幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

73 / 84
お待たせしました。

本編の続きでございます。

GWが仕事で消えた!

この悲しみは作品にぶつけてやるぜぇ!!


幼女とライブと次元の檻破り

 どことも知れない次元の渦。

 

 力無き者の存在を許さない過酷な世界の中に二つの影があった。

 

 一つは胸に超重獄を宿す者、宇宙魔王と名乗る超越者。

 

 もう一つは憎悪と憤怒を糧に燃え盛る強大なアストラル体。

 

 かつてはミケーネの神と名乗った機神の成れの果てだ。

 

『随分と手酷くやられたようだな、冥王ハーデスよ』

 

『その名は捨てた。我は無念の内に倒れしミケーネ神達の怨念が集ったモノ。名に困るなら闇の帝王と呼ぶがいい』

 

 文面だけ見れば相手を気遣う形でありながら隠し切れない嘲りを含んだ宇宙魔王の言葉、それを受けた闇の帝王は不機嫌を多分に含んだ返事を返す。

 

 今の我が身が無様であるなど当人がもっとも分かっている。 

 

 それでも彼には恥を忍んで現世に留まる理由があった。

 

『それでワシをここに呼び出したのは貴様か?』

 

『否。貴様こそ我をここに呼んだのではないのか、暗黒の化身よ?』

 

 互いに自らがこの次元に現れた理由を探る二つの高位存在。

 

 そんな中、三度次元に揺らぎが現れる。

 

『何者かが現れるぞ』

 

『この望まぬ会合の主賓が顔を出すか』

 

 宇宙魔王と闇の帝王が視線を向ける中、さらに銀河を映したかのような世界はさらに湾曲する。

 

 しかしそこに現れたのは酷くボロボロになった縫いぐるみだった。

 

 その残骸にも思えるモノは見る者が見ればこう名を呼んだであろう、『アポロニアス!?』と。

 

『いったいなんだ、これは?』

 

『待て。なにか文が張り付けてあるぞ』

 

 困惑する宇宙魔王を他所に闇の帝王は念動力で縫いぐるみに張り付けてある手紙を剥がす。

 

 そこに記された文面はこうだ。

 

『私は親としての責務に忙しいからね。超越者気取りな陰キャの集いなどに出席している暇は無いんだ。そういう訳だから二度と誘いは掛けないでくれ。m9(^Д^)プギャー』

 

 どう見ても煽りとしか取れない文面に闇の帝王の額(?)に青筋が浮かぶ。

 

『我等を愚弄するか!!』 

 

 闇の帝王が吐き出した怒りの炎を浴びて、あっという間に灰燼に帰す手紙とアポロニアス人形。

 

 その様に少しだけ留飲を下げた両名は再び向かい合う。

 

『……まあいい。こうして貴様と相対したのも何かの縁、少し話をしようではないか』

 

『よかろう。ワシはあの青い星の占有権はオリュンポスの神にあると認めるが、その様では統治などできぬのではないか?』

 

 宇宙魔王が切り出した話題に闇の帝王は炎の中に浮かぶ鬼面を渋く歪める。

 

『確かに。だが我は雪辱を果たすまでは神の座に戻る気はない』

 

『……例の魔神か』

 

 宇宙魔王が思い浮かべるのはミケーネの神々が降臨した際に現れた黒き暴虐の神。

 

 その力を見た彼は形勢不利を悟り、即座にあの場を退いたのだ。

 

『そうだ! 奴を血祭りに上げねば散って行った同胞達が浮かばれんのだ!!』

 

 力強くそう宣言する闇の帝王。

 

 しかし宇宙魔王は見逃さなかった。

 

 魔神の名を出した瞬間、炎の中に浮かぶ闇の帝王の表情が強張った事を。

 

『ところでそんな大口を叩いてよいのか?』

 

『なに?』

 

『貴様の後ろに鋼の腕が生えているぞ』

 

 そう告げると闇の帝王の態度は一変する。

 

『ぬおおおおおおっ!! やめよ! あの光の雨を! 滅びの風を我に浴びせるなぁぁァァァァ!!』 

 

 あっという間に錯乱した闇の帝王を前に、宇宙魔王を深々と鉄仮面の中でほくそ笑む。

 

(この様ではミケーネは聖戦から脱落したも同然だな)

 

 そう、彼等は仲間でも無ければ同盟者でもない。

 

 銀河に一つしかない太極と呼ばれる玉座を狙う仇敵同士なのだ。

 

 目の上のたん瘤である巨大な敵を追い落とす為に手を組むこともあるが、それとて一時的なモノ。

 

