僕の飼い主はティリス民!   作:c.m.

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クミロミ様の秘密の経験の数が確保できないので逃げてきました(自白)

※2024/12/16誤字修正。
※sk005499さま、たまごんさま、赤頭巾さま、誤字報告ありがとうございました!


05 人を褒める時は大声で! 悪口はもっと大声で!

 クッソ嫌みったらしいボンボン坊やなドラコとその取り巻きが去った後、当然コンパートメントはドラコの悪口に終始した。

 

「ハリー、君はずっと行方不明になってたから知らないのも無理ないけど、あいつの父親は闇の勢力に尻尾を振って、例のあの人が負けた途端『服従の魔法で操られていたんだ』って行って戻って来たんだ」

 

 あいつの家はとんだ蝙蝠だ。マルフォイ家の当主は、絶対に『死喰い人(デスイーター)』の構成員として、例のあの人に忠誠を誓っていたに違いないとロンは罵り、ハリーは内心腹筋が捩じ切れそうなレベルの爆笑を堪えていた。

 

 死喰い人と書いてデスイーター……デ ス イ ー タ ー ! !

 ♰死  喰  い  人(デ ス イ ー タ ー)♰ ! !

 

 うっわー! もう、うっわーとしか言えない!!

 トム君ちょっと拗らせすぎじゃない!? いや知識で知ってたけど実際他人の口から聞くと超ウケるんですけどー!?

 ねえカッコいいの? それがカッコいいと思っちゃってたのトム君!? 思いっきし一四歳特有の病気にかかって、それをいい歳こいたおっさんまで拗らせ続けるとか!

 

 拗 ら せ 続 け る と か ! !

 

 悲惨だわー! ボッチ拗らせちゃった果てのおっさんのネーミングセンスが悲惨だわー!

 トム君の手下とか誰もネーミングセンスについて言及しなかったの!? 一四歳サークルの集まりで突っ走っちゃったの!?

 うっわ、もうこれ哀れとかそういうレベルじゃない件! こいつら一旦冷静になってベッドとか床にのたうち回って人生振り返るがいいや……って思ったけど、振り返る事すらできなかった末路が、超絶激寒で痛々しくカッコつけまくった一四歳サークル誕生秘話だったんですねプギャー!

 

 しかもあれでしょ? こいつら腕に共通のシンボルマークの入れ墨とか入れちゃってたんでしょ!? うわー! 一四歳センス大☆爆☆発! 芸術は爆発だってジャパンでは高名な芸術家が言ってたそうだけど、これもううっかり手が滑って核爆発させちゃった感じじゃね!?

 今日日子供向けヒーロー番組の悪役集団だってやらねーわ! そんな箔付け!

 

 いい大人が思いっきし悦に浸ってドヤ顔で悪の秘密結社名乗ってるのが目に浮かぶわドラコ君かわいそー! 実の父親が一四歳病患者とか超かわいそーでマジ涙出そうなんですけど!

 爆笑の涙で大洪水っすわこいつら魔法唱える時とか、絶対ノリノリでポーズとか決めてたんだぜガリオン金貨一枚賭けてやんよマジで!

 

 と、そんな感じでぷるぷるしてたハリーだが、笑いを抑えていたと知らないロン達は、横で空気になってた肥満体の子供、ネビルと同じくドラコが『例のあの人』の部下の子供だったのではないかという潜在的な恐怖に、微かに震えていたと勘違いしたらしい。

 

「大丈夫よ、ハリー。貴方は例のあの人だってやっつけたんだから、自信を持って」

 

 もうファーストネームで呼び合う仲になったハーマイオニーが、ハリーに優しく囁いた。グッドな笑顔と声だ。その仕草に一点アップしよう! 飼い主との気持ちいいこと3Pが楽しみでおじゃるな!

 

「そうだよ、ハリー! 君が大きくなったら、きっと凄い魔法使いになるよ!

