幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 お待たせしました、何とか完成です!

 本当に今回は難産でございました。

 だって元になったシナリオって、イベントの半分以上がアクエリオン関係なんだもの!!

 はっはぁ! 全部使えねえや!!

 広げた風呂敷が自分の首を絞めるぜ!!


幼女と魔法とお姉さん

 どうも、魔法幼女デビューから3分で魔法の使用を禁止された幼女です。

 

 魔法というファンタジーをこの手に出来て内心ワクテカしていたところ、アルお姉さんから通信が。

 

『その術は邪法だ! 使ってはならん!! 汝のような右も左も分からぬ子供が使えば外道に堕ちるぞ!!』

 

 と血相を変えて怒られてしまった。

 

 正直納得がいかないけど、相手は魔術のエキスパート。

 

 その忠告に従わないのは流石に拙い。

 

 そんな訳で2発目のアブラハダブラは中止となってしまいました。

 

 しかし怪人に率いられたザ・ビッグ達は、こちらの事情などお構いなしに襲ってくる。

 

 ならば、ビースト本来の戦い方といきましょう。

 

「……ファング、あとしょくしゅもいって」

 

 前より格段に使いやすくなったサイコミュで、私は副腕の指先から金色の牙を模した誘導兵器デッドエンドファング、そして背中から何本も生えている緑色の触手へ指令を出す。

 

 こちらの意思を受けたファングは空中に浮かぶ怪人の乗るロボット(……たしかビッグデュオだったかな?)の量産型へと襲い掛かり、触手の方は地上を歩くアーキタイプへと牙を剥く。

 

 大きさからすればネズミと猛獣程の差があるにも関わらず果敢に攻め込んだ黄金の牙は、敵の砲撃や剛腕を掻い潜ると全身に自らを突き立てて先端からビームを零距離射撃で叩き込む。

 

 さしものビッグ・オーの親戚も装甲の内側を叩かれては堪らないらしく、量産型達はビルの上で炎の球になって爆散する。

 

 そして触手の方は先端がドリルになって、相手を貫くとビームを放って内部機構を焼き尽くす。

 

『ザ・ビッグに使われている超合金Oは解析済みだからね。自慢の分厚い装甲も私達には役に立たないよ!』

 

 そういえば、前に来た時にその辺のことはひーちゃんが調べてくれたんだっけ。

 

「装甲材を解析されてメタを打たれるとか、エゲツないにも程がありますわ」

 

 そう言うミウは対超合金O専用の振動指数を宿したビーストの牙や爪で、アーキタイプを次々と紙のように切り裂いている。

 

 私の時はビーストを動かしたことなかったけど、この子ってこんな俊敏に動けるんだねぇ。

 

『おい、ウエスト! 今度は大丈夫だろうな!?』

 

『以前のように神獣形態を一発撃ったら腕がもげるのでは、まともに戦う事も出来んぞ! というか、バルザイの偃月刀を振るうだけで関節がミシミシいっておるではないか!』

 

 私の横ではデモンへインが不思議な形の剣を振るってアーキタイプの装甲を削っている。

 

『心配無用である! 貴様等のデモンへインも人柱……否! 加齢臭エリオンの技術を流用して強化しておいた! 神獣形態も3発までならOK! 3発撃ったら前のようにロケットパンチである!!』

 

『こっちの必殺技を事故みたいに言うな!!』

 

 ジュアッグを口に咥えたデフォルメされた鬼みたいな……なんだろうね、アレ?

 

「つーか、そのザクレロデンドロビウムどっから持ってきた!?」

 

 空を飛びながら両手に付いたドリルを有線で飛ばす謎の怪物体にツッコミを入れるミウ。

 

 ああ、あれってザクレロっていうんだ。

 

『……なんというか、ある意味懐かしいな。一年戦争の時に一機堕とした事はあるが、あの機体ほかにも造られていたのか』

 

『アムロさん、あれってジオンが造ったんですか?』

 

『ああ、俺も初めて見た時は何の冗談かと思ったけどな』

 

 そんな夜空を翔る怪物体を見て、どこか放心した顔で話すアムロ大尉とカミーユさん。

 

