幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
時獄編の山場であるアクシズ戦です。
シャアは格好のいいライバル役に戻れるのか? それともこのまま不憫枠でちいかわするのか?
赤い彗星の生き様、見てください!!(シャクティ風)
「ドーリアン外務次官。少々お時間を拝借してよろしいでしょうか?」
新多元世紀0001年10月30日。
連邦議会で会議を終えたリリーナ・ドーリアンは一人の女性と対峙していた。
「マスコミの方ですね?」
「イザベル・クロンカイトと申します」
褐色の肌と知的なまなざしが特徴の女が告げた名にリリーナは聞き覚えがあった。
「『戦場にダンクーガは必要か?』そして『破界と再世の果て』の著者の方ですね」
彼女が告げた書物は共にADWで起きた戦乱を様々な角度から記録した代物だ。
それらはADWの戦争を知る上での重要な資料として、今なお売り上げを伸ばすベストセラーとなっている。
そして、二つの書を記した者こそイザベルである。
あの書物の中で戦場にいなければ分からない多くの事柄も、真実を知る為なら戦火を掻い潜る事を辞さない気骨のあるジャーナリストの彼女だから記せたものだ。
「拙著に目を通していただき光栄です。──本日は質問があり、この場に参りました」
「質問とは?」
リリーナが促すとイザベルは一旦間を置いて口を開く。
「ここ数日の地球連邦政府内における、大統領をはじめとする方々の動きについてご説明願いますか?」
イザベルの問いかけにリリーナは口を開くことはない。
何故なら彼女の投げた内容は、今世間に発表すれば各所に混乱を招きかねない爆弾だったからだ。
「大統領、マリナ・イスマイール大使、アスハ代表、ナナリーブリタニア・ユニオン外務次官。融和派の議員に貴方。ネオ・ジオンと連邦軍との大規模戦闘の他にも、地上ではプラント過激派のテロや反乱も多発している。そんな有事の中、いったい何が起ころうとしているのですか?」
ダンマリを続けるリリーナへ焦れたように畳みかけるイザベル。
「申し訳ありませんが、機密がありますのでマスコミの方でも上からの許可なしではお話しできかねます」
そんな彼女を見かねた女性の護衛がイザベラとリリーナの間に割って入る。
「数日前の突発的な異常気象に加えて、次々に起こるテロ行為と戦闘! 市民の不安が増大しているのは外務次官も分かっているのでは!?」
しかしイザベラは護衛を押しのけるような勢いでリリーナへ言葉を投げかける。
世の中において最も不安なのは何が起こっているか分からない事だ。
特に現在の地球は侵略者に戦争、さらには異常気象と宗教でいう所の黙示録目前と言われても納得するほどの有様だ。
市民達が恐怖を抱えて将来に希望が持てなくなるのも仕方がないと言えよう。
中には絶望から自暴自棄になって犯罪に走る者も少なからず出ており、明らかに治安法面でも悪影響が顔をのぞかせている。
「それに加えて世界中で確認されている出産の遅延に人々は動揺を隠せていません! 彼等は情報に飢えているのです!! 良きにせよ悪しきにせよ、何も知らないのでは民衆は身動きすら取れない!!」
イザベラもそんな怯える市民たちが少しでも心が落ち着くように、確定した情報を届けたいと必死なのだ。
「……申し訳ありません。もう少しだけお待ちください」
そんな必死の訴えにリリーナは重く閉ざしていた口を開く。
しかし、彼女が言えるのはこれだけだ。
「……もう少しとは、何時までですか?」