 

 残念だがロン、ハリー・ポッターはもう肉体的に成長する気はないのだ。というかこれ以上成長してたまるか。一体どうして祝福された鈍足ポーションは下限年齢が一二歳なのだろう? 八歳……いや、せめて一〇歳が下限年齢なら、ハリーは最高のショタっ子として八〇点ジャストを狙えた筈なのに!

 

 ……と。少々悔しさで歯がゆくなったが、今度はそれが自らを恥じてのものだと皆が勘違いしてくれた。四人はとにかく良い方向に勘違いしてくれるので、ハリーにとっては大助かりである。その一方で、ドラコへの評価は横柄な態度も相まって、終始散々だったが。

 

“他人の評価が下がって自分の評価が上がる! いやー愉快愉快”

 

 気を取り直した途端、内心愉悦全開な歓喜の声を上げながら、ハリーはそろそろかと時計を見た。魔法界の時計はどうにも分かりづらいが、ここではそれが普通なので慣れるしかない。

 ホグワーツは、すぐそこまで来ていた。

 

 

     ◇

 

 

 かくしてハリーは皆と列車から降り、小船に乗ってホグワーツに着けば、入学時の恒例行事たる、新入生の各寮への組み分けである。

 ホグワーツは全四種の寮からなり、組み分け帽子なる魔法の帽子が生徒の特性・資質に応じて寮を選ぶ。

 

 叡智を求めるならレイブンクロー。

 誠実ならハッフルパフ。

 大望を抱くならスリザリン。

 勇敢ならグリフィンドール。

 

 より細かく解説することも出来るが、大まかな点を押さえるならこうである。

 ではハリーはどの寮を歩むのかと問われれば、これは難しい。

 

 レイブンクローは成績優秀な知性溢れる者が集うが、別にそこに入ったからといって特別な蔵書が読めたり、研究室が与えられるといった特典がある訳ではない。

 

 ハッフルパフは真っ先に外れそうだが、あの寮生は勤勉・忍耐・献身・慈愛・寛容といった特徴を有しており、飼い主のペットとして末席を汚すハリーの自負心と照らし合わせれば、入る可能性も十分にある。

 

 スリザリンは狡猾さを磨くという点ではそうであるし、ハリー自身目的の為に手段を選ばないノースティリスに魂を汚染された畜生だという自覚もあるが、あそこはリーダーシップを磨き、真の友を得たいなら入るべき寮であるから、ハリーはどちらも当て嵌らない。

 

 最後のグリフィンドールはといえば、勇猛果敢で騎士道精神を抱く者という特徴がハリーに合わない。しかし、反骨心・度胸・大胆奔放という部分はノースティリスで長い事生活していたハリーには噛み合っていると言えばそうなのだ。

 

 結論を言えば、どの寮もピッタリとは嵌らないが、強引に押し込めるぐらいの余地はある……のだが。

 

「アズ……っ!? ……!?」

 

「おい……いま、アズカバンって口にしかけなかったかあの帽子」

「い、いや空耳だろ……? だってハリー・ポッターだぞ? あの『生き残った男の子』だぞ?」

 

 周囲のざわめきと共に、組み分け帽子を被ったハリーは「成程そう来やがったか」と帽子に対して殺意を抱いた。

 しかし、ハリーは今日の日の為にカルマをMAXまで高めている()()である。

 しかも、ノースティリスでは飼い主にしつこく寄って来る癖に無視とかかます、グウェンとかいう舐め腐った無邪気な少女を百回ぶっ殺し(リョナっ)たことで得た称号『まさに善人』によって常人のカルマ上限からプラス二〇された上で、四〇という最大値を誇っている(常人のカルマ上限は二〇)。

 

 近づいてくるだけの何の罪もない無邪気な少女を百回血祭りに上げるのは、誰がどう考えても善人ではないが、何回殺そうとカルマが下がらない以上罪ではない。

 そしてカルマの最大値を維持している以上、ハリーはパーフェクトに善人なのだ。大事な事なのでもう一度言おう!

 たとえ無邪気な少女を百回ぶっ殺し、死体を人肉コロッケにして食そうとも!

 道行く老人とか乞食とかを日夜射的の的にして金品を巻き上げようとも!