 アレと戦ったって、すごいなアムロ大尉。

 

 私だったら敵として現れたら、きっと泣いてしまう。

 

 そんな中、Z-BLUEの皆は次々と鋼の巨人を打倒していく。

 

「魂の入っていない拳では俺とゴッドマーズは倒せないぞ! ゴッドファイヤァァァ!!」

 

 直立不動でアーキタイプのパンチを受け止めたゴッドマーズはお腹から『G』の形をした光線を出して相手の胸を撃ち抜く。

 

『剣氣をATフィールドに乗せて剣に纏わせる! そして一の太刀を打ち込む!! チェストォォッ!!』

 

 そしてビルを足場に宙を舞うエヴァ初号機が空を舞うビッグデュオを一発で開きにした。

 

「碇君、ナイス蛮族」

 

「エコヒイキ、言い方!!」

 

 そんなシンジお兄さんに割とひどいエールを送ったレイお姉さんは、現在リハビリ中で出撃していないアスカお姉さんのツッコミを背に初号機からパチったスナイパーライフルを撃つ。

 

 放たれた高出力の荷電粒子は夜闇を焼きながら、並んでいたビッグデュオを二枚貫きする。

 

『マサキ、さっさとミユをあの機体から降ろした方がいいニャ』

 

『ああ、イヤな雰囲気のプラーナを纏い始めているからな』

 

『それじゃあ、とっととザコ共は蹴散らしてやろうぜ!』

 

『任せろ! サイ・フラァァァァッシュ!!』

 

 そしてサイバスターがかざした剣から膨大なエネルギーを纏った暴風を放って、アーキタイプを次々と粉砕する。

 

 皆の活躍でドンドン数を減らしていくザ・ビッグ達。

 

『やはり烙印を押されし者、その力は伊達では……ぬぅっ!?』     

 

 その光景に足を止めた怪人が乗るビッグデュオの統率機だけど、このタイミングでそれは悪手だった。

 

 地上から発射された漆黒の鎖が、その巨体を絡めとったからだ。

 

『捕らえたぞ、シュバルツバルト!』

 

『ロジャー・スミスか!!』

 

 空中にいるビッグデュオをその剛力で徐々に引き寄せてるビッグ・オー。

 

 そして彼の間合いに入った瞬間、唸ったのは剛腕の先で固く握られた鋼の拳だ。

 

『これから行うネゴシエーションには貴様は邪魔だ。退場してもらうぞ、シュバルツバルト!!』

 

 引き寄せられた勢いのまま腹部にビッグ・オーの拳を受けるビッグデュオ。

 

『バイバイっ!!』

 

 黒鉄の剛腕に生えたシリンダーが蒸気と唸りを上げて押し込まれると、拳に膨大なエネルギーが宿る。

 

『ぐわあああああああっ!?』

 

 そしてそれは赤い巨人の胴体を引き裂きながら、解放と同時にビッグデュオをバラバラにしてしまった。

 

「……なむなむ」 

 

 怖くて怪しいおじさんだったけど、人間死ねばホトケという言葉もある。

 

 ココは冥福を祈っておこう。

 

 もし生きていた場合の事も考えて、縁切りもお願いしておこうかな。

 

『荒ぶ…に刻ま……神…原罪…果て……』

 

「……んぉ?」

 

 また頭の中に呪文が浮かんできたぞ。

 

 けれど聞き取りにくいせいか、歯抜けになっていてよく分からないなぁ。

 

『血塗れ…減り……果てた……聖者の路……の果て……』 

 

 そんな私の感想などなんのその、謎の呪文は次々と送られてくる。

 

 というか、滅茶苦茶長いんですけど。

 

 こんなの憶えて唱えるなんて幼女にはムリゲーです。

 

「姉様、どうしました?」

 

「……あたまのなか、じゅもんいっぱい。きこえにくい」

 

 これだと全然使えそうにないんだけど、一応九郎さんに聞いておくべきかなぁ。

 

 そんな訳で複座についてある通信機をON。

 

