幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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お待たせしました、更新です。

もうすぐ時獄編が終わる!

終了まであと6話分、頑張るッス!!


幼女とトラウマシティ

 中米のとある荒野には、世界の闇で暗躍する組織『アマルガム』の拠点の一つがある。

 

 ……いや、今となってはあったと言った方が正確か。

 

 何故なら拠点だった地下施設は今や一つの意思に飲み込まれて人も兵器も建造物も全てが融合した機械の化け物となっているからだ。

 

 細胞壁を思わせる光を時より表す紫銀に覆われた敷地は生物のように脈動し、そのいたる場所からは緑の触手やアマルガムの幹部であるレナード・テスタロッサが開発した高性能AS『ベリアル』の頭部を持つ蛇のような物が蠢いている。

 

 そんな異形の生物の中で全身を紫銀に染めたレナードは笑い続けていた。

 

「まったく俺も随分と無駄な事をしていたよ。この力があれば頭の中へ放り込まれるものが全て作れるじゃないか」

 

 数多のチューブや配線に身体を繋がれながら、レナードは薄気味悪い笑みと共に自分の足元へ視線を向ける。

 

 そこではプラン1058・コダールiやプラン1501・ベヘモス。

 

 さらにはレナード自らの専用機として開発していたプラン1055・ベリアルまでもが次々と生み出されていた。

 

「これさえあれば、千鳥カナメなんていらない! 間違った世界を消し去って俺の望む人生を! 世界を作り出す事が出来る!! ははははははははっ!!」 

 

 我が世の春とばかりに笑うレナード。

 

 しかし、それも長くは続かなかった。

 

 何故なら常人が見れば吐き気を催すような醜悪な魔境に一人の男が現れたからだ。

 

「よもや、この災禍が再び現れるとはな。シュバルツの言に偽りはなかったか」

 

 それは東方不敗・マスターアジアだった。

 

「あの娘が為すように世の為人の為ならば見逃しもしよう。だが、邪心によって魔に堕ちたアルティメットガンダム細胞、否! デビルガンダム細胞の存在は許すわけにはいかん!」

 

 そう宣言すると天高く飛び上がり、魔物と化したアマルガムの敷地へ突貫する東方不敗。

 

「なんだ、アイツは? 薄汚い浮浪者がダイナミックな自殺にでも来たか!!」 

 

 それに気づいたレナードは傲慢さを隠そうともせずに、変質した施設に備わった牙をむき出しにする。

 

 主の指示によってベリアルの頭部を持った蛇型の迎撃機構、ここでは前例に倣ってベリアルヘッドと呼称する。

 

 奴等が取ったのは対AS用の弾頭を吐き出しながら不可視の障壁、ラムダドライバによる斥力シールドを張る事だった。

 

「でやぁっ!!」

 

 しかし次の瞬間にレナードが疑ったのはモニターに映る光景か、それとも自身の目か。

 

 男は迫りくる弾頭を影すら見えない速度で振るわれた手で払いのけると、異形の蛇が張った力場を拳一つで呆気なく粉砕したのだ。

 

「な…なんだとぉぉぉっ!?」

 

 ラムダ・ドライバは現状の地球に置いて最高峰の防御技術の一つだ。

 

 それを生身の拳が打ち砕くなど、もはやギャグの領域である。

 

 しかし眼前で起きたあり得ない光景に施設の主が頭を抱えている事など、規格外の武道家には知った事ではない。

 

「とぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 裂帛の気合と共に降り注ぐのは無数という表現が相応しい程の拳打と脚。

 

 それは紫銀の表皮へまるで流星のようにクレーターを穿つと、次々と叩き割っていく。

 

「なんだ、あの化け物は!? 非常識にもほどがあるだろう!! この施設を覆うのはガンダリウム合金だぞ! そんな簡単に割れてたまるか!!」

 

 イヤでも見せつけられる超人の所業に悲鳴を上げるレナード。

 

 このままでは外壁を打ち抜いて、あの頭のおかしいオッサンがここへ来てしまう!!

