる』

 

『つまり両者同意という事ですか?』

 

『いや、一度でも心が繋がれば同意なくとも可能だ。過去の私もそれをカマされて本気でビビったものだ』

 

 いや、貴方にそんな風に言う権利は無いと思います。

 

誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)ぅぅぅっ!!』

 

「ぬぅっ!?」

 

 謎の叫びと共に襲い来る高出力ビームを寸でのところで躱すミカゲさん。

 

 というか、神話型アクエリオンの頭が少し削れたんだけど!? 

 

『チ、外したか! どうして出力セレクターに人理焼却式が無いんだ!!』

 

 その出所には砲口が焼け付いたヴェスバーを構えるデスティニーの姿があった。

 

 にぃに、なにしてるの!?

 

「突然ひどいじゃないか、お義兄さん」

 

『誰がお義兄さんだ! よくも嫁入り前の妹を傷物にしてくれたな!!』

 

「傷物などと人聞きの悪い。これは私達の愛の結果だよ」 

 

『ほお。そこまで言うなら、ガキに関してミユの同意はあったんだろうな?』

 

『本人の驚きようを見るに、初めて知ったように見えたぞ』

 

『俺も人の親だからな、返答次第ではタダでは済まんぞ』

 

 にぃにの追及に加わるように現れたのはゲッターチームだ。

 

 竜馬さん、隼人さん、弁慶おじさんの順で喋ってるんだけど、隼人さん以外は随分怒っているように見える。

 

 そんな三人の追及にミカゲさんはフンと鼻を鳴らして答えた。

 

「そんな事は聞かずともわかる。我が君なら二人の子ができて喜ばぬはずがない!!」

 

 ドヤ顔で応えてるところ悪いんだけど、せめて一言相談してほしかったと幼女は切に思います。

 

 そんな事をのんびりと考えていた私だけど、事態はドンドンとんでもない方向へ向かっていたりする。

 

 まず起こったのは空間までも振るわせる怒りの咆哮だった。

 

 嫌な予感がして目を向ければ、マジンガーが神様になってました。

 

【羽虫ごときが我が巫女を穢すなど度し難い! 零に還してくれるわ!!】

 

『今回ばかりはさすがに止める気にならねえ。やっちまえ、ゼロ!!』

 

 やっちまったらダメだってば!!

 

 神様! 神様落ち着いて!!

 

 そこでブレストファイヤー撃ったらジオフロントが埋まっちゃうから!!

 

『おいコラ。姉さまとの子供ってどういう事だ! 舐めたフカシこいてたらテメエから狩るぞ!!』

 

 ミウ!?

 

 ネコが剥がれてるどころか、クマさんが獣になってる!!

 

 それは使ったらダメなやつだから!!

 

『ミーちゃん』

 

「……なに?」

 

『陰蜂使うね』

 

「……え?」

 

 そう言うなり、亜空間から顔を出した陰蜂とドッキングするハロ。

 

 ちょっと、ひーちゃん落ち着いて!

 

 ジオフロントだと陰蜂全部出せないから!

 

 ほら、下半身が亜空間から出てきてないし!!

 

『大丈夫だよ! 口にあるスーパージェネシスは撃てるから!!』

 

「……うっちゃダメ」

 

 よくわからないけど、それって『くまびーむ』並にヤバいモノだよね!?

 

 しっちゃかめっちゃかな状況の中、今度はネルフ本部のすぐ隣から地面を割って紅い閃光が飛び出てきた。

 

「ひょおうっ!?」 

 

 その光をギリギリで躱すミカゲさん。

 

 光はジオフロントの天井から撃ち抜いて空へ消えて行った。

 

 いったい何が起こったのかと思っていると、光が出てきたところからエヴァ零号機が這い出てきた。

 

「まさかあの槍を私につかうとは、どういうつもりかな?」 

 

『害獣駆除よ』

 

 頬に冷や汗を浮かべるミカゲさんの問いに、無表情ながらも凄みを感じさせる顔で答えるレイお姉さん

 

『あの槍だと!? レイ、まさかお前ロンギヌスの槍を!?』

 

『違います。私が使ったのはケダモノの槍、人のペットに手を出す野良犬を殲滅する器具です』

 

 今ペットって言った!

 

 レイお姉さんの中での私の認識ってそんななの!?