そして今までのリリーナの行いを鑑みて、イザベラも口調を静かなモノに戻す。
目の前の少女は自身の損得で情報を隠すような人間ではない。
そんな彼女が言葉を濁すという事は本当に現在伝える事が出来ない話なのだ。
イザベラはそう判断したのだ。
「11月1日。そこで大統領から人類の命運を握る事実が、全ての人々へ向けて発表されるでしょう」
リリーナが告げた運命の日は二日後。
イザベラは眼前の少女の言葉に誇張がないことを悟った。
そして自分へ情報を開示した事の意図も。
「……これは記事にして構わないのですか?」
「はい。少しでも多くの人々に聞いてもらう為、大統領の許可も得ています」
「わかりました。不必要に不安を煽るのではなく、事実と事態を正確に聴衆へ伝えるように留意します」
「お願いします」
リリーナの言葉にイザベルは頭を下げるとその場を去っていく。
その後姿を見ながら、かつて完全平和主義を掲げる国の王であった少女は天上へ視線を向ける。
(ヒイロ……。我々もトライア博士も、プラントから手を貸してくださった方々も、己の出来ることを全力で行っています。そして、皆が貴方がたの事を信じています。この星を、世界を護ってくれると)
このコンクリートの壁の向こう、そこに広がる蒼穹の先では決戦へ挑む戦士達がいるのだ。
◆
アクシズから分離したコア3小惑星群の中にあるネオ・ジオンの本拠。
その謁見の間ではハマーン・カーンが機動部隊隊長へと出世したギュネイ・ガスの報告を受けていた。
「こちらへ向かってくる連邦の雑兵共は全て片付けたか」
「ええ。味方の損耗も想定以下、Z-BLUEを迎え撃つには十分です」
「ご苦労。此度の戦いは絶対に負けられん、それは分かっているな?」
「もちろんです。その為にクロノの尖兵を先に潰しておいたんですから。奴等との戦いに嘴を突っ込まれたら堪りませんしね」
このアクシズ堕としはネオ・ジオンにとって乾坤一擲の作戦だ。
失敗は絶対に許されない。
その為にシャアは今まで秘匿されていた連邦上層部に根を張るスペースノイド迫害の元凶、クロノという秘密結社の存在を末端まで公表した。
アクシズを落下させることで地球の力を削ぎ、連邦政府という隠れ蓑をクロノから引き剥がす。
そして奴等を討ち滅ぼして初めてスペースノイドは地球からの干渉から脱し、真の意味で宇宙へと巣立ちの第一歩を踏み出せるのだ。
報告が終わり立ち上がろうとしたその時、ギュネイの頭にある懸念というか疑問が過った。
それはニュータイプとしての勘か、はたまた男が持つ第六感か。
「あの……ところで大佐はどうしたんですか?」
気が付けばスルリと彼の口から言葉が滑り落ちていた。
そして、ギュネイの問いを聞いたハマーンは鉄面皮を崩す。
それは普段の彼女からは考えもつかないほど妖艶な笑みだった。
「ああ。奴なら今ナナイが相手をしている。少し前に赤い彗星もでたしな。あの時のシャアは可愛かったぞ」
そうのろけを言い残して謁見の間を後にするハマーン。
かつての鉄の女からは想像もできない態度に唖然としていたギュネイだったが……。
「赤い彗星を…出す? ───まさか!?」
ハマーンの言葉に彼は尊敬する上司が男の都市伝説に謳われた『打ち止め』に至った事を悟った。
「大佐…おいたわしい……」
そして容赦の知らない二匹のサキュバスに囚われた、かつて目標とした男の為に男泣きするのだった。
◆
どうも、大きな戦いの前なのにテンションが上がらない幼女です。
いや、アクシズが地球に堕ちそうだし大切な戦いなのは私も分かっているんだよ?