 

 今までにない程に身の危険を感じたレナードは、作り上げたラムダドライバ搭載機にゾンビ兵へ改造した施設の職員達を乗せて上へと運び始める。

 

「奴等が地上に出れば、如何に奴でも敵いはしない筈だ! それまで何としてでも時間を稼げ!!」 

 

 そして繋がったケーブルを通して、地表部分で蠢くベリアルヘッド達に決死の防衛を命じるのだった。

 

 一方の東方不敗もその猛攻の勢いに陰りが見え始めていた。

 

 彼の武道家の頭を過るのは効率の問題だった。

 

 如何に威力があろうと人間の大きさでは破壊効率に限界がある。

 

 相手が基地一つを呑み込んだ化け物である以上、このままでは日が暮れてしまうだろう。

 

「ふんっ!」

 

 そう感じた東方不敗は襲い来るベリアルヘッドの胴の半ばに旋風脚を叩きこむ。

 

 強烈な破砕音と共にベリアルヘッドは脚打を食らった部分から胴体がへし折れ、クルクルと回転しながら宙を舞う。

 

 東方不敗は自分の数十倍の大きさを誇るそれを鷲掴みにすると、片手一本で担いでUGセルの範囲外へと一足跳びで後退する。

 

「これでは埒が明かぬな。こういった物にはもう頼る気はなかったが……仕方あるまい!」

 

 そう呟くと、東方不敗の身体から黄金の氣勢があがる。

 

 強靭な握力によって指がベリアルヘッドの装甲を食い破り、そこから東方不敗の氣が浸透するにつれて異形の蛇はその姿を変えていく。

 

「ふふふ、流石はアルティメットガンダム細胞。デビルガンダムの物よりも数段素直よ」

 

 人の精神力で組成を変えるのはUG細胞の性質の一つである。

 

 かつてはUG細胞から変質して人を取り込む凶悪さを身に着けたデビルガンダム細胞をも常人離れした氣で制御下に置いた彼に掛かれば、イメージを送り込んで根本から作り替えるのもお手の物だ。

 

 そして東方不敗が手を離すとベリアルヘッドの残骸は全くの別物に生まれ変わっていた。

 

 漆黒のボディに背中に生える深紅の翼のようなスラスターユニット。

 

 そして後ろへ伸びる角のような頭部。

 

 それは彼がかつての世界で駆っていた愛機、マスターガンダムだった。

 

「では、慣らしといくか。とう!」

 

 イメージ通りの出来にニヤリと笑うと、東方不敗は一足でコックピットへ乗り込む。

 

 主を腹に納めたマスターガンダムからは駆動音と共に漆黒の氣が溢れだし、それは圧となって鋼の両足が根付いた場所から大地を抉る。

 

『さあ、力に溺れし愚か者よ! 大人しく最後を迎えるがよい!!』

 

『く…来るな! 全兵力に告ぐ! どれだけ犠牲が出てもいい、あの機体を叩き潰せ!!』

 

 地表へ現れたべへモスをすれ違いざまに粉砕したマスターガンダムは、再度機械の化け物となったアマルガムの基地へ戦いを挑むのであった。

 

 

 

 

 今日のネオジオン。

 

 シャア・アズナブルはダラダラと冷や汗を流していた。

 

 その様は見る者が見れば『蛇に睨まれた蛙』と形容するだろう。

 

「シャア、随分と厄介なことになっているようだな」

 

「あ…ああ」

 

 彼を視線一つで追い詰めているのは、胃潰瘍から華麗に復活したハマーン・カーンだ。

 

 彼女は総帥席に山のごとく積みあがった書類を横目にため息をつく。

 

「あの馬鹿者どもを何とかしたい気持ちは痛いほどわかるが、それで敵を増やすのは悪手だろう」

 

「すまない。昔文献で目にしたジャパニーズ・ヤクザの手法を真似てみたんだが、何分芸能というモノには疎くてな。外部に委託した結果、あんな事になってしまった」

 

 現在ネオジオンの窮状を招いた一端は自分にある事を自覚しているシャアは、珍しくハマーンへ素直に頭を下げる。

 

 決して人生の墓場へと自分を引きずり込もうとしているマドハンドが幻視できているわけではない。

 