 時が至らば互いに潰し合う運命にある。

 

 本来なら地球を覆う次元の檻や太陽の時代に足を踏み入れた人間達の事について話し合うつもりだったが、こうなっては意味などない。

 

 なのでミケーネの神々に見切りをつけた宇宙魔王は奇妙な次元から去った。

 

 同盟者という名の新たなカモを求めて。

 

 一人残された錯乱して破壊の炎をまき散らす闇の帝王の醜態を別の次元から見ている者達がいた。

 

 それは銀髪紅眼の少年と隻眼に褐色の肌が特徴の男だ。

 

「……僕に彼等を見せたかったのかい?」

 

「そうだ」

 

「高位生命体の義務を忘れた者達か。僕としてはあの場にいなかった一人が気になるけどね。想い人が彼と同じ部隊にいるんだろう?」

 

「……ああ」

 

「しかもそれは幼い少女で、君が過去に犯した過ちの後始末が切っ掛けらしいじゃないか。僕と一緒にいるよりも、彼女に頭の一つでも下げてきたらどうかな? 君のやらかした事は高位生命体云々の前に大人としてダメだと思うよ」

 

「その結果がこの顔だ。彼女の妹に思い切り殴られた」

 

 少年がその紅眼をチラリと横に向けると、大きく腫れあがり白い絆創膏を張られた頬が見えた。

 

「残念ながらフォローする言葉は何も思い浮かばないよ。自業自得って事さ」

 

「お前の言う通りかもしれん。だが全ては過去の事だ」

 

 いけしゃあしゃあと言い放つ隻眼の男に若干呆れの視線を向けた少年だが、彼はその言葉に同意する。

 

「そうだね。だから彼等には未来が必要だ。神も人も無く、誰もが自分の為に生きる事の出来る未来が」

 

「……そうだな」

 

 その未来へ弟妹達を導く事、それが先に高位生命体への階位を登った彼等のする事なのだ。

 

 二人はそう結論付けた。

 

 しかし彼等もさらに別の次元から見張られていた事には気づかない。

 

 何故なら視線の主がいるのは文字通り神域、神を名乗るものではなく正真正銘の神が座する世界だからだ。

 

 そして神域の所有者たる少女は醜態を晒す憎悪の化身と、それを傍観する二人組を同時に見ながら肩をすくめる。

 

「まったくなんてザマだ。冥王と呼ばれた者が生死の理を覆して現世にしがみ付くとか、笑い話にもならないだろうに。それにあの二人組も問題の根本に気づいていない。何度人類を導いたとしても、それを解決しないと宇宙の滅びで元の木阿弥だって言うのに」

 

「……ハーデス様」

 

「なんとおいたわしい」

 

 むーちゃんと呼ばれた少女の言葉が玉虫色の世界に虚しく響く。

 

 隣に立つミケーネの神子トリスタンとイゾルデは自分が仕えていた神の醜態に嘆くのに忙しく、彼女の言葉に反応する余裕はない。

 

「見てわかっただろ。この世界の歪みはさらに大きさを増している。その原因はあるべき者がそこに無いからだ」

 

「宇宙の中心に存在する玉座」

 

「今は至高神と呼ばれる奴等の傀儡が座す場所ですね」

 

「その人形もあの揺り籠の所為で狂気に侵されて自滅したそうだけどね。アレは正当な所有者以外を認めない。その証拠にソルとやらは彼の物の権能を百万分の一も使えていなかった。揺り籠が十全に機能していれば一万二千年毎の宇宙の滅びなど起きるはずが無いんだ」

 

 あきれ顔でそう呟くと、むーちゃんはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

 

「では、彼女をそこへ?」

 

「いいや。今のあの子じゃあまだ足りない。本当の意味で覚醒するまでは、今の環境で試練を乗り越えさせるべきだ」

 

 トリスタンの問いかけにむーちゃんが首を横に振ると、続いてイゾルデが口を開く。

 

「本当に我々が望むレベルで開花しますか?」

 

「するさ。なにせ専門家が裏で動いているからね。混沌の動きは少し心配だけど抑止力は二つもある。奴だって本当の目的を忘れる事もないだろう」

 

 そんな彼女の言葉にニヤリと笑うと、むーちゃんは足元で行われている光景に、網目のような眼帯に覆われていた目を開く。

 

「精々その小さな舞台で踊り狂ってくれ、エキストラ諸君。君たちが紡ぐ喜怒哀楽の全てが真なる王の糧となるだろう」

 

 瞼の奥から現れたのは、玉虫色を幾つも内包したこの世の物とは思えない瞳だった。

 

