幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話 作:アキ山
全然進まないアクシズも何とか佳境に入ってきました。
こっから感動のアクシズ押し返しに持って行かなきゃならないんだぜ?
映画『SAW』のゲームで生き残るレベルでの苦行でございますわよ!
よっしゃ、今からSAWを一気見してネタを練るぜ!!
どうも、幼女です。
突然ですが戦場の空気が最悪です。
その原因は何処からともなく戦場に乱入してきた一般人、セイラお姉さんの出す圧の所為だ。
美人さんの笑顔はただでさえ怖いのに、乗っているのがガンダムが埋め込まれた謎の巨大兵器という事で迫力はマシマシだ。
『兄さん、結婚おめでとうございます死ね!!』
『うおおおおおっ!?』
『何故、私まで!?』
お祝いの言葉に絶対混ぜてはならない物が練り込まれたセリフと共に、巨大兵器の砲から放たれるゴン太ビーム。
それをシャアとフロンタルはビームサーベルの鍔迫り合いを止めて、互いに後ろへ下がる事で何とか回避する。
『お…落ち着くんだ、アルテイシア! お前は虫も殺せなかった優しい娘だろう?』
明らかに腰が引けながらも何とか説得しようとするシャア。
けれど、そんな彼に帰ってきたのはセイラお姉さんが浮かべる満面の笑みだった。
『私、先日お見合いをしましたの』
『……へ?』
あまりに突然すぎる話の飛び方に唖然とする私達。
それを代表するかのように、アムロ大尉の間の抜けた声が通信機から響く。
『なんだと!? いったいどこの馬の骨だ! 私の可愛い妹を簡単には嫁にやらんぞ!!』
『ふふ……どの口でほざいているのやら』
妹さんのお見合い話に怒りを露わにするシャアだったけど、セイラお姉さんの一言で顔色を青くする。
『相手はそこそこ大きな企業の跡取りな同い年の紳士。私も一度くらいならお付き合いしてもいいと思っていたんです。──ですが、彼は私と会うなり開口一番交際を断ってきましたわ。どうしてか、お分かり?』
『い…いや……』
『ロリコン変態でテロリストの首魁の妹とかマジで無理だそうです。ふふ……あれは一年戦争の時にガンダムで出撃して、ランバ・ラルの部下が操るザクにボコボコにされたのと同じくらいの屈辱でしたわ』
『………』
目が全く笑っていない仮面みたいな笑みになったセイラお姉さんに、シャアはもう何も言う事が出来ない。
そんなシャアを置いてけぼりで、セイラお姉さんの独白は続く。
『そのとき思ったんです。こんなに人生の邪魔になるのなら…こんなにストレスの源になるのなら……兄などいらぬと!』
『あ…ある──』
『私はセイラ・マス! そんな名前はダストボックスにダンクしました!!』
掛けようとしたシャアの声を遮ったセイラお姉さんは顔を般若のように歪ませて叫ぶ。
『だいたい、父が私達に何をしてくれたというのです! あのオッサンが遺したモノは厄ネタばかりじゃないですか!! 手下に乗っ取られた腐れ国家とか! 今なお残って地球を荒らしまわる頭のおかしいテロリストとか! なにより眼前のクソ兄貴とか!!』
セイラお姉さんから発せられる感情の波が、彼女の言葉が本心であることを嫌というほど伝えてくる。
あぁ、本気でジオンの子供であることが嫌なんだなぁ。
『だから私は決意したのです! この手で私の将来を覆う暗雲を払おうと! 私にはもうロリコン兄貴も腐れ親父の負債もいらない! 全てを抹消して、私は自分の人生を手に入れる!!』
並々ならない決意が籠った叫びと共に、ガンダム試作3号機は動き出す。
そして白い巨大な機体が加速に乗ったところで、セイラお姉さんは再び声を上げた。
『さあ、詠いなさいゾルたん☆! ジオンに終わりを齎す滅びの歌を!!』
「……ゾルたん?」
それってたしかジオンの暴露系動画配信者の名前だよね?