「フロンタルの暴走がネオジオンの名誉に対する打撃となったのは、元をただせば総帥である貴様にも原因があるのだぞ」

 

「それはどういう事だ?」

 

 首を傾げるシャアにハマーンは冷たい目を向けたままこう言った。

 

「ロリコン」

 

「……っ!?」

 

 そして、その言葉を聞いたシャアに電流が奔る。

 

「貴様に対するこの疑惑は連邦・反連邦に関わらず地球圏の誰もが知っている事だ。実際、この悪評が無ければ一連の不祥事もフロンタル一人の仕業でカタが付いた」

 

「たしかに大佐にロリコン疑惑が無ければ、あの女の子に対する行いが露見した時点で影武者に相応しくないとバッサリいけましたね」

 

「そうだ。だが、この悪評の所為でフロンタルの行いがシャアにまで飛び火した。その上、奴を切ろうとすれば『変態がトカゲの尻尾切りをした』などという要らぬ世論の炎上材料となる危険性も孕む羽目になった」

 

 なるほど、改めて説明されれば納得がいく部分もある。

 

 普通は何をしようとフロンタル個人の責任であり、シャアの責任は精々監督不行き届き程度。

 

 組織の看板に泥が付く事はあっても現状のように社会的な火炙りに処される事はないはずだ。

 

 しかし、頷きそうになる寸前である疑念がシャアの首を止める。

 

「待て、ハマーン。そもそもどうして私が世間からロリコン認定されているのだ? ララァを見出して副官にした事が原因だとしても当時の私は19歳。17のララァと恋人同士だったとしておかしい所など何もないだろう」

     

「それに関しては当時のお前が大人び過ぎていたからだろう。そんなお前が未成年のララァ・スンをコネを使って軍に引き入れたのだ。友軍の中にいた性根のねじ曲がった輩やお前に煮え湯を飲ませ続けられていた連邦が悪し様に言ってもおかしくはない」

 

 ハマーンの推察に今度こそ頷くシャア。

 

 しかし感心するのはまだ早かった。  

 

「もっとも20もとうに過ぎていたのに、アクシズで14歳だった私に手を出した時点でロリコン認定は避けられんわけだが」

 

「ぐはっ!?」

 

 素晴らしいまでの上げて落とす戦法を食らったシャアは胸を押さえて膝を付く。

 

 社会的生命や名誉に復活の兆しが見えたところでコレである。

 

 そのダメージによって金糸が頭からヒラヒラと落ちていく。

 

「ここまでは前段だ。現状においてプラントとの停戦を実現するにはネオジオン、ひいてはお前の悪評を一つでも消さねばならん」

 

「そ…そうだな。フロンタルも逃亡したのだ、これ以上奴に場を引っ掻き回されたくはない」

 

 ふらつきながらも何とか立ち上がるシャアにハマーンは頷き返す。

 

「そこで凋落の原因となった幼女趣味のレッテルを破却する為に、お前には私と結婚してもらおうと思う」

 

「……ダニィッ!?」

 

 突然ぶっ放された核弾頭級の言葉にシャアは思わず目を剥いた。

 

「私と貴様の成婚はザビ家派閥とダイクン派の融和の象徴となる。そうなれば仲がいいとは言えない新旧勢力も手を取り合い、ネオ・ジオンの勢力増強にも繋がる。なにより貴様を悩ませていたロリコン疑惑を払拭できるぞ」

 

 フフンと胸を張るハマーンにシャアは気づかれぬように臍を噛む。

 

(例の特級呪物を見た時から警戒はしていたが、まさかこのタイミングで切り札を切ってくるとは!? 悪評に頭を悩ませていた私へ真摯に対応していたのもコレが狙いだったか!!)

 

(甘いな、シャア。この私が何時までも無償で貴様に奉仕してやると思っていたのか?) 

