幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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ようやく纏まった。

もう嫌だ、早くフロンタルを殺さないと……

この作品のシャアの気持ちが痛いほどわかるようになりました。

暇つぶしにどうぞ


幼女と怒りのアクシズ

プル・フィフティーンは激怒した。

 

必ずや、あの赤い変態仮面を抹殺せねばならぬと決意した。

 

フィフティーンには難しい事がわからぬ。

 

彼女はまだ小学生くらいの少女、しかも長い冷凍睡眠から目覚めて間がない。

 

自軍の目的も地球が直面した未曽有の危機も、まだまだ実感がわかない。

 

しかし全裸が名乗った名が、亡くなった自分の姉妹達を馬鹿にするモノだという事は分かる。

 

『ドグゴラァ!!!』

 

 現に自分の姉であるプル・トゥエルブは獣の如く吼えながら、フロンタルが乗る赤いキュベレイに襲いかかっている。

 

『へんたい、や! フロンタル、めっ! めぇっ!!』

 

 さらには自分を救ってくれた年下の恩人まで、元々幼いのに輪を掛けて幼児退行する始末だ。

 

 ここまでされては戦いを嫌うフィフティーンだって黙ってはいられない。

 

「あの変態! 絶対に叩き潰してやるんだから!!」

 

 燃え盛る怒りと決意を胸にマクロス・クォーターの格納庫へ入った彼女は、自分が使えそうな機体を探す。

 

 この際量産機でもボスボロットみたいなモノでも構わない。

 

 フロンタルの顔面に一撃加える事が最優先だった。

 

 そうして視線を巡らせていると、広大な鋼の間の一角に立つ一組の男女が目に入った。

 

「えっと……たしかウ、ウィルキンソン博士?」

 

「NOぉぉぉ!! 一億年に一人の大天才、こぉのドクター・ウエストを間違えるとはなんたる不敬!! 普通ならば筋骨ムッキムキな怪しいオッサン(ネクロマンサー)とゾンビ塗れの街で『凍京ぐらし!』をさせるところであるぞ!!」

 

「えっと……ごめんね?」

 

 顔面崩壊気味に叫ぶウエスト博士にドン引きするフィフティーン。

 

 名前を間違えるのは普通に悪いと思うけど、こんなにブチキレなくてもいいだろうに。

 

「ハカセ、話が進まないロボ」

 

「おお、そうであった。少女よ、あのシャア・アズナブルな怪異を討ちに行くのであろう?」

 

「う…うん」

 

 怪異とは? と一瞬首を傾げそうになったフィフティーンだが、フロンタルの所業を思い出してピッタリだと納得する。

 

「ならば吾輩も人肌脱ごうではないか! あの変態仮面は吾輩のパトロン幼女と因縁があるようなのでな、あの娘に何かあっては吾輩も困るのである」

 

「ここを追い出されたら、ダーリンも真っ青な貧乏暮らしまっしぐらロボ」

 

 言葉と共にロボ娘、エルザが手にした紐を思い切り引くと、彼等の背後で白い大幕が落ちる。

 

「わぁ……!」

 

 その向こうから現れた物にフィフティーンは目を輝かせた。

 

「さあ戦いの時だ、少女よ! 吾輩たちの未来の為にも、あの変態を撃滅するのである!!」

 

「うん!」

 

 ウエスト博士に促され、プル・フィフティーンは異形の愛機へ乗り込むのだった。

 

 

 

 

 どうも、天敵を前にしてガクブルが止まらない幼女です。

 

 正直言ってフロンタルとは関わりたくないけど、地球を守るためには仕方がない……のかな?