でもさ、ネオ・ジオンと言ったら全裸の変態じゃん。
あれと関わると本当にロクな事がないんだよ。
『ミーちゃん、イヤだったら無理しない方がいいんじゃない?』
「……んー」
だから気合を入れてもプシュ―ッと抜けて、相棒にもこんな気が抜けた答えが出てしまうのですよ。
そんな悩みを抱えた私はひーちゃんを抱えたまま、ベッドの上でゴロリと寝がえりを打つ。
「……フロンタル、や」
『そうだね。おもらししちゃうくらい嫌いだもんねぇ』
「……それ、いうのダメ」
ひーちゃんのイジワルに頬をぷぅっと膨らませて私は再びコロンと転がる。
とはいえ、ここで戦いたくないって言ったら……通っちゃうよね、たぶん。
皆は基本的に幼女を戦場に出したくないみたいだし、私が全裸の変態にトラウマがある事も知ってるからなぁ。
でも、この戦いを拒否っちゃうとチャンスとばかりにこれから出撃回数を減らされて、最終的には戦艦で人間レーダー専門になっちゃう気ががが……。
私の直感センサーも今回の戦いは出なきゃダメって言ってるし、それは絶対に避けないとだよ。
「姉様、出撃準備だそうで……あぁ」
出撃準備の時間が来たのだろう、呼びに来てくれたミウは姉の情けない姿に納得とも呆れとも付かないため息を漏らした。
すまぬ、妹よ。
お姉ちゃん、シオシオだぁ。
「今回はやめておきますか? ネオ・ジオン相手なら私一人でも十分対応できますし」
「……ううん。ミユもいく」
戦いが近づいているのなら、何時までもひーちゃんと一緒にゴロゴロしているわけにはいかない。
ぴょんとベッドから飛び降りた私は、ポイポイと服を脱ぐとハロ用の装備であるひーちゃんドレスを身に纏う。
「姉様、髪形を整えますわ」
「……ありがと」
ヘアブラシを持ったミウに身をゆだねた私は、髪を弄られる心地よさに目を細める。
何時もは部隊の姉御衆やひーちゃんにお願いしているけど、妹のブラッシングもいいものだ……。
こうして身支度を整えて格納庫に行くと、にぃにが心配そうな顔で駆け寄ってくる。
「ミユ、大丈夫なのか? あのクソ野郎も出てくるだろうし、休んでいてもいいんだぞ」
「……アクシズ、ちきゅうにおちるのダメ。ミユもがんばる」
「けど、クワトロ大尉の真意はどこにあるんだろうな? フィフス・ルナは見せ札だと言っていたし、あの人の目的が地球潰しじゃないとしたら本当にアクシズを堕とすとは思えない」
まだシャアの事を信じたいのだろう、カミーユさんが難しい顔でにぃにへ声をかけている。
「あの人が何を考えているかなんて分からないさ。俺達に出来るのは、あの人が間違った場合に全力で止める事だけだ。───だろ?」
「ああ、そうだな」
にぃにの言葉に厳しかった表情から力を抜くカミーユさん。
けどシャアの考えか……。
事前に掴めたら、もしかすると戦わずに済むかもだよ。
という訳で少し思念を広げてみる。
出撃前なので無茶はできないけど、これで何かわかったら儲けものだ。
「……んぅ」
「ミユ?」
カミーユさんの呼びかけを耳にしながら集中の深度を下げると、意識の端を掠めるように何かが伝わってくる。
これは……なんだろう?
快楽と悲嘆? あとは枯れる?
(じょ…冗談ではない!!)
「……ひぅっ!?」
「どうしたんだ、ミユ!」
思わず出た悲鳴に、にぃにが驚いた顔をこちらへ向ける。
なんだったんだろう、今の?