 疑う余地なく素晴らしく善人なのだよ、ハリー・ポッターは……!!

 

 よって、組み分け帽子はどっからどう考えても倫理的にアウトなハリーをアズカバンにぶち込めない。どう考えてもぶち込んだ方が正解なのにぶち込めないのである。

 なので仕方なく、そして心底嫌そうな顔で組み分け帽子は咳払いして今のは間違いだったとアピールしつつ、「難しい、難しい」と唸り続けた。

 

 ぶっちゃけ、組み分け帽子からしたらどの寮にも入れたくない。ていうか誰だよこんな倫理観狂った糞餓鬼を入校名簿に載せたのは……と検索したら、糞餓鬼が生まれた時点でダンブルドアが名簿に載せていやがった。

 組み分け帽子は仕事じゃなかったら確実にファック……! ファーックッ!! と連呼しつつ唾吐いたに違いない。あとダンブルドアは首にしろとも思った。

 

 こいつを入校させるぐらいなら、ヴォルデモートをもう一度入学させた方が……と考えて、直接的な被害を計算した場合、後者の方が問題だと言う事実に愕然とした。まじかよ。

 

 そして、かれこれ一〇分ぐらい唸り続け、いい加減後ろ閊えてんだよ早くしろよという周囲の視線も相まって渋々、本当に渋々ハリーの寮という名の生贄を選出した。

 

「グリフィンドール……!!」

 

 渾身の勢いで叫んだのはやけくそである。あの寮の寮生は勇猛果敢でアグレッシブだから、何だかんだ上手く乗り切ってくれるだろう。期待しているぞ寮生という名の犠牲者達よ私は悪くないのだと組み分け帽子は口笛吹きつつ責任転嫁した。

 

 そしてそんな裏事情を全く知らず、生贄の子羊たちは無邪気に「あのハリー・ポッターが来た!」と快哉を叫んでいた。知らないという事は幸福である。未来の暗い若者達よ、強く生きるのだ。生きても危機を乗り切れる保障は出来ないけど。

 

 

     ◇

 

 

 晴れてアズカバン行きを免れてグリフィンドールの寮生となり、ターゲットとして選んだダンブルドアの挨拶に形式的な拍手を送りながら「いつか絶対飼い主の合成素材にしてやる」と暗黒微笑を浮かべていたハリーは、先のアズカバン発言から、飼い主の経歴を思い返した。

 

 ハリーの飼い主はイェルス人の遺跡荒らしであり、ノースティリスにやってくる前からから一角の冒険者だったが、イエル王国で最高に好みな幼女(リドリー)(当時三歳)が、元老院の傀儡として御しやすいだろうという理由から、王位継承者候補に選ばれることを察知して、冒険者家業をお休みして幼女(リドリー)にお近づきになる算段を立てたらしい。

 

 飼い主は持ち前の後先見ない行動力を駆使し、イエル国内の士官学校、アテランに飛び入りで合格したばかりか飛び級で二年以内に首席卒業。

 以後は職業軍人として頭角を現し、近衛にまで上り詰めて幼女姫(リドリー)に忠誠を誓いつつ、幼女姫が『黒檀の玉座』につき、女王になる為に元老院をはじめとした政敵の暗殺と内部粛清をノリノリで敢行。

(因みに粛清自体はリドリーは飼い主が居なくても裏で手駒を操ってやるつもりだったらしい。畜生同士お似合いだわ、おめーら)

 

 以降、権力基盤を固めて自由都市とか国家を鬼畜幼女王(リドリー)様の号令一下、軍隊率いて蹂躙、蹂躙&併呑。鬼畜幼女王(リドリー)様とはそれなり以上に上手くやって地位も得ていたのだが「やばいと思っていたが、遂に性欲を抑え切れなくなった」そうだ。

 

 飼い主は鬼畜幼女王(リドリー)相手に気持ちいいことした挙句に固定アーティファクト扱いの幼女王(リドリー)の★付きパンツまで取ろうとしたが、気持ちいいことに夢中で周囲の警戒が疎かになり、結局大規模包囲されてとっ捕まったそうである。

 因みに幼女王(リドリー)に手を出していた最中の飼い主の自己弁護はというと。

 

「いや、だって私の異名ってば『秩序をもたらす右腕』じゃん!? これリドリーちゃん直々の命名だから、つまりは私が気持ちいいことリドリーちゃんにしちゃうのは、リドリーちゃんが昂ぶっちゃう身体を抑えきれずにマスターなベーションを我慢出来なかったってことだから!