 

『何を言っている! お前がセントラルドグマに入った事はセンサーで分かって───』

 

『うるさい、ヒゲ』

 

 なにやらネルフ本部で文句を言っていたおじさんの言葉を、レイお姉さんはあっさりと切り捨ててしまった。

 

 いいのかな、それで……

 

 次から次へとエラい事が起こっているけど、この辺で止めないと取り返しの付かないことになる。

 

 まずミカゲさんの命が危ないし、ネルフ本部やジオフロントもヤバい。

 

 下手をしたら第三新東京市は消えてなくなる可能性もある。

 

 皆、私の為に怒ってくれてるようだし、こちらが止めるのが筋というものだろう。

 

「……ミユ、ミカゲとおはなししたい。みんな、まって」

 

『話って、ミユが妙な責任を負う事は無いんだぞ。子供だってソイツが勝手に言ってるだけだし』 

 

 にぃにの気遣う言葉に私は首を横に振る。

 

「……ミカゲとこころ、つなげたのミユ。こども、いらないっていうのダメ」

 

 創造主に存在を否定される痛みは私もよく知っている。

 

 だからこそ、それをほかの誰かに与えるなんて絶対にダメだ。

 

 私がそう言うと怒っていた皆も少し冷静になったのか、ミカゲさんへの敵意を緩めてくれた。

 

「やはり君の心は美しい。私の目に狂いはなかった」

 

 そしてウットリとした顔で私を褒めるミカゲさん。

 

 なんというか少し照れるけど、今はそんな事を言っている場合じゃない。

 

 子供の身体が邪悪なモノに奪われたという点を聞かなくては。

 

「…ミカゲ。わるいひとのなまえ、な…ない……ないあ?」

 

 ごめんよ、やっぱりあの名前は難しいや。

 

「そうだ。やはり君にも接触していたか」

 

「……ん」 

 

 私が頷くとデモンへインから通信があった。

 

『まさか本当に親子であったとはな。これは面倒な事になったぞ』

 

「貴様はなんだ? その気配、奴の手の者なら容赦はせんぞ」

 

『俺達は奴等邪神を倒す専門家だよ』

 

「毒を以て毒を制すという事か。やはり翅無し共の考える事が悍ましい」

 

『好きに取るがいい。それよりも子の身体を乗っ取られた経緯を詳しく話してもらうぞ』

 

「何故だ? 私達のプライベートに土足で踏み込むつもりか」

 

『ミユはナイアルラトホテップに狙われている。親子の繋がりは貴様が考えるよりも強固なものだ。その縁を利用されれば、呪詛によってあの者の魂を引き抜かれる危険もある』

 

「なんだと!?」 

 

『それを防ぐ為にも事の次第を掴んでおく必要があるのだ。彼の娘が大切なら全てを話すがいい』

「チッ! 仕方あるまい」

 

 ミカゲさんとアルお姉さんが意見をぶつけ合っている間、子供の事を考えていた。

 

 邪神に奪われたとはいえ、その身は私の子であるのは確実らしい。

 

 となれば悪事を放っておくわけにはいかない。

 

 しかし、私は怒ることがあっても叱るという事はやった事が無い。

 

 むむ……いったいどうすればいいのだろう?

 

『巫女よ、悩んでいるようだな』

 

 そんな風に頭をひねっていると、神様から念話が飛んできた。

 

「……かみさま」

 

『子の存在は業腹だが、お前が認めたのなら我も拒絶はすまい。そこで叱る方法を伝授しよう』

 

「……おお」

 

 さすが神様、頼りになる!

 

 これは一言一句漏らすことなく聞かなければ!

 

『先ずは目に力を込めて相手を見る。自らの意思を最初に伝えるのは眼力なり』

 

 脳裏に浮かぶ目が爛々と光る神様の顔。

 

 なるほど、なるほど。

 

『そして肚に力を貯めて、相手が過ちを認めるように大きく声を出す。先ずは見本を見せよう。───行くぞ!』

 

 ふむ、見本まで見せてくれるとはありがたい。

 

『メっ!!』

 

 叱りの声と共に目から光子力ビームと口からルストハリケーンを放つ神様。

 

『これを極めれば、どんな悪童であろうと天使となるだろう』

 

 素晴らしい!

 

 これは早速練習せねば!!

 

『もし相手が改心せぬなら我に言うがいい。汝に代わって我が叱りつけてやろう』

 

「……ありがと」

 

 私が礼を返すと神様のしかり方講義は終わりを迎えた。

 

 さて、世の中には鉄は熱い内に打てという諺があるという。

 

 学んだことは忘れないうちに練習しないとだよ!

 

 そう考えた私は台座からハロ・ビーを持ち上げる。

 

『どうしたの、ミーちゃん』

 

「……こども、しかるれんしゅう。てつだって」

 

 ひーちゃんの同意を得た私はさっき言われたとおりに目に力を入れる。

 

 なんかウルウルしてきたけど、そこは無視だ。

 

『ミーちゃん、大丈夫?』

 

「……だいじょうぶ」

 

 そしてお腹に力を入れて怒っている事をアピール!

 

 ほっぺがプクッと膨らんだけど、これは幼女ボディの仕様なので置いておこう。

 

 そして更生してほしいという意志を込めて、思い切り声を出す! 

