実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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感想の方で服の話結構して下さって有難いです。
どっちかって言うと部屋着とかが知りたかったんですけど描写無いから仕方ないですね。

でも花山が水色のパジャマと帽子みたいなん着けて寝てても違和感無い気がしてきたんですけどどうですか?
結構可愛くてアリだと思うんですけど……。


九の拳

「突然だが、重要な連絡事項がある」

 

テストまで残り一週間と少しといった辺りの、朝のホームルームで坂上先生はそう切り出した。

 

「中間テストに向けて必死に勉強を頑張っていることだと思うが、テスト範囲に大幅な変更があった」

 

そう言って黒板に変更後の範囲を書き出していく坂上先生。

 

黒板にテスト範囲を書き終えると、手を払ってから何食わぬ顔でその日の連絡事項を連絡していった。

 

 

 

その日の昼休み。

 

「…………………」

 

「お、おい、どうする椎名」

 

「ど、どうしましょう……」

 

互いに意見を求め合う石崎と椎名。

二人の視線の先には花山がいるが、当の花山本人にいつものような覇気は無かった。

 

花山は落ち込んでいるのだ。どれほどナーバスかと言えば、5月初日の衝撃的な事実が告げられた時よりも気分は落ち込んでいるだろうほどに。

その原因は今朝のホームルームで伝えられたテスト範囲の変更だ。

ここ数日間の時間と集中力を大量に消費しながら禁酒までして覚えた勉強が無に帰したのだから、ある意味当然と言える反応ではある。

 

そんな花山にかける言葉が見つからない石崎と椎名。

 

この二人が話しかけられずにいるのだから、当然他のクラスメイトも声を掛けることなど出来ずにいた。

 

 

「は、花山さん……」

 

誰一人として声を掛けられずにいたが、意を決して石崎が花山に声をかけた。

 

「……………」

 

「ま、まだ二週間ありますから大丈夫ですって!」

 

「……………」

 

「え、えーっと……が、頑張りましょうよ!範囲が変わったのはみんなおんなじですから!」

 

「そうですよ花山くん。みんな条件は一緒です」

 

「そうだよ」「一緒に頑張ろう!」「椎名さん……天使だ……」と石崎達に続いて口々に励ましていくクラスメイト達。

 

だが花山の顔はまだ晴れない。

もう一押し必要な様だ。

 

「……花山くんの今までの勉強は無駄なんかじゃないです」

 

椎名はそう言いながら花山の手を取り、花山の目を真っ直ぐに見据える。

 

「この数日で、花山くんの基礎は十分に固まって来ています。その時点でこの数日間は無駄じゃ無かったと言えるでしょう」

 

「………」

 

「それに、今まで無かった勉強の習慣だってついてきています。ねぇ、花山くん。諦めないで一緒に頑張りませんか?」

 

花山の手を包み込み(物理的には包めないが便宜上そう表現する)、真っ直ぐ花山の目を見据える椎名。

 

「…………………………」

 

椎名がその手を離すと、花山はカバンから教材を取り出し机に広げた。

 

 

「………ここが……分からねえんだが……教えて貰えるか?」

 

「「「…!」」

 

「はい!もちろんです!」

 

そう言った花山の顔は晴れやかで、先程までの鬱々とした雰囲気は綺麗に霧散していた。

 

 

「……すまねぇ」

 

椎名が横で勉強を教えていると、花山がボソリと口を開いた。

 

「………いいえ。………あ、ここはーーーー」

 

それを聞いた椎名は少し驚いた後、優しげな声音で返しながら花山が分からない所を丁寧に丁寧に教えていく。

 

 

 

「…………………」

 

それを離れた所から見ていた男、龍園は、笑みを浮かべながらアルベルト、小宮と近藤を伴って教室を出て行くのだった。

 

 

 

 

「龍園さん、どこに行くんです?」

 

龍園の後ろをついて歩く小宮がそう問いかける。

 

「食堂だ」

 

「黙ってついて来い」…と一蹴されるのかと思っていたが、こちらに顔を向けながら何故か答えてくれた。

 

「食堂……ですか?一体何をしに……」

 

既に昼食は済ませているから、食堂へ行く理由は無いはずだ。まさか食堂でデザートを食べるなんて筈も無いだろう。

 

「付いてくれば分かる」

 