 

『……フロンタル。貴様、その名を名乗るとはどういうつもりだ?』

 

 本気で赤い変態にドン引きしていると、マリーダのお姉さんが緑の機体でこちらへ飛んで来た。

 

 彼女とは今は敵同士だけど、フロンタルに敵意が向いているので私達をどうこうするつもりはないようだ。

 

『貴様! 出来損ないの強化人間風情が大佐を呼び捨てにするなどと───』

 

『構わん、アンジェロ。先ほどの質問の答えだが、君達姉妹に私も加えてもらいたいだけだよ、マリーダ・クルス、いやプル・トゥエルブ』

 

『なんだと?』

 

『君達は人工的に生み出されたニュータイプ、そして私も総帥の影武者たらんとニュータイプに改造された者。さらにはコロニーメンデルに遺されたユーレン・ヒビキの技術によって、見ての通り女性へと生まれ変わった。君達姉妹の末席にいてもおかしくはあるまい』

 

 そう言ってアゴい笑顔を見せるフロンタル。

 

 その顔は、どうやっても女性には見えません。

 

 あと話を聞いたキラさんが『なんて物を残してくれてんだ、あのクソ野郎!!』と叫んでいるけど、なんでだろうね?

 

 フロンタルの意味不明かつ勝手すぎる理論に、モニターに映るマリーダお姉さんは激おこだ。

 

『ふざけるな! 貴様のような変態を誰が───!!』

 

『マリーダ、落ち着け! あの男は腐りきって骨になっても総帥の影武者! 頭に血を登らせて勝てる相手じゃないぞ!!』

 

 今にも飛び出しそうなマリーダお姉さんに、ネオジオンの船から髭モジャな艦長のオジサンが必死に声をかける。

 

『……了解です、マスター』

 

 どうやらあのおじさんはマリーダお姉さんにとって特別な人らしく、さっきまで渦巻いていた紅い怒りのオーラが徐々に収まっていく。

 

 とはいえ、私もこんなところでブルっているだけではいる意味がない。

 

 私はぺちぺちと自分のほっぺを叩いて気合を入れる。

 

 ハマーンさんやシャアのグダグダ展開のお陰で、今はお世辞にも戦争する雰囲気とは言えない。

 

 このまま行けば戦わずにアクシズを止められるかもしれないんだ。

 

 その流れを邪魔されないためにも、せめて奴等がこのタイミングで出てきた理由を探らないと! 

 

 フロンタルを探るのは絶対に嫌だけど、部下の人なら共感能力で感じられるかもだよ!!

 

『ミーちゃん!』

 

「……ん、がんばる」

 

 そんな訳で私はサイコフレームを起動させて意識を集中する。

 

 目標はフロンタルの後ろに並んでいるザクもどきの列の端っこにいる奴!

 

 全部は知らなくても、何かヒントくらいは持っていてほしい!!

 

 意識の海に潜って何かが繋がる感覚がすると、視界がコックピットから一面の闇へと変化する。

 

 普通は深層意識ってその人の心の風景が広がっている筈なんだけど、おかしいなぁ。

 

 なんて疑問を浮かべていると闇の中から誰かがゆっくりと近づいてくる。

 

 そして件の人物の姿が見えた瞬間、私は全身の毛が逆立つ感覚を覚えた。

 

 何故ならそれは全裸のフロンタル、それに重なるように立つシャアだったからだ。

 

「ぴぃっ!?」

 

 どうして! フロンタルに思念を向けたわけじゃないのに、どうしてぇ!?

 

「君の事だ、その優れた共感能力を使って私達の意図を読もうとするのは分かっていた。マイノット基地の時のようにね。だから、私も警戒して周辺にフィールドを張っていたのだ」

 

 しまった!

 

 まさかこっちの考えが読まれていたなんて!?

 

 意識の中で後ずさる私に、フロンタルはいっそ優しい声でこう言った。

 

「怖がることはない……おじさんと一緒にあぶない世界へ行こうね……(プル―ン!!)」

 

 嫌すぎる擬音と共に、奴等が浮かべるのは私のトラウマであるアゴい笑顔!