 

 人生の墓場から逃れたい男とゴールインを虎視眈々と狙う女、二人の鋭い視線が錯綜する。

 

 しかしそこに待ったを掛ける人物がいた。

 

「お待ちください、ハマーン宰相」

 

「ナナイ!」

 

 思わぬ援軍に表情を輝かせるシャア。

 

 そう、それはハマーンが入院している間シャアの右腕として辣腕を振るっていたナナイだ。

 

「なんだ、ミゲル所長?」

 

 鍛え抜かれた軍人でも震えあげるハマーンの視線を真っ向から受け止めるナナイ。

 

(ナナイ! 私を助けてくれ!!)

 

 彼女はニュータイプ研究所の長だ。

 

 彼女が反対するならハマーンも強引には事を運べまい!!

 

 期待するシャアだったが、その希望はあえなく潰える事となる。

 

「宰相閣下の作戦は見事です。しかし、総帥にこびり付いた汚名は宰相一人で拭う事は難しいでしょう」 

 

「というと?」

 

「一人でダメなら二人です。正妻を宰相閣下とし、私を内妻に娶った事にすればよいのです」

 

「……ッ!?」

 

 ナナイの思わぬ裏切りに目玉が飛び出んばかりに見開くシャア。

 

 あまりのショックに言葉も出ない男を置いて女二人の談義は続く。

 

「内妻か……しかしそれは倫理的にどうなんだ?」

 

「大丈夫です。彼のジオン・ズム・ダイクンもローゼルシア・ダイクンとアストライア・トア・ダイクンという二人の女性を娶っています。しかも大佐は内妻であるアストライア様の嫡子。それを表に出せば反発は小さくなるでしょう」

 

(なるわけねぇぇぇぇぇぇっ!!)

 

 あっさりと自らを重婚のケダモノ野郎に突き落そうとするナナイに内心で頭を抱えるシャア。

 

 というか、内妻と正妻の確執などシャアのトラウマにスマッシュヒットである。

 

「たしかに貴様と私の双方を娶れば、忌まわしい奴の悪評も鳴りを潜めるか。……いいだろう、その案を採用しよう」

 

 少し試案を挟んでハマーンはナナイの提案を呑むことにした。

 

 当然シャアに伺いを立てる様子など微塵もない。

 

「随分と大人になられましたね、宰相。以前の貴方なら激昂して私に銃を向けるでしょうに」

 

「この激動の時代で組織の舵取りをしていたのだ。しかも味方の中に功績を根こそぎ吹き飛ばす癌までいるとなれば、何時までも青臭い乙女の夢など追ってられんよ」

 

 ナナイの挑発ともとれる言葉を鼻で笑うハマーン。

 

 胃潰瘍を発生させるほどの激務と難題は女傑をさらに一皮剥かせる事に成功したらしい。

 

「……あ? 大きな星が点いたり消えたりしている……。あはは、大きい! 彗星かな? いや、違う……違うな。彗星はもっと、バァーって動くもんな」

 

 そして当のシャアだが、あまりの急展開で某後輩に似た精神崩壊を装う事で現実から逃げ出していた。

 

 この後、サザビーに代わって例の特級呪物の番いとして百式ベースの総帥専用機が造られた事に絶叫することになるのだが、この時の彼はその悲劇をまだ知らない。

 

 

 

 

 どうも、トラウマ直撃な街へまた来る羽目になった幼女です。

 

 正太郎君とグーラの壮絶な喧嘩が終わって宇宙魔王が去ったあと、戦闘宙域にニアお姉さんが現れた。

 

 彼女が『あの惑星に用意されたシステムがうんたら』と私達へ言うと、突然時空振動が起こってZ-BLUEはパラダイムシティへ飛ばされてしまったのだ。

 

 私はこの街にいい記憶がない。

 

 はじめてハロに乗った思い出の場所だけど、夜の怖い街を歩き回った挙句に怪人に目を付けられておもらしまでしたのだ。

 

 出来る事なら二度と来たくなかった。

 

「パラダイムシティを覆うドームの外って、よくそんなことが分かるな」

 

 カミーユさんから現在地を聞かされたにぃにはショックを隠し切れない感じで顔をしかめている。

 

 それもそうだろう。

 

 なにせ私達の前に広がるのはビルや住宅の残骸に粉塵が降り積もった死んだ街なのだから。

 

「俺とカミーユとバナージは以前この街に飛ばされた時も、ここで目を覚ましたんだ」

 

