幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
筆者も外出しては何度熔けるかと思ったか。
皆さん、熱中症には十分注意してください。
なるとマジで死ぬかと思いますので。
コミケに行かれる予定の人は特に、体調管理と水分と塩分の補給を忘れずに頑張ってくださいな。
メリダ島、ミスリル本部会議室。
そこにはブライト、テッサ、ジェフリー、スメラギ、オットー、F.SというZ-BLUEの首脳陣が集まり今後の対策を練っていた。
「パラダイムシティから戻って三日、11月に入っても特異点は見つからないままね」
そう呟きながらスメラギはため息をつく。
突如現れたニアによってパラダイムシティへと飛ばされたZ-BLUE、彼等が帰って来た時には通常の時空では7日が過ぎていた。
エタニティ・フラット発動まで間がない中、このタイムロスは大きな痛手と言えた。
エタニティ・フラットを引き起こす時の牢獄を破る為に時空修復を行う必要がある。
その為に必要なモノは二つあり、一つは特異点と言われる人物。
もう一つは大特異点という物体、もしくは場所だ。
しかし大統領直属のプリベンター、そして帰還したZ-BLUEが八方手を回してもそれらは見つかるどころか手掛かりすらも掴めないありさまだ。
「時空振動を引き起こす方法として、シェリル・ノームとランカ・リーの歌エネルギー利用があります。そしてそちらはスコート博士にお任せしています」
「そういえば、あれにはミユの協力が必要になるんだったな」
「たしかニュータイプの感応能力で二人の歌で高まったファンの意志を集める……でしたか」
テッサの言葉に眉間へ皺を寄せたのはオットーとブライトだ。
パラダイムシティでの戦闘で、あの子供はまたしても異質な能力に目覚めた。
それは外部協力者である魔導探偵大十字九郎が操る魔術だ。
彼のパートナーであるアル・アジフの言では、ミユ達を生み出したマザーハーロット計画と当時二人が乗っていたビーストが原因であるという。
魔導の世界では『名』は重要な意味を持つ。
かつてギリアム・イェーガーが語ったマザーハーロットの伝承には、邪悪なる女帝である彼の存在は黙示録の獣を乗りこなしていたという。
その獣の名は666の獣、もしくはマスターテリオンやメガセリオンと呼ばれるらしい。
そして大十字九郎のいた世界にはマスターテリオンの名を冠する悪の大魔導士がいた。
アルの推察では乗機や生み出した計画の名前が縁となり、そこにミユの類稀なる感応能力が相まってマスターテリオンとの繋がりが出来てしまった事が魔術使用の原因ではないかとの事だ。
その結果、アルやマサキなど魔術に縁がある者達からの進言でビーストの使用は現在禁止されている。
「大丈夫なんですか? また妙な事になったりしませんかね?」
「あの子の力は未知数なところが多い。だが、エタニティ・フラット阻止の為にはそれに頼らざるを得ない」
オットーの心配を受けながらF.Sは冷徹に言葉を紡ぐ。
「ですが、彼女達の力で一時的に次元境界線を揺るがす事が出来ても、特異点無しで時空修復は不可能でしょう」
「アドヴェントの方はどうなの? 彼も特異点の捜索を行っているのでしょう?」
「定期的に連絡はあるのですが、成果の方は……」
スメラギと言葉を交わしていたテッサは成果の無い状況にため息をつく。
現状はZ-BLUEにとっては手詰まりと言えた。
代案を考えても結局は特異点の存在が必要となるのだ。
パラダイムシティでヒビキが接触したガドライトから聞いた特異点唯一の手掛かり、それは彼等の知る人物であるという事。
しかし、それだけでは地球上にいる該当者を探し出すなど不可能に近い。
「やはり我々は闘い、勝ち続けるしかないか」
皆がため息をつく中、ブライトは違うアプローチでの解決を考える。
「ブライト司令、それはいったい?」
「ネオジオンやニアを操る勢力にアマルガム。地球に残る敵対勢力を打ち破り続ければ、今は姿を眩ませているジェミニスは必ず現れる」
