幼女が魔改造されたクマに乗って時獄と天獄を生き抜く話   作:アキ山

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 何故か筆がこっちを書いてしまった。

 装甲悪鬼村正のWIN10版を買ったのが駄目だったか。

 いや、名作とは何時やっても色あせないものでござるよ。


幼女とあいとゆうきのおとぎばなし -05

 アメリカ大統領マイケル・ウイルソンは宇宙から帰って休む間もなく、国連会議へと赴くことになった。

 

 議題はもちろん、コロニー『豊芦原瑞穂国』について。

 

 突如として現れたBETAを物ともしない武装組織は各国の注目を集めている。

 

 彼女達が宇宙に地球内とほぼ変わらない環境の浮島を作り出す科学技術を有しているとならば猶更だ。

 

 BETAの脅威に晒されている各国が豊芦原瑞穂国の協力を得たいと思うのは当然と言えた。

 

 しかし九州戦役へ介入した時点では、彼女達が人類にとって友好的か否かの判断が付かなかった。

 

 戦火に追い立てられた民を連れて宇宙へ戻ったことも、地球人を調べるためのサンプルケースだというのが通説だったのだ。

 

 BETAという先例がある以上、どうしても人々は宇宙からの来訪者を悪し様に見てしまう。

 

 そんな中、現アメリカ大統領が『豊芦原瑞穂国』へ赴き無事に帰ってきたというではないか。

 

 しかも彼の浮島が用意した船に乗り込んだ者たちも、全て無事に地球へ降り立ったという。

 

 この事実から件のコロニーが友好的な異星生命体の手によるものという希望的観測は一気に現実味を帯び、国連各国は情報を得んが為に緊急会議を開いたのだ。

 

「アシハラミズホのプリンセスが貴国の民を招待したのは、九州戦役での戦死者の為に葬儀を行ったからだと?」

 

「その通りです」

 

 国連事務総長の問いかけにマイケル大統領は頷く。

 

 彼が齎した情報は驚くべきものだった。

 

 あのコロニーの所有者は齢4才程度の女児であり、彼女の連れは妹と高性能ペットロボット。

 

 そして得体の知れない男のみ。

 

 浮島自体も無数のペットロボが人に代わって管理運営を行っているらしい。

 

 彼女達に連れていかれた日本人や在日米軍もコロニー内で平和に暮らしており、政治に関しては分からないという理由から難民の政治経験者へ委任されている。

 

 なにより彼女達の機動兵器は忌まわしいBETAの落着ユニットを容易く粉砕するほどの力を秘めているというのだ。

 

 現行地球人類を遥かに超える科学力を有し、自分達に友好的で善良な異星人。

 

 その来訪はBETAの脅威に怯える彼らにとって福音といえた。

 

 しかし、そんな豊芦原の姫を素直に迎えられないのも今の人類だ。

 

 マイケル大統領が語り終えると、一人の男が発言を求めて挙手をする。

 

 それはアメリカにとって不倶戴天とも言えるソ連の大使だった。

 

「我々の掴んだ情報ではアメリカと日本は彼の浮島から技術供与を受けたと聞きます。それは撤退していた軍の機体を基にした新型戦術機で、しかも実機で譲り受けたとか。これは公平公正を旨とする国連加盟国として不適切ではないですかな?」

 

 大使に発言を耳にした瞬間、マイケル大統領は驚愕に目を見開いた。

 

 何故なら豊芦原瑞穂国から供与されたリファイン・イーグルは、政府の上層部にしか知らせていない情報なのだ。

 

 それをソ連が掴んでいるという事は内部からリークされたとしか考えられない。

 

(軍部高官にいる第五計画のシンパがそんな事をするとは考えられん! となれば貴様の仕業か、リチャード!!) 

 

 内心で歯噛みするマイケル大統領だったが、今は奴等の仕業だと示す証拠が何もない。

 

 なにより会議のアドバンテージを取り戻さねば、豊芦原と地球の関係に影響が出る。

 

「それは戦没者の慰霊祭を開いた際、両国にいる遺族を参加させる為にプリンセス達が提供してくれたものだ。正式な代価であって疚しい事など何もない」

 

 焦りを飲み込んで反論を口にするマイケル大統領。

 

 しかしソ連大使は余裕を崩さぬままに言葉を紡ぐ。

 

「なるほど……では、こうしましょう。我々も国内のハイブへ侵攻し戦端を開く。プレジデントは宇宙にいるプリンセスとやらへ救援を要請してください。彼女は真に地球人類に友好的ならば、我々の苦境を見過ごすわけがないでしょうからな。そうして救われた後は……そうですな。我が国は彼女が開くであろう慰霊祭の代価として、戦術機ではなくコロニーを一ついただきましょうか。このように我々が動いても問題ありませんね?」

 

 彼の発言は理屈も何もない滅茶苦茶なモノであり、嘲りを張り付けたその顔からは豊芦原の姫を子供と侮る内心が透けて見えた。

 

「君は彼女の善意に付け込むつもりか?」

 

「邪推はいただけませんな、我々はあなた方のマネをするだけですよ。今、地球は未曽有の危機なのです。一国のみが幸運の女神から恩恵を授かるなどあってはならない。人類存続の為にも、彼女の齎す英知は全ての国に分配しなくては。そうでしょう、皆さん!」

 

「そうだ、そうだ!」

 