 言葉と共に周辺に視線を巡らせるアムロ大尉。

 

 ここにいるのは私とにぃに、アムロ大尉にバナージさんとカミーユさん。

 

 あとはミウにひーちゃんと青カブトにチビパイルダーだ。

 

 他の人を探しているんだろうけど、生憎と廃墟からは気配を感じない。

 

 ううん、この感じは……

 

「しかし、どうして俺達だけここに……」 

 

「知りたいかね?」

 

 カミーユさんが漏らした疑問の声に応える影。

 

 その気配を私はよく知っていた。

 

「お前は……!?」

 

「ぴぃっ!?」

 

 そう、それは前に来たときに私を狙っていた包帯怪人だったのだ。

 

 あのグロ画像のような顔を見た瞬間、思わず口を突く悲鳴。

 

 それに反応したのは青カブトだった。

 

『任せたまえ。無粋な来客はエレガントに帰らせてみせよう』

 

 おお! 『めいきょーしすい』のお陰か、頭の中に青の声が聞こえる!

 

 これってブリュッセル以来じゃないかな!

 

「こういった形でお目にかか…げふぅっ!?」

 

 余裕をもってアムロ大尉達に話しかけていた怪人、その脇腹に青の拳が突き刺さる。

 

『エレガント・サミング!』

 

「ぎゃああああああっ!?」

 

 そして苦痛から奴の身体がくの字の折れたところで、青のにくきゅうから飛び出した爪がモノクルとは逆の目に突き刺さる。

 

 というか、それって反則じゃなかったっけ!?

 

『親指をッ! 彼の目の中に突っ込んで!! 殴りぬけるッ!!!』

 

 ブッギャア!! という擬音が鳴りそうなダーティプレイに私は唖然呆然。

 

 ちょっと待って、あお!

 

 エレガントは何処へ行ったの!?

 

「う…うぐぐ……」

 

 まったくの奇襲に対応できずに地面に這いつくばった怪人にひーちゃんはハロの口から銃身を出し、チビはパイルダーの羽根の下に備わった砲口にギュンギュンパワーを溜めている。

 

『ミーちゃん、ここで始末しとく?』

 

「……まって」

 

 うん、どうして私のお供はこんなに殺意が高いのか。

 

 前の事が原因だと分かっていても、容赦なく命を奪いに行くのは勘弁してほしいなぁ。

 

「随分と容赦ないですわね。いったいこの男と何があったんですの?」

 

『このオッサン、前に来たときにミーちゃんを狙ってたんだよ。こいつの所為でミーちゃんおもらしするし、超サイテー!』

 

 やめて! 妹に私の黒歴史を教えないで!!

 

 恥ずかしさとショックで涙目になっていると、ミウはズンズンと足音を鳴らして怪人へ近づいていく。

 

「ぐはぁっ!?」

 

 そして起き上がろうとしていた彼の顔面に綺麗なヤクザキックを決めた。

 

 まだ子供とはいえコーディネーターな妹の蹴りは相当な威力があったみたいで、怪人はもんどり打って地面に倒れる。

 

「ぐ…なにを……」

 

 抗議の声を上げようとした彼を黙らせたのは、モノクルの寸前に突き付けられた鉄パイプの先端だった。

 

「なに断りもなく立とうとしてんだ、変態野郎。テメエはそこで正座しとけ」

 

 非常にドスが効いた声で鉄パイプを持つミウ。

 

 瓦礫から拾ったそれを手に脅す姿が妙に板に付いていて、お姉ちゃんは別の意味で涙が出そうです。

 

 ミウの放つヤンキー的なオーラにアムロ大尉達が絶句する中、妹は怪人へ言葉を続ける。

 

「それで?」

 

「は?」

 

「こんな所までくるって事は私達に何か用があんだろうが。とっとと話せや。あと姉様がビビるから汚ねぇツラァ下に向けとけ。話が長かったり姉さまに顔を見せたら、容赦なくカマすからな」

 

 そう言いながら怪人の側頭部をゴンゴンと音が鳴るくらいに鉄パイプで叩くミウ。

 