そんな事を考えているといつも使っている通信モニターの横に別のウインドウが開いた。
『親愛なるリスナー達、調子はどうだい? まさか本当に戦場に乗り込んで配信なんてできないと思っていただろう? けどやっちゃんうんだな、これが!!』
「……にゅっ!?」
『げ!? マジであの配信者乗ってるの!!』
なんとテンション高くウインドウに現れたのは、かつて全裸の過去を暴いた動画配信者ゾルたんだった。
『ネオジオンの愉快な仲間達もいる事だし、自分達の元になった組織がやらかした黒歴史についてまずはおさらいと行こうか。最初はみんなのトラウマ一年戦争だ。スペースノイドの中にはこの戦争を宇宙移民の権利を勝ち取るための正義の戦争だなんて思っているお花畑な連中もいるが、実際の所はそんな甘いモンじゃない。ジオンの初手の大蛮行であるブリティッシュ作戦、俗にいうコロニー落としだが地球への弾丸になったコロニーを確保する為にジオンはコロニー内部に毒ガスを注入して、中で暮らしていた民間人を虐殺しているんだからな! しかもサイド2にあった他のコロニーは全部核で叩き潰してだ!!』
嬉々として語るゾルたんの言葉に私は唖然としてしまった。
コロニーに毒ガスに核って、完全に虐殺じゃないか……。
『宇宙移民の権利を勝ち取るとか言っときながら、同じスペースノイドを容赦なくぶっ殺してるんだ。どう考えても大義なんざねえよな! ちなみに、ブリティッシュ作戦にはそこのシャア総帥も参加していたらしいぜ。それで宇宙移民の解放とか言ってんだから、すげえ面の皮の厚さだ。馬の鞍だって作れるんじゃねえか?』
『うぅ……(拙いぞ! ここで奴に好き勝手喋られてはネオジオンの信用が!! だからといって攻撃するわけには…!! アルテイシア! 本当に全てを壊すつもりなのか!?)』
あ、シャアがめっちゃ焦ってるのが伝わってきた。
『こうしてコロニー落としで地球に住む人間を23億人もぶっ殺したジオンは、人類史最悪の虐殺行為者として歴史に名を刻んだわけだ! そして連邦との一年戦争が始まったわけだが、当時アタマを張っていたザビ家はクソ馬鹿ばかりだったのさ! なにせ国の存亡が掛かった決戦で肉親同士が殺し合って自滅したんだからな!!』
え!? ザビ家ってオードリーお姉さんの親戚だよね?
親子で殺し合ったの!?
『連邦に和平を申し込みに行った国王である父親を軍の最高司令な長男が殺し、その長男を妹がぶっ殺した! 戦闘中にトップがそんな真似しちゃあ勝てるもんも勝てなくなるのは当たり前! 結果、まともに統制も取れなくなったジオン軍は連邦に御免なさいしたわけだ!! ちなみに、ある筋の情報だとその妹もシャアが始末したそうだけどな!』
それがアムロ大尉やブライト艦長が戦っていた一年戦争……思わぬところでこの世界の歴史を勉強しているよ、私。
それと、このゾルたん☆劇場を皆が大人しく聞いているわけじゃない。
『スペースノイドには、まだジオンという拠り所が必要だ! それ以上はやらせんぞ、失敗作!!』
呆然としているシャアを振り切ったフロンタルが、尻から出したファンネルで試作3号機に攻撃を掛けたのだ。
『ジオンなど、この世に必要ないのです! 私が言うのだから間違いありません!! 人間失格の貴方には分からないでしょうがね!!』
しかしセイラお姉さんはファンネルの包囲をあの巨体をバレルロールしながら躱すと、急加速で振り切ったところを反転してのマイクロミサイル攻撃でファンネル達を撃ち落としていく。
『こうして平和を迎えた地球圏だが、ジオンのやらかしは終わっていなかった! 次に馬鹿やったのはエギーユ・デラーズのハゲだ!! デラーズ・フリートを名乗った奴等は連邦が極秘に開発していた戦術核搭載ガンダムをパクった! さらにそれを連邦軍にぶっ放して観艦式に出ていた多数の戦艦を吹っ飛ばしたんだ! この核搭載ガンダムを南極条約違反だなんていう奴もいるが、あの条約は一年戦争時の戦時条約だからな! アレが終わった時点で失効してるから、皆は間違えるなよ!! だからこそ、ガンダム奪取も核使用も全部ハゲ共の悪辣なテロ行為でしかないんだぜ! ここは教科書に出るから憶えておこうな!!』
こうしてゾルたんは赤い変態とシャアを追い掛け回しながら、デラーズなんたらが2度目のコロニー落としをして、それがティターンズっていう宇宙移民弾圧軍隊誕生の切っ掛けになった事。
さらには多元世界になって宇宙人や謎生物などの人類の脅威が迫っていたのに、ハマーンさん率いるアクシズはスペースノイドも護ろうとしていたZEUTHと敵対していた等々、ほとんどジオンとその後に続く組織への告発のような内容の話を続けていく。