 これは私じゃなくてリドリーちゃんの右手がいけないだけだから! ちょっと薄い膜が破れちゃうだけでノーカウントだから!!」

 

 うん、これ以上なく最低かつ最悪なレイプ魔だわ地獄に落ちろよ地獄に飲み込まれても復活するのがイルヴァの連中だし、数え切れないレベルで落ちたらしいけど、それはそれとして地獄に行って来いマジで! というのがハリーの感想である。

 

 結果、飼い主は主能力がみるみる減少する『収容所』にぶち込まれ──しかもご丁寧に古の巨人すら拘束する固定アーティファクト★巨人の足枷で拘束された上で──イエル最新の科学技術によって各種スキルさえゼロ&忘却させられた糞雑魚カタツムリ状態になったところを、ペットの少女ちゃんが救出してくれたお陰で足枷外して脱走に成功。

 ノースティリスに密航して渡ろうとしたら、なんか嵐に遭遇して海に落ちたとか笑って語っていたが、色んな意味で最低かつ狂った経歴である。

 

 ちなみに回顧した本人はと言えば。

 

「もうちっと各種能力上げて、国家権力とか相手にならねーレベルになるまで我慢すべきだったわ。性欲って怖いねってか、やった事への後悔?

 ある訳ねーじゃんリドリーちゃんの具合マジサイコーでした! あそこもロイヤルとか最強かよもう一度味わいてーなーマジでな~!

 イエルから依頼こねーかなーマジで! 一晩ポッキリで敵国一つ滅ぼす契約でどう? って手紙何通もイエルに送ってるんだなー実は今でも!

 でも多分大使館が悪戯だって思って止めてるんだろうなー今の私だったら全世界相手でも余裕なのになー世界征服でイエル千年王国とか余裕なのになー全くよー」

 

 全く反省の色がなかった。清々しいまでの強姦魔発言には、ハリーの横で清聴していたクミロミ様もクソデカ溜め息不可避である。表情も実に()()()()()()()感じであった。

 ちなみに飼い主がイエルで再起を図らず、ノースティリスにやってきた理由は、イエルは信仰を禁じられた国だからである。つまり。

 

「はぁ!? 何このめっちゃ好みの男の娘(クミロミさま)が信仰できねーとかマジ狂ってんなイエル! つか私は今までこんな股ぐらイきり勃つ神様の情報伏せるような国に居たのかよ!? かーっ、やってらんねーわイエル王国!

 もう私ノースティリスの子になるもんねー! そんでクミロミ様とねちょねちょ出来るまで強くなっちゃうもんねー!」

 

 と……こんな感じでノースティリスとか言う人外魔境の大陸に飛び込んだらしい。馬鹿だわこいつ。イルヴァで一番の馬鹿だったわ知ってた。

 ちなみにそんな経緯でノースティリスにやって来ておきながら、飼い主はコロコロと信仰を変えて全ての神様達からの恩恵を全部受け取ってから、最終的にクミロミ様を信仰したのであるが、冒険者がコロコロ信仰を変えること自体は、神様達(全七柱)は当の昔に諦めている。

 

 一々神の化身やら固定アーティファクトやら用意するのは骨だが、冒険者達が強くなればなる程、より多くの供物を捧げてくれる訳であるし、最後にはいずれかの神を信仰するのだから、「まあいいや」という感じなのだそうだ。情報ソースはクミロミ様本人ならぬ本柱。

 

 蛇足だが、この最終的な信者獲得において、ぶっちぎりで不人気だったのは機械の神たるマニである。不人気の最大の理由は恩恵のショボさらしく、流石にこれは不味いと思ったのか、飼い主が中堅冒険者になってぐらいからは、恩恵も多少まともになったのだとか何とか。