「我々は国を失い、民は臨時キャンプで塗炭の苦しみを味わっているのだ! 何故国土が健在な貴様等がそんな恩恵を受けるのだ!?」

 

「アメリカはまた利益と安全を独り占めするつもりか!」

 

「日本もだ! 我等を自国の盾としたことを忘れてはいないぞ!!」

 

 ロシア大使の言葉に参加している各国から賛同の声や怒声が飛ぶ。

 

「落ち着け! 彼女達は我々とは隔絶した科学力を持っているのだぞ!! いい様に利用するなどと画策としては見捨てられる危険性がある。いや、それだけならまだマシだ! 最悪の場合、豊芦原は地球人類を敵とみなす危険性もある! そうなれば我々に生き残る目を失ってしまうのだ!!」

 

「生き残る目だと!? そんな呑気な事を言えるのは貴様等がBETAに蹂躙されていないからだ! 国土を奪われた我々に、そんなものあるものか!」

 

 マイケル大統領が放った注意にフランス大使が怒声を上げる。

 

 そう、この会議に参加している者達の半分近くが他国の土地を間借りして臨時政府を立ち上げ、自国の民が難民という汚名をかぶることを余儀なくされている者たちだ。

 

 何時化け物に食われるかもわからない地獄から抜け出せる方法をぶら下げられては、飛び付かないわけがない。

 

 喧々囂々とした会議の中、国連の事務総長は場を締めるべく口を開く。 

 

「多くの国々の大使が言う通り、アシハラミズホの力は人類にとって必要不可欠である。マイケル大統領、貴国を通して現在苦境にある各国への支援をアシハラミズホへ要請していただきたい」

 

「とはいえ、こちらから頭を下げれば舐められましょう。ここは強気に行くべきでは?」 

 

「然り! 子供というのは怒鳴りつければ言う事を聞くものです。地球上での活動を承認してほしくば国連に加盟せよ。その際、加盟料として軍事技術やコロニー建設の為の技術を公開させるというのはどうですかな」

 

「それはいい! 製作の為の資源が足りなければ、あちらから出させればよい!」

 

「月から落着ユニットも来るとの話ですし、その辺の警備も命じておきますか!!」

 

 捕らぬ狸の皮算用で盛り上がる大使たちの醜悪さをよそに、マイケル大統領はガックリと肩を落とす。

 

 いかに大国たるアメリカでも他の国全てを向こうに回して意見を押し通すのは不可能だ。

 

 同じ恩恵を受けた日本の大使は、自分に飛び火しないように沈黙を貫いているのであてにならない。

 

『私の力不足だ……すまない、プリンセス!』

 

 彼の悔恨の念を込めた言葉は、会場の喧騒の中に消えた。

 

 

 

 

 一方、日本へ帰国した煌武院悠陽は帝の御所へと呼び出されていた。

 

「御尊顔を拝し奉り、恐悦至極に存じます」

 

「そんな固ぉならんでええよ、煌武院ちゃん。今日は内謁、正式な場とちゃうんやから」

 

「は…はぁ……」

 

 御所に敷かれた極上品の畳の上で伏して頭を下げる悠陽に、現皇帝たる舞殿宮春熙は姿を隠す簾の奥から気さくに声を掛ける。

 

 彼は『庶民派』を自称し、宮中でも歴代稀にみる親しみやすい帝と言われている。

 

 帝位に就く前は大阪などに身分を隠して働きに出て、臣民の暮らしを肌で感じることを楽しみにしていた事もある。

 

 実際、プライベートではその際に憶えた大阪弁を愛用しているし、禁裏の中で働く者達にもこのように軽い調子で語り掛けることが多いのだ。

 

 一方の悠陽は五摂家の身なので園遊会などで遠間に帝を見ることはあっても、直接言葉を交えることはほぼ無かった。

 

 その為、国主らしからぬ軽い口調に度肝を抜かれていた。

 

「まあ、こんな場所に呼び出されたら緊張するのも無理ないし、君みたいな若い子がおっちゃんと長々と話しとっても面白ないやろ。早速やけど本題に移らせてもらうわな」

 

「はい」

 

「君は例の天の浮島を見てきたんやろ。エラい土産も貰ってきたみたいやけど、実際のところどうやったんや?」

 

「そうですね……」

 

 帝の問いかけに悠陽は豊芦原を見聞して感じた事を言葉として紡いでいく。

 

 慰霊祭での奇跡やBETAの落着ユニットを物ともしない強大な軍事力。

 

 幼い姫君から感じた純真さ。

 

 彼女達はこちらへ悪意を持って接してはいない事。

 

 そして帝国と国交を開いた際に起こり得るであろう問題や、彼の島が世界的に与える影響の予測など。

 

「そうか……君にはあの島がそう見えたか」

 

 全てを聞き終えた帝は簾の奥で目を閉じて深く息を吐く。

 

 豊芦原瑞穂国が現在の地球にとってどのような存在となるか、それは彼でも容易に想像がつく。

 

 そして彼女達に最初に助けられ接触を果たした事で、己の国がどのような立ち位置となるかもだ。

 

「ここだけの話な、わしは臣民たちをあの浮島へ疎開させたいと思っとる」

 

「臣民全てを…ですか?」

 

 帝の口から出た案に悠陽は目を見開いた。

 

「そや。BETAとの戦いで人類が劣勢に追い込まれた理由の一つは、奴等が侵略者やという事やと思っとる」

 

「はい」

 