 怪人の方も妹の言葉が脅しじゃないとわかったのか、地面に正座をして顔を下に向ける。

 

「どうしてアイツはミウの言う事を聞いているんだ?」

 

「何言ってるんですか、カミーユさん。あんな風に脅されたら普通は誰でも従いますよ」

 

『それもあるけど、前にロジャーがアイツの事を新聞記者って言ってたじゃん。過去に何かあった所為でああいう不良チックなのが苦手なのかもだよ』

 

 首を傾げるカミーユさんに突っ込むバナージさんとひーちゃん。

 

 あと、ミウを不良とか言うのやめてほしいなぁ。

 

「わ…私はシュバルツバルト、真実の探求……」

 

「その無駄な形容詞、要るか? 名前だけでいいんだよタコ」

 

 名乗りを上げようとした怪人改めシュバルツバルトだけど、途中でミウのダメだしが入る。

 

 可哀そうだからコメカミを鉄パイプの先端でぐりぐりするの止めてあげて。

 

 それからシュバルツバルトの言ったことが意外なモノだった。

 

 なんとこの廃墟はシャアが行った隕石落としの結果、滅んだ地球のモノだという。

 

「黒い歴史……」

 

「まさか…!」

 

「そうだ! この光景が本来の世界! 真実なのだよ!!」

 

 心当たりがあるのか、絶句するアムロ大尉とカミーユさん。

 

 それを見たシュバルツバルトは顔を上げて二人を哄笑する。

 

「ふはははは……ぶべらっ!?」

 

 けど、その笑いは強制的に止められる事になった。

 

「フカシこいてんじゃねえぞ。あと、誰がツラ上げていいって言った?」

 

 シュバルツバルトを殴り倒したミウは少し歪んだ鉄パイプを彼の顔に投げつける。

 

 まさか本当に頭めがけてフルスイングするとは思わなかった。

 

 お姉ちゃんはビックリです。

 

「ふ…フカシ……だと!?」

 

 なんとか立ち上がろうとするシュバルツバルトの顔を踏みつけながらミウは続ける。

 

「シャア・アズナブルの計画した地球寒冷化作戦、通称アクシズ落としはアムロ大尉とロンドベル隊が阻止してんだよ。あの男が地球を破滅させたなんて記録は何処にもねえ」

 

『この世界だとアクシズどころかフィフスルナも落ちてないしね。アンタ、いったいどの世界の事を言ってんの? もしかして頭の中の妄想だったり?』

 

「……シャアはちきゅうをまもるつもり。フィフスもおとすき、なかった」

 

 あの人は色々と分からないことが多いけど、そこは間違いないはずだよ。

 

(暑苦しいなぁ、ここ。うーん……出られないのかな? おーい、出してくださいよ。ねぇ?)

 

「……シャア?」

 

「姉さま?」

 

 なんだろう、今の?

 

 なんだかすっごく追い詰められているようなイメージ……具体的に言うと前門の虎後門の狼的な感じのイメージが伝わってきたんだけど。

 

 本当に大丈夫なのかな、あの人?

 

「くっ!?」

 

 私がシャアの名を呼んだのが悪かったのだろうか、ミウの意識がこちらへ向いた瞬間にシュバルツバルトはあの子の足の下から抜け出した。

 

「メトロポリスの記述に間違いはない! それに狂いが生じるとするならば、君たちのようなイレギュラーが原因だ!! 私の真実の為に消えてもらうぞ!!」

 

 そして私達にそう叫ぶと廃墟の中へと消えて行った。

 

『ミーちゃん、逃がしていいの?』

 

「……いい」

 

 というか、私はあの怪人ともう関わりたくありません。

 

「姉さま……」

 

「……だいじょうぶ。どんなミウでもねぇね、だいすき」

 

「姉さまぁ!」

 

 気まずそうに視線を逸らすミウを私は抱きしめる。

 

 今回は今までにないほどネコが剥がれたけど、それも全部私のため。

 

 嫌ったり怖がるなんて以ての外だ。

 

「ミウ、少しいいか?」

 

 嬉しそうに私を抱き返すミウに声を掛けたのはアムロ大尉だ。

 