 

 そしてフロンタルとシャアは無駄にキレイなストライドでこちらへ走ってくる。

 

「聞けばプルシリーズの初代であるエルピー・プルは全裸で走る事が多かったという! ならば私もそれに倣おうではないか!!」

 

 こっちくんな! 股間のモノをプルンプルーンさせるな!!

 

 というか、なんでそんなの付いてるんだ!

 

 お前女の人になった筈だろう!?

 

「にゃあああああああああああっ!?」

 

 その光景があまりに悍ましすぎて、思わず悲鳴を上げてしまう。

 

 私も失念していたんだけど、実は今のハロは時の牢獄破りの為に色々と調整をしている。

 

 その中には例のライブで試した皆の心の力を集めるサイコミュ装置も含まれているんだ。

 

 そして、この時パニクった私は思わずそのスイッチを入れてしまった。

 

 結果、このグロ思念がアクシズ戦の参加者のみならず地球やコロニーへ向けて拡散されてしまったのだ。

 

『ぎゃあああああああっ!?』

 

『なんだ、この地獄絵図っ!?』

 

『グロテスク!!』

 

『ラクス様のおっぱいぷるんぷるんが汚い野郎のブルンブルンにぃっ!?』

 

『やめて! 小さな女の子がいるのよ!!』

 

『飯時になんてもん見せてんだ!!』

 

『うほっ! いい男!!』

 

『あれって性犯罪者のフロンタルじゃねえか!』

 

『見ろ! シャアが取り憑いてやがる!!』

 

『やっぱり、度重なる変態行動はシャアが原因なのか!』

 

『シャアはロリコン、わかんだね』

 

『シャア…謀ったな、シャア!!!』

 

『それに、あいつが全裸なのはエルピー・プルとかいう奴の影響らしいぞ!』

 

『つまりソイツも変態?』

 

『というか早く消せよ、このクソ映像!!』

 

『オッサンが穢れたバベルの塔を振り回す絵面とか、誰得なんだよ!!』

 

 結果、私の脳裏に過ったのは汚い映像を見せられた人たちの阿鼻叫喚の声。

 

『はうぁっ!?』

 

『大佐、目が覚めましたか!』 

 

『ナナイ……まだ悪夢の中にいるようだよ』

 

 そして父親になる重圧で気を失っていたシャアも目を覚ましたようだ。

 

『わわっ!? ヤバいヤバい!! サイコミュネットワーク強制終了!!』

 

 地球圏全体が混沌へと向かう中、私のやらかしに気が付いてくれたひーちゃんが誤って入った装置のスイッチを切ってくれた。

 

 お食事中の方、そしてお仕事中の皆さん、本当にごめんなさい!!

 

「あ…あぅぅ……」

 

 そうして精神感応空間から戻ってきた私は、コックピットの中で呆然となってしまった。

 

 戦闘中なのは百も承知だけど、こればっかりは仕方がないと思ってほしい。

 

『ミーちゃん! しっかりして、ミーちゃん!』

 

『ミユ! 大丈夫か!?』 

 

『ミユ、下がって! あとは私達に任せて、休んでいいの!』

 

『姉さま! お気を確かに!』

 

 そんな私に声をかけてくれるひーちゃん、にぃに、ヨマコ先生、そしてミウ。

 

 皆の心遣いに涙腺が崩壊しそうになるけど、ここで泣いたらマイノット基地と同じだ!

 

 こっちだって少しは成長しているのだ!