「奴等との戦争は地球を舞台にしている以上、何処で戦ってもあっちは攻め手でこっちは守備側や。これはハイヴ攻略にしても変わらん。大きい目で見たらあれかて自分の土地に造られた相手の巣を潰そうとしているだけの話やからな」 

 

「おっしゃる通りでございます」

 

「守り手はどうあっても行動を制限されてまう。非戦闘民の事も考えなあかんし、先の事を考えたら奪われた土地かて必要以上に汚染も破壊もできん」

 

「たしかに、これまでの戦闘では国土や民の事を考えるが故に劣勢に立たされたという事例も少なくなかったと聞き及んでおります」

 

「そや。しゃあから、それが無くなったら前線で戦う人間の負担は一気に減るんや。不退転の決意で無理な作戦をせんでもいいし、不利やと思ったら心置きなく退ける。それがどれだけ兵士の命を助けるか、君なら分かるやろ」

 

 帝の言葉に悠陽は頷いた。

 

「自分の家族が安全な場所におるって思うだけで兵士のストレスも大幅に改善するし、民の生活の安定は強固な後方支援につながる。兵士を後ろから支える体制がしっかりしてな戦には勝てんからな」

 

「豊芦原と良い関係を構築して移住した民が彼等の一助となれば、彼等の協力を得らえれる。そうすれば現在崩れつつある補給や兵站も立て直せるという訳ですね?」

 

「そうや。地球にある全ての国や人がそういう風になって、初めてBETA共に対して勝ちの目が出るとわしは思っとる」

 

 帝の言葉には納得すべき事が多々あった。

 

 しかし悠陽は確信する。

 

 今の世界情勢では、彼の語る未来が訪れるのは難しいだろうと。

 

「まぁ、煌武院ちゃんの懸念も分かるよ。わしかて自分でもこんなん理想論やと思うしな」

 

「陛下……」

 

「ついさっき来た情報やと、国連会議でアメリカさんはやり込められたらしいな。随分強気な要求で豊芦原に技術提供を求める事になったみたいや。ソ連が主導してたところを見ると、大統領は後ろから味方に撃たれたんとちゃうか?」

 

「そんな…マイケル大統領が……」

 

 豊芦原で協力を約束した者の窮状に言葉も出ない悠陽。

 

 そんな彼女に帝はため息交じりに言葉を続ける。

 

「獅子身中の虫やったらウチも人のこと言われへん。もう帝国議会の方できな臭い動きしとる奴等がおるわ。技術蔽に草を送り込んで烈震やったか、アレのデータを盗もうとしとるなんて話も上がって来とるしな」

 

「なっ!?」

 

「どいつもこいつも欲掻きおって、あいつ等『蜘蛛の糸』読んだことないんか」       

 

 苛立たしげな帝の舌打ちの音に悠陽は驚愕から我に返る。

 

「『蜘蛛の糸』というのは文学のあれですか?」 

 

「そや。この地上が地獄でBETAが獄卒、そして人類は苦しみ藻掻く亡者。そんなわし等に垂らされたのが豊芦原っちゅう蜘蛛の糸や。こう考えたら、あの小説は今の状況によう似とるわ」

 

「ですが、あのお話の最後は垂らされた蜘蛛の糸は切れて、主人公をはじめとする亡者達は地獄に取り残される。陛下は我々もその結末を辿ると?」

 

「このまま誰も彼もが欲望に目ぇギラギラさせとったら、そうなるやろ。手ぇ差し伸べた先で他人蹴落として自分だけ助かろうなんて醜い争い見せられたら、どんな聖人かて嫌になるわ」

 

 吐き捨てるような帝の言葉が終わると、御所の謁見の間に重い沈黙が下りる。 

 

 そんな中、帝は深々とため息をつくと再び口を開いた。

 

「だからこそ、わし等はそうならん様に動かなあかん。むこうのお姫さん、小さい女の子なんやろ? そんな子に失望されるとか、国云々以前に大人としてアウトやしな。そんな訳やから、煌武院ちゃんには予定より早く将軍になってもらうで」

 

「よろしいのですか?」

 

「かまへん。征夷大将軍の任命権は皇帝たるワシにあるからな。だいたい上の人間は責任取るからこそ偉そうにできんねん。それを斎御司のアホが、貧乏くじ成人もしてない女の子にひかせて自分はケツまくるとか何考えとるんや」

 

 憤懣やるかたないといった感じの帝の言葉に、悠陽はあの人事は国のトップをして納得いかない物なのだと気が付いた。 

 

「そんなヘタレや権力や金に固執する俗物共に、何時までも国の舵取り任せる気はない。君が将軍に就くと同時にワシ等の権限を強化するつもりや」

 

「そんな事は民主政治に反すると議会が黙っていないかと……」

 

「民主政治なんか、つい最近西洋から勝手に入ってきたもんやろ。日本は建国からずっと皇帝を頂にした専制国家や。平和な時やったらまだしも今は国家存亡が掛かっとる。ちんたら議会なんぞに決断任しとったら、答え出る前に日本は更地なっとるわ」

 

 己の放った諫言をバッサリと切って捨てる帝に、悠陽は彼が本気であると確信する。

 

 そして日本帝国が大きく動くとも。

 

「まずは国内に蔓延る売国奴共をなんとかせんとな。そやないとオチオチ天の姫さんもこっちに呼ばれへんわ」

 

「彼女とお会いになるのですか?」

 