「……ひーちゃん」
『なに、ミーちゃん?』
「……ゾルたんのおはなし、ホント?」
『うーん、だいたい合ってるね。公式に報道されている事の他にも、機密扱いの情報もホイホイ垂れ流してるや。アイツ、これが終わったら消されるんじゃない?』
そう言うひーちゃんが開いてくれたゾルたんの動画サイトでは、書類らしきものや動画などがゾルたんの語りと共に次々にアップされている。
ミーちゃんの物騒な感想はともかく、ジオンの過去は幼女にとって結構ショックである。
地球の危機だからみんな一緒に力を合わせてって思ってたんだけど、やっぱり難しいんだなぁ。
こんな私の感想はさておいて、ゾルたんがブチまけた暴露話はネオジオンにとってはシャレにならない物のようだ。
『クソッ! あのデカブツをなんとかしろ!! この通信電波の遮断はできんのか!?』
『だめです! 複数の中継地点へ同時に発信されており、さらには各々の周波数も違うのでジャミングはできません!!』
『ヒル艦長! なんとかならないのか!? このままでは私と大佐の甘い生活が!!』
『ええい! 誰か、そこの色ボケ女を営倉に叩き込んでおけ!!』
こんな感じでレウルーラは大混乱。
『はやくその小姑をなんとかしろ、シャア! このままではアフランシ(仮名)やミネバ様、そして我々の名誉が!!』
『た…助けてくれ、ハマーン!!』
パイロットの焦りを表すかのようにブーケをブンブンと振る祝式に、セイラお姉さんの出した紐(ひーちゃん曰く爆導索っていう爆弾らしい)に向けて並んで逃げていたフロンタルのキュベレイを蹴り出しながら返すシャア。
『ミネバとは誰の事ですか? 私はオードリー・バーン、ただの町娘です』
その通信をネェル・アーガマで受けていたのか、オードリーお姉さんが満面の笑みでハマーンへ釘を刺す。
『え? けど、オードリーは俺に話してくれたよね? 自分はザ──』
『沈黙は金という言葉を知っていますか、バナージ。余計な事を口にするとハナーヂになりますよ?』
『い…いい……イエッサー!!』
バナージお兄さんのツッコミは背後に浮かんだゴリラなおじさんのヴィジョンが黙らせたようだ。
そんな混乱状態な上層部だけど、それ以上にヤバいのは宙域に展開しているネオジオンのパイロット達だった。
『みんな、いいわね?』
『ああ! わかっちゃいたが、この組織はもうダメだ!!』
『となれば、私達は別の就職先を見つけないといけないわ!』
『そこで目指すのは───あれよ!!』
女性パイロットなお姉さま方が乗るギラドーガ達、その中の一機が指さしたのはトライダーやバルディオスに組み付く同胞だった。
『婚姻届けはダウンロードしたな? 行くぞぉっ!!』
不穏な言葉と共に裂帛の気合と共に突撃していくギラドーガ達。
そんな彼女達の先にいるのは、一連の珍騒動で戦意があまり上がっていない様子のスーパーロボット軍団だ。
「まさか特攻か!?」
斗牙お兄さんの声に皆が警戒を露わにするけど、彼女達に敵意や戦意は感じられないんだよねぇ。
その所為なのか、最初に彼女達の餌食になってしまったのは超能力で相手の心がある程度読めるタケルさんだった。
『そのイケメン、一目見た時からタイプでした! 結婚してください!!』
『私はそのナイーブそうな表情が好み!!』
ゴッドマーズの手足や体に5体のギラドーガが飛び付いて、口々にアプローチを開始したのだ。
『待ってくれ! 俺にはロゼが……!』
もちろん、突然すぎる事にタケルさんは戸惑いながらも拒否しようとした。
『うるせえ! 第二夫人を娶るんだよ!!』
『綺麗な純愛ですね♡ オラっ! 夜の六神合体しろっ!!』
しかし、いろんな意味で後が無いお姉さま方には全く通用していないようだ。
『もうネオジオンにはいられません! 専業主婦で娶ってください!』
『え、特殊部隊のパイロット? めっさエリートじゃないですか!! エコーズ? マンハンター? そんなこと気にしません! アクション俳優みたいなオジ様と素敵な家庭を築きたいの!!』
『ボインちゃんがお好き? 結構、ではますます好きになりますよ。巨乳の本場は欧米です、出会いこそ後れを取りましたが今が巻き返しの時だ』
『獣人だからタネがないだぁ? 心配すんな! こっちで受精卵作って産んでやるからよ!!』
こんな風に次々とZ-BLUEの男性陣へ襲いかかるネオジオン女性陣。
やっぱり、最初のワッ太君への特攻がある意味成功したのがいけなかったのだろうか?