 

 

 

 今日のネオジオン

 

 襲撃を掛けてきたザフト軍をなんとか跳ね除けたネオジオン。

 

 戦後処理を終えたシャアは執務室で椅子の背もたれに体を預け、ため息と共に体内に溜まった疲労を吐き出した。

 

「お疲れ様です、大佐」

 

「ナナイこそな。ところでプラント評議会への繋がりはまだ取れんか?」

 

「はい。こちらから停戦の申し込みを再三行っているのですが、むこうは『ラクス様の歌を穢したシャアの首を出せ! 話はそれからだ』と聞く耳を持ってはくれないのです」

 

 表情を曇らせるナナイにシャアは悟られぬように頭痛を耐える。

 

「すまない、ナナイ。君には苦労を掛ける」

 

「あまり気負わないでください。この件は大佐のミスではありません」

 

 慰めの言葉は今のシャアの心によく効いた。

 

 思わずホロリとなりそうになるのを、額を押さえる振りで隠したシャアは仕切り直す為に話題を変える。

 

「それでアクシズの方はどうか?」

 

「全施設の撤去および切り離したコア3への移設を完了しています。核パルスエンジンのテストも終わり、報告では何時でも地球に向けて発進できると」

 

「……彼等は長年住み慣れた古巣を、アースノイドを倒す為なら簡単に手放せるのだな」

 

 命令を下した人間が口にすべきではないのは重々承知だが、一度は地球圏の平和の為に戦った身としてはやるせない気持ちになる。

 

「一年戦争とザビ家の悪政が植え付けた地球への憎悪は、それだけ根深いという事でしょう。ですが、それではダメだと気付き動き始めた人もいます。人類に絶望するのはまだ早いですわ」

 

「そうだな」

 

 ナナイの言葉にシャアは少し救われた気がした。

 

 そうだ、ネオジオンの中にも憎しみに囚われず人類の未来を憂う者がいる。

 

 今の自分がすべき事は彼等が少しでも動きやすいように、周囲の目を集める道化を演じる事だ。

 

「それと大佐、言いづらい事なのですが……」

 

「気にしないでくれ、ナナイ。君の言葉でかなり胸が軽くなった。今ならどんな事実でも受け止められるさ」

 

 沈んだ表情のナナイに久方ぶりの不敵な笑顔を向けるシャア。

 

「フロンタルとアンジェロ・ザウパーが逃亡しました」

 

「なん…だと……?」

 

 しかしその余裕は次の瞬間には脆くも崩れ去る事になる。

   

「どういう事だ!? 奴等には厳重な監視を付けてあったはずだぞ!!」

 

「申し上げにくいのですが、どうやら担当者の数名が重度のドルヲタで『一緒にチェキしてもらえるから』と監視に穴をあけていたようで……」

 

「大馬鹿野郎……」

 

 まさかの大誤算である。

 

 プラントといい、これだからドルヲタは信用できない。

 

「どうして私は非情に徹せられなかったのだ!? 肉体改造の時に奴等を人間爆弾にしていれば! 背中に星を背負わせておけばっ!! ええい、こうなったら…! ナナイ、残ったメンバーをメンデルで人間爆弾に改造しろ! そしてフロンタルへの人質とするのだ!!」 

 

「落ち着いてください、大佐! 考え方が完全にガイゾックです!!」

 

 オールバックにした金髪を掻きむしりながら叫ぶシャア。

 

 神勝平が聞いたなら助走を付けて殴りそうなセリフ連発である。

 

「私の社会的生命が掛かっているのだ! これ以上アルテイシアに嫌われたら私は生きていけん!!」 

 

「その心配は無用です! 妹様の好感度はすでに最底辺ですから!!」

 

 錯乱するシャアを押さえようと必死になるナナイ。

 

 しかしそこに更なる混沌を招く知らせが届く。

 

「総帥! ハマーン宰相が御帰還されました!!」

 

「うわああああああああっ!? ゲブルッシャーーーー!!」

 

「大佐ぁァァァァ!!」

 

 かつて見た人生の墓場の具現を思い出して酸っぱいモノを吐き出すシャア。

 

 彼の受難はまだ終わらない。

 

 

 

 

 どうも、ようやく偉い人たちの追求から逃れられて一息ついている幼女です。

 

 戦闘が終わってクォーターに戻って来たんだけど、その道中で私は多くの人から追及を受ける事になってしまった。

 

 ひーちゃんにミウにレイお姉さん。

 

 ブライトさんを始めとして艦長達やヨマコ先生。

 