そう言って顔を正面に戻す龍園に、これ以上会話をする気がないと悟った小宮は黙ってついて行く事にした。

 

 

 

食堂に着くと、昼休みももう半分が過ぎた頃だからか、比較的人は少なめだった。

龍園は食堂をグルリと見回した後、狙いを付けたのか山菜定食を食べている一人の生徒に向かって歩き出す。

その生徒に見覚えは無く、この一ヶ月半で一度も見たことがない顔だ。

 

その生徒の向かいにどかっと座ると、龍園は声を掛ける。

 

「よお」

 

「……なんだお前」

 

対するその生徒だが、突然声を掛けられた事に対して一瞬驚いたものの、すぐに訝しげな視線を向けて来た。

見るからにガラの悪い龍園と威圧感のあるアルベルトもいるのにそれに動揺してる様子が無い。

そういう荒事に慣れているということだろうか。

 

「一年Cクラス、龍園翔だ」

 

「…何の用だ?」

 

「アンタが一年の頃の一学期の中間テストの問題と小テストが欲しい」

 

「……なぜそれを俺に?」

 

「心当たりはねえか?」

 

「なるほどな……」

 

「10000でどうだ?」

 

「………30000」

 

「10000だ」

 

「……分かった、なら25000」

 

「13000」

 

「……頑固な一年だな。22500で手を打とう」

 

「15000だ」

 

「……それが先輩に物を頼む態度か?20000にしてやる」

 

そう言われると、龍園は大きく溜息を吐いてから口を開く。

 

「……そうかよ。じゃあこの話は無しだ。他の奴に頼むとする」

 

「…………………」

 

「じゃあな」

 

そう言って立ち去ろうとする龍園だったが、その背中に先輩は声を掛ける。

 

「…待った!…分かった、なら18000だ。これで手を打ってくれ」

 

龍園は笑みを深めて振り返る。

 

「…契約成立だ。問題が送られて来たらポイントは払ってやる」

 

 

 

「龍園さん、どうして過去問を?」

 

その帰り際、小宮は龍園に問いかけた。

 

「あ?テスト勉強に役立つだろ?」

 

「い、いえ、それはそうなんですけど……」

 

テスト勉強の為に過去問を使うというのは非常に効果的な勉強であることは当然理解しているが、そこまでして龍園が良い点を取ろうとするようには思えない。

テストで良い点を取る為に過去問を使って必死に勉強をする……というのはここ一ヶ月半で培ってきた龍園の印象にはそぐわないのだ。

 

龍園は歩きながら口を開いた。

 

「……この前の小テストの最後の問題、あれは高校一年生が解けるレベルの問題じゃなかった」

 

「え?」

 

「後で調べたが、二、三年で習う範囲だそうだ。つまり、解けるはずの無い問題を学校側が出してきたという事になる」

 

「は、はぁ…」

 

「だがこの学校がそんな無意味な事をする筈が無い。何かしらの意図がある筈だ」

 

そうなのだろうか…と小宮は一瞬考えるが、対して頭が良くない自分が考えた所で分かる筈もないので、黙って龍園の言葉を聞く事にする。

 

「5月初日のホームルームで坂上が言った事は覚えているか?」

 

「え?いや、覚えてないですけど……」

 

そう言って近藤とアルベルトを見回すが、どちらも首を横に振った。

 

それを若干呆れたような目で見ながら、龍園は説明を続ける。

 

「『赤点を回避する方法は必ずあると確信している』…そう言った。妙だと思わねぇか?」

 

「何がですか?」

 

「最近は随分頑張っているようだが、花山はバk……いや、それほど頭が良くねぇ。そんなヤツが赤点を必ず回避出来る方法がある……って言ってんだぜ?」

 

「はぁ……」

 

「つまり、勉強が出来ずとも赤点を必ず回避出来る方法があるって事だ」

 

「カンニングとか……って事ですか?」

 

「それも回避する方法の一つだな」

 

内心「それは無いだろ」と思いながら発言した小宮だが、龍園は肯定する。

 

「とは言え、カンニングなんて真似をこの学校が許す筈もねぇ。事実あの小テストでもカンニングだけはするなと言われた訳だしな。そこで鍵になるのが例の小テストだ」

 

「小テスト…ですか?」

 

「例の小テストで二、三年の問題を正解するにはどうすれば良いと思う?」

 

「え?そりゃまぁ……予習とか?」

 

「それ以外は?」

 

