実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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お待た。
しばらくペースゆっくりなるけど許してけろー!


十三の拳

「話ってのは他でもねえ。俺たちCクラスのこれからについての話だ」

 

そう龍園は切り出した。

 

「最初に聞いておきたい。花山、お前はどうする気なんだ?」

 

「どう…ってのは?」

 

「Aクラスに上がる気があるのか……それとも無いのか…だ」

 

そう言われて、花山は少し考える。

実際の所、Aクラスに上がりたいという気持ちは無い。が、邪魔する気もさらさらないし、協力することも吝かではない。

 

だがそれを言っていいのだろうか。

花山自身に上に上がる気は無いが、他の生徒にとって将来の保証というのが重要な事なのは分かっている。目の前に座る龍園だって、Aクラスの特典目当てには見えないが、上がる為に色々とやっていることも知っている。そんな彼に、上がる気が無いという事を告げるのは少し憚られたのだ。

 

「……………」

 

黙り込んでいる花山。

それをどう思ったのか、弁解するように龍園は口を開く。

 

「俺は……そうだな……正直、ビビってる。花山、お前にだ。だから俺はお前の言質を欲している。Aクラスに上がる為に協力してくれるのか、それとも関わって欲しくも無いのか……」

 

そこで言葉を切った龍園は花山に伺うような目線を向ける。

先輩だろうが教師教師だろうが不遜な態度を取る龍園だが、花山が相手では下手に出ざるを得ない。

 

そんな視線を向けられた花山は、正直に答える事に決めた。

龍園が求めているのは正解ではなく、花山自身の意思だからだということが分かったからだ。

 

「Aクラスに興味はねぇ。だが、協力はする」

 

花山は本心を告げたが、龍園は気に入らない様子だった。

 

「……前にも言ってたな、『力を貸して欲しけりゃ呼べ』…って。……それじゃ困るんだよ」

 

「……………」

 

「俺はお前を測り損ねている。力も、性格も、素性も、信念もな。協力すると言ったが、どこまでなら力を貸してくれるってんだ?お前は何をやってくれる?ジュースを奢れと言えば奢ってくれるのか?パシリに使っても良いのか?俺の指示でお前はどこまでルールを破る事が出来る?例えばいますぐ隣で歌ってる野郎をぶん殴って来いと言えばやってくれるのか?」

 

そこまで言って、龍園は一度言葉を切る。

 

「俺が知りたいのはそういうことだ」

 

言い切った龍園は炭酸水を煽り、花山を見据える。

 

「………………」

 

花山が龍園の指示に従い暴力を振るう……なんて事は絶対に起こり得ない。

何故なら花山の喧嘩には必ず心が伴うからだ。それは怨恨であれ、闘争心であれ、正義感であれ、復讐心であれ、何かを護るためであれ……とかく意思の伴わない喧嘩を花山はしない。

人の指示によって花山が拳を振るうという事はあり得ないのだ。

 

ならば龍園の指示には従わない、従う気が無いのか。

それは否である。

例えばの話だが、龍園が夏の孤島の特別試験で奇抜で一見勝つ気が無いような戦法を取ったとしても花山は従うだろう。体育祭で〜〜に出ろと言われれば出るだろう。

かと言って、パシリになるのかと言われればそれは否だ。

 

要は、その線引きが説明し難いということだ。

結局何をやって何をやらないかは、花山の心一つで決まるものであり、明文化できるようなものではない。

しかし龍園が求めているのはその明文化された答えであり、気まぐれなんて曖昧な答え方ではないのだ。

 

「気まぐれだ」

 

だが、それでも花山は気まぐれだと答えた。

 

普通の生徒が相手であれば龍園はそんな曖昧な答えを許さないだろうが、花山薫が相手ではどうしようもない。

 

「………なるほどな」

 

龍園にとっては想定していた答えの内の一つではあったが、それと同時に最も望ましくない答えの一つでもあった。

望ましくない理由は単純で、結局は言質を取れていないからだ。花山の心一つで決まるのだから、保証にはなり得ない。

 

とは言え、龍園とてバカではない。

想定が出来ているにも関わらずその対応を考えて居ない訳が無い。

 

「……まぁ良い。とにかく、花山が俺の邪魔をすることはねえんだな?」

 

「あぁ」

 

「俺に協力してくれるどうかもお前次第ってことだな?」

 

「あぁ」

 

「なるほど……」

 

Aクラスに興味は無くとも、その協力をする気があるということさえ分かれば後は花山自身についてだけだが、それについてはこれから理解していけば良い。

 

確認したい事を確認し終えた龍園は、改めて話し始める。

 

「俺たちCクラスはいずれAクラスになる。俺がAクラスにしてやる」

 

一見傲慢にも思える言葉だが、その言い方には自信と自負に満ち溢れていた。

 