 あとはにぃにや竜馬さん達、ついでにシェリルさんやランカさんとしっちゃかめっちゃかでした。

 

 とりあえず拙いながらもなんとか説明した結果、人だかりの後ろでしたり顔して腕を組んでいた不動さんが宙を舞う結果に。

 

 そして『小さい女の子にテメェのケツ拭かせてんじゃねえ、このボケェ!!』と全力全開の右ブローを叩きこんだのは我が妹だったりする。

 

 あの時は目玉が飛び出るかと思ったよ。

 

 後で聞いたんだけど、アレって私達に備わったブーストアップ能力らしい。

 

 生身の時にテンシに襲われた時対策のもので、感応能力でクマさんのサイコフレームと同期する事で、精神パワーで身体を強化するんだってさ。

 

 それで思い出したのは、東方のおじちゃんと出会った街でガドライトの呪いが効かなかった事だけど、あれとは少し違うみたい。

 

 あの時にあったのってクマさんじゃなくてハロだったしね。

 

 ちなみにこのブーストアップ機能、私は使ってはいけないと言われてしまった。

 

 理由は私の感応能力だとミウの数倍以上に身体能力が増幅されるため、幼女ボディでは耐えられないからだそうな。

 

 まあ、ミウが不動さんを吹っ飛ばせるくらいの力が出るんだもんね。

 

 禁止命令も納得だ。

 

 でもって、次に待っていたのはアルお姉さんからの注意だった。

 

「魂の交配で生まれたとなれば縁を断つのは不可能に近い。それに汝は彼の邪神を拒絶していないだろう」  

 

「……ん。いらないっていわれる、みんなつらい。ミユはナイア、きらいたくない」

 

 アクエリア市でクロクマから失敗作だの不要だのと言われた時の胸の痛みと喪失感を、私はまだ憶えている。

 

 どういう経緯であれ、血が繋がった相手にそれを味わわせるのは絶対に嫌なのだ。

 

 こう答えるとアルお姉さんは呆れたようにため息を付いちゃった。

 

「汝の情の深さは美徳と言える。だが、それを向けるべき者を選ばねばならん。万人が汝に心を開くとは限らんのだぞ?」

 

「そう言うなって。他人を疑って寄せ付けない奴より、こうして思いやれる方が俺は好きだぜ」

 

 言葉と共に私の頭を撫でたのは大十字さんだった。

 

「汝はまた……」

 

「それに奴が何かちょっかいを掛けてきたら、俺達が守ってやればいいさ。たこ焼きの借りもまだ残ってるしな」

 

 呆れるアルお姉さんにニヤリと笑ってみせる大十字さん。

 

 その姿は貧乏探偵なのに凄く頼れるモノだった。

 

 こうして私の子供に関する話は一端落ち着いたわけだけど、さっきの戦闘で湧き上がった問題はこれだけじゃなかった。

 

「神話型アクエリオンが降りてきた時に分かったんです。俺はアポロンの転生だってことが」

 

 皆の前でそう告白したのはアマタさんだ。

 

「アポロンって、映画でアポロニアスが転生したっていうあの?」

 

 ゼシカお姉さんが半信半疑といった顔でアマタさんに発した問いに、私は首を横に振る。 

  

「……ちがう。アマタおにいさん、ワンコ」

 

「え?」

 

 そう言うとゼシカさんやアンディさんに思いっきり首を傾げられてしまった。

 

 これじゃ分からないのは当然だと思うけど、幼女ボディではこういう風にしか言えないんだ! 

 

「ミユちゃんには分かるんだね」

 

「いや、どういう事だよ?」

 

「俺が言うアポロンっていうのは、アポロニアスが飼っていたポロンって翅犬の生まれ変わりなんだ。主人の伴侶であるセリアンに報われない恋心を抱いていた彼は、次の生では彼女と結ばれたいと願って転生した」

 

「なるほど、だからアマタはワンコって言ったのね」

 

「……ん」

 

 アマタさんのフォローでようやく納得するみんな。

 

 語彙力が無くてごめんよ。

 

「そして私はシルフィの生まれ変わりだったんです。正直自分でも信じられないけど、このことが事実ならミカゲの私に対する態度も納得できる」

 

「そっか。ミカゲはアポロニアスの婚約者だったらしいし、セリアンの生まれ変わりの転生なミコノを嫌うのも当然だもんね」

 

 ミコノお姉さんのカミングアウトにウンウンと頷くサザンカさん。

 

「……ミコノおねえさん、むりはダメ」

 

「ありがとう、ミユちゃん」

 