 

 ちなみに飼い主は一番最初の最も恩恵がショボかった頃にマニ様を信仰し「うっわ、この神使えねぇ……」と固定アーティファクト貰ってからとっとと鞍替えしたらしい。

 

 

     ◇

 

 

 余談が過ぎたので、ノースティリスからハリー・ポッターの物語に戻ろう。

 今まさにハリーの目の前には、先程まで空っぽだった皿にご馳走が並んでいる訳だが、他の新入生達のように豚のようにがつがつと頬張ることはなく、少量のサラダやスープを食するに留めていた。

 

「ハリー、それだけで良いの?」

 

 そう問うのは隣に座るロンであり、ハリーは苦笑して応えた。

 

「うん。ダイエット中なんだ」

 

 途端、その言葉を耳にした新入生女子一同はぴたりと手を止めた。ハリーは見るからに線が細く、色白で小柄である。顔立ちこそ少し大人びた雰囲気が窺えるが──鈍足のポーションで一二歳になっているから当然だ──それでも童顔で愛らしい。下手な女子より愛らしい。

 よくよく観察すれば髪も丁寧に梳いているのかサラサラで、桜貝のような爪も入念に手入れされている。少なくともぼさぼさ髪のハーマイオニーより遥かに愛らしいと男共は感じ、何だかんだ女の勘が働くハーマイオニーから、かぼちゃジュースをぶっかけられた。自業自得である。

 

「今だって十分痩せてるじゃん」

 

 そう漏らすのはロンである。ハーマイオニーよりスリムなんじゃね? などといらんことを考えたので、ハーマイオニーの対面に座っていた彼はかぼちゃパイを顔面にクラッシュされた。インガオホー。

 

「そ、そんなことないよ」

 

 そう恥ずかしげに答えるものだから、一層保護欲がくすぐられる。なんかこいつやばい。危ない世界に行きそうだと感じた男共は、一先ず食事に集中する事にした。

 が、ハリーからすればそれは半分本音で半分嘘である。

 綺麗になる為の努力は欠かさないが、主能力を上げる為のハーブは飢餓~空腹の状態で摂取するのが最も効率がよく、今大量の食事を摂取する訳には行かないし、何より目の前の料理では食べたところでその手の経験値が入らないのも分かってしまったので、余り手を着けたいと思わないのである。

 

 どうせ食事を摂るのなら、これまで通り四次元ポケットに飼い主がハーブの合間に食べると良いと用意してくれた、至高の料理を食べる方が経験値も入って有意義だ。

 

 なので目の前のご馳走はお預けである。お腹が鳴っても絶対に食べない。美容と強さに必要なのは、耐え難きを耐える忍耐なのだ。

 

「ここの女子はハリーを見習……」

 

 最後までロンが言い切ることは出来なかった。

 

 

     ◇

 

 

“さて”

 

 ハリーはミネラルウォーターの入ったグラスを一口上品に呷り、貴賓席に連ねる教師の中から、目的の人物を探し当てた。

 

 名をセブルス・スネイプ。魔法薬の教師だとハリーの視線の先を追った、グリフィンドールの監督生にして七人兄妹の三男であるロンの兄、パーシー・ウィーズリーが告げたが、ハリーもその名前と顔、そして何より隠れた経歴を知っていた。

 

“まさか、こんなにも早く出会えるとはね”

 

 魔法族の純血思想を標榜していたが為に、玉石混交であった死喰い人(デスイーター)の構成員にあってヴォルデモートの信認篤く、ダンブルドアがヴォルデモートに対抗すべく結成した『不死鳥の騎士団』へのスパイ活動に従事していた、重鎮にして実力派構成員……そして。

 

“『ヴォルデモートを倒す者が、七月の終わりに生まれる』という予言をヴォルデモートに密告した男……僕の、パパとママの仇……!”

