飼い主と熱い夜を過ごしてガッツリ遺伝子を残し、ツヤッツヤの肌で満面スマイルを振りまくハリーは、遂にハーマイオニーと大人の階段を上りやがったのか!?
と、マセた連中から盛大に誤解を受け、ハーマイオニーは「んな訳あるか! ボケナスが!!」と鉄拵えのハードカバーの本をそいつらめがけてぶん投げたが、ハリーは全く気にしていない。
今はとにかくハーマイオニーにお礼がしたい気持ちで一杯だったので、九月一九日の彼女の誕生日には、気絶しそうなほど素晴らしいおみやげを渡すことにした。
ハーマイオニーの誕生日を知ったとき、ハリーは有頂天で飛び上がったものだ。
何しろノースティリスには誕生日という風習はなく、一年が終われば年齢が上がるという方式の為に、誰しもが年越しを祝う聖夜祭を盛大に楽しむのだが、個々人が誕生日を覚えていると言う地球の風習は実に素晴らしい。
具体的には、ハーマイオニーの成長を一年逐一見守る必要がないところが素晴らしい。
ハリーの中で、この恩人兼学友は確実にノースティリスでペットにする事が決定した。
前歯に関しては、誕生日を迎える数日前に矯正して小さくしたので、ハリーのように
当然ハーマイオニーは出っ歯というコンプレックスを大変気にしていたので、ハリーの提案には喜んで飛びついたし、無事成功した際は思いっきり抱きしめてくれたほどである。
ぺったんこボディは実に最高でおじゃるな! 飼い主も大興奮間違いなしでおじゃる!
……などという邪欲を隠しつつ、ハリーは「前より可愛くなったハーマイオニーなら、きっと良い人がすぐ見つかるね!」と褒めちぎった。
ただし、その良い人は先行入力済みだ。今後は彼女の食事に
ハリーもハーマイオニーが好きなので嘘ではない。しかしラブでなくライクだ。嫁の一人になって欲しいだけで、ハリーの妻になって貰って独占したい訳ではない。というかハリーは飼い主の妻だ。夫になる気はない。
ハリーはハーマイオニーの身体が目当てなのであって、心触れ合う新婚さん的な関係は望んでいない。そういうのは飼い主とやりたいのだ。
ハーマイオニーとは、サイバースナックとかポップコーン感覚でお手軽にお互いをつまめちゃう、気持ちいいことフレンズな関係でいたいのだ。
普通に最低である。
まぁ、それとは別に純粋な感謝や友人としての関係も築ければ言うことなしだから、誕生日プレゼントは奮発した。
この『気絶しそうなほど素晴らしいおみやげ』なるアイテムは、ノースティリスでお手軽に友好度を稼げるアイテムの中でも上位の代物であるが、このアイテムの何が素晴らしいかと言えば、
ハリーも飼い主と出会ってすぐ、これの最上位である王様が羨むほどのおみやげを貰ったが、その中身の天球儀は触れた瞬間にイルヴァの各地や宇宙さえ視点を移動してくれるものであったので、ハリーは存分に宇宙の旅を仮想体験することが出来た。
そして宇宙に出てすぐ、イルヴァは冒涜的な神話生物やら旧き神が、神々の覇権を狙って日夜侵攻されていることも明らかになった!!
イア! イア! SANチェーックッ!!