「頼み事する身としてはコッチが宇宙に上がるのが筋なんやけどな。不自由な身やさかい、国出るだけでも一苦労なんや。しゃあから佐渡防衛の時にこっち来たら、会おうかと思っとる」

 

 その際に帝が行う豊芦原の姫への要求は一つだ。

 

「むこうが望むなら帝の地位も明け渡すし、この首をくれてやってもええ。こんなおっさんの命一つで日ノ本の民が平和に暮らせるんやったら安いもんや」

 

「陛下……」

 

 簾越しに感じる帝の覚悟に悠陽もまた肚を決める。

 

 自分の征夷大将軍就任、そこが日本帝国のターニングポイントになるのだと。

 

 

 

 

 幼女の朝は早い。

 

 といってもだいたい8時くらいに起きるんだけどね。

 

 そしてつい最近、私の日課にある一つの事が追加された。

 

「……にゅん」

 

 ちからこぶを作ろうと腕を曲げると、鏡に映るのは山なんて影も形もないぷにぷにの二の腕。

 

「……むん」

 

 正面に立ってポーズを取ると、ぽっこりお腹がぷるんと震える。

 

「……えい」

 

 胸を強調するポーズをとっても、鏡の向こうは大平原。

 

「……やぁ」

 

 背中を向けて上げた両手を曲げてみても現実は非情なモノ、脂肪に覆われた体は筋肉も骨も浮き出ません。

 

「おひいさま、何をしているのですか?」

 

 パンツ一丁で鏡の前に立っていた私は、掛けられた声に振り替える。

 

 そこには執事服を着た柔和そうなお婆さんが立っていた。

 

 この人は永倉さよさん。

 

 慰霊祭終了後から私とミユの付き人になって、いろいろとお世話してくれている人だ。

 

 もともとは私達が住む家の3軒隣に住んでいるご近所さんだったんだけど、東郷のおじいちゃん達が『おひいさまにも付き人や警護が必要だろう』と募集を掛けたところ、さよさんが立候補してくれたのだ。

 

 コロニーに駐留している帝国軍や在日米軍、さらには武術に心得がある一般市民などが多数参加した採用試験を彼女はトップで合格。

 

 東郷さんもあの人なら大丈夫と太鼓判を押した事で、晴れて彼女は私達の護衛兼付き人となったわけである。

 

 さよさん曰く、昔はすごく偉い人を守ってたって言ってたんだけど、いったい誰の事なんだろうね?

 

「……もーにんぐ・びゅーてぃ・たぁいむ」

 

「何ですか、それは」

 

 私がそう答えるとさよさんは呆れた顔をする。

 

 まあ、気持ちは分かる。

 

 分かるんだけど、これにはとても有益な効果があるのだ。

 

「……らいちょーふじん、おしえてくれた。まいにちやったら、きれいになる───くちゅんっ」

 

「まずは服を着ましょうか。このままだと綺麗になる前に風邪をひいてしまいます。子供は健康第一ですよ」

 

「……ん」

 

 もそもそと服を着た私はさよさんと共に居間へ移る。

 

 私達が住むのは昔ながらの民家なので、そこにあるのは食事用のテーブルとほかほかと湯気が立つ朝ごはん。

 

「おはようございます、姉様」

 

『おはよう、ミーちゃん。今日は少し遅かったね』

 

「よい朝だな、我が君」

 

 そして一つ屋根の下に暮らす家族たちだ。

 

「……もーにんぐ・びゅーてぃ・たぁいむ、ためしてみた」

 

「本当にやったんですね、姉様」

 

『それで効果のほどは?』

 

「……ミユのからだ、ぷにぷに」

 

『ですよねー』

 

「まったく、今川様にも困ったものです。おひいさまにあのような事、まだまだ早うございますのに」

 

「君は今のままでも十分に美しい。気にすることなどないさ」

 

 そんな風に楽しく食事をとった後、お茶を飲んでいる私にさよさんが問いを投げる。

 

「本日はいかがされますか?」

 

「……ゲッターのパイロットのおみまい。それと、らいちょーふじんのきたい、チェックする」

 

「姉様、国連からの通達に対する会議もありますわ」

 

 ああ、それもあったっけ。

 

「……なんじ?」

 

『12時からだね。まあ、最初の予定を終わらせても時間あると思うよ』

 

「すまないが私は畑に行かせてもらおう。生命の樹の育成が大事な場面なのでね」

 

「……ん。かんばって」

 

 生命の樹がうまく根付けば、堕天翅族も生まれるかもしれないんだってさ。

 

 ミカゲさんの未来の為にも健やかに育つといいな。

 

 こうして自宅を出た私達が最初に向かったのはゲッターのパイロットが入院している病院だ。

 

 他の三人を乗せてカートで進んでいると、病院へ向かう途中の商店街でビビッと来た。

 

「姉様?」

 

「……みんな、いつものおみせにいる」

 

 直感のままに進路変更した先は昔ながらの大衆食堂。

 

 中に入ると店の奥にあるテーブル席で空の食器を積み上げている男性三人組の姿が見えた。

 

 入り口まで聞こえそうな音を立ててモリモリとご飯を食べているのは、拓馬お兄さんと獏お兄さん。

 

 その横では食事を終えたカムイお兄さんが優雅にコーヒーを飲んでいる。

 

「……おはよう」

 

「ああ、お前か」

 

 声を掛けると広げていた新聞から目を離してこちらを見るカムイお兄さん。

 