重要なところはさっぱりだけど、なんというか……女の人の情念みたいな物がすっごく伝わってきた。
「……な、なんでもない」
「ミユ、大尉の思いを感じたんだな?」
「……ん」
なんとも微妙な表情をしたカミーユさんの言葉に私は頷く。
どうやら彼もさっきの思念を受け取ったらしい。
「何と言っていいか、俺もよくわからない。けど、ミユはこれについては深く関わらない方がいいと思う」
「……わかった。ありがと」
ニュータイプの大先輩がこう言うのだ。
この事については、そっとしておくべきだろう。
『レーダーに感アリ! すでにアクシズ周辺にはネオ・ジオン軍が展開を終えている模様! 総員、対一種戦闘配備! 機動部隊は準備ができ次第順次発進せよ!!』
そんなやり取りをしていると、メランおじさんの艦内放送が格納庫に鳴り響く。
ちょうどいいタイミングだ。
いろいろと難しい事はアクシズを止めてから考えよう。
「……ひーちゃん、いこ」
『うん! ネオ・ジオンが相手だし、もしもの時は陰蜂出すからね!!』
できればアレは使いたくないけれど、アクシズを支えなきゃならないようになったらOKかな。
『ミユ機、カタパルト・スタンバイ!』
『ミユ、無理はするなよ!』
『フロンタルが出たら下がっていいからね!!』
「……ん。いってきます」
ブライト艦長とミサトお姉さんの気遣いを受けながらラー・カイラムを発進すると、眼前には大きな小惑星とそれを背後に背負ったネオ・ジオンのMS達がズラリと並んでいる。
『サザビーの姿が見えませんね』
『シャアめ、序盤は様子見に徹するつもりか』
フリーダムの首を巡らせて索敵するキラさんに、アムロ大尉は言葉に怒りをにじませる。
彼の予測通りなら、前に展開している部隊をなんとかしないとシャアは出てこないって事か。
『おもしれえ。高みの見物気取るってんなら、首根っこ掴んで引きずりだしてやるぜ』
『ああ! そうしてアクシズを止めさせるんだ!!』
そして、アムロ大尉の予測に闘志をむき出しにする甲児さんと竜馬さん。
その圧はネオ・ジオンにも伝わったのだろう。
彼等はビームライフルを始めとして、手にした各々の武器をこちらへ向けてくる。
さあ戦いが始まると気合を入れようとした、その時だった。
突然、通信機が壮大な音を奏で始めたんだ。
え、これって……結婚式に流れる曲だよね?
『これ国際共通チャンネルで流れてる! 発信源は……レウルーラ!』
あまりにも戦場に場違いな曲に唖然としていると、敵の母艦から二機のMSが現れた。
一つはどこかガンダムっぽいシルエットを残す紅い機体。
特徴は前面の装甲の身体の部分がなんだかタキシードチックにデザインされている事かな。
そしてもう一つは輪をかけて凄かった。
こっちは全身真っ白の機体なんだけど、そのデザインは一言でいえばウエディングドレスとブーケを持った花嫁さん。
戦場ではあまりに場違いなんだけど、それを口にできない迫力があったんだ。
『Z-BLUEへ告ぐ。私はネオ・ジオン宰相、ハマーン・ダイクンである!!』
そしてモニターへ映ったのは、いつぞやテレビで見たネオ・ジオンのハマーン外相だった。
あの時と違うのは身に纏うのが黒いパンツスーツではなく、純白のウエディングドレスといういで立ちだろうか。
『ハマーン…ダイクン……だと?』
カミーユさんが呆然と呟く声が聞こえる中、ハマーンさんは大きく息を吸う。
『ミネバ様、聞こえますか! 私、結婚しましたッッ!!』
そして高らかと放たれた結婚宣言。
それと同時に白いモビルスーツが持つブーケから多数のファンネルが飛び立ち、宇宙にレーザーで『祝! ご成婚!! ハマーン・ダイクン! キャスバル・レム・ダイクン!』と文字を描く。
「……おお~」
あの宰相さん、いつの間にか結婚していたらしい。
ところで、キャスバルって誰だろうね?