 それにしてもミコノお姉さんは顔色が悪い。

 

 カイエンさんの事に加えてこの事実を知らされた所為で、心労が相当溜まっているようだ。 

 

「これに関しては今はどうしようもあるまい。この件に因縁があるミカゲも過去を断ち切ったようだしな。それと捕虜となったMIXだが、アルテア界にいた影響から性別が男性に変わってしまったようだ」

 

「ど…どういう事なんスか、それ!?」

 

 ジェフリー艦長の説明に目を見開いて食いつくアンディさん。

 

 好きな女の子が男になったって聞いたら、そりゃあ平静ではいられないだろう。

 

「MIXの話では、アルテア界には『イブの呪い』という異常現象が起きているらしい。あの世界に女性が長時間いると呪いの影響から男性化してしまうそうだ」

 

「そんなバカな……」

 

「奴等が我々の世界に侵攻を掛けてきたのも、その呪いに耐えうる女性を得る為だそうだ。男性だけでは種の滅びは免れんからな」

 

 呆然としているアンディさんを他所に説明を続けるジェフリー艦長。

 

「なるほど。ミカゲが残したメッセージは、その呪いの解除方法だったのか」

 

 それを聞いたアムロ大尉は、ミカゲさんの言葉の意味を理解してくれたようだ。

 

 私としても何が何だかさっぱりだったので、翻訳してもらえるのは超ありがたい。

 

「ああ。今MIXが乗っていた機体の調査を進めている。上手くアルテア軍とコンタクトが取れれば、この事を伝えて彼等との戦闘を避けられるかもしれん」

 

 ただでさえ地球には敵が多いのだから、侵略者の勢力が減るのはとても助かる。

 

 是非ともそうなってほしいものである。

 

 こうして戦闘後の諸々に一応のカタが付くと、中断されていたシェリルさん達の力を借りたエタニティ・フラットの実験が再開された。

 

 クォーターの技師さん達が計器の間を忙しなく動く中、ファイヤーボンバーとシェリルさん達の歌が響く。

 

「どうだ?」

 

「ダメだね。ある程度の時空振動は起きているようだけど、エタニティ・フラットを破るには到底足りない」

 

 不動さんの問いかけに、きつねさんの仮面を付けた金髪のお姉さんは首を横に振る。

 

「あ! ミユ!!」

 

 その光景を見ていた私は、一つ大きなピースが欠けている事を直感的に気づいていた。

 

 なので、それを伝える為に二人の所に足を運ぶ。

 

「……コンコンのおねえさん」

 

「コンコン? ああ、おコンさんのことか。私はトライア・スコートだよ、お嬢ちゃん」

 

「……ミユ。はじめまして」

 

「ああ、はじめまして。それで私に何のようだい?」

 

「……じっけん、シェリルおねえさんたちだけじゃダメ。みんなのちからがいる」

 

 私の言葉にトライアお姉さんは首を傾げる。

 

「皆ってのは誰のことだい?」

 

「……ファン。シェリルおねえさんたちのうた、みんなだいすき。そのおもいがちからになる」

 

 あまり動かない舌に頑張って仕事をさせていると、不動さんは私の言いたいことを察してくれた。

 

「なるほど。歌は媒介であり、真に必要なのは人々の思いか。だが、その思いをどうやって束ねる?」

 

「……ミユがやる」

 

 真剣な顔でそう答えると不動さんはニヤリと笑った。

 

「よかろう。ならば、その力を見せてもらうぞ。ムスヒの巫女よ」

 

 この人もその言葉を知ってるんだ。

 

 それから不動さんの指示で実験には一つの要素が加えられた。

 

 それは皆が歌う様子をライブ配信で地球のファン達に届けるというものだ。

 

「ミユ、何をするつもりなんだ?」

 

「……ファンのみんな、おもいあつめる。インベーダーとたたかったときとおなじ」

 

にぃにの問いかけに答えるとハロ·ビーがこっちに跳ねてくる。

 

『OK! じゃあミーちゃん、これに着替えよう!』

 

 そしてひーちゃんが出してくれたのは、赤と白の巫女さん衣装だった。

 

 いつの間にこんなの用意してたんだろう?