そりゃあ大地や癒し、豊穣といった神々が一丸となって積極的に星を潤しているだけあって、どんなに隕石が降り注ごうが核汚染が世界全土に広がろうが大した傷にならない星とか、冒涜的な生物や愉悦全開な悪神共には垂涎物の本拠地だろう。
おまけに生命力も抜群で、どんな生物でも埋まらない限り三日で復活するとか最高である。
ハリーはとんでもねー連中にイルヴァが狙われていると言う事実に恐れおののいた。
……が、イルヴァは過去にSANチェック不可避な連中による大規模な侵攻があったものの、イルヴァの神々が食い止めたことがクミロミ様から明らかにされたし、イスの偉大なる種族とかも普通のモンスターとして熟練冒険者に狩られているので、そこまでの脅威ではないそうだ。
そもそもノースティリスの連中はどんだけ精神が蝕まれても再起できるので、それで死んでも這い上がれば良いだけだ。ユニコーンの角もあるし、何なら温泉に浸かってもお手軽に回復する。
SANチェックなど、既にSAN値ゼロで自動失敗が確定しているガンギマリ冒険者共の前には無意味である。
飼い主などに至っては、冒涜的神話生物の親玉が来てくんねーかなーと日夜宇宙からの外なる神々の到来を待ちわびている始末だ。うん、イルヴァは絶対に安全である。クミロミ様もこれにはご満悦だ。
それはともかく、気絶しそうなほど素晴らしいおみやげを昼食の折に渡したら、本当にハーマイオニーが箱を開けた途端に泡を吹いて気絶しかけた。
中に収められていたのは幾ら書いてもインクが切れたり、インクで手や服が汚れたり色移りもしない魔法のガラスペン(クリスタル製彫刻済み三色セット)。
魔法界最高の廃盤になった魔法の学習書(自動で勉強したい内容が学習書に記される上、自動更新されるので一生勉強できる)という豪華二点セットである。
これはハリーも欲しくなる逸品だ。正直見なきゃ良かったと思うレベルである。しかし、このおみやげアイテムは自分で買って開けても何の効果もない。あくまで他人から渡されないと効果を発揮しないアイテムなので、諦めるしかなかったりする。
いやまぁ、飼い主に強請れば幾らでも貰えはするのだが、おみやげを貰うのは年に一度、聖夜祭のときだけというルールを決めているので我慢するしかない。
なにより自分で渡しておきながら相手から盗むとかギャグにもならないので、表向き満面の笑みを作ってみせた。内心は奪い取りたい一心だったが。
「受け取れないわ!」
対するハーマイオニーは涙目である。そりゃあアドバイスはしたが、そんなものは出っ歯の矯正だけでおつりがくる。その上こんな非常に高価な代物を贈られても困るのだ。
具体的な価格を言うと、ガラスペン一本で
学習書に至っては、プレミア価格でそこら辺の役人の年俸が五年分吹っ飛ぶ!!
流石ハリーだ! 一〇万ドルPON☆とくれたぜ!
などと喜べるほど、ハーマイオニーの神経は図太くない。何事かと遠巻きに見ていたスリザリン生や、その中でも特に裕福なドラコですら、ハリーの贈り物に目ん玉引ん剝いていた。価値の分かる連中からしたら、とんでもないレベルの贈り物である。
ロンなどは、後でガラスペンの価格を調べてぶっ倒れたほどだ。我が家の貯金がガリオン金貨数枚と銅貨に銀貨という有様の大家族の息子からすれば、ハリーのドラ息子っぷりは天地がひっくり返るレベルの衝撃であった。
「ハリー、君の保護者って何者なんだい……?」
まさか僕の家と同じぐらい凄かったりするのか? と、スリザリン生にも拘らずドラコが皆を代表してハリーに質問する。普段なら食事中に席を立つなと言うところだが、グリフィンドールの監督生であるパーシーも気になったことを聞いてくれたので黙認した。
「うーん。どんなって言われても。凄い人だとしか」
「いや、それは分かるんだ。具体的には、どういうところに住んでいるとか、俗な話だが、どれぐらいの資産かとか」
「えっと。ホグワーツよりは小さいお城に大家族で住んでて、実家で魔法を一回唱えるだけで、この大広間の床が金貨で隙間なくぎっしり埋まるような人かな?」
嘘は何一つ言っていない。言っていないがノースティリス基準なので、一般人からしたらスケールが理解不能なレベルである。
一体どんな大富豪や王族なのだと誰もが興味津々だ。ハリーとしても飼い主に関して自慢したいが、同時にそこまで深く語れるような存在でもないので「そういう訳だから、お返しとかは気にしなくて大丈夫だよ」とハーマイオニーに笑うに留めた。
今後は財産目当てでハリーに群がる奴も出てくるだろうが、ハリーとしてはお近づきになるのを許しても銅貨一枚とて恵んでやる気はない。
むしろお前たちが寄越せと笑うだろう。ティリス民としては当然だ。金を恵んでくれと集る乞食には、その場で金を渡した後に殺して巻き上げるぐらいは常識的な対応である。
ハーマイオニーも「一生大事にするわ」とぎこちなく笑うに留め、同時に思う。
子供をペット扱いする権力ある金持ちって、控えめに行ってもクッソ性質の悪い屑ではなかろうか? と。
◇
そんなこんなでひと月が過ぎて、次に迎えるのはハロウィンだ。あちこちに飾り付けられるカボチャ、かぼちゃ、南瓜、……ハリーの精神は狂気に蝕まれ、核爆弾のスイッチを連続プッシュしたくなった……!!
「爆破、一掃……核を、いいや、メテオと終末を……いっそ妹の日でも良い」
ホグワーツの皆が「楽しみだなぁ」と笑う中、ハリーの精神は限界だった。魔法界の連中は本気で頭がおかしいな!?
