実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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待たせたなぁ……(小並感)
展開は決まってるのに全然上手く纏まらなくてこんなに時間経っちまったぜ!

前話の最後からちょっと時間巻き戻ったとこから始まりまーす




八の拳

 

「ーーはい。それでは今日はここまでにしましょう」

 

椎名にそう言われて、花山はペンを置いて大きく息を吐き出す。

 

時刻は20時を回っており、かなりの時間集中していたことがわかる。

 

「花山くんも随分長い時間集中して勉強出来るようになりましたね」

 

この一週間、花山は椎名と石崎の三人で放課後遅くまで勉強していた。

そのおかげか、勉強会を始めた当初は数十分しか持たなかった集中力が、今では数時間まで伸びて来ている。

 

その理由として最も大きいのは、彼女達が付きっきりで勉強していることだろう。

花山にはある意味見栄っ張りな所がある。と言っても自分を強く見せようとというようなものではなく、期待に応えよう、弱味を見せないでおこうといったものであるが。

だから、彼女達がこうして毎日一緒に勉強をする事で花山は集中力を発揮しているのだ。

 

加えて言えば、誘惑ーー特に酒ーーが完全にシャットダウンされている事も大きな要因とも言えるだろう。

 

 

「皆さん、晩ご飯はどうするんですか?」

 

「俺は普通にカップ麺で済ませる予定だぞ?」

 

勉強道具を片付けながら石崎が答えると、それに呆れながらも椎名が言葉を返す。

 

「普通にって……そんなんじゃ体壊しますよ?」

 

「しょーがねーだろうが。料理なんて出来ねぇし、節約もしなきゃいけねぇんだからよ」

 

「それはそうですけど……花山くんは?」

 

「……外食(そと)だな」

 

「へー……でも外食だと結構お金使うんじゃないですか?」

 

「確かに。お金とか大丈夫なんですか?」

 

そう言われて花山は自分のポイントを確認すると、40000ポイント程が残っていた。

 

「まぁ………大丈夫だ」

 

次の支給まで残り三週間と少し。40000ポイントもあれば十分に生活出来るだろう。

 

「そうですか……」

 

「いきなりそんな事を聞いてどうしたんだ?」

 

「いえ、今日は野菜が安かったので沢山買ったんですが、思ったより量が多くて食べれそうにないんです」

 

「……つまり?」

 

 

「なので、今日は私の部屋でご飯をご馳走させてもらえませんか?」

 

 

「……女子の部屋って初めてだな」

 

椎名の部屋を見回した石崎は開口一番そう言った。

 

「すぐ出来ますので、適当に座っておいてください」

 

エプロンを付けている椎名にそう言われて花山はどかっと床に腰を下ろし、石崎は部屋の物色を始めた。

 

「お前の部屋ってなーんもねえのな。あるもんっつったら本棚ぐらいか……。女子の部屋ってこんなもんなのか?」

 

女子の部屋と言えば雑多で可愛い物が多いというイメージだったが、椎名の部屋は花山と同じようにデフォルトと殆ど変わらず、石崎が言うように本棚がありその中に本がギッシリ詰め込まれているだけだ。

 

「どうなんでしょう……他の人のお部屋にお邪魔したことが無いですから……」

 

「お、おぉう」

 

唐突な椎名のボッチカミングアウトに石崎は戸惑ってしまった。

 

「ひよりは本が好きなのか?」

 

「はい」

 

「あー、そういや椎名っていっつも本読んでるよな。面白いのか?」

 

「面白いですよ?石崎くんも読んでみます?」

 

「いや、俺は読まねぇよ。字ばっかり読んでたら頭が痛くなってくるからな。読むならマンガに限る」

 

「そうですか……花山くんはどうですか?一冊ぐらい借りていっても良いんですけど……」

 

「……じゃあ、後で適当に見繕ってくれ」

 

「…!はい!」

 

「あ、あー、なんか急に俺も本が読みたくなってきたなぁーー?」チラッ

 

「では、石崎くんの分も選びますね!」

 

 

 

 

 

「ーーそれでですね!この本は後半の展開が面白いんですけど、登場キャラが多いので少し読むのが大変なんですよね!」

 

 

 

「ーーこの本は終始ハラハラドキドキの展開で、ラストが本当に衝撃の展開なんです!ネタバレになるので深くは言えないんですけど……」

 

 