 彼はあのゲッターロボ、ゲッターロボアークのパイロットの一人だ。

 

 獏お兄さんの話だと彼は人類と異なる進化を辿ったハチュウ人類と人間のハーフで、アークのゲッター2形態であるゲッターキリクを担当してるんだって。

 

「また病院を抜け出したんですのね。ちゃんとしていませんと、いつまで経っても元気になりませんわよ」

 

「仕方ないだろう。こいつ等が病院食じゃ足りないと言うんだから」

 

 ミウの忠告に肩をすくめてみせるカムイお兄さん。

 

 この人最初は自分の見た目とかで私達のことを警戒していたんだけど、話の流れで私達の出生を知ってからはかなり態度が柔らかくなったんだよね。

 

「むぐむぐむぐ……病院の飯は味は美味いんだけどよぉ、量が全然足りねえんだよな」

 

「そうそう。あんなもんじゃ腹減っておちおち寝る事も出来ねえわ」

 

 そんなカムイお兄さんに、ほっぺたをリスみたいにした拓馬お兄さんと獏お兄さんが答える。

 

 というか、口の中に物を入れながらしゃべっちゃだめだよ。

 

 ちなみに拓馬お兄さんはアークのゲッター1形態にあたるゲッターアークのパイロットで、なんと竜馬さんの息子さんだったりする。

 

 とは言っても私の知る流竜馬じゃなくて、並行世界に生きた別の竜馬さんらしいんだけどね。

 

 そして獏お兄さんは、そんな拓馬お兄さんの小さい時からの親友。

 

 彼はアークのゲッター3形態なゲッターカーンのパイロットで、少しだけどニュータイプに目覚めてるっぽいお兄さんだ。

 

『だからって、トラック運ちゃん御用達のドカ飯食堂の常連になることないじゃん。食費、けっこうかさんでるんだけど?』 

 

「まあ、そう言うなって。退院したら体で払うからさ」

 

「そうそう。ゲッターも修理してくれてるんだろ? 例のBETAだっけか、そいつ等を地球から叩き出す手伝いするからよ」

 

 お金が無い3人の生活費は客分という事で私達が払っています。

 

 まあ、助けたんだからお世話をするのは当然だよね。

 

 今はこんな風に和気あいあいとしているけど、この三人との出会いは結構波乱なものでした。

 

 なにせ、目を覚ました途端に3人とも病室で暴れだすんだもん。

 

 カムイお兄さんは片足骨折と胸骨にヒビ。

 

 獏お兄さんは右鎖骨と肋骨三本に頸椎損傷。

 

 拓馬お兄さんなんて頭蓋骨にヒビが入って内臓がいくつか破裂寸前だって話なんだけどなぁ。

 

 それでも救護用のハロを壊して病室を脱出するんだから大したものだ。

 

 お見舞いに来ていた私が3人と顔を合わせたのは、この時だったんだよね。

 

 その際にゲッター乗り特有の戦意に溢れた強面をいきなり見てしまった私は…その……粗相をしてしまいまして、それに焦った拓馬お兄さんと獏お兄さんが冷静になったことで対話に持ち込む事が出来たのだ。

 

 そうして分かったのは彼等は並行世界の住人であり、強大なゲッターロボと戦った影響でこの世界に飛ばされたこと。

 

 ゲッターロボ・アークは真ゲッターロボのプロトタイプにあたることなど。

 

 強大なゲッターと聞いた時、神様の横に凄く大きなゲッター1っぽい顔が浮かんでいる光景がみえたんだけど、あれって何だったんだろう?

 

 そのあとは私達の事とこの世界の現状を教えて、『ゲッターはちゃんと修理しているし、元気になったら帰る方法も一緒に探すから今は傷を治して』と説得して入院生活を続けてもらっていたのだ。

 

 まあ、お兄さん達は見事なまでの健啖家で、病院を抜け出しては大食い大会を連発してたんですけどね。

 

「それで皆様は病院に戻られるのですか?」

 

「ああ。腹もいっぱいになったし、病室のベッドでひと眠りするわ」

 

「本当はもう大丈夫なんだがなぁ。医者がジッとしとけってうるさいんだよ」

 

「医者の言う事は聞いておけ。向こうはプロなんだ、俺達の気づかない不調があるのかもしれん。そういうのを甘く見ると戦場で恥を掻くことになるぞ」

 

 店を出たあと、3人はさよさんの問いかけに口々に答える。

 

 お腹が出っ張るくらいに食べたせいか、拓馬お兄さんと獏お兄さんはとても満足そうだ。

 

 そんな訳で私達は予定を変更して、3人と一緒に病院までお散歩することにした。

 

 本当はお見舞いに来たんだけど、ここまで元気だと必要なさそうだもんね。

 

 ちなみに直近の検査だと、3人が3人ともほぼ健康体になっているらしい。

 

 その異様な治癒速度に、お医者さんたちも目を回しているとか何とか。

 

 ゲッター乗りって弁慶さんしかり竜馬さんしかり、基本的に超頑丈だからなぁ。

 

「退院したらリハビリがてらにアーク動かすから準備してくれよな」

 

「今度来るときはBETAについての情報をもってきてくれ。敵の事は事前に知っておきたい」

 

「よかったらノートPC一台もらえないか? 手持無沙汰なんで暇つぶしに使いたいんだ」

 