 すると通信用モニターに映ったのはアルお姉さんの顔だった。

 

『どうしたのだ、娘よ』

 

『……あたらしいまほう、うかんだ。でも、じゅもんきこえにくい』

 

『それはいったいどのような……ああ、くれぐれも使ってはならんぞ。あくまで呪文か名前を教えるだけだ』

 

「……ペド」

 

 ごめんよ、これしか憶えてないんだ。

 

『ミユちゃん、小さな女の子がそんな言葉を使っちゃダメだ。特に人に言うのは絶対にダメ!! でないと、ライカさんところの悪ガキみたいになるからな!!』 

 

「……ごめんね」

 

 そして何故かもの凄く真剣な顔で私を注意する大十字さん。

 

 完全に勘違いしているんだろうけど、あまりの圧に思わず謝ってしまった。 

 

 ともかく、使わない以上は頭の中の呪文には意味がない。

 

 今は後回しにしよう!

 

『いくらザ・ビッグでも亜空間移動は捉えらえまい! サンダァァァァ! フラァァァァッシュ!!』

 

『とどめだ……! 無双剣! 諸手斬りぃぃぃぃっ!!』

 

 そんな事をしている間にもザ・ビッグ達は減っていく。

 

 地上のアーキタイプやビッグ・オーの同型機をマリンさんや闘志也さんが。

 

『ターゲット……ザ・ビッグ。排除開始!!』

 

『照準内に入った…メガキャノンを発射するっ!!』

 

『我が奥義、見せてやろう! ブレイヴ! フルブラスト!!』

 

 空にいたビッグ・デュオもヒイロさん達が撃破していくれた。

 

 そうして全ての敵が動かなくなった瞬間だった。

 

「ひっ!?」

 

 突然私の背筋を凍るような寒気が駆け抜けた。

 

「どうしましたの、姉様!?」

 

 ミウの問いかけにも答える余裕を見いだせない!

 

 なんだ、これ?

 

 虚無? 絶望? とにかくヤバい!

 

「ミウ、にげ───」

 

 私がミウへ警告を飛ばそうするのと同時に、全天周囲モニターの右側にある物が現れた。

 

 ビッグオーの色を黒と白を反転させたような、まるで髑髏みたいな顔をした不気味なロボット。

 

 それを目の当たりにした瞬間、ミウは驚愕と共に息を呑む。

 

「しまった! 前に出過ぎ……!?」

 

 そして私達は不気味なビッグオーがクマさんを横切ると同時に、白いナニカに呑まれてしまったのだ。

 

 

 

 

 気が付くと私は不思議な空間にいた。

 

 そこは白一色の世界。

 

 何もない、ただただ同じ色が続く場所。

 

「姉様、大丈夫ですか?」

 

「……ん。ここ、どこ?」

 

『どうやらパラダイムシティとは別の空間みたいだね。どういう場所かは分からないけど、本当に何もないみたい』

 

 パラダイムシティ自体がよく分からない空間にあるみたいだし、そこで作られたザ・ビッグにも空間を弄る力があってもおかしくない……のかな?

 

「それでどうしますの?」

 

「……まちにもどる。にぃに、しんぱいしてる」

 

『でもどうやって抜け出したらいいかなぁ。クマ公にはハロと違ってワープ機能ないし……』

 

「ありますの、ワープ機能!?」

 

『宇宙怪獣からブン取ったんだよ』

 

 ひーちゃんとミウが話す中、私はどうしたものかと頭を悩ませる。

 

 というか、例の呪文がまだ収まってないから考えがまとまらないんだよね。

 

 どこの誰か知らないけど、ぶっちゃけ邪魔だから黙ってくれないかなぁ。

 

 こんがらがりそうになる頭の中を整理しようと頭を振って悪あがきしていると、頭の中に声が響いた。

 

『この世界は…私は……もう一度世界をリセットしないと……奴等に見つかる前に……』

 

「……いまのだれ?」

 

 大人の女の人、凄くきれいな声だった。

 

 けれど、美しさを台無しにするくらいにその涙声は悲しみに満ちている。

 

 いったい誰の嘆きなのだろうか?