 

「ーーあ、それでですね!この本はとにかく深いんですよね!今まで考えなかった事を考えるきっかけをくれます!」

 

 

 

「この本は展開が少し重たいんですが、非常に深みがあって面白いです!続編がまだ出てないので、続きが気になって仕方ないです」

 

 

 

「あ、初めて本を読むならこれは外せないですね。ミステリーの定番なんですけど、これも面白いですよ!」

 

 

 

「ーーそれでですね!比較的マイナーなんですけど、この人の作品ってとっても面白いんです!」

 

「あ、あのー…椎名さん?」

 

「あの有名作ばっかり注目されがちなんですけど、実はあの人のファンなんかも多くて……」

 

「あ、もしかしなくても聞いてない感じですか?」

 

 

 

「それでそれで…………ってちゃんと聞いてますか?石崎くん」

 

「あーうんキイテルキイテル」

 

 

 

 

「それでですね!このアリバイトリックが凄く斬新で……」

 

「ヘーソウナンダー」

 

「…………………」

 

 

「探偵が犯人を追い詰めていくところなんてアゲアゲで!」

 

「ハェースゴイスゴーイ」

 

「…………………」

 

 

「それでそれでーーーー」

 

 

椎名の話は途切れる事なく数時間に及んだ。

 

余りにも熱の篭った椎名の話に石崎は口を挟まず、無感情に相槌を打つだけの機械になってしまっていた。

 

因みに花山は話し始めて30分経った辺りで既に眠りに落ちていたそうな。

 

 

 

椎名の長い長い話を終えた辺りでちょうど花山は目覚めたので居眠りがバレることなく解散となり、花山は気分転換も兼ねてブラブラと歩いていた。

 

特に目的がある訳ではない。

新宿にいた頃のようにパトロールをしなくてはならない立場でもないはずだが、日課となっていたパトロールをこの学校に来てからも続けていた。

 

特に酒を没収されている今では、趣味を殆ど持たない花山に時間を潰す手段は散歩以外には無い。

勉強という手段もなくは無いが、数時間の勉強をしてから椎名の小説談議(花山は寝ていたが)に付き合わされた今では勉強のやる気なんて出ない。

 

そうして夜の敷地内を練り歩くが、新宿のように人が多い訳では無かった。敷地内にある巨大モールのケヤキモールの方からは何人かが歩いて来ているが、新宿のように往来で喧嘩をしている人間は居なかった。

テスト期間というのもあるのかもしれないが、こうして静かな夜の街を歩くというのは花山にとってかなり新鮮な事であった。

 

 

一通り一周した花山だが、ふと寮の裏手が気になった。

どこの街でも路地裏なんかは不良の溜まり場になっている事が多い。

この時間の寮の裏手であれば人もおらず、そういう生徒がいる可能性も大いにある。

 

そう思って寮の裏手に回った花山であったが、ちょうどそこで三人の生徒を見つける。

 

声を掛けるか否か……という迷いは花山には無い。

 

悠然とした足取りで彼らに近づいて行き、花山は口を開いた。

 

 

「何をやってんだ?」

 

 

 

 

 

「Cクラス……花山薫か」

 

堀北会長は現れた大男を見てそう言った。

 

「アンタは確か生徒会長の……」

 

「堀北学だ」

 

「堀北先輩、こんなところで何をしてるんですかい?」

 

「……お前の事は聞いているぞ、花山薫」

 

花山が堀北会長に問いかけるが、堀北会長はそれには答えずに言葉を続ける。

 

「入学試験での身体能力の数値は歴代最高得点だったそうだな」

 

「……恐縮です」

 

「だが、この学校は身体能力だけでは生き残れない」

 

「……………」

 

「随分と身体能力に自信があるようだが、それも結局のところ生まれ持ったその体に頼り切っているだけに過ぎない」

 

「……………」

 

「上に行きたければ精一杯足掻くんだな」

 

そう言って歩き出す堀北会長。

 

 

 

当時の様子を、堀北鈴音はこう語った。

 

「あの時ですか?」

 

「そうですね………『それだけなの?』みたいな感じでしょうか」

 

「綾小路くんには攻撃を仕掛けたり、興味を示す素振りをして話していたのに、彼ーー花山くんとは少ししか話さなかったので」

 

「当時の花山くんの印象?」

 