 少し引き気味なのは気にしてはいけない。

 

「なんですの、アムロ大尉?」

 

「さっきのシュバルツバルトへの反論だが本当なのか?」

 

「アクシズ落としの事ですか?」

 

「そうだ。クワトロ大尉は本当にアクシズを地球へ……」

 

 話に加わったカミーユさんの言葉にミウはしっかりと頷いた。

 

「ええ。隕石を落とす事で地球を寒冷化させて人が住めない世界にする。そうする事で地球から人類を巣立たせて、宇宙の中で生きる人を増やす事で人類全体のニュータイプへの覚醒を促す事が彼の狙いだと言われています」

 

「それもGシステムとかいうのにあった記録なのか?」

 

「はい、兄さま」

 

 ミウの話を聞いたアムロ大尉達は何とも言えない顔をする。

 

 どうやらシャアの性格からして在り得ると思っているらしい。

 

「……だいじょうぶ」

 

「ミユ?」

 

「……シャアはちきゅう、つぶさない」

 

 私は少し沈んだ表情を浮かべているにぃにの手を取ってもう一度こう言った。

 

 というか、シャアって割とウチの部隊から信用ないよね。

 

「シャアの真意やシュバルツバルトの事は今は置いておこう。それよりほかの皆を探すぞ」

 

 そうアムロ大尉が言うと同時に皆の携帯端末から甲高い音が鳴った。

 

 これはクォーターからのコールサインだ。

 

「アムロさん!」

 

「どうやら敵が現れたようだ。皆、クォーターに向かうぞ!!」

 

『了解だよ! あお、ミーちゃんを抱えて!』

 

『承知した。少し揺れるが我慢してくれたまえ』

 

 皆が駆けだす中、ひーちゃんの指示で私を抱っこする青カブト。

 

 見た目クマさんなのに紳士的ってなんだかもにょるなぁ。

 

「姉さま、少しお願いしたいことがあるのです」

 

「……おねがい?」

 

 クォーターまでの道行きの中、妹が私に告げた頼みは少し意外なモノだった。

 

 

 

 

 あれから数分後、私達はパラダイムシティの町中でロジャーさんを中心に陣を組んでいる。

 

 その前に立ち塞がるのは、何時ぞやも戦ったザ・ビッグとかいう巨大ロボットの群れだ。

 

『このパラダイムシティから脱出するには、あの軍団を倒さなきゃならないんですね?』

 

『突き詰めれば、そうなる』

 

 タケルさんの問いかけに頷くロジャーさん。

 

「そういう事なら話が早いですわ。頑張りましょうね、姉さま」 

 

「……ん」

 

 複座式になったコクピットの中で前に座るミウの言葉に私は頷く。

 

 そう、今私は妹とクマさんにタンデムしているのだ。

 

 あ、ひーちゃんもいるから3人乗りか。

 

『ミユ! ミウ! 本当に大丈夫なんだろうな?』

 

『ヤバいと思ったら脱出しろよ! そんなのよりお前たちの方が大事なんだからな!!』

 

 前の事があるからだろう、ブライト艦長やにぃになど皆から心配する通信がいっぱい入ってる。

 

「心配ご無用ですわ。あれは優しい姉さまだから起こった事、私がメインパイロットを務めている限りあり得ません」

 

 そんな通信達をミウは自信たっぷりに一蹴する。

 

『本当なの? ミーちゃんに悪影響が出るようならシステム乗っ取るよ!』

 

「そうなら是非やってくださいな。私も姉さまに被害が及ぶことを望みませんから」

 

 実はミウが私に言った頼みは一緒にクマさんに乗ってほしいという事だったのだ。

 

 聞けばクマさんことビーストは私達二人が乗って初めて十全に力が発揮できる代物らしい。

 

 ミスリルから盗まれてミウの所に行った後、そういう風に改造したんだってさ。

 

 でもって、クマさん覚醒の為に必要な闘争本能等々はミウが担当するから前みたいな暴走は起きないそうな。

 

 以前の事があるので正直気は進まなかったけど、妹の頼みとあっては断れない。

 

 あれから私も『めいきょーしすい』等々でシンポしたのだ。

 

 ミウと一緒ならクマさんだってクレバーに乗りこなして見せるさ!