ヒビキから聞いた話と戦場で何度か相対した際の洞察を交えれば、人類滅亡を望むジェミニスを率いるガドライトにとってZ-BLUEは目障りな存在と思われている事は容易に想像がつく。
だからこそ時の牢獄破りに自分達が足掻けば足掻くほど奴等はこちらを無視できなくなり、何時かは目の前に現れるとブライトとジェフリーは考えたのだ。
「そして奴等を叩き、時の牢獄は破壊させる。現状で我々が打てる手はこれしかない」
「その為にもアクシズを動かしたネオジオンに対する備えを優先させましょう」
テッサの提案に場の全員が頷くと、宇宙へ上がる為に話を詰め始めるのだった
◆
どうも、先日は妙な呪いを受けてしまった幼女です。
現在私達はミスリルの潜水艦であるダナン君に乗って宇宙へ行くために準備をしています。
パラダイムシティから戻ってくると、現実世界では7日も時間が経っていた。
それだけでも私達にはビックリなのに、ネオジオンはアクシズを地球へ移動させているし、連邦軍は彼等を迎撃するために艦隊を派遣していると言うじゃないか。
ネオジオンと戦争をしていたプラントは漁夫の利を得るつもりか、現在は様子見をしているらしい。
いきなりクライマックスで私も皆も戸惑いを隠せないけど、どう考えても地球の危機なので悠長にはしていられない。
ただ、前回の事もあってクマさんが再び使用禁止になってしまった。
しかも私だけじゃなくてミウもである。
原因はミウが白いビッグオーに送られた異空間で、私が唱えた呪文をアルお姉さんに聞かせたことだった。
アルお姉さんは途端に顔を真っ青にして『絶対に乗るな! 今すぐこれを破壊しろ!』という始末。
どうやら私が使おうとしていた魔法は余程ヤバいものだったらしい。
それとクマさんから降りたばかりの私が少しおかしかった事もあって、クマさんは再び封印される事となった。
どうしてクマさんはポンポン使用禁止になっちゃうのかなぁ?
クマさんの事は仕方が無いとしても、我が妹はZ-BLUEでも上位に入る凄腕パイロット(ドヤっ!)。
今の状況では乗るモノが無いと遊ばせておくのは勿体ない。
そこで急遽新しい機体を作ることと相成りました。
原材料はパラダイムシティで回収したザ・ビッグの残骸。
そこにUGセルを植え付けて、あとはミウが乗りたい機体をイメージしてもらうだけだ。
そうして多くの超合金Oの残骸が作り出したのは、普通の物より二倍以上はおっきいガンダムでした。
「こ…これは……!?」
「まさか、デストロイか!?」
全身を黒く染めた巨体を見上げながら息を呑むカミーユさんと驚くにぃに。
「できましたわ! 私の新しい機体、サイコガンダムMKⅢが!!」
そんなギャラリーたちの反応を他所に、ミウは私を抱きしめながら喜んでいる。
うん?
サイコって、どこかで聞いたような……。
『ツインエイハブリアクターに超合金O製のフルサイコフレーム。装甲も超合金Oに加えてナノラミネート仕様で、腹部にハイメガキャノンとか欲張りすぎじゃない? ミーちゃんも何だか分かってないから要求をそのままUGセルに伝えちゃったしさ』
そんなミウに愚痴を飛ばすのはサイコMKⅢを点検しているひーちゃんだ。
うん、妹がごめんね。
「やはりアレはサイコガンダムなのか!」
「ミウ! そんなのに乗っちゃダメだ!!」
そして何故かミウに乗らないよう詰め寄るカミーユさんとにぃに。
「……なんで? ガンダム、つよそう」
「あのね、サイコガンダムはとっても危険なの」
よく分からなくて首を傾げているとフォウさんが教えてくれた。
なんでもフォウさんは初代サイコガンダムに乗っていたらしく、その時はサイコミュで強制的にカミーユさんやアムロ大尉と戦わされていたらしい。
むむ……そんなに危ないモノなのか。
サイコミュに無理やり戦わされる辛さは私も身を以て知っている。
だとしたらお姉ちゃんとして妹を乗せるわけにはいかない。
けれど、そんなにぃに達にミウは自信満々で反論する。
「この子は私が設定しましたのよ、そんなヤバいサイコミュなんて積んでませんわ。姉様が乗っても大丈夫と保証します!!」
「そ…そうか……」
「わかった。けど、妙な感じがしたらすぐに降りるんだぞ」
おや、カミーユさん達は割とあっさり矛をひっこめたぞ?