 

 許すまじ。あな憎しやセブルス・スネイプ……自分から愛しい家族を奪ったというその事実。それが結果としてハリーを飼い主に引き合わせるきっかけとなったのだとしても、実の両親を殺されたことへの憎悪が消える筈も無い。

 

“お前には死など生温い……必ずやノースティリスに連れ帰り、サンドバッグに吊られたままシェルターの中で永劫メシェーラに蝕まれ続ける無間の地獄を味わ……っ、!?”

 

 血液が沸騰しそうなほどの憎悪にあって、一瞬にしてハリーの熱が冷えた。

 

 額の傷が疼く。スネイプ同様、他にも隠れたヴォルデモート信者が居るのではないかと他の教師達にも二秒ずつ視線をやる中、悪趣味なターバンを巻いた男を注視した途端にハリーの額の傷が疼いたのだ。

 ハリーの母親の加護が、こいつは危険だと教えてくれたのである。

 すなわち、あのクィリナス・クィレルという名の教師──パーシーが教えてくれた──は分霊箱を所持しているか、闇の勢力の中でも特別ヴォルデモートに近かった存在のいずれか、或いは両方と見るべきだ。

 この日のために*鑑定*の巻物のストックは大量に用意していたが、流石に距離がありすぎるし、他の教師の目もある。

 今は雌伏の時だと己に言い聞かせて、ハリーは新入生の為の行事の進行に身を委ねることにしたが、同時に当惑せざるを得なかった。

 

“ママ……あいつは、僕にとっては危険じゃないってことなの?”

 

 再度強く、睨み殺せそうな勢いでスネイプを注視したハリーだが、クィレルのように額の傷は痛まない。何度見ても、クィレルのような反応を傷は起こしてくれないのだ。

 

“トム君……ヴォルデモートは、間違いなくセブルス・スネイプを信用していた。

 奴の記憶では、ルシウス・マルフォイをパトロンとして、純血主義者の貴族として政界への影響力も含めて一定の地位にはつけても、完全には信用していなかった。それだけの猜疑心が備わっていながら、セブルス・スネイプは信用に足ると踏んでいた。

 だけど、もしも、それが間違いであったとしたら? ヴォルデモートは、その実節穴だったとしたのなら……”

 

 いいや、今は自分の気持ちを整理する時だ。ハリーの中のヴォルデモートの記憶にクィリナス・クィレルが無かったように、全てを脳内の情報や断片的な結果で判断するのは早計という物だろう。

 まだ慌てたりする必要なんて何処にもないと、ハリーは意識を学校生活に切り替えた。

 

 クィディッチなるスポーツにハリーは興味なかったし──空飛ぶ箒は楽しそうだとは思ったが──森や学校の三階といった立ち入り禁止区域の注意事項も、理由を深く知りたいとは思わない。

 どうせルールなんぞ必要になれば破るのがノースティリスの冒険者というものだ。我こそルールにしてジャスティス。

 邪魔者なんぞ悪霊だろうがモンスターだろうが、或いは人間だろうと、ぶっ殺して片付ければ良いのだ。

 

 

     ◇

 

 

 そうして翌日から、ハリーは有名である事も相まって、周囲から好奇の視線を浴び続けたが、何処吹く風とばかりに肩で風切って授業を受けていた。

 ノースティリスでも()()飼い主のペットと言うこともあって──半分は同情の視線も有ったが──特別視される事には慣れている。

 

 それより今は授業で習った部分から、ノースティリスに役立てる内容を選別する方が重要なのだ。

 とにかくホグワーツの授業は即時利用がし辛いという意味で効率が悪い。ノースティリスの訓練も苦行レベルの下積みが必要だし、難易度も高いのでどちらもどちらだが、冒険者シートで成果が一目で分かるノースティリスとでは、やはり勝手が違うというのがハリーの感想である。

 

“重要なのは変身術……猫耳プレイとか絶対喜ぶだろうし。あと、整形関連はマダム・ポンフリーに聞くのがベストっと”

 

 明らかに趣味全開の学習だったが、ハリーは頓着しない。校医を勤めるマダム・ポンフリーには事故で火傷を負ったり、骨格が変わってしまった人への『治療法』としての整形医療魔法を熱心に訊ねたところ、彼女は感激してハリーに魔法医学書を貸してくれたし、図書室で一読すべき医学書のリストも作ってくれた。