 

「姉さま、私も補助しますわ。感応については得意ではありませんが、少しくらいなら手伝えるはずです」

 

「……ありがと。ミウはいいこ」

 

 そんな訳で、お姉様がたの力を借りて着替えを完了した私はハロへと乗り込んだ。

 

「……ミウ、だいじょうぶ?」

 

『ええ。サイコフレームとの同期も万全ですわ』

 

『こちら不動だ。歌エネルギーの計測システム等との接続も完了した、何時でも開始できるぞ』

 

「……ん。シェリルおねえさん、ランカおねえさん、バサラ、おねがい」

 

「よっしゃあ! 行くぜ、お前等!!」

 

「ええ! 私の歌をきけぇ!!」

 

『データ解析及び配信ネットワークを掌握! 中継ポイント設置と共にサイコミュリンク開始!!』

 

 皆のライブが始まると、歓声と共に喜びの意思が大きくなっていく。

 

『マジか! シェリルとランカ、それにファイヤーボンバーがゲリラライブしてるぞ!!』

 

『こんなの何処にも通知してなかったじゃん! 見つけてよかったぁ!!』

 

『舞台になってるのは戦艦の格納庫みたいだな。ちょっと薄暗いのがライブハウスみたいな雰囲気出ててメッチャカッコいい!!』

 

『これってS.M.Sのマクロスクォーターだ! 資料で見たことある!! 民間軍事会社だから戦艦を借りる事が出来たのかな? とにかく感動だぁ!!』

 

 ゆっくりと息を吐いて意識を集中する。

 

 喜びの感情、希望への想い、このライブを明日への活力と頑張る人の気合。

 

 そういったプラスの感情を引っ張って、取り纏めて皆へと還元する。

 

 作業が進んでいくごとに、コクピットで発光しているサイコフレームは色を変えていく。

 

 赤から緑、そして深い蒼へと。

 

『なにこれ……動画を見てくれている皆の歓声が聞こえる。彼等の息遣いも分かる。まるで本当にライブをしているようだわ!!』

 

『すごい! 本当にお客さんが目の前にいるみたい!!』

 

『なんだかよく分からねえがコイツはいい!! ドンドン行くぜ! 過激にファイヤー!!』

 

 そんなファン達の想いはシェリルさん達にも伝わって、演奏する側もドンドンテンションが上がっていく。

 

『なんだこれ? すげぇ!! スピーカーじゃなくてナマで聞こえて来るみたいだ!!』

 

『分かる! みんな目を閉じた方がいいよ! そうしたらライブやってる会場にいる気分になるから!!』

 

『本当だ! なんつうか、意識だけがシェリルたちの前にいるみたいだ!!』 

 

 それは配信を聞いていたファンも同様だ。

  

「なんという歌エネルギーだ! さっきまでの数倍…数十倍……いや、比べ物にならない!!」

 

「これは歌エネルギーだけじゃないね。超能力かサイコミュかは知らないけど、様々なエネルギーが混ざり合い互いを増幅している。このまま行けば次元の壁を突破するレベルにまで高まるかもしれない!!」 

 

 彼等の興奮は実験で生み出したエネルギーにも反映され、トライア博士を始めとする科学者達は歓声を上げる。

 

 そんな彼等の喜びの感情も巻き込んで、皆の意識の高まりはやがて一つのうねりになる。

 

 ───ただこれには一つ大きな問題があったんだ。 

 

「はぁ…はぁ……」 

 

 情けない話だけど、それは私の体力が足りないということだった。

 

 正直、ここまで負担が来るモノだとは思わなかった。

 

 実験が成功するまで頑張りたいところだけど、それをするとまた倒れそうだ。

 

「ひ…ひーちゃん…ミウ……ギブアップ」

 

『姉さま!? 陽蜂! 接続を止めろ!!』

 

『分かってる! リンクコネクト緊急切断! サイコミュシステム強制停止!!』

 

 体力が残っている内にと白旗を上げると、コックピット内の計器の多くが停止。

 

 同時に光を放っていたサイコフレームも鈍色のインテリアへと戻る。

 

『ミーちゃん、いったん降りよう。動ける?』

 

「……ん」 

 

 

 トラクタービームでハロを降りた私だけど、格納庫の床に着いた途端に足に力が入らなくてペタリと座り込んでしまった。

 

「姉さま!」

 

「ミユ!」

 

 慌てて走ってくるにぃに達に目を向けると、ミウの方もかなり汗を掻いていた。

 

 私も巫女服がぐっしょり濡れるくらいに汗だくなので、あの子の方にも負担が行っていたのだろう。

 

「大丈夫か?」

 

「……つかれた。ミウ、だいじょうぶ?」

 

「私の方は平気です。ですが、姉さまにココまで負担が行くなんて」

 

 ミウ達の心配を払拭するためにも元気な姿を見せてあげたいけど、今立とうとしたらそのまま後ろにひっくり返る自信がある。

 

「大丈夫なの、ミユ?」

 