 病院へたどり着いた私達は、こんな感じでリクエストを背に受けながらゲッターチームと別れることになった。

 

 個人的には拓馬お兄さん達が別に戦わなくていいとは思うんだけどなぁ。

 

 けど拓馬お兄さんも獏お兄さんも一宿一飯を凄く大事にしているみたいだし、民間人を助ける為って凄い乗り気なんだよね。

 

 真ゲッタークラスの戦力があると助かるのも確かなんだけど、どうしたもんか……。

 

 ……まあ、その辺の事は後々考える事にしよう。

 

 竜馬さんももうすぐ来るだろうしさ。

 

 そんな訳で次に向かったのは軍事演習場だ。

 

「待っていたわよ、おひいさま」

 

「……おはよう、らいちょーふじん」

 

「モーニング・ビューティタァイムはやってくれているかしら?」

 

「……かぜひくから、だめっていわれた」

 

「それは残念。おひいさまには少し早かったようね」

 

 そんな会話をしていると格納庫へ続く扉が開き、MS搬送用トレーラーに載せられた一つの機体が現れる。

 

 それは全身を光り輝く金と黒で彩られたロボットだった。

 

 意匠は従来のMSとは一線を画す和風の甲冑と陣羽織に似たものとなっており、腰には太刀と脇差を佩いている。

 

 そういえば、これってハマーンさんが結婚表明に乗っていた機体に似てるや。

 

『これが今川中佐の専用機、百士貴だよ』 

 

「百士貴……」

 

『動力はグルンガストに使われていた特機用プラズマ・リアクター、関節部はモビルファイター用のを使用している。操作方法はモビルトレースシステムって言って、操縦者の動きをそのまま機体が再現するものに調整してある。あと百士貴の名前は「『百』人の武『士』の中で最も高『貴』な男であれ」って意味を込めてるんだ』

 

「百人の武士の中で最も高貴な男であれ、か。気に入ったわ! それじゃあ早速乗せてもらうわね」

 

 そう言って強化服に着替えようとする雷蝶夫人だけど、それを止めたのはひーちゃんだった。

 

『モビルトレースシステムはセンサーとナノマシンで出来たファイティングスーツを身に着ける必要があるんだ。スーツはコックピットで自動的に精製されるから、全裸で中に入ってね』

 

「わかったわ」

 

 ひーちゃんの言葉に頷いた雷蝶夫人は自分の軍服に手を掛けると───

 

「はぁっ!!」

 

 なんとその場で一気にすべてを脱ぎ捨ててしまったのだ!

 

「ぎゃあああああっ!? なにやってんだ、テメェ!!」

 

『なんでここで脱ぐのさ!? 普通はコクピットの中でしょ!!』

 

「あら、麿の美しい体を見せてあげたのに何が不満なのかしら?」

 

「……むきむき」

 

「はい、見てはいけません。ああいうものは、おひいさまにはまだ早うございます」

 

 超筋肉質な体に凄いなぁと思っていたら、さよさんに目隠しされてしまったけど。

 

 もしかして、あれがモーニング・ビューティ・タァイムの成果なのだろうか?

 

 だとしたら、続けるのもありかもしれない。

 

 そうして雷蝶夫人がコクピットへ乗り込むと、ほどなくして百士貴は動き出した。

 

 大地を踏みしめ、自分の体を確認するかのように何処か舞に似た動きを取る金色の巨人。

 

「なるほどねぇ、本当に麿の動く通りに機体が動くわ」

 

「なんと……」

 

「衛士の動きに戦術機を追随させるとは、なんという技術か」

 

 スピーカーで届く夫人の声に部下の人達も驚いている。

 

「スーツを身に着ける時は少しキツかったけど、これなら十分すぎてお釣りが来るわ。さて、本格的に動かすわよ」

 

『OK。それじゃあBETAのドローンを出すから、適当に暴れてみてよ』

 

 ひーちゃんがそう言うのに少し遅れて演習場のハッチが開く。

 

 そこから現れるのは様々な種類のBETAを模したドローン達、その数100体だ。 

    

「では今川雷蝶、参る!」

 

 陣羽織風のスラスターユニットから炎を噴き上げて飛び立つと、引き抜いた太刀を手に斬りかかる百士貴。

 

 一刀で突撃級を正面から真っ二つにすると、流れるような動きで要撃級3体を一度に上半身を横に切り飛ばす。

 

 オイルと内部機構の破片をバラまいて倒れる残骸の陰から戦車級が飛び掛かるが、それも頭部から放たれるバルカンの弾丸で次々とハチの巣にされて失敗に終わる。

 

「ふふふ……これよ! 麿はこれを求めていたのよ!!」

 

 黄金の軌跡を残して間合いを詰めると、要塞級を真正面から叩き切る百士貴。

 

 その一撃は余波だけで下にいた光線級達をくず鉄へと変える。

 

「本気で動いても機体が悲鳴を上げない! 計器が警告音を泣き喚かない!! 己と鋼が一つとなる人機一体の境地!!」

 

 雷蝶夫人が放つ歓喜の声と共に百士貴は塗装ではなく、その全体が眩いばかりの黄金色へと染まっていく。

 

 私は一度あれを見た事がある。

 

 たしかガンダムファイターの精神が極みへと達した時に機体が応えるハイパーモードだ。

 