 

「う…うぅ……うぎゅうっっ!! へんたい、や! フロンタル、めっ! めぇっ!!」

 

 なんとかギャン泣きするのを押さえた私は、その代わりに考え付く限りの罵詈雑言をフロンタルへ浴びせる。

 

 うん、お子ちゃまの癇癪みたいになってるのは察してくれ。

 

『ミ…ミーちゃん、落ち着いて!』

 

『姉さま! 深呼吸! 深呼吸ですわ!!』

 

『とりあえず後ろに下がろう、ミユ! あんな変態、見ちゃいけません!!』

 

 3ちゃんとデスティニーがハロを下げようとボディの左右に手を当てた瞬間だった。

 

 そんな私達の横を一つの流星が駆け抜けていったのだ。

 

 流星の正体、それは目に見えるくらいに怒りのオーラを滾らせたマリーダお姉さんだった。

 

『ボッッゴラァ!!』

 

 意味不明の叫びと共にビームサーベルを抜き放つクシャトリア。

 

『おのれ! 大……センター担当はやらせん!!』

 

『アイドルにはお触り禁止と知らんのか!!』

 

 そんな二人の前にフロンタルの部下がザクもどきで立ち塞がる。

 

『ドグゴラァ!!!』

 

『ぐわぁぁぁぁぁっ!?』

 

 しかし、一機はすれ違いざまにクシャトリアのバインダー部ビームサーベルで胴体を両断され─── 

 

『ドララッシュ!』

 

『ば…馬鹿な! この私が武道館公演にも出れずに堕ちるだと!?』

 

 そしてもう一機は胸からのメガ粒子砲で吹っ飛ばされてしまった。

 

 ……でも、なんだかおかしくない?

 

『た…大佐!?』

 

『クシャトリヤが…巨大になって見える!?』

 

 焦るアンジェロにフロンタルの唖然とした声が帰ってくる。

 

 そう、奴の言う通りモニターに映るマリーダお姉さんの機体は明らかに巨大化しているのだ。

 

 サイズにして普通のMSの5倍くらい。

 

『解析してみたけど、あのおっきくなってる部分全部サイコフィールドだ』

 

「……マリーダおねえさん、おこってる」

 

『マリーダ! しっかりしろ! 冷静になれ、マリーダ!!』

 

『ダメだ! 言語が狂うくらいにブチキレてやがる!!』

 

『ヴァーハッハッハッハ!!』 

 

『なんてこった……。姉さんたちに比べて声が低すぎるって嘆いていたアイツが、あんな野太い笑い声をっ!!』

 

 さっきマリーダお姉さんを窘めていた髭モジャのオジサンやリーゼントのオジサンが必死に声を掛けているけど、当の本人は逃げ惑うフロンタルをデカくなったファンネルで追い回しながら大笑いしている。

 

『た…大佐ぁぁぁぁぁ!?』

 

 そうしてフロンタルの連れていた手下は一機。

 

『男にも戻れず…こんなところで果てるなど……うわぁっ!?』

 

 また一機と一撃でMSの上半身を吹き飛ばせるほど出力が上がったファンネルのレーザーで宇宙の塵に還っていく。

 

『いったい何を怒っているのだ、姉上。こんな可愛い妹ができたんだ、喜ぶべきだと思うのだが?』

 

 しかし当のフロンタルは腐りきってもシャアの影武者、ファンネルが大きくなった事で出来たレーザーの隙間を縫うように攻撃を躱している。

 

『ボッゴラァーーッ!!』

 

 そんな人の神経を逆なでするのが上手いあの男の言葉に、マリーダお姉さんは更なる怒りの雄たけびを上げてフロンタルへ襲いかかる。

 

「……むぅ」

 

 そして、その様子を私は苦々しく見つめていた。

 

 マリーダお姉さんの気持ちはよくわかる。

 

 私もミウと私の妹だとフロンタルが言い始めたら怒るだろうから。

 

 でも怒り続けるのはしんどいし、精神的にも大変ヨロシクない。

 

 私はそれをクマさんが暴走した時に身をもって知っている。

 

 だから彼女の頭をクールダウンすべきなんだろうけど、残念ながら今の状態だと私の声は届くかどうか……。

 

 どうしたものかと考えている時だった。

 

『ミーちゃん! 背後から大型物体が近づいているよ!!』

 

 ひーちゃんの警告と共に私は後ろに見知った気配を感じた。

 

 この感じ……プルちゃん?