カボチャだぞ!? デストロイ不可避な畜生モンスターの極北たる、パンプキン野郎だぞ!?
こいつに泣かされた冒険者たちは数知れず、飼い主も変異治療のポーションや失耐性ポーションを口内にダイナミックシュートされて、良性変異や属性耐性を幾度となく失った苦い経験を持つぐらいには糞忌々しいモンスターなのがカボチャである。
そんなカボチャが視界の至る所に飾り付けられているとか正気じゃない。ユニコーンの角のストックさえ、当日になれば危うくなってきた。
飼い主でさえ、この件を相談した時には本気で嫌そうな顔をしてユニコーンの角をありったけ用意してくれたが、既にストックがピンチだ。
おいコラ教師共パンプキンを被るんじゃねえ頭蓋爆散すんぞごるぁ……!!
ハリーは決めた。仮病を使おう、と。
今日一日は、お腹の調子が悪い事にしてトイレに引きこもるのだ! それしかない!!
これで大広間に行った日には、かぼちゃ頭の教師やらパンプキン尽くしの教師と生徒がお出迎えする悪夢めいたエンカウントが待っている。
カボチャジュースもケーキも別に嫌いではない。カボチャそのものは甘いし好きだ。そもそも食べ物の好き嫌いなんてない良い子なハリーだ。
しかし、あのカボチャモンスターを彷彿とする南瓜面だけは駄目だ!!
あの悪趣味な目と鼻と口を象った南瓜が大広間に溢れているだけで、ハリーは特に威力もなければストックもない隕石衝突魔法を駆使してホグワーツを更地にした後に、核で徹底的に焼き払う事も辞さない。
『カボチャ死すべし、慈悲はない』は、ノースティリス冒険者共通のモットーである。
ハイクを詠む暇さえ与えず、カイシャクさせるべし。
「ごめん、今日は休ませて……」
「お、お大事にね……」
「ハリー……どうしても辛いなら、マダム・ポンフリーの所に行くのよ?」
「ありがとうロン、ハーマイオニー」
但しポンフリーの所だけは絶対にノゥ!! あのBBA、大広間のハロウィンパーティーにも万が一が有ってはいけないからと保健室に待機しつつも、全力でハロウィン気分を味わうために、大広間以上に保健室をパンプキン一色にしやがった!!
イスの偉大なる種族が可愛く思えるぐらいにSAN値がガリガリと削られるだろう。枕のクッションからベッドまでオールパンプキン! ハリーの精神は死ぬ!!
なので、本日は終始トイレに引きこもる。生まれて初めての便所飯だ。妹が愛を込めて作ったお弁当と飼い主の料理を今日だけはがっつり頂くのだ。
ダイエット? 流石に明日から頑張るわ精神が持たん。
今日は楽しくボッチ飯なう!!
◇
同時刻、大広間は阿鼻叫喚の渦に包まれた。ホグワーツにトロールが入り込んだというのである。生徒たちはパニックに陥り、ハロウィンどころではなくなったが、もしもこの場にハリーが居れば「なんだトロールか」と一人魔法でラム酒に変えた水を味わいつつ、パンプキン面したケーキを怨念でぐっちゃぐちゃに潰してから食していただろう。
ノースティリスでは街中でモンスターが現れるなど日常茶飯事だ。
井戸水を飲んでたらモンスターが出てくるし、エイリアンに寄生されて街中に溢れかえることも有るし、魔法書を読んでいたらしくじって、形成された魔力の渦からモンスターが喚びだされたりと、とにかく何処からともなく現れたモンスターが、気が付けば暴れまくっているのが平常運転なのだ。
しかも、運が悪ければドラゴンやら巨人やら、キューブという増殖モンスターの中でも最悪なのが出てきて街の人間がジェノサイドされることもある。というか頻繁に発生する。
なので、トロールが出たと言われても正直普通過ぎて反応に困る。
ああ、何処ぞの馬鹿が図書室の禁書漁って、解読にしくじったのかぐらいの感覚だ。
但し、この場にハリーはいない。ハリーが居るのは地下のトイレだ。
ちなみにトロールが出現したのも地下である。
つまりはトロールのダイナミック☆エントリーだ……!!