『キャスバル・レム・ダイクンはシャアの本名だよ』
なるほど、よくわからないけど結婚はおめでたいことだ。
「……おめでとー」
チパチパと手を叩きながらお祝いの言葉を贈ると、モニターの中にいるハマーンさんはこちらへ視線を向ける。
『ありがとう。できれば、結婚祝いとして性被害訴訟を取り下げてくれると嬉しいのだが?』
向こうも色々大変そうだし、そのくらいならいいかも。
「……セイラおねえさん、そうだんするね」
『うむ、是非頼む』
そんな会話をしていると、ネオ・ジオンのMS隊を率いているギュネイさんが通信に割り込んできた。
『ちょっと待って下さい、宰相! アンタ、まさかあの状態の大佐を出してるんですか!?』
『当然だろう。結婚披露に新郎がいないなど、話にもなるまい』
かなりの剣幕で問いただすギュネイさんに、平然と答えるハマーンさん。
そんな中、新たな通信ウインドウが開いたんだけど、そこに映ったものを見て私は思わず絶句してしまった。
いや、絶句したのは私だけじゃない。
Z-BLUEの他のメンバーも同じだろう。
何故なら画面に映るシャアは頬がコケて目も虚ろ、さらには顔色が雪のように真っ白でオールバックにした金髪にも一部白髪が混じっている有様だ。
『ギュネイ、心配はいらん。私はこの通り、何の問題もないのだ』
ハマーンさんの対になっている紅い機体に乗っているらしいシャア。
穏やかに話すのはいいんだけど、肝心の機体はギュネイさんではなく全く明後日の方向をむいているんだから説得力が全くない。
『俺はこっちです! 完全に『デッドエンドシュート』のダメージが目に来てるじゃないですか!!』
誰がどう見たって明らかに大丈夫じゃないシャア。
そんな彼に通信をつなげたのは、ライバルであるアムロ大尉だった。
『……やつれたな、シャア』
『フッ、だがまだ生きている』
本人は不敵な笑みなんだろうけど、やせ我慢にしか聞こえないセリフに体を震わせるアムロ大尉。
長年鎬を削り合ってきた相手の変わり果てた姿に涙しているのかと思いきや……
『……ぷっ』
どうやら笑うのを堪えていただけらしい。
ひどいや、アムロ大尉!
色々と衝撃的な事はあったけど、結婚というのは祝うべきだと思う
でも、そんな朗報も戦場では場違いな知らせだったようだ。
『こんなところで結婚宣言ですって!? いったいどういうつもりなの?』
『まさか、こちらの戦意を挫くための欺瞞工作?』
という風な感じでミサトお姉さんとトレミーのスメラギ艦長が警戒心を露わに騒ぎ始めた。
しかし、ハマーンさんは二人の言葉を一蹴する。
『ふん。人の慶事を素直に祝えんとは……』
そんな彼女の言葉と共に花嫁的な機体はオーラを纏う。
その色は幸せを示すかのようなピンク色。
宇宙だと、その色はもの凄く目立つなぁ。
『ぐ……!?』
『な……なんてプレッシャー! いや、これはただのプレッシャーじゃない!!』
ニュータイプ故だろう、バナージさんやカミーユさんはハマーンさんの圧に敏感に反応した。
ちなみに私的には特に脅威は感じてなかったりする。
さっきの会話の影響か、彼女の敵意って私に向いてないんだもん。
『やはり婚活で売れ残った女の僻みほど醜いものはないな!!』
その一喝によって放たれるのはオーラと同色の波動。
『『『ぐわああああああああっ!?』』』
それが私達の部隊を駆け抜けると、次の瞬間には通信越しに甲高い悲鳴が響き渡った……って、なんで!?