「これ、水。凄い汗掻いてるみたいだから」

 

 そうしていると、シェリルお姉さんとランカお姉さんもやってきた。

 

「……ライブは?」

 

「〆はファイヤーボンバーがしてくれてるから大丈夫よ。それより、あの不思議な感覚はあなたがやったの?」

 

「……ん」

 

 私はランカさんから渡されたスポーツドリンクに口を付けながら頷いた。

 

「博士たちの話だとエネルギーは私達だけでやった時より上がってたみたいだけど、あんまり無茶したらダメだよ」

 

「……ごめんなさい」

 

 ランカさんの言葉はごもっともなので、素直に謝っておく。

 

 けど、実際にやってみると疲れるのってファンの想いを引き寄せる事なんだよね。

 

 一度まとめちゃえば、皆の想いは歌の効果で一人でに高まっていくし。

 

 お狐博士達も検証しているみたいだし、あとは専門の人達に任せるしかないかも。

 

 そんな事を考えていると、身体がヒョイと持ち上げられる感覚がした。

 

 後ろに目を向けると私をだっこするヨマコ先生の姿が。

 

「はい、この子はお風呂に入るからいったん解散ね」

 

「ヨーコ、すまん。頼めるか?」

 

「任せなさい」 

 

 頭を下げるにぃにへウインクで応えるヨマコ先生。

 

「あ、私も入りますわ」

 

『私も!!』

 

 私を抱えたまま歩き出したヨマコ先生の後ろからミウとひーちゃんも付いてくる。

 

 もう幼女丸洗いは避けられないだろうし、私が気を付けるべきは二つだ。

 

 一つ、お風呂で電池切れを起こさない事。

 

 もう一つは湯船でおもらししない事である。

 

 寝落ちすると粗相しちゃう気がするし、お風呂に入る前におトイレに連れてってもらおう。

 

 

 

 

〈エイプリルフール・蛇足〉 

 

 

・オリジナルハイヴ攻略

 

「……かみさま、あれつかう」

 

【よかろう】

 

「……みようみまね。こうしりょく」

 

【稲妻!】

 

【「キーーーーーーーック!!」】

 

 宇宙から蹴りの体勢で地球へ突撃したマジンガーZEROは亜光速でオリジナルハイヴへ着弾。

 

 その影響により、カシュガルを中心として半径数キロに渡って地盤崩落や土壌崩壊が発生。

 

 さらにはアジアからユーラシア大陸全土に掛けて、震度6強の地震を生み出した。

 

 まさにさよなら中央アジア状態である。

 

 全身を赤熱化させて突撃した魔神は、ベータごと巣穴の各階層を次々と爆砕して1秒も経たない内に最下層へと降り立った。(0.001秒経過)

 

 突然の襲撃に慌てて閉鎖した門級BETAを視線一つで爆砕すると、並みいるBETAを身体から噴き出る高出力の光子力エネルギーで触れずに蒸発させながら無人の野を行くかのように歩みを進める。

 

 そして迎撃しようと繰り出した触手を全て融解させると、地球侵攻の司令塔であるあ号標的。

 

 このハイヴの主である重頭脳級の身体をがっちりと掴む。(1秒経過)

 

「……ちきゅうをせめるの」

 

()ッ!!】

 

 幼女と共にお叱りの一声を浴びせると重頭脳級は反応炉もろともに消滅。(2秒経過)

 

 荒れ狂うルストハリケーンと光子力ビームで崩壊を始めたハイヴの中、魔神は脱出口を開く為に天に向けて全開のブレストファイヤーを放つ。(3秒経過)

 

 崩壊を続ける中央アジアの地表をリアル地獄の門へ変えた熱線は、大気を焼き尽くしながら天を貫くと月面に着弾。

 

 超高熱で瞬く間に火の玉となった月面はBETAにとって地獄と化した。 

 

 そうして煌々と紅い炎とマグマが吹き荒れるカシュガルだった溶岩地帯からゆっくりと現れる漆黒の巨体。

 

 天へ向けて勝鬨をあげるその様は、まさに魔神と呼ぶにふさわしいモノだった。(4秒経過) 

 

 この瞬殺劇によってカシュガルにあるオリジナルハイブはもちろんのこと。

 

 その余波だけでH2マシュハドハイヴにH6エキバストゥズハイヴ、さらにはH14ドゥンファンハイヴまでもを崩壊へ追い込んだ。

 

 当然の事ながら、この暴挙は地球に存在する全ての国家の反感を買った。

 

 G元素確保を画策していたアメリカ、地震による被害を受けたドイツとフランス。

 