「最高よ、百士貴! おまえとなら、あの虫けら共の巣も単騎で叩き潰してみせるわぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そして掲げた日本刀の刀身を黄金のエネルギーで大きく伸ばした百士貴は、そのエネルギーで残るBETAドローン達を薙ぎ払っちゃったのだ。

 

 こうして百対一の戦いはカップ麺ができる間もなく終わり、元の色合いに戻った百士貴がこちらへ戻ってきた。

 

「……どう?」

 

「申し分なしよ。麿の全力に応えてくれる機体、たしかに頂いたわ」

 

 百士貴の中で部下の人達が持ってきた軍装を着た雷蝶夫人は大満足といった感じだ。

 

「おひいさま、そろそろ出ませんと東郷様達との約束の時間に間に合いませんよ」

 

「あら、もうそんな時間なのですね」

 

 さよさんの言葉に私たちの目は演習場の壁に掛けられた時計に行く。

 

 その針が指しているのは10時40分。

 

 早めのお昼ご飯を考えると確かに余裕はない。

 

「東郷元知事との約束……ああ、国連から来た例の要請についてね。麿もご一緒するわ」

 

「……ん」

 

 百士貴を造った以上、雷蝶夫人が豊芦原の国民第一号になるのは内定事項だ。

 

 だったら、その代表として会議に出るのも道理だろう。

 

 そんな訳で私達は途中で軽く食べた後、会議が行われる鹿児島県庁へと足を運んだ。

 

 私達が着くころには、東郷のおじいちゃんをはじめ九州の他の知事さん、他には島津司令やウォーケン少佐もそろっていた。

 

「御足労を掛けてすみませぬな、おひいさま」

 

「……ううん。おじいちゃんもおつかれさま」

 

 皆を代表して声を掛けてくる東郷のお爺ちゃんに返事を返すと、私達は用意された席に着く。

 

「会議の前に一つよろしいだろうか」

 

「何かね、島津司令?」

 

「今川中佐、なぜ君がここにいるのかね?」

 

 島津司令は放つ刺すような鋭い視線。

 

 私ならブルってしまうだろうそれを雷蝶夫人は涼しい顔で受ける。

 

「麿はこの豊芦原瑞穂国へ帰化することにしたの。もう、おひいさまの承認も受けているわ」

 

「なん…だと?」

 

 夫人は軍の方に何も言っていなかったのか、島津司令は随分と驚いている。

 

「そういう事だから、麿はこのコロニーの市民代表としてここにいるわ。ああ、退役届は後程出すからよろしくね」

 

 唖然としている島津司令などどこ吹く風とばかりに、雷蝶夫人は優雅に口元を扇子で隠してみせる。

 

「さて、本題に入ろう。過日にアメリカを通して国連から通達があったのは皆知っておるな」

 

「ええ」

 

「あのような要求をしてくるとは、各国は何を考えておるのでしょうな」

 

 例の国連からのお話は知事さん達も快く思っていないようだ。

 

「ウォーケン少佐、アメリカ本国はこの件で何か言っておられたか?」

 

「アシハラミズホの対応に関しては、そちらへ任せると。あとは大統領個人の発言としてプリンセスへすまないと言っていました」

 

 うーん、この話ってマイケルおじちゃんに関係無くないかな?

 

 だから謝らなくていいと思うんだけど。

 

「……ミユ、きにしてない。だいじょうぶって、いって」

 

「ありがとう。それを聞けば大統領も気が休まるだろう」

 

「島津司令、帝国からは何か?」

 

「いえ、何の指示や要求も受けていません」

 

「東郷議長、どうされるのですかな?」

 

「我々に任されているのは避難民に関する自治だけだ。この豊芦原瑞穂国としての対応は、所有者であるおひいさまに委ねるべきだと思う」

 

 東郷のお爺ちゃんがそう言うと、議会の皆の目が一斉に私へ向く。

 

 幼女に任せる案件としては大きすぎるとは思うんだけど、東郷のお爺ちゃんの言う事も尤もなんだよね。

 

 となれば、このちんまい脳みそで弾き出した答えを披露すべきだろう。

 

「……ぎじゅつ、おしえてもいいよ」

 

「よろしいのですかな?」

 

『私達もコロニーで引きこもるつもりはないし、これからも地球で動くのなら仕方ないよね』

 

 東郷のお爺ちゃんが出した確認の声にひーちゃんが応える。

 

 けど、私のターンはまだ終わっていないのだ。

 

「……でも、げっかんで10ページだけ」

 

「……は?」

 

 私の言葉を聞いた議員さんや司令達は一様にポカンとしている。

 

 そりゃあそうだ。

 

 普通なら絶対にありえない対応なんだもん。

 

「それは……月に10ページだけ資料を公開する、という事ですかな?」

 

「……ん。しりあいのけんごうさん、いってた。きそはだいじ」

 

「私達の技術を一気に放出しても、地球の皆さまがすぐに理解するのは難しいですからね。まずは基礎を固めていただき、そのうえで段階的に教えていくべきだと結論付けましたの」

 

 私の言葉足らずを補足する形でミウが続ける。

 

 そう、これが私達が1日かけて考えた策だ。

 

 正直言って、こちらの技術は教えると危険なモノが多すぎる。

 

 言われるままにホイホイ差し出して、むこうが操作をミスったから世界が核の炎に包まれたなんてなったら申し訳ないもんね。

 

 そして議員さん達が言葉も出ずに沈黙が議場に流れる中、雷蝶夫人の笑い声が響く。

 

「たしかに! 文字も分からない輩に小説を書けと言うのは無理な話ですものね! それに国連からの要求を違えているわけでもないわ! 相手は技術を公開せよとはいっても、どのくらい出せと指定していないもの!!」

 

『そういうこと。これで駄目なら国連になんか入る必要ない。もしそれで攻撃されたら正当防衛で返り討ちにするだけだよ』

 

 とりあえず、こちらの答えは決まった。

 

 この世界の人達はいったいどんな答えを返してくれるかな?