 

 全天周囲モニターが、自動で捉えた背面の画像を目の前にピックアップしてくれる。

 

 そこに映っていたのは……

 

「……ウエストはかせ?」

 

『またザクレロ……あ、これブラレロだ』

 

 そう、流星のようにこちらへ近づいてくるのは白く塗られたザクレロ。

 

 そしてその口には同色のキュベレイが咥えられている。

 

『トゥエルブ! 私もやる! 私もお姉ちゃん達の為に戦うの!!』

 

『───フィフティーン!』

 

 プルちゃんの呼びかけに、マリーダさんはバーサーカー状態から戻ってくれた。

 

 さすがは姉妹、その絆は本物だ。

 

『おい、宰相。あれはアンタの機体じゃないのか?』

 

『……ああ、おそらくは私が廃棄したものだな』

 

『廃棄だと?』

 

『独身時代の様々な感情がベッタリと付いて呪物っぽくなっていたのでな、これから幸せな家庭を築くことを考えると縁起が悪いので捨てたのだ。幸い、後継機の祝式も出来ていたし、リサイクルしてくれるものも現れたのだ。問題は無かろう』

 

『問題しかない!』

 

 あ、レウルーラの艦長がハマーン宰相に怒ってるや。

 

『トゥエルブは下がって! あとは私が!!』

 

『フィフティーン!!』

 

 機体を巨大化させていたサイコフィールドも消えたクシャトリヤの横を駆け抜けていく。

 

 そしてフロンタル達を眼前に捕らえると、両手と背中に背負ったユニットが伸びるワイヤーを伴って機体の前に移動する。

 

 そして四つの部品が合わさってできたのは!!

 

「……ドリル」

 

 そう、ブラレロの機体前面を軽く覆える程の巨大なドリルだった。

 

 合体を終えると巨大なドリルユニットは機体の更なる加速に合わせて、甲高い音を立てて猛回転を始める。

 

『少女よ! それこそがスポンサー幼女から返品された『マッハドリル・女の子だって暴れたい!』を改造した『ドリルクラッシャー・六連結とかイヤーン、エッチ!!』なのである!!』

 

『待て待て! それってヤバい兵器じゃなかったか?』

 

『汝が機械の獣に自爆特攻したいわく付きの欠陥品ではないか!』

 

『心配ご無用ロボ! 今回は女の子が乗るから減速と方向変換も可能にしたロボッ!!』

 

 大十字さんやアルお姉さんの苦情に、胸を張って答えるエルザおねえさん。

 

 ふんすっと鼻を鳴らしているところがちょっとかわいい。

 

『よーし、行くぞぉぉぉぉっ!!』

 

 大十字さん達が話している間にも、プルちゃんの機体は加速を続ける。

 

 そして積んでいるであろうサイコミュの影響か、彼女の意志の固さを示すかのような薄紫の障壁がドリルを覆うように展開されて鋼刃と共に螺旋を描く!

 

『なんと! ドリルクラッシャーが少女のサイコフィールドを取り込んでいるのであるっ!!』

 

『おおっロボ!』

 

『あれならば体当たりでありながら自身のダメージ無く一方的に敵を蹂躙できる! ドリルと精神の融合! あれこそまさしく───』

 

『サイコクラッシャァァァァァッ!!』

 

 ウエスト博士の説明を背に、プルちゃんは気合と共にフロンタル達へ突貫した。

 

 博士のドリルは機械獣の群れすら簡単にブチ抜く程だ。

 

 当然、巻き込まれたザクもどき達はあっという間にスクラップになった。

 

『ちぃっ! 殺れなかった!!』

 

『くそっ! あんなふざけた機体如きに!!』

 

『冗談ではない!!』

 

 しかし、フロンタルとアンジェロはギリギリのところで回避する事が出来た。

 

 もっともアンジェロの機体は右手と足が半ばからもがれているけど。

 