 そして魔神が持つあまりの力に怖れを抱いたイギリスや日本帝国なども、挙って宇宙コロニー『豊葦原瑞穂国』へ抗議したのだ。

 

 その内容は『豊葦原の姫は地球を滅ぼしうる力を持った人類全ての脅威である。外宇宙への追放か処刑を要求する。要求に応じられない場合は、地球への利敵行為と見なし各コロニーへの攻撃を開始する』といったものだった。

 

 もちろん、この一方的な物言いに20にまで増えたコロニー国家達は激怒した。

 

 豊葦原の姫は国を追われて塗炭の苦しみである難民生活を余儀なくされた自分達を、BETAの魔手から救い上げて新たな国土と人間的な生活を与えてくれた恩人だ。

 

 BETAに怯えることなく明日を迎えるのが当然の生活がどれほど尊いかを彼等は骨身に染みて分かっている。

 

 故に彼等は地球の各国から出された要求を突っぱねた。

 

 大恩ある少女を裏切るほど、コロニー連合の首脳陣は外道ではなかったのだ。

 

 日本帝国に至っては、万が一の事態に備えて豊葦原瑞穂国へと避難していた皇帝と征夷大将軍が地球側の要求に帝国が噛んでいる事に激怒。

 

 本土を任せていた政治家たち(皇帝と共に斯衛軍もコロニーへ上がっていた事もあり、この時点で議会は親米派閥に牛耳られていた)を国賊認定した為に宇宙と地球で国を割ってしまった。

 

 こうして一触即発となった地球と宇宙の国家達。

 

 しかし豊葦原の姫はそれを望まなかった。

 

 彼女はコロニーの各国家首脳陣に『自分が争いの種になっては本末転倒』と伝え、戦艦はるかぜで自分の世界へ帰ってしまったのだ。

 

 しかしこの結果に激怒したのはコロニー連合だった。

 

 恩人を世界から追い出した事もそうだが、彼等の齎すオーバーテクノロジーを得るチャンスを潰された事が我慢ならなかったのだ。

 

 彼等は地球の国家へ強烈な抗議を行い、これ以降は資源や食料の配給を止める事を宣言した。

 

 しかしその宣言に対する地球国家の返答はアメリカ主導によるG弾の攻撃だった。

 

 宣戦布告も無しに放たれた凶弾は中国所有のコロニー『崑崙』を半壊させ、国民の3分の一を死傷させた。

 

 これに対してコロニー連合はアメリカへ使用不可能となった『崑崙』を核パルスエンジンを使って投下。

 

 この次元における初のコロニー落としの被害は甚大だった。

 

 北米大陸中央に落ちたコロニーは激突の衝撃波でアメリカやカナダの主要都市を薙ぎ払い、両国は国の体裁をとるのが不可能に近くなった。

 

 これによってアメリカは開発途上のギガフロートを臨時国家として北米大陸を放棄。

 

 地球に残存する勢力へ技術提供を代価に支援を求める事を余儀なくされた。

 

 この凄惨な殺戮劇が引き金となり、人類はBETAそっちのけで地球と宇宙で争う事となる。

 

 その戦いは数十年続き、最後はオーバーテクノロジーを多く所有して安全も確保されたコロニー連合が勝利する結果となった。

 

 その後、地球は貧困層や犯罪者が送られる棄民の場所となった。

 

 地球で暮らす者達は『アーシアン』と呼ばれ、BETAの脅威の中で日々を生き抜く過酷な生を強いられた。

 

 その反面、コロニー連合で暮らす者達は『スペーシアン』と呼ばれ、支配階級として豊葦原の姫が残したオーバーテクノロジーを解析しながら地球に住む棄民を旧種族と蔑みながら暮らしたという。

 

 彼等が火星から二度三度と送られてくるBETAに対抗できたかは定かではない。

           




エイプリルフール・オルタナティブ

・人類一丸ルート

幼女が帰ろうとしたところで、はるかぜにG弾炸裂。

はるかぜはイナーシャルキャンセラー・ラムダドライバ・光子力バリアなどのお陰で小破で済んだが、この攻撃でクソコテ様を始めとする幼女ガチ勢がブチキレ。

陰蜂・エンシェントGガンダム・ビースト最終形態・マジンガーZEROが地球・コロニーに関わらず襲撃を開始。

黄昏を目前とした人類は蟠りを超え、一丸となって滅びと対峙する。

人類側戦力・第三世代戦術機+G弾・第二世代量産型MS

数の暴力と存在自体が暴力、相手取るならどちらに救いがあるだろうか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。