『くそっ! 奴等、組織がヤバいと踏んだら速攻で永久就職を狙いに行きやがった!』
『なんて薄情な奴等だ! というか、普通なら敵じゃなくてこっちに来るだろ!!』
『愚か野郎! 俺達の今の職業を言ってみろ!』
『ね…ネオジオンの兵士……』
『そうだ! 世間からすればロリコン総帥が率いるテロリスト集団! 宇宙市民の抑圧からの解放と権利向上を謡っていたが、それだってあの配信者の暴露放送でスポンサーや民衆の支持は一気に離れるだろう! 陰で支援しているジオン共和国だってヤバい! 金が無かったら組織維持だってままならん! そうしてネオジオンがバラバラになったら、俺達に何が残る!!』
「何が……はっ!」
『わかったか! 変態の部下とテロリストっていう二重の十字架だ! ソイツを背負って無職で世間に放り出されるんだぞ! 人生終わりだよ!!』
『そんな…ひどい……ひど過ぎる』
『だから女達はなりふり構っていないんだ。ここで勝ち組に乗れなければ、待っているのは底辺生活。クソッ! ゾルたんめ、トンデモねえプレデター共を解き放ちやがった!!』
通信機から流れてくる、お姉さま達の狂乱を見たネオジオンの兵隊さん達の言葉。
しかし、この特攻でタジタジになった男性に代わって、婚活女子達を迎え撃っている人達がいた。
『忍に近づくんじゃないよ! コイツは売約済みだ!!』
『ぐおおおおおおおっ!?』
『テメエ! いい男はみんなで共有するもんだろうが!!』
そう、彼氏に悪い虫が付くのを恐れたお姉さま方が牙を剥いたのだ。
『カミーユは渡さないわ!』
『そうよ! 彼は私とフォウのモノなんだから!!』
『フォウ! ファ!? いったい何を言っているんだ!?』
『ド畜生!』
『いい男を独占してんじゃないよ、ビッチ共が!!』
勇ましいのか恐ろしいのか分からない女の闘い、幼女が理解するにはまだ早いようです。
……あ、にぃにが襲われてる。
『いやぁぁぁぁぁっ! 黒丸が! 黒丸がァァァッ!!』
にぃにはルナお姉さんのだからダメだよ。
あ、ちゃんと脱出ポッドはハロビットで回収しているから死んでません。
度重なるアクシデントで両軍ともにアクシズなんて眼中にない状態でドタバタ劇を繰り広げている。
しかし、そんなバカ騒ぎは突然終わる事となった。
「!? ……みんな、アクシズからはなれて!!」
背中に走った強烈な悪寒に、私は考える間もなく通信機へ向かって叫んでいた。
『姉さま!?』
『どうしたんだ、ミユ!? なにがあった!』
普段の私は声を荒げる事はほとんどないので、驚いて通信を返して来るミウとにぃに。
『ミーちゃん?』
「……あぶないひと、くる! みんな、にげる!!」
『危ない人、だと?』
『まさか、ガドライトか!?』
戸惑う弁慶おじさんに、私の言葉からガドライトが来ると考えるヒビキさん。
けど違う。
この気配は…クマさんを進化させた時の―――!!
そんな事を考えた刹那、ものすごいスピードでハロの横を何かが通り過ぎた。
「ひゃっ!?」
『大丈夫、当たってない!!』
緑色の流星のようなソレは、アクシズへ真っ直ぐ飛ぶとその表面に大きなクレーターを生み出して止まった。
粉塵がゆっくりと移動するアクシズの推力で晴れた時、私は思わず目を疑った。
何故ならクレーターの中心でぐったりと倒れているのは、あのジェミニアだったからだ。
両手足を失い、腰に近い腹部には大穴。
顔も半分が削れており、残ったデュアルアイも光を失っている。
『あのジェミニスの首魁をここまで……』
『いったい誰がこんな事を?』
ブライト艦長とオットー艦長がジェミニアの惨状に息を呑む。
ネオジオンの人達はともかく、何度か刃を交えてジェミニアの強さを知っている私達には衝撃的な光景だ。
そして犯人が誰かという事はすぐに分かった。
『異星の戦士よ、よく戦った。貴殿の奮闘を余は忘れまいぞ』
声の主が現れる際に発した暗い、昏い波動には覚えがあったからだ。
パラダイムシティで魔法を使った時に繋がった人。
私達とは奇縁で繋がった魔法使い。
マザーハーロットが乗る666の獣と同じ名を持つ者!
「……だいどうし」
『いかにも。お初にお目にかかるというべきかな、贄の娘よ』
黒と深い赤の装甲を纏った魔神の手に乗って宇宙空間に立つモノ、それはアルお姉さん曰く『最悪の魔導師』マスターテリオンだった。