「いいの、カミーユ?」
「ああ。お姉ちゃん大好きなあの子がミユが乗っても大丈夫って言うんだ。安全は間違いないんだろうさ」
なるほど、そういう事なら納得かな。
その後、アストナージさんを始めとする整備班の検査もパスしたサイコMKⅢ。
うーん、長いから3ちゃんと呼ぼう。
艦の外で行った試運転も問題なく、大パワーと高い火力もミウと相性がいいようで実戦に出していいとテッサお姉さんからお墨付きをもらう事が出来た。
「やりましたわ、姉様!」
「……ん。ミウも3ちゃんもいいこ」
私に抱き着く事で喜びを体現する妹の頭を撫でながら、私は傍らにそびえ立つ3ちゃんを見上げる。
うん、いつか機会があればミウと相乗りしてみたいものだ。
これからは妹をお願いね、3ちゃん。
さて、ちょっとしたイベントを挟みながらも私達を乗せたダナンは海の中を進む。
目的地はミスリルが用意してくれていた打ち上げ施設だ。
度重なる激戦から母艦の方は修理などが必要な為、先に機動部隊が宇宙へ上がって上でロンド・ベル隊と合流してネオジオンに備えるらしい。
目的地へ着いたらすぐにシャトルに乗せるという事でハロの中で待機していると、唐突に警報音が鳴り響いた。
『各員に通達します。旧ジオン残党軍がこちらへ襲撃を掛けてきました』
このタイミングで仕掛けて来るなんて、多分シャアの邪魔をさせない為かな。
テレビだとネオジオンに随分怒っているおじさんが映ったりしてたけど、彼等は地球に一泡吹かせる為なら何だってする人たちだ。
ネオジオンがやっている事が地球にダメージを与えられるなら、そういった事は全部無視して手を貸せるのだろう。
『大佐殿、我々も出撃しますか?』
『いいえ、相手の戦力は水中専用モビルスーツばかり。ここはダナンで切り抜けます』
相良軍曹の問いかけにテッサお姉さんは鋭い眼光を湛えてそう言い切った。
これなら大丈夫だと思ってお任せしようと力を抜くと、今度はダナンの装甲越しに強烈な思念が飛び込んできたんだ。
それは旧ジオン軍人特有の地球連邦やそこに住む人たちへの憎悪。
しかも我が身を顧みないこの感じは……!
「テッサおねえさん! ジオンのひと、すてみでくる!!」
『なんですって!? きゃあっ!!』
私が通信を繋いで警告すると同時に格納庫が大きく揺れた。
今、ダナンの悲鳴が聞こえたけどタンクに穴が開いたってヤバいんじゃ!
『被害状況を!』
『バラストタンクに損傷! 浮力の調整に支障が出ます!!』
『やむを得ません。デ・ダナンは海面近くまで浮上! そこで機動部隊を降ろします』
テッサお姉さんの指示を聞きながら、私は外していたシートベルトを締める。
『沈む事は無いけど、このまま潜航し続けるのは無理みたいだね』
「……ん。ダナンもだいじょうぶって」
ひーちゃんと話をしているとエレベーターで上に上がるような感覚の後で格納庫のハッチが開いた。
『機動部隊各員は緊急発進! ジオン残党軍が攻撃してきた以上、周辺の島々にも伏兵がいる可能性が高いです。警戒は怠らないようにしてください!』
『ミーちゃん、行こう!』
「……ん。ハロ、いってきます」
先頭に詰まっていた私が外に出ると、ダナンに積まれていた機動部隊の皆が飛び出してくる。
そして最後に出てきたのはミウと3ちゃんだ。
「……ミウ、だいじょうぶ?」
『心配いりませんわ! 私もMKⅢも絶好調です!』
そして3ちゃんが島の大地を踏みしめると同時に、私はねっとりとした敵意を感じた。
「……みんな、てきくる」
『なにっ!?』
『驚きましたね。私の広域スキャンより速いです』
驚く相良軍曹と感心するアル君の声に続いて、私達が上陸した島に次々と敵の機体が現れる。
その多くがテロリストが扱うASやAT。
けれど中には見た事のある機体もチラホラいる。
パラダイムシティに始めてきた時にビッグオーに殴られていた金ぴかとか……あとはあの藍色のずんぐりむっくりなATは何処であったっけ?
『上出来だ、ジオンの残りカスさんよ。上手いこと奴等を引っ張り出してくれたぜ』
一番後ろに控えていた頭にトサカを付けた赤いASから男の人の声がする。
さっきのネバつくような殺気はあの人からか。
けど、なんだろう?