 そして難を逃れたフロンタルに斬りかかる赤い影。

 

『シャア・アズナブルか!』 

 

『フロンタル! ───貴様さえいなければっっ!!』

 

 言霊がたっぷり籠っていそうな怨嗟の声と共にシナンジュと鍔迫り合いをするのは、シャアが乗る祝式・紅だった。

 

『以前あった時からずいぶんと見違えましたな。一家の長を担う気概がそうさせるのですかな?』

 

『ぬけぬけと……! いいか! 貴様のおかげでネオジオンは社会的信用を失い、アルテイシアからは提訴と絶縁宣言! 私は搾り取られてこのザマだ! 貴様だけには笑われる筋合いは無い!』

 

 怒りのままに左右に持ったサーベルで阿修羅のごとく斬りかかる祝式・紅。

 

『くっ!? 本気のようだな、シャア・アズナブル!!』

 

 フロンタルもキュベレイの両手にサーベルを持たせて迎え撃つ。

 

 しかし、その変幻自在かつ鋭い攻撃には対処が追い付かないようで、浅くだけど紅い装甲に次々と傷が刻まれていく。

 

『くっ! 時代遅れの神輿風情が!! 大佐、今援護を───』  

 

 その窮地に動こうとしたアンジェロの乗る機体。

 

 けれど、それは遥か彼方から放たれたふっといビームで撃ち抜かれてしまった。

 

「……あっ!」

 

『ミーちゃん、どうしたの?』

 

 そして次の瞬間、私は見知った気配を感じた。

 

 でも、あの人ってパイロットしていないはずなんだけど。

 

 私が首をかしげている間に、ビームが飛んで来た方向から一体のロボットが飛んで来た。

 

 なんか白い大きな戦艦みたいなのに、ボディがオレンジっぽい赤で塗られたガンダムっぽい機体が埋まっている。

 

 その埋まり方がウエスト博士が作るザクレロにちょっと似てるんだ。

 

『あれ、ガンダム試作3号機だ。けど記録だと解体されてサイド6の倉庫に封印されているってなってたのに、なんであるんだろう?』

 

 そう首をかしげるひーちゃんだけど、私は別の事が気になった。

 

 何故なら、あの白くてでっかいガンダムが纏っている紅いオーラ。

 

 それはさっきまで見ていた怒りのソレだったからだ。

 

『くっ! アンジェロをやるとは何者だ!』 

 

 部下の撃墜された際の隙にシャアと間合いを離したフロンタルは苦々しい顔で呟く。

 

 それに応じて開かれた通信ウインドウ。

 

『私、怒りの炎を灯した───セイラ・マス』

 

 そこには先ほど感じた気配の通り、セイラお姉さんが能面のような顔で映っていた。

 

 

 

 

 シャア・アズナブルが更なる絶望に叩き込まれていた頃、ステルスでアクシズ周辺空域に潜んでいたジェミニス達は撤退を余儀なくされていた。

 

『大丈夫か、アンナロッタ!』

 

『だいじょ…うえっ!?』

 

 先頭を行くジェミニアを駆るガドライトは、通信モニターの向こうで蒼ざめた顔で口元を押さえるアンナロッタに声をかける。

 

『クソッ! あのクソガキめ、エゲツないモン見せやがって……』

 

 当初の予定ではガドライト達はアクシズをスフィアで加速させて、時の牢獄が完成する前に地球へ致命的な損害を与えるつもりだった。

 

 上役から与えられた任務とは大きく違うが、自分達の星が容赦なく滅ばされて辺境惑星である地球が緩やかな滅びが確約されているとはいえ保護されるなど納得がいかない。

 

 そんな不平不満を解消するべく、ちょっとした八つ当たりと嫌がらせのつもりだった。

 

 アクシズが落ちても地球の全てが絶滅するわけではないのだ、広義で見れば任務放棄に当たらないだろう事も計算に入れてだ。

 