「最初見たときは大人かと思いました。白スーツ着てましたし、何よりあの体つきですから」

 

「彼がCクラスだと聞いた時は驚きましたよ」

 

「当時の印象と言えばこんなぐらいですかね」

 

「で、その後なんですけど、兄さんは普通に花山くんが来た方向へと歩いて行きました」

 

「帰ったのかって?いいえ、違います」

 

「私もそのまま帰るのかと思ってました。綾小路くんもそう思っていたと思います」

 

『………もう一度言っておこうーーーー』

 

「兄さんは花山くんとすれ違う所で立ち止まったんです」

 

『ーーーーこの学校は……甘くはないぞ!!』

 

『危ない!!』

 

「反射的に声を出してました」

 

「突然、兄さんは花山くんの方に向き直って正拳突きを繰り出したんです」

 

「兄さんは空手の五段を持っていますから、兄さんの正拳突きは常人なら無事じゃ済まないです」

 

「どうして兄さんはそんな事をしたのか?」

 

「さぁ……私では兄さんの考えを知ることなんて出来ないですから……」

 

「強いて言うなら……洗礼……とかではないでしょうか」

 

「……それで、兄さんの拳が花山くんの腹に突き刺さったんですけど………」

 

 

『……………』

 

 

「ケロっとしてるんですよ」

 

「信じられます?空手五段ですよ?しかもこれ以上無い見事な突きで、打ち損じなんかでも無かったです」

 

「それを正面からまともに受け止めて無傷な人間なんてこの世に居るはずがないと思ってました」

 

「世界は広いんだなと思いましたね」

 

「アレでどう思ったんでしょうかね………兄さんは」

 

「その後ですか?」

 

『スゥー……な、なるほど……やせ我慢という訳では無いようだな……スゥー……あぁ、いや、突然殴って済まなかったな、花山』

 

『いえ、忠告感謝致しやす』

 

『スゥー…そ、そうか………スゥー……じゃ、じゃあ俺は失礼させてもらう』

 

「そう言って兄さんは帰って行きました」

 

「兄さんに限って有り得ないとは思うんですけど、逃げるかのように去って行きました。いえ、まさか兄さんが逃げるように去って行くなんてことは無いとは思うんですけどね」

 

「その後ですか?いえ、特に何も無かったです」

 

『今日はもう帰んな』

 

「そう言って夜の闇に消えて行きました」

 

 

 

 

もう一人の当事者、綾小路清隆にも話を聞くことができた。

 

「先に聞いておきたいんですけど、このインタビューの内容は……」

 

「……口外しない…と。本当に口外しませんね?もし口外した場合はどうなるか……お分かりですね?」

 

「いえ、分かってるなら別に良いんですよ」

 

「で、えーと、当時の花山の印象ですか……」

 

「とてもじゃないですけど高校生には見えなかったですね」

 

「何がとかじゃなくて、全部が…です」

 

「まず彼の服装……白スーツを着てたんですけど、学生とは思えないほど白スーツが馴染んでました」

 

「次に体格。身長一つ取ってもかなり大きいですよね……と言っても須藤や高円寺とそう変わらないとは思います。それよりもあの横幅です。いやデブと言ってるんじゃなくて、太いんですよ、筋肉で。生徒会長も言ってましたが、間違いなく高校生離れした肉体ですね」

 

「後は……風貌……とでも言いましょうか。特に顔の疵ですね。普通に過ごしていてつくような疵では無かったです。今までそういう傷を見てきた事はいくつも有りますが、アレは確実に鋭利な刃物で斬られた痕ですね」

 

「勝てるのかって?…………少なくとも喧嘩では無理ですね。勝つとすればそれ以外の手段になります」

 

「例えば?……まぁ、退学させてしまえば勝利ですよね」

 

 

「彼に会って何を感じたか?」

 

「そうですね……強いて言うならーーーー」

 

 

 

「ーーーーかなり恐怖を感じた」

 

 

 




スペック回だと思った?残念!主人公達との顔合わせ回でしたー!
期待してたニキすまんな。まだ学くん達の腕をパァンさせる訳にはいかんのや。

堀北ズの口調ちょっとおかしいかもやけど許してくれメンス。ギャグやからさ!

前回の白スーツ関係の感想をたくさん頂いてるんですけど、花山って制服と白スーツ以外の服着てることあったっけ?刃牙道やとコート羽織ってはいたけど……。
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