あの機体……ううん、あの人から妙な感じがする。
『ガウルン! 生きていたのか!?』
『よう、カシム! 新しいパトロンが見つかってな、こっちも忙しかったんだ。俺がいなくて寂しかったか?』
『ふざけるな!』
『相手はアマルガムの精鋭部隊か!』
『ラムダドライバ搭載型に加えて、あのデカブツもいやがる!』
『となると、アイツ等の姿を隠していたのはECSって事ね』
ガウルンと呼ばれたおじさんの言葉に怒りを露わにする軍曹。
そして敵がミスリルの隊員を買収した事もあるアマルガムだと知ったクルーゾーのおじさんやクルツさん、そしてマオ姐さんが警戒度を上げる。
でもね、あのオジサンは一つ大きな間違いを犯したんだ。
それは自分がこの一団のボスだって明かしちゃったこと。
『オオオオオオオオッ!!』
明確な頭が見えると首を取りに行く紫紺の鬼がZ-BLUEにはいるのです。
ソニックブームで回りのASやATを吹っ飛ばしながら駆ける初号機。
随分前に東京のふ頭に現れた巨大AS、ひーちゃん曰くべへモスが立ち塞がっても、それを踏み台にして宙を駆ける。
『は…はえぇ! なんだありゃあ!?』
『サムライソード一つで突っ込むとは、さしずめカミカゼの再来ってところかぁ?』
『とにかく止めろ! 奴はガウルンを狙ってるぞ!!』
ひーちゃんが電波ジャックしてくれたお陰で聞こえる相手の通信でも、シンジさんの突撃で焦っているのがよく分かる。
とくに金髪アフロのおじさんに、もみ上げが凄いおじさん、あと陣代高校の近くに攻めてきた時にバニー姿のカレンお姉さんを思い浮かべていたおじさんの3人が特に濃い。
でもってテロリストたちが慌てて初号機にマシンガンを撃つけど、全部空中で足場代わりに展開されたATフィールドで防がれてしまう。
『おーおー、活きのいいのが来たじゃねえか!』
そんな初号機を前にナイフを抜いて待ち構えるガウルン機。
『あ! ラムダドライバを張ったよ、アイツ』
「……むだ」
シンジさんの方は刀身が紅くなるくらいにATフィールドが集約されているんだもん。
ただ張った程度の斥力結界だと……
『チェストォォォォ!!』
『なにぃっ!?』
うん、結界ごと機体を斬られちゃうよね。
なにせ余波で島の大地や海まで傷を付けちゃうくらいだもん、そうそう簡単には止められないよ。
こうしてガウルン機を断ち切った初号機は、ジオフロントの時みたいに一足飛びでコッチに戻ってくる。
『ふぅぅぅ……』
『うむ、如何なる時も残心を忘れてはならんぞ』
着地と同時に深く息を吐きながら初号機に構えを取らせるシンジさん。
今更なんだけど、この張り詰めた殺気とか日常の優しい雰囲気とギャップがあり過ぎるよね。
『おいおいおい、ガウルン死んだわ』
『あれだけ大口を叩いておいて、このザマとはねぇ』
『クソッ! やはりあんな怪しい奴の口車に乗らなければよかった!!』
仲間がやられて悲しむかと思いきや、おじさん達はむしろボロクソにガウルンを罵っている。
なんというか人望が無いなぁ。
そんな事を考えていた時だった。
両断されてうつ伏せに倒れたガウルン機から覚えのある感覚が伝わってきた。
これって……!
『おいおい、勝手に殺すなよ』
私が息を呑む中、どこかノイズが掛った通信と共にガウルン機が動き出した。
両手で体を起こすその機体は、両断された部分から生やした触手で再結合しながらゆっくりと立ち上がる。
『ミーちゃん、間違いない。あれってUGセルだ』
立ち上がった頃には初号機に切られた事など無かったかのように無傷になったガウルン機。
けれど、その機体表面には紫色の細胞を思わせる文様が奔っている。
『いきなりヒデェことしやがる。コイツがなかったらあの世逝きだったぜ』
明瞭になった通信モニターの画面では厳つい東洋風のおじさんがヘラヘラと笑っている。
けれど、その眼は殺意とそれが引き起こす死への愉悦に剣呑な光を湛えていた。
『貴方、UGセルを暴走させましたわね?』
『分かるか? ウチの坊ちゃんがチョイとヘマこいちまってな。まあ、お陰で潜入任務も打ち切られて本来のクライアントの所へ帰る事になったわけだ』
ミウの指摘に口角を上げるガウルン。
『ガウルン! 貴様、アマルガムを裏切ったというのか!?』
『情報が遅いなぁ、カシム。とっくの昔にあの坊やなんざ見限っているよ!』
相良軍曹の言葉を鼻で笑うとガウルンは私達へ目を向ける。
『それじゃあ一緒に来てもらうぜ、ガキ共。お前たちの飼い主から連れ戻せって言われてるんでな』
私達の飼い主……という事は、このおじさんのクライアントはジェネレーションシステム!