 

「では闘いの火蓋は私達姉妹が切らせていただきますわ」

 

 そうミウが告げると同時に先陣を切るクマさん。

 

 私が操縦していた時とは比べ物にならない鋭さで間合いを詰めたクマさんは、地上を歩くザ・ビッグの一体へクマセイバーを突き刺す。

 

「そして貴方にはビーストが本領を発揮するための贄となってもらいましょう!」

 

 妹がそう告げると同時にリボンストライカーからプリズム色の粒子が渦を巻き始める。

 

 それは他の全てを分解して糧にするクマさんの必殺武装『真・月光蝶』

 

 天を衝く竜巻となったナノマシンは世界を滅ぼした神の軍団とロジャーさんが説明していた鋼の巨人を容赦なく食い荒らす。

 

 そうしてザ・ビッグの全てを食らったクマさんはその身を愛らしいぬいぐるみから魔獣へと変形させる。

 

 月光蝶の障壁が消えると同時に咆哮を上げるクマさん。

 

「では行きますわよ。姉さま、ビット兵器と射撃はお願いします」

 

「……まかせて」

 

 ミウの言葉に頷いてサイコミュへと意識を繋いだその瞬間だった。

 

 目の前に黒……ううん、蒼い宇宙が広がると頭の中に言葉が流れ込んでくる。

 

 なんだろう、これ?

 

 本当は凄く難しい話なんだろうけど、どうしてかスルリと染み込むみたいに理解できる。

 

 因果が紡がれた?

 

 使える? 私にも使えるの?

 

「……姉さま?」

 

 こちらを心配するミウの声に私は我に返る。

 

「……だいじょうぶ。ごめんね」

 

 戦闘中にポヤってするなんてダメダメである。

 

 ここは凄いところを見せて名誉挽回と行こう!

 

 私が意識を集中すると、ビーストの背に生えた副腕がザ・ビッグ達へ掌を向ける。

 

 本来ならそこにあるガンダム顔からビームを吐き出すんだけど、私がやろうとしているのはそれじゃない。

 

 精神……ううん、それより深い場所からくみ上げるエネルギーを相手へぶつけるんだ。

 

『マサキ! 変形したクマから凄い魔力を感じるニャ!』

 

『なんだと!? 魔装機でもないのにどういう事だ!』

 

『馬鹿な!? この魔術式は!』

 

『ウソだろ、なんであの子が使えるんだよ!?』

 

 誰かが何かを言っているみたいだけど、集中を深めた私には気にならない。

 

 そして紡ぐのは力ある言葉!

 

「ABRAHADABRA……しにいかずちのせんれいを!」

 

 それに応じるように副腕は宿った高エネルギーを吐き出した。

 

 紫の雷となって宙を駆けるエネルギーは空を飛んでいたビッグデュオとかいう巨大ロボットの腹を一撃で吹き飛ばした。

 

「姉さま、今のは……」

 

「……クマさん、おしえてくれた。めいきょーしすいのおかげ」

 

 そう、きっと今までクマさんに乗っても使えなかったのは私が未熟だったからだ!

 

 これこそパイロットとしてパワーアップした証明なんだよ!

 

『ミーちゃん、今のヤバくない?』

 

「……ん、だいじょうぶ」

 

 ひーちゃんの心配する声に私は力強く頷いてみせる。

 

 いつも戦うとヘロヘロになっちゃうからね、今日くらいは頼れるところを見せないと!

 

 そんな訳で、このまえ見た魔法少女みたいにスマイルハリケーンで機械巨人をやっつけるんだ!!                               




デビル・レナード「バグキャラなジジイに命を狙われています、助けて」

頭無残様「生き恥ポップコーンという技があってだな……」

師匠「石破天驚……サァァァァンシャインフィンガァァァァ!!」

デビル・レナード(ジュッ)

頭無惨(ジュッ)

Q今のマスターガンダムの強さってどのくらいですか?

A無印エクバの修正無し全盛期無印マスターくらい
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