「だから花山……協力してくれるか?」

 

そう言って手を出す龍園。

 

入学式の日と同じ状況だが、あの時とは違うことがあった。

それは龍園だ。あの時は怪しげな笑みを浮かべながら花山を測る為に手を出していたが、今回は違う。怪しげな笑みも見せず、ただただ真摯に協力を求めている。

 

そしてこれが初めての協力の申し出となる。

 

その申し出を花山はーーー

 

 

「ん」

 

 

ーーー当然、受け入れた。

 

 

握手を交わす龍園と花山。

 

「よろしくな。()

 

「…!!……あぁ」

 

 

この学校最強とも言えるコンビの結成を、椎名のパチパチという拍手が祝福していたのだった。

 

 

 

 

「し、失礼します」

 

あれから椎名がカラオケを楽しんでいると、そう言って入って来たのは、職員室に呼ばれていた小宮、そして近藤であった。

 

「おう、来たか。とりあえず座れ」

 

「は、はい」

 

小宮と近藤はかなり混乱していた。

まず、花山達がいること。事前に()()()()話をするつもりだとは聞いていたが、てっきり既に終わっており、この場には龍園とアルベルトだけなのかと思っていた。

そして何より……龍園の機嫌が良い。かつてない程機嫌が良さげだ。椎名とカラオケを楽しんでいたこともそうだが、自分達を座らせようとすることだって初めてのことだ。

 

一抹の不安を覚えながらも、一先ず言われた通りに腰を下ろす。

 

「…で、どうだった?」

 

龍園が炭酸水の入ったコップを弄びながら小宮と近藤に聞いてくる。

 

抽象的な聞き方な為に第三者にはなんのことだか分からないだろうが、小宮と近藤は何を示しているか分かっている。

 

「はい。上手く行きました」

 

「何の話だ?」

 

その第三者に該当する石崎が近藤に聞いてきたが、近藤は龍園の方を伺う。現状部外者である石崎に話して良いのかどうか、それを決めるのは龍園だからだ。

 

「あぁ、その話をこれからするところだ」

 

どうやら龍園自身が説明するため、近藤が説明する必要は無いらしい。

 

「情報の共有をしておきたい。構わねえか?花山」

 

「あぁ」

 

「よし……先に言っておくが、この話は他言無用だ」

 

 

龍園の話を纏めると、こうだ。

 

今回のターゲットはDクラスの須藤健。

素行は悪いが、バスケ部では期待の新人らしく、喧嘩は強いがそれ以上に激情家で頭が悪い。そこに龍園は狙いをつけた。

 

まず小宮と近藤が須藤を適当な事を言って呼び出す。そこで殴りかかり、喧嘩開始。ここでは須藤に怪我を負わせず、一方的にこちらが怪我を負う。

 

そして学校に訴えを起こし、慰謝料をかっぱらうというもの。

 

 

一通り説明を終えたところで、石崎が龍園に質問する。

 

「慰謝料って貰えんのか?こっちが仕掛けたんだし、両成敗?とかになるんじゃねえの?」

 

「どっちか先に仕掛けたかどうかなんて問題じゃねえんだよ」

 

「……どういうことだ?」

 

理解出来なかった石崎が椎名に小声で問いかける。

 

「嘘の証言をする……ということですよね?」

 

「そういうことだ」

 

「なるほどなぁ…」

 

「私も質問があります」

 

「言ってみろ」

 

「この学校には至る所に監視カメラがあります。その映像なんかを証拠として使われたら不味いんじゃないんですか?」

 

教室はもちろん、職員室の前や店の前などに張り巡らされた監視の目に映ってしまえば、間違い無くこちらが不利になってしまうだろう。

 

「確かにそりゃあ不味いだろうな。だが……」

 

そう言って小宮に視線を向けると、その意味を理解したのか小宮が龍園の言葉の続きを引き継ぐ。

 

「はい、監視カメラが無いことは確認したので大丈夫です」

 

「……って訳だ」

 

「なるほど……」

 

石崎と椎名の疑問が氷解したところで、龍園は花山に視線を向ける。

 

すると、腕を組んでじっと聞いていた花山が口を開いた。

 

「……なんでそれを俺らに話した」

 

「そりゃあ単純な話だ。協力関係なんだから、情報を共有すんのは何も不思議なことじゃあねえだろ?」

 

確かに…と花山は納得する。

情報共有というのは重要だ。全部が全部を曝け出さなければならないということは無いが、必要な情報は共有しておかなければならない。

組同士の同盟であっても、何の情報共有も無しでは機能しないだろう。

 

「…ってのは建前だ」

 

が、それを龍園自身が否定する。

 

「俺のやり方を知って欲しかったってのが一つだ。ルールの抜け道、反則……場合によっては暴力だって辞さない」

 

王道、正攻法からかけ離れた、所謂