ひーちゃんに頼んで艦内の様子をモニターしてもらうと、ミサトお姉さんと相棒のリツコさん。
そしてスメラギ艦長に……あ、エマさんも胸を押さえているや。
『一体何なのよ! どうして葛城大尉達が苦しんでるの!?』
『カレン、お前のような小娘には分からんだろうよ』
『アンタは分かるっての、C.C.?』
『あれはな、婚期を逃してしまった女たちの断末魔の声だ』
『う…うわぁ……』
おババさまの答えにドン引きするカレンお姉さん。
あまりにセンシティブすぎる話題に私も言葉が出ません。
『あの力は危険すぎるわ! ローエングリン、スタンバイ!!』
『落ち着きたまえ、葛城大尉! そんなものはラー・カイラムに積んでいない!』
『私は大丈夫……まだ若いし…いざとなったらヘンケン艦長だって……』
『トランザム! トランザムよ!! トレミーをハマーンにぶつけて、零距離でGNキャノンを撃ち込みなさい!!』
『無茶言うな!』
『スメラギさん、しっかりしてください!!』
一方の悲鳴を上げたお姉さま方は大混乱。
心配でモニターをつないだ結果、その狂乱ぶりが見えてしまっている。
『冷静になりなさい、ミサト。貴方には加持君がいるでしょう』
『アイツなら宇宙でカウボーイになるって言い残してどっか消えたわよ! 頭アフロにしてね!!』
『カウボーイ…アフロ……』
冷静(タバコを逆に咥えていたから全然冷静じゃない)を装って声を掛けたリツコさんだったけど、ミサトお姉さんの返答に唖然となるリツコさん。
『アンタこそ男はどうなのよ。前にいい人いるとか言ってたじゃない』
そんな彼女だけど、ミサトお姉さんの返しを受けると無表情で携帯端末を差し出す。
それをミサトお姉さんが覗き込むと同時に、ひーちゃんにハックされた艦内カメラもモニターに端末の様子を映し出す。
端末の画面に浮かんでいたのは……えっと、なんだろこれ?
オールバックにした知的そうな白髪のお爺さんと、その後ろに映る和風の民家は彼の家なのかな。
あとは『マダオ』って銘打たれた犬小屋に、甚平姿の人生に絶望した風な抜け殻な髭のオジサンが首輪と鎖で繋がっているんだけど……。
『碇司令ぃぃぃぃぃぃぃっ!?』
それを見たミサトお姉さんから絶叫がほとばしる。
碇って、もしかしてシンジお兄さんの身内だったりするのかな?
『これはいったいどういう事よ!?』
『副指令曰く、どこぞの薩摩武士に人生のひえもんを取られたそうよ。人間として再起不能だとも言ってたわ』
それを聞いた瞬間、ミサトお姉さんから強烈なイメージが伝わってきた。
【ひえもん、とりもした!!】
「ぴぃっ!?」
それはもの凄く凶悪な顔をしたシンジお兄さんが内臓らしき肉の塊を手に笑っている映像だった。
そのあまりの怖さに私は思わず悲鳴を上げてしまう。
『どうしたの、ミーちゃん!?』
「……な、なんでもない」
【……そ、そうよね。シンジ君があんな現人鬼みたいな顔で、司令の内臓をブッコ抜くとかありえないわ。だからネルフに連邦軍が攻めてくる事も無いし、兵隊をシンジ君が『螺螺螺……螺旋ッッ!!』って素手で爆発させたり、初号機が股間に生えたイチモツで白いエヴァをぶった切ったり『
自分に言い聞かせるように流れてくるミサトお姉さんの思念。
いったい彼女は何を見たのだろうか?