「えーっと…………」

 

「事前に答えを知っていれば良い……そう思わねえか?」

 

「え、つまりカンニングって事ですか?」

 

「違えよ。問題さえ事前に分かっていればあの問題も解けた筈だろ?」

 

「そりゃあそうですけど……」

 

はぁーと大きく溜息を吐き出す龍園。

 

「まだ分からねえか?その手段が過去問って事だ」

 

確かに問題を事前に知っていれば解かずとも答えを書き込むだけで良い。

だがそれがどうして過去問となるのだろうか。

 

未だにピンと来ない様子の小宮達に龍園は続ける。

 

「俺達が赤点を必ず回避する方法は事前に問題を知っておく事…これしかねぇことは分かるな?」

 

「はい」

 

「ならどうやって問題を事前に知る?学校側に聞けば教えてくれるのか?それとも宝探しみたく何処かに隠されているのか?」

 

「それは無いと思いますけど……」

 

「例えば毎年問題が同じだとすれば、過去問を見るだけで問題が分かると思わねぇか?」

 

確かにそれはそうだろう。過去問で問題を知れるのなら間違い無くそれが赤点を回避する手段だ。

 

「……そんなことあるんですか?」

 

「それはすぐに分かる事だ」

 

そう言う龍園の顔は自信に満ち溢れていた。

 

 

 

 

その日の放課後。

 

 

「花山さん、帰りましょう!」

 

「ん」

 

石崎が花山を誘い、ひょっこりと椎名が付いて行こうとして………

 

 

「待てよ」

 

 

その声を聞いて、帰り支度をしていたCクラスの全員がピタッと手を止める。

 

声の主は龍園。

思い出されるのは先月末のあの惨劇。

「まだ懲りてないのか!」とクラスの面々が思う中、石崎が真っ先に龍園に突っかかる。

 

「あ?なんだよ、龍園。俺達はこれからベンキョーすんだよ!邪魔すんなよ!」

 

久々に見る荒々しい口調の石崎に、Cクラスの面々は石崎が不良であったことを再認識する。ここ最近の石崎は忠犬じみていたから、こんな風に荒々しい口調になるのは久しぶりのことであったからだ。

 

「最近頑張ってるみたいじゃねえか、花山」

 

石崎を意に介さず花山に話しかける龍園だが、石崎がそれを許容できる筈もない。

 

「オイ無視すんなよ!てか花山さんに話しかけてんじゃねぇよ!てか喧嘩売ってんのか!あぁ!?」

 

「うるせぇ犬だな」

 

「あ"ぁ"!?テメェ!ちょっと、花山さん、やっちゃって良いスか?」

 

拳をボキボキと鳴らす石崎。

 

「やめろ、大地」

 

「ハイッ!!!」

 

「…で、何の用だ、龍園」

 

「コイツをやりに来たのさ」

 

そう言って携帯の画面を見せてくる龍園。

椎名と花山がそれを覗き込む。

 

「これは……過去問、ですか?」

 

「そうだ」

 

「……良いのか?」

 

「気にすんな……と言いたい所だが、そうもいかねぇ。貸しにしといてやる」

 

「すまねぇ」

 

軽く頭を下げる花山。

 

 

「なんだなんだ?龍園。お前良いトコあるじゃんかよ!なぁオイ?」

 

そう言って龍園の肩に手を回す石崎。

 

「……気安く触ってんじゃねぇよ」

 

龍園はそれを強く振り払うと、好意(?)を無碍にされた石崎がまた怒りの感情をあらわにする。

 

「んだよ!折角人が良い気分でよぉ!!……あんま調子乗ってっとーー」

 

「ーーやめろ大地」

 

「ハイッ!!!」

 

「……龍園、助かった」

 

改めて感謝を述べる花山。

 

「その飼い犬もしっかり躾けておいて貰えると助かるんだがな」

 

「なんだと!テメェーー」

 

「ーーやめろ」

 

「ハイッ!!!」

 

「…じゃあな。帰るぜ、大地、ひより」

 

「はーい」

 

「あ、待ってくださいよ花山さん」

 

バタバタと去っていく花山一向。

 

何事も起こらなかったことに、Cクラスの面々はホッと胸を撫で下ろすのだった。

 




龍園、デレた!!

やあっっと龍園出せた気がする。
やっとメインヒロインとの進展がありましたね♡
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