 しかしそんな計画も、幼女が周辺に垂れ流したグロ思念によって大きく挫かれる事になった。

 

 部隊の紅一点であるアンナロッタが悍ましさから体調を崩してしまったのだ。

 

『すまない、ガドライト』

 

『気にすんな。あの石ころにちょっかいを掛けるのだって奴等への嫌がらせにすぎない。アンナロッタちゃんよりも優先させることじゃないさ』

 

 申し訳なさそうなアンナロッタに、ガドライトは普段被っている三枚目のへラリとした笑みを返す。

 

 彼女はジェミナイドにとって最後の女性である。

 

 完全母系優勢民族であるジェミナイドは、異種族間の交配であろうと必ず女性側の遺伝子が優先される。

 逆に言えば男が異種族と交配してもジェミナイドの遺伝子は残せないのだ。

 

 それ故にアンナロッタはジェミナイドという種族に遺された最後の希望であり、しかも彼女はお腹に子を宿している。

 

 その子供が女性であったなら、絶滅に瀕したジェミナイドにとっては未来への希望となる存在だ。

 

 故に大事を取って彼等は撤退を選択したのだ。

 

『隊長! 前方に空間の歪みを確認! 何者かがワープアウトしてきます!!』 

 

 そうして宇宙を駆ける一団だったが、その足を止める者が現れた。

 

 宇宙に広がる闇の中からヌルリと現れたのは、漆黒と紫紺を纏う巨神だった。

 

 その威容を目の当たりにしただけで、ガドライトの背筋には寒い物が奔る。 

 

『はじめまして、惑星ジェミナイの戦士達よ』

 

 そう告げたのは強制介入された通信モニターに映る、薄いエメラルドの髪と金眼が特徴の美丈夫だ。

 

『いったいなんのようだ、兄ちゃん。俺達は急いでるんでね、道を開けてもらいたいんだが』

 

 そう告げるガドライトは緊張で乾く舌で軽い口調を維持するのは酷く苦労した。

 

(アイツはヤバい……! なんとかアンナロッタと部下を逃がさねえと!!)

 

『そうはいかんな。聞けば貴公等は一つの惑星にて最強の名を冠する戦士というではないか。その力を見せてもらいたいのだ』

 

『そいつは殺されても文句は言わねえってことだよな?』

 

『無論。こちらから申し出た決闘だ、そのような無粋な真似はせんよ』

 

 殺気をむき出しで睨むガドライトに、モニター越しの男は余裕の笑みを崩さない。

 

『なら、テメエと闘り合うのは俺だけにしろ。俺とこのジェミニアが惑星ジェミナイ最強の戦士だ!!』

 

『ふふ…よい闘志と殺気だ。その殺意に免じて貴公の提案も呑もうではないか』

 

 楽しそうに笑う青年が黒の機神の腕を軽く振ると、アンナロッタを始めとするジェミニスの隊員達は霞のように空域から消える。

 

『アンナロッタ!? テメエ、何をしやがった!』

 

『慌てずともよい。貴公が全力を出せるように安全な宙域へ送っただけだ』

 

 男の言葉にガドライトが素早くレーダーに目を走らせると、自身のいる宙域から数十キロ離れた場所に仲間たちの反応があった。

 

 暗号文を送ればあちらは何の問題も無いとのこと。

 

 胸をなでおろしたガドライトは再び眼前に佇む機神を睨みつける。

 

『遠慮はいらねえってか。───なら全力で叩き潰してやるよ!』

 

 パイロットが吐き出した気炎を合図にして、両手に掴んだ大剣で斬りかかるジェミニス。

 

『この世界でのウォーミングアップとしては相手にとって不足無し。行くぞ、エセルドレーダ。例のシンカとやら、ここで試す』

 

『はい、マスター』

 

 モニターに映るその光景に薄く笑みを浮かべながら、美丈夫はサブ操縦席に座る少女へ指事を出すのだった。

 

   

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