 

「めっ!」

 

『あら可愛い』

 

 ……ひーちゃんの容赦ない感想に、私の心はとっても傷ついた。

 

 どうやら親としてはまだまだ未熟のようだ。

 

「我が君よ、私はここでお暇しよう。残っていては割と本気で命の危機だからね」

 

 そう言って神話型アクエリオンに乗り込むミカゲさん。

 

 うん、私の家族と仲間がすみません。

 

 黄金のアクエリオンが浮き上がるとワープするのか周囲の空間が歪んでいく。

 

「あ、そうだ。次にイズモが来たら言ってほしい。アルテア界で女性が生まれないのはアイアン・シーが星の生命力を吸い上げているのが原因だ。だからアイアン・シーを停止させれば女性が男性化する事は無いと」

 

 こんな伝言を残してフッと転移するミカゲさん。

 

「……え?」

 

 もしかして、今のって凄く重要なことだったりする?

 

 

〈今日のオマケ〉

 

 

 Z-BLUEがジオフロントを離れて数日が経った。

 

 ネルフの副指令である冬月は厳しい表情で司令室の扉を潜る。

 

 相も変わらず悪趣味で薄暗い部屋を進むと、司令席の机に背を預けて床に座り込む人物に目を向ける。

 

 黒い制服の前を開けてシャツを丸出しにし、生気を失い自慢のヒゲの手入れも疎かになった中年男。

 

 これがかつて世界の重鎮を手玉に取って莫大な予算を引き出した敏腕ネゴシエーターと誰が思うだろう。

 

「……酒」

 

 自分の方にサングラス越しに濁った目を向けてそう言う男へ、冬月は手にした琥珀色の液体が入った瓶を無造作に投げつける。

 

 蓋を捻るとまるで犬のように酒を飲み始める男に、冬月は何度目かも分からないため息を吐いた。

 

 この男、碇ゲンドウが壊れた理由は自分も理解できる。

 

 長年失った妻を追い求め、神に挑むような計画を実行に移そうとした奴は、その為のコマである息子と妻の代用品である少女に肝心の計画を叩き潰されたのだのだから。

 

 ゲンドウの誤算は二つ。

 

 まず一つは息子のシンジの急速すぎる成長だ。

 

 息子を介して初号機に消えた妻の自我を目覚めさせること、それは計画の第一歩であると同時に根幹の一つでもあった。

 

 その為に彼は息子との接触を断ち、愛に飢えた自分に自信が持てない子供へと仕立て上げたのだ。

 そうして父親の権威と血のつながりを担保に息子を呼び出し、妻が宿る初号機に乗せて訓練も説明も無しに実戦へ叩き出した。

 

 当初は計画通りに行っていた。

 

 初戦で使徒を撃滅した暴走は妻が息子を守ろうとする母性の発露だったのだから。

 

 それに気を良くしたゲンドウは更なる一手として、地球圏最強の部隊へ息子を追いやった。

 

 常に最前線へ赴く彼等ならば、さらに息子も追い込まれる事になるだろう。

 

 その度に息子は初号機に眠る母を求め、息子の求めに従って母性を刺激された妻は直に自我を覚醒させる事になる……はずだった。

 

 しかし少し見ない間に息子は変わり果ててしまった。

 

 その意志は鋼が芯になったかのように硬く、思考や判断力は刃のように鋭い。

 

 ゲンドウが久しぶりに見た息子は例えるなら剣、もしくは戦人だった。

 

 参号機の暴走の後、息子の目を見たゲンドウは自身の計画が危機的状況にある事を知った。

 

 息子の覚悟を完了した目には覚えがあった。

 

 それは妻を取り戻すと不退転の意思を胸に宿した時の自分の目そのものだったからだ。

 

 長年人との絆を築けなかった息子は、派遣された部隊でそれを得る事になった。

 

 そしてそれが奴を子供から男へと急成長させたのだ。

 

 こうなっては初号機の中の妻を目覚めさせることが困難だ。

 

 今の息子は窮地に立たされた程度で母にすがるような軟弱者ではない。

 

 部隊の為に命を懸け、仮に戦いの中で部隊が壊滅しても自分が部隊だと胸を張って継いだ意思を完遂する漢だからだ。

 

 その意志は、執念は何人にも砕けない。

 

 それは息子にそれを遺伝させたゲンドウ自身がよく分かっていた。

 

 そこに来て、計画のもう一つのかなめである槍を妻の代用品が宇宙へ投げ捨ててしまったのだ。

 

 観測では第一宇宙速度を維持したまま、銀河の彼方へ飛んで行っているという。

 

 もはや人類には回収することは不可能に近い。

 

 こうして計画は半ばで潰え、全てに絶望したゲンドウは御覧の有様となった。

 

 冬月は落ちぶれたゲンドウにもう一度ため息を吐く。

 

「なあ、青葉君」

 

「なんですか、副指令?」

 

「何時になったらマダオは咲くんだろうな?」

 

「咲かないよ! こんなのあげてたら永久に咲かないよ、このオッサン!! というか、分かっててやってるでしょう、副指令!!」

 

 腹心のキレのあるツッコミを聞きながら冬月は自嘲の笑みを漏らすのだった。




人類補完計画、終了
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