 

 

 

 

 人間社会は光が当たる場所ばかりではない。

 

 人が集まれば法や秩序が照らしきれない闇が生まれるのは自明の理と言える。

 

 それは異世界の技術で生み出された宇宙コロニー豊芦原瑞穂国も例外ではない。

 

 模倣された日本列島の街外れにある地下施設、そこでは5人の人影が蠢いていた。

 

 わずかな照明に照らされた薄暗い室内は住民の情熱が生み出す熱気と汗の匂いが充満している。

 

 あとかなりイカと栗の花臭い。

 

 そんな中、人影の一つが高々と一冊の冊子を突き上げた。

 

 それはとある世界で時に賞賛を、または蛇蝎のごとき嫌悪を込めてこう呼ばれていた。

 

 ウ=ス異本と。

 

 その表紙に描かれているのは、この人工の大地の所有者であると同時に一部では生き神様と崇められている幼女のイラストだ。

 

 しかも身に着けている巫女装束がはだけており、かなり際どい恰好をしたものだった。

 

「できたぞぉぉぉっ!! おひいさまのエロ同人誌が!!」

 

「でかした、同志H!!」

 

「あんな巫女巫女幼女が助けてくれるとか、ご褒美すぎるだろ!!」

 

「ああ! 慰霊祭でみせたあの神々しい姿! あれを穢す事こそが背徳エクスタシー!!」 

 

「我等の理念は欲一文字を心に宿し、その求めるままに振る舞うことにあり! 即ち、不惑(まどわず)! 無恥(はじず)! 無思慮(かんがえず)!!」

 

「同志R! それは!?」

 

「おひいさまが慰霊祭で使っていたコップだ! ───美味い! 塩味がする!!」

 

「それ梅昆布茶の味ではないか?」

 

「くっ! 羨ましい!!」

 

「ところで今の聖典は増刷が可能なのだろうな!」

 

「無論! 社会通念など我等には関係ないわ!!」

 

 そう、ここに集いし5人の男は幼女に魅了された変態共である。 

 

 最低限の紳士の嗜みたる『イエスロリータ・ノータッチ』は弁えている。

 

 それ以外はどこぞの破戒僧の如く欲一念を貫いてやりたい放題やっているのだ。

 

 しかし、そんな宴も長くは続かない。

 

 厳重に閉じられた入り口の扉を吹き飛ばす爆音が終了の合図となった。

 

『ヘルシー太郎! ルネッサンス山田! ミシェル市山! 十文字隼人! 比留間狂ノ介!! 児童わいせつ並ビニ姫君侮辱罪デ逮捕スル!!』

 

「サツだ!」

 

「ずらかれ!!」

 

 雪崩れ込んでくる警備用のハロ達の間を縫って闇を掛ける変態共。

 

 その無駄に高い身体能力は、ハロ達の追撃すら躱すほどだ。

 

『逃ガスナ! 絶対二捕ラエルノダ!!』

 

 こうして今日も変態共と治安維持部隊との戦いは続く。 

 




忘れているようだが、ここはエロゲの世界だ!

雷蝶閣下の機体は膝丸の黄金繋がりで武者百士貴(MF改造済み)に決定。

(オマケ・変態図鑑)

比留間狂ノ介・変態共のリーダー格で元の職業は木こり。
九州戦役の際は自慢の斧で兵士級48匹と闘士級36匹の頭をカチ割って生き残った。
身体能力は無駄に超人レベルだが、究極の人造人間やヴァチカン13課の鬼札とは無関係である。

ルネッサンス山田・変態共の参謀で元の職業は医師。
九州戦役の際は両手に持ったメスで兵士級30匹と闘士級29匹を切り刻んで生存。
病院に勤めていた時から看護婦に手を出してはエロイ事をしていた生粋の変態。
なお『Dr.ジャッカル』などとは呼ばれていない。

ヘルシー太郎・変態共の技術担当でウ=ス異本を造った張本人。
元の職業は猟師で今どき珍しい弓矢で狩りをする男。
その弓の腕はすさまじく、九州撤退時には兵士級28匹と闘士級39匹を射抜いて生き残った。
もちろん某ロリコン探偵や世界を守るサラリーマンに関わりは無い

ミシェル市山・変態共を欲一念で生きるように誘導した元凶。
仏僧だが同時に尾張貫流槍術の達人でもある。
九州撤退時には兵士級37匹と闘士級28匹を貫いて血路を開いた。
間違っても『謎の食通』とは関係はない。

十文字隼人・変態共の比較的良心枠。
帰国子女でむこうでは西洋槍術を身に着けていた。
あと謎の催眠術も使用でき、『イキュラスキュオラ』と唱えると嫌な事を忘れられるらしい。
九州撤退時には両端に刃が付いた特殊な槍を振るって兵士級26匹と闘士級30匹を仕留めた。
念のために行っておくが『ライトニング・カウント』でもなければ『ザ・ワールド』のスタンド使いでもない。
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