 

 首を傾げていると声の主の意識がこちらへ向いた。

 

『どうして……? どうして貴方がここにいるの!? 貴方があるべき場所にいれば、この世界は…私は……!!』

 

「っ!? ひーちゃん、ラムダドライバ! あとバリアもいっぱいはって!!」

 

『どうしたの、ミーちゃん!?』

 

「……だれかがわたしたちをにくんでる!」

 

 声の主が誰でいったいどういう思いを抱いたのかは分からない。

 

 けど、この刺すような敵意は拙い!!

 

 次の瞬間、もの凄い衝撃が来てコクピットの中が大きく揺れた。

 

「くうぅっ!?」

 

「ひぅぅ!?」

 

『サイコ・フィールドおよび斥力障壁、大きく減衰! こうなったらUGセルにアクセスしてイナーシャルキャンセラーを付けないと! でも間に合うか!?』

 

 焦るひーちゃんの声と共にミシミシときしむ音がコクピット内に響く。

 

 全方位から圧力を掛けられているような……これって空間全体が私達を潰しに来ているの?

 

『役立たず! 役立たず!! 役立たず!!! お前が宇宙を手放さなければあのテンシ達が勝手をする事も無かった! 私が生み出されることも! 世界を! メモリーをリセットする必要もなかったのよ!! 役目を果たす事も出来ない無能め! ここで死ね!!』

 

 頭の中に響く嘆きと憎悪の声は本物だった。

 

(……まって! ひーちゃんとミウはたすけて!)

 

 慌てて思念を飛ばすも、返ってきたのは無慈悲な答えだった。

 

『うるさいっ! お前も、お前が関わるあの部隊も全て消してやる!! リセットするのはロジャーだけ! それが怠惰への罰としりなさい!!』

 

 そう叫ぶと空間から掛けられる圧がさらに増大する。

 

『拙いよ! このままじゃもたない!!』

 

「なんとか反撃できねえのか!?」

 

『どこに敵がいるかもわからないのにどうするってのさ!?』

 

 ひーちゃんとミウの焦る声が響く中、私は頭に血が上るのが自覚できた。

 

「……ふざけないで!」

 

 いきなり謎の空間に私達を送り込んだと思ったら、意味不明の理由で攻撃を仕掛けてくる。

 

 しかも妹や親友まで巻き込んでだ。

 

 こんなの納得なんてできる訳が無い!

 

「荒ぶる螺旋に刻まれた神々の原罪の果ての地で。血塗れて磨り減り、朽ち果てた聖者の(みち)の果ての地で。我等は今、聖約を果たす」

 

「姉様?」

 

 声の主が憎いと思った瞬間、頭の中で流れていた呪文のノイズが嘘みたいに晴れた。

 

 そして直感的に理解した。

 

「其れはまるで御伽噺の様に眠りをゆるりと蝕む淡き夢。夜明けと共に消ゆる儚き夢」

 

 ミウ達を護るには、声の主を消し去るには、この魔法が必要だと。

 

「されど、その玩具の様な宝の輝きを我等は信仰し聖約を護る」

 

 いつもは舌足らずな口は頭に流れる呪文を流暢に紡ぎ、紡がれた力ある言葉によってクマさんの右の副腕に強大な力が宿り始める。

 

『ビーストの右副腕部に強大なエネルギー発生! これって時空振動を起こせるレベルだよ!』

 

「我は闇、重き枷となりて路を奪う死の漆黒。我は光、(ひとみ)を灼く己を灼く世界を灼く熾烈と憎悪」

 

 ゆっくりと、ゆっくりとこの魔法の本来の使い手と何かがリンクしていく。

 

 彼は黒の皇。

 

 七頭十角の獣、背徳の獣、666の獣の異名を持つ最強最悪の大導師。

 

「憎しみは甘く、重く、我を蝕む」

 

 そして、私達と同じく『そうあれかし』と生み出されたモノ。

 

「其れは悪、其れは享受」

 

 だからかもしれない、彼が魔法を私に貸してくれるのは。

 