 これもハリーが熱心に学業に打ち込み、真面目でありながら他人の悩みを聞いたり、優しく打ち解けようとするピュアっピュアな美少年である事を全力アピールした賜物である。

 

 その本性は性根ノースティリスな畜生ペット(開発済み)だが。

 

「あらハリー。今日も違う本なのね」

 

 感心だわと皮肉でなく本心から語るハーマイオニーも、薪屋が薪を背負うかのように本を抱えているのだから似たようなものである。というか絵面で言えば彼女の方がヤバイとはロンの談だ。ハリーもそこは認める。ロンと違って口に出さないだけのデリカシーはあるが。

 

「やあハーマイオニー。君だってこの前とは随分本が変わってるじゃないか。もう読み終わったの?」

 

 お互いにファーストネームで呼び合う仲だと、デキていると噂が広まるのも学校らしいと言えばそうで、ハリー自身はそれを全く気付かない振りをして、まるで子猫か子犬がなつくようにハーマイオニーに接しているから、ハーマイオニーも周囲の冷やかしを知りつつ無視できない。

 尤も、ハリーにしてみれば恋人どころかぐっちょんぐっちょんな気持ちいい世界に彼女を引きずり込む気満々だったりするのだが。

 

 ノースティリスに行ったら、ハーマイオニーには真っ先にエイリアンに寄生されて孕んで欲しい。そして飼い主とそれを見て興奮しながらねっちょり朝まで楽しむのだ。

 

「まあね。それより次の授業はスネイプ先生の魔法薬だけど、ハリーは自信ある?」

「まさか! 初めての授業だよ?」

 

 ここでも努めて謙虚に。トム君の知識とノースティリスに居る間の訓練で、魔法界に来たときに必要になるスキルを重点的に鍛えていたが、それを自慢げに語る事はしない。何より、ハーマイオニーには一年生の中で一番になり、自尊心を付けて貰わないと困るのだ。

 

“勉強熱心なのも、知識を蓄えるのも、自分が必要とされたいからなんだよね? ハーマイオニー”

 

 そんな君が、健気で可愛くて仕方ないとハリーは内心含み笑う。

 友達が欲しい。頼られて打ち解けたい……何ともまぁイジらしいものだ。微笑ましくすらある。その本心を打ち明けられず、無理に固く、そしてお高げになって勉強に入れ込むから周りからは一層浮く。

 ハリーが談笑する事で良い子だとハーマイオニーは周囲から理解を得られているし、当人もそれを理解しているから、ハリーをきっかけに友達を増やしたがっている。

 

 だが、ハリーにそこまでする気はない。ロンやネビルぐらいなら初日に会ったし友達枠として確保してやらん事もないが、それ以上増えるとハリーに依存しなくなる。そうなっては、何の為に仲良くしてやったのか分からないではないか。

 彼女は程々にボッチを拗らせて、ノースティリスに旅立って貰わなくては困るのだ。

 まぁ、一年後の彼女が飼い主の食指から外れるようなブスになれば他を当たるが。具体的には下級生の中から次の候補を見繕うのだ。

 ハリー・ポッターのネームブランドをこういうところで最大限活用し、他寮の生徒にも積極的に声をかけて交友を深めているのは後々の布石の為でもある。

 

 それだけやっての目的が淫蕩三昧の生活な辺り、本当に度し難いど変態である。亡くなったご両親が知れば涙を流すか、墓の下から這い出して助走を付けつつシャイニングウィザードかましそうだ。

 一体どうしてこうなったのかと思うが、大体飼い主と元凶のヴォルデモートが悪い。

 だから敢えて言おう、ハリー・ポッターは無垢な子供だったのだと!

 こんなんになったのは、気持ちいいことをした変態飼い主が悪いのだと!

 

 そうハリーは自己弁護しつつ、スネイプの授業を受けるべく、ハーマイオニーと教室に行くのだった。

 

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