『わ…私は売れ残りじゃないわ! だってビリーがいるもの! 彼の事だから【ビリーは私が好きっ!】って言い続ければ、きっと一緒になってくれるわ!!』
『それ洗脳!』
『死ぬほど悪質ですぅ!!』
『ミス・スメラギ! 私の友に何をするつもりだ!?』
トレミーの方も、何故か缶ビール片手にスメラギさんが騒ぎ立てているのをフェルトお姉さんやミレイナお姉さんが必死に抑えている。
あと、グラハムさんが怒っているけど、スメラギお姉さんの彼氏さんって友達だったんだね。
『これ以上は私達の精神がもたないわ! という訳でネェル・アーガマはハイメガ粒子砲、発射!!』
『葛城大尉! 勝手に指示を出すな!!』
『しまった!? 反射的に発射シーケンスを!』
ブライトさんに怒られたわりにミサトお姉さんの指示は通っていたみたいで、オットー艦長の慌てる声と共にぶっといビームを放つネェル・アーガマ。
吐き出された膨大なビームエネルギーはハマーンさんを飲み込むかと思ったんだけど、それは彼女を護る様に前に出た影によって防がれてしまう。
ビームの粒子を周辺へ散らしながら宇宙にたたずむのは一隻の戦艦。
けれど船は私の記憶にある物と違って真っ白な船体をもち、囲うように花嫁のヴェールを思わせるエネルギーフィールドが形成されている。
『あれってもしかしてレウルーラ? 完全な魔改造じゃないですか』
驚き半分、呆れ半分で呟くミウ。
それとは別にネオジオンの通信を諜報している通信機からはレウルーラ内の会話が聞こえてくる。
『ヴェール型のビームシールドと聞いていたが、まさか本当に防げるとは……。頭のおかしいトンチキ装備ではなかったのだな』
『ヒル艦長。それは私をはじめとする幸せを手にした全ての女性に対する侮辱ではないか?』
『それを言うなら、こんな艦に乗せられている時点で我々に対する盛大なセクハラだろう。第二夫人とはいえ引き取り先が見つかったのが嬉しいのは分かるが、はっちゃけ過ぎだぞナナイ所長』
『40を超えて独身な寂しいオッサンが言っても僻みにしか聞こえんな』
『ミサイルに括り付けて総帥に打ち込んでやりますか、あのアマ』
『それは全てが終わってからだ。その時は総帥じゃなくて外宇宙へでもぶっ放してやれ』
何ともアレな会話なのでコメントは差し控えさせてもらいます。
というか、第二夫人ってあの人もシャアと結婚したの?
『やってくれたな! MS隊、全機突撃だ! アクシズに敵を近づけさせるな!!』
『『『『イヤだ!!』』』』
先ほどの一撃にギュネイさんが対応しようとしたんだけど、返ってきたのはつれない返事だった。
『なっ!? どういうつもりだ、お前ら!』
『よく見ろ! あのヤバい黒丸がいるだろうが!!』
『化け物蜂がブッパするバカみたいな弾幕の中を逃げ惑うなんて二度とごめんよ!!』
『貴様は離れていて体験してなかったようだがな、あれこそまさにこの世の地獄だったのだ!!』
『行くならお主だけで行くがよい! 拙僧も仏門の端くれ、経の一つくらいは読んでやるわ』
ギュネイさんの抗議に次々と寄せられるネオジオン兵たちの反論。
掛かってこないのはどうやら私がいるかららしい。
『ああ、陰蜂のデビュー戦にいた連中か。良く生きてたもんだね』
「……いんばち、いいこ」
凄く物騒なのは自覚しているけど、ああして怖がられるのは少しだけショックである。
「葛城大尉もいい加減にしろ! ともかくアクシズ落下を阻止する! 機動部隊はラー・カイラムがアクシズへ取り付くための進路を開け!!」
敵も味方もぐだぐだな状態の中、ブライト艦長の指示が飛ぶ。
こうしてネオジオンとの決戦の火蓋は切られたわけだ。
……本当に大丈夫かな?
現在のネオ・ジオン
ギュネイ・ガス、MS隊隊長に任命されて気合を入れていたが、組織のぐだぐだ度に絶望しかかっている。 某大佐に関しては失望云々の以前にもう許してやってくれと泣きそう。野心ではなく、彼に重荷を降ろさせる為に2代目総帥を目指す。
クェス・パラヤ 某大佐の結婚を知ってショック。ただ今までのアレ具合を見ていたので、フィルターがかなり剥がれているので衝撃はそれほど大きくない。今はハサウェイの下に戻るか、ギュネイの所に残るか考え中。
ハマーン・カーン ウフフ……アナタノ子ヨ
ナナイ・ミゲル モット、モット、絞リ取ッテアゲル……
シャア・アズナブル …殺して…もう殺してクレメンス……