「其れは純潔な、醜悪な交配の儀式。結ばれるまま、融け合うままに産み落とす、堕胎される出来損ないの世界の――」 

 

 そしてクマさんの副腕は閃光の中に現れた多面体結晶を手に取る。

 

 同時にその結晶を封じていた函は左右へ伸びて光の剣を為す。

 

「ウソだろ……。本当に姉様はあの男と繋がっちまってるのかよ」

 

『ミウ! アンタ、何か知ってるの? これっていったいどういうことなの!?』

         

「大十字九郎やアル・アジフと同じ世界にいる最凶最悪の魔法使いだ! クソッ! やっぱ私達を造った計画で縁ができちまったのか!?」

 

 ミウ達の焦る声がコクピットに響く中、私は別の声も捉えていた。

 

「な…なんなの!? こんな力知らない! 私のメモリーには無い!! やめて! やめてぇ!!」

 

 それはこの空間を管理する何者かの恐怖に震えるそれだ。

 

「その深き昏き怨讐を胸に」

 

 けれども私は容赦をするつもりはない。

 

「埋葬の華に誓って」

 

 どんな理由があっても、問答無用で私の大事な人達を消そうとした奴なんて許すつもりはない!

 

「我は世界を───」

 

 魔法を完成させるために最後の一小節を紡ぎようとした瞬間、甲高い音を立てて光の剣を持っていたクマさんの副腕が断たれた。

 

「……え?」

 

 暴走する力によってまるで吸い込まれるように消えていく腕。

 

宇神藩(のきがみはん)が御留流、秘神流(ひめがみりゅう)桜我(おうが)

 

 そして消えた副腕に代わる様に現れたのは日本刀を片手に身体には影のようなもの、そして黄金の仮面を纏った男の人だった。

 

「……ナイア?」 

 

 彼の気配はどこかナイアに似ていた。

 

 でも……何か決定的なモノが違うのも分かる。

 

「違うな。俺は黄金王(ウルターラトホテップ)旧神(エルダーゴッド)だ」

 

 私のつぶやきにバイザーの奥から鋭い視線を向ける黄金王。

 

 なんだろう。

 

 あの人に見られると背筋がゾクッとする。

 

 そんな事を考えていると黄金王の隣に一つの影が現れた。

 

 それはアニメに出て来る強化服みたいな服装に身を包んだ黒髪のお姉さん。

 

 彼女には見覚えがある。

 

 たしか大阪で出会った人だ。

 

「邪魔しちゃってごめんね。けど、少し頭が冷えたでしょ?」

 

「……おねえさん、だれ?」

 

「私は阿坐名(あざな)初未(はつみ)。貴方とは……ちょっとだけ縁があるお姉さんかな」

 

 そう言って笑いかけてくるお姉さん。

 

 相変わらず宇宙みたいな雰囲気を感じさせる、少し怖いけど安心できる感じの人だ。

 

『お前達は何者なの!? この空間に侵入できるモノなんているはずが……』

 

「貴様の相手は外にいる黒いネゴシエーターだろう。死よりも恐ろしい場所へ封じられたくなければ、さっさと奴とのテーブルに着くんだな」

 

『う…あぁ……』

 

 私達を圧迫していた攻撃は気が付けばやんでいて、声の主も黄金王の一睨みで煙のように気配が消えた。

 

 そして初未お姉さんは真剣な顔で私に語り掛けてくる。

 

「貴方の本質は共感と理解、数多のモノを繋ぐこと。それ故に貴方は数多の宇宙が折り重なるこの世界、多元宇宙に生まれた」

 

 彼女の言葉は優しいながらも酷く荘厳な雰囲気を持っている。

 

 同時に何故か私の中にスルリと入ってくるほど抵抗がなかった。

 

「大事な人を傷つけられたら怒るのも怖いのも当然だと思う。だけど、拳を振り上げる前に少しだけ考えてほしいの。相手は何故そうするのかを」

 

「……ん」

 

 たしかにお姉さんの言う通りだ。

 

 というか、シュバルツさんにも言われてたじゃないか。

 

 そうやって戦闘を止めるように努力するのは私の使命だって!