「くっさ!? おいこらマジふざけんじゃねえぞ下水管が破裂したのかと思ったわトロールかよ!? よりによって何で一番綺麗な便所選んだのにお前来んだよマジ舐めてんのかハリー君は今から優雅なボッチ飯タイムなんだぞ分かってんのかてめぇ!?」
対してトロールは殺意MAXである。事故とか迷い込んだとかそんなんじゃあ断じてない。きっちり闇の魔法でも特に危険度の高い『服従の魔法』がかかった状態で全身鎧を纏い、殺意マシマシ右手には棍棒じゃなくて鉄塊と称すべきレベルの大剣まで装備していやがった。
「ははーん? さてはおめー、クィレルの手駒じゃな?」
と、なーると奴は今頃被害者ぶってハリーのいるここに教師が近づかないようにしているか、逆に教師連中にハリーを探させつつ、自分はフラッフィーが守っている扉に行っている事だろう。
まぁ、クィレルに傷が反応したことはスネイプに伝えているし、スネイプもダンブルドアに伝えているので守りは盤石だ。
じゃあ何でとっととクィレルを始末しねーんだと言うと、奴の背後を明らかにする為で、所謂釣り餌だ。ハリーとしても、トム君の分霊箱をシンパが回収している可能性も十分あり得る為、これには大賛成した。
トム君は何だかんだシリーズ物のお約束で、何時まで経っても復活するボス並みにしぶといので叩くなら一網打尽にしておきたい。
さて、それはさておき今はトロールだ。残念ながら装備は全て粗悪品質だったが、まぁ大義名分を持った殺人可のモンスターというだけでも魔法界では初エンカウントなのでテンション上げ上げだ。
ついでにパンプキンでストレスが溜まっているので、こいつで鬱憤を晴らす。
「来いよトロール! 完全フル装備バフ増し増しでかかって来い!!」
無駄にカッコいいマトリックス的カンフーポーズで挑発するハリー・ポッター。非武装だからって弱くないのがノースティリス冒険者だ。
ステータスを上げた者が上を行き、法も道徳も物理でねじ伏せるマッポー世界の住人は伊達ではない!
ノー・カラテ! ノー・ティリス民!
◇
「ポッタァァァァぁぁぁ!! マイ・ステュゥデンッ、ポッターに何してくれとんじゃドぐされがぁぁぁぁぁ………………!!」
しかし、ポーズを決めた瞬間にホグワーツ一ハリーが頼りにする教師、スネイプがダイナミックにエントリーだ!!
西部劇のガンマン宜しく、目にも止まらぬ速さで引き抜かれた杖が無詠唱で
大剣が宙を舞って床にぶっ刺さるより早く、試験管に封入された『生ける屍の水薬』がトロールの顔面に直撃し、トロールは一瞬で意識を奪われたが『服従の呪文』が高度だったのか、脳が眠っても操り人形状態で戦闘続行。
しかし、そんなことは織り込み済みよとばかりにスネイプは杖を一振りしてトロールを吹き飛ばし、その衝撃は壁の半分をトロールの身体がめり込んで再起不能にさせた。
ハリーの見せ場? そんなものはない。
スネイプ先生の独壇場だ。というか武闘派過ぎるぞスネイプ先生。強すぎるぞスネイプ先生! カッコいいぞスネイプ先生でもキャラが違う!!
“えぇー……?”
これにはハリーも大困惑である。無駄に決めたカッコいいポーズが凄まじくシュールだ。
よもや自分が噛ませポジになろうとは夢にも思わなんだ。
宙を舞う大剣が床に突き刺さると同時にトロールが沈み、刀の血振りをするように杖を薙いで懐にしまう歴戦の戦士スネイプ先生。
正直、この作品の主人公はこいつで良いんじゃないかな? って思うレベルのカッコよさだ。ハリーが攻略済みじゃなかったらTSしてスネイプ先生のヒロイン不可避である。
なので、ちょっとサービスしてスネイプ先生にお礼を言いつつ抱き着いてやった。
これにはスネイプ先生も感無量で内心大歓喜ある。
ついでに駆け付けた先生方にも、スネイプは迅速にご説明。しかしてハリーは気分が悪いことを理由にパーティーを欠席していたので、ハロウィンでパンプキンなナイトメアの保健室にご案内である。
ハロウィンヘッドでオレンジなマグカップに入った、あったかいカボチャスープを素手で握り潰したくなった。
聖夜祭を中止にしたがっている冒険者の気分が、ハリーはなんとなく分かった。
なんで自分一人が苦しんでんのに、皆はしゃいでんだよぶち殺すぞ、と。
“ハロウィンなんて、滅べばいいのに”
ベッドの中で、ハリーは悪夢にうなされ続けた。