 

「……ごめんなさい」

 

「とはいっても、そういうのは大人だって難しいもんね。余裕がある場合に出来ればって感じでやればいいから」

 

 ペコリと頭を下げると苦笑いを浮かべる初未お姉さん。

 

 一方の黄金王が日本刀を振るうと、白一色の空間に黒い穴が開いた。

 

「それじゃあ私たちは行くね。もうすぐ怖い魔神さんが来ちゃうから」

 

「何かを護りたいと望むなら冷静さを身に着ける事だ。怒りに呑まれては見えるモノも見えなくなるぞ」

 

 そう言い残すと二人は穴の奥へ消えていった。

 

「……ありがと」

 

 そう呟くと、ひーちゃんとミウが不思議そうにこちらを見る。

 

「あの…姉様。いったい誰と話しているのですか?」 

   

「……え?」 

 

「センサーにも反応はないし、いきなりビーストの腕が取れるんだもん。何が何だかさっぱりだよ。もしかしてニュータイプ的な何かで感じ取ったの?」

 

 初未お姉さん達って二人には見えてないの?

 

 じゃあ、あの人達っていったい……?

 

 そんな事を考えていると、白一色の空間に揺らぎが生じた。

 

 そして現れたのは神様だった。

 

『ミユちゃん! ミウちゃん! 無事か!?』

 

【巫女よ、大事無いか?】

 

「……だいじょうぶ」

 

「ええ、こちらは問題ありませんわ」

 

 甲児お兄さんの言葉に重なって、神様のこちらを気遣う声が聞こえる。

 

 というか、私はパラダイムシティの方が心配になってきたんだけど。

 

「甲児さん達もあの白いビッグオーにここへ送られたのですか?」

 

『ああ。けど、もうすぐ元に戻ると思うぞ。今、ロジャーがあの白いビッグオーを説得しているから』

 

 甲児お兄さんがそう言ったのと同時に、三度白の空間が大きく動いた。

 

 まるで生き物のお腹の中のように蠢いたかと思ったら、次の瞬間には私たちはパラダイムシティへ戻っていた。

 

『クマとマジンガーです! 別空間から戻ってきました!!』

 

『ミユ! ミウ! 無事か!?』

 

『甲児君、大丈夫なの!?』

 

 そして、通信にはにぃにを始めZ-BLUEの仲間達から安否を気遣う通信が溢れる。

 

 というか例の白いビッグオー、首しか残ってないんだけど……

 

 神様、あれってやりすぎじゃないのかなぁ?

 

【我が巫女を危険にさらした報いだ。零に返さなかっただけ慈悲深い】

 

 そういうものなのだろうか?

 

 とりあえず、ロジャーお兄さんと白い生首には謝罪の意を込めて手を合わせておきました。

    

 さて、こうしてパラダイムシティから脱出した私達なんだけど、問題はまだあったのだ。

 

 それが発覚したのはクマさんから降りて、ウエスト博士と出会った時だった。

 

「むむ、どうしたのであるか、幼女よ。吾輩に何か用があるならバーンッと言ってみるがいい!!」

 

 テンション高く胸を張るウエスト博士。

 

 そんな彼に対して私の口を突いた言葉はこれだった。

 

「……はかせ。パンかってこい」

 

「ッ!?」 

 

 これには博士よりも言った私自身が驚いた。

 

 大人に対してこんな命令口調でモノを言う事なんて、今までなかったのに!?

 

「いきなりパシリ宣告とは少々度肝を抜かれたが、吾輩は大天才ドクタァァァァァァ! ウエスト!!この程度の事態は想定済みなのであーる! というワケで蒸しパンどーぞ!!」

 

 テンション高く白衣から取り出した蒸しパンを私にくれるウエスト博士。

 

 けれど、目的のモノが手に入ったのに私の心に渦巻くのは失望だった。

 

「……はかせ、しつぼうした。むしパンはむしがはいってるパン。このパン、むしはいってない」

 

「だはぁぁぁぁっ!?」

 

 え? 私何言ってんの!?

 

「ま……待つのである、幼女よ! 吾輩悪の科学者であるが、幼女に虫を食わせるのは流石にハードルが高すぎるのである! というか、そんな事をしたらエルザに殺されるのである!!」

 

「……マジつかえねーな、はかせ」

 

 ちょっ、ちょっとぉぉぉぉっ!!

 

 またとんでもない事を口走っている!

 

 どうなってるの私の体!?

 

「こ…これは……間違いない! 幼女に大導師が乗り移ってるのである!!」

 

 するとショックで崩れ落ちていた博士がこんな事を言い出した。

 

 大導師…大導師って……もしかしてあの人かな?

 

「おいおい。今の会話でどこでどうなったら、あの野郎がミユちゃんに乗り移ってることになるんだよ」

 

「間違いないのである! 吾輩はかつてブラックロッジで大導師と同じようなやり取りをした事があるのである! その時の大導師はそれはそれは恐ろしいモノだった」 

 

「あ奴は恐ろしい敵なのは百も承知だ。そんな事は今更であろう」

 

 必死に主張するウエスト博士を冷めた目で見る大十字さんとアルお姉さん。

 

 周りの皆もよく分からないと言った感じだ。

 

 けれど、そんな雰囲気は次の瞬間に吹っ飛んだ。

 

「ボケに回った大導師はもはや収集が付かないレベルだったのである。この吾輩がツッコミを担当せねばならなかったと言えば、その恐ろしさは理解できよう?」

 

「なん…だと……」

 

 ウエスト博士の衝撃発言によって絶句する周囲。

 

 当の私はそんな事全く気にする事も無く、もっきゅもっきゅとむしパンを食べていました。

 

「……カブトムシ、くいてぇ」

 

「おい! 今のセリフ、絶対ヤバいぞ!!」

 

「あ…悪魔祓い! いや、巫女か!?」

 

 その後、私は大慌てな皆に連れていかれ、アルお姉さん特製の悪魔祓いの術を何度も掛けられることに。

 

 お陰で勝手に妙な事を言わなくなったけど、本当に酷い目に遭ったよ。

 

 

 

 

 パラダイムシティを後にするZ-BLUEの船を見送る二つの影。

 

 ビルの屋上に立つのは阿坐名初未と黄金王こと鳴神千影だ。

 

「まさかあの娘があんな真似をしでかすとはな」

 

「うん。あのままだったら、多分外なる神々の封印が解かれていたと思うよ」

 

「期せずナイアルラトホテップが持っていたかつての目的が達成された訳か。ゾッとするな」

 

「あの子はまだ力を自覚していない。だから間違えそうになった時は、今日みたいにとめてあげないと」

 

「君がここに来たのはその為か」

 

「うん。あの破壊神と戦うなら味方は多い方がいいからね」

 

「……そうだな。これ以上、奴に宇宙を消させるわけにはいかないからな」

 

 そう呟く人の姿へと戻った鳴神と共に初未はドームに覆われた夜空を見上げるのだった。

 

 

 

 

 次元の狭間を揺蕩う機神、その中で一人の男が微睡から目を覚ます。

 

「おはようございます、マスター」

 

「ああ」

 

 傍らに控えていた少女に小さく頷くと、男はリクライニングのように倒していたシートから体を起こす。

 

 その端正な顔に小さな笑みを浮かべて。

 

「なにかございましたか?」

 

「ああ。余と繋がった娘がいた」

 

「繋がった?」

 

「その娘は稀代の巫女と成れるほどに感応力に優れている。余に至ったのも彼女達が生み出された計画が縁を結んだ故であろうな」

 

 無表情で自分を見る従者を横に青年は笑う。

 

 だがそこに浮かんでいるのは見る者を狂気へと誘う魔の笑みだ。

 

「マザーハーロットの娘達よ。神の怒りに触れて神罰に焼かれるか、それとも乗りこなそうとしていた余に食い殺されるか。貴様達の末路はどちらであろうな?」        




第零封神昇華呪法(スマイル・ハリケーン)

こわいおにいさんから借りた魔法。

使うと封じられていた娘の友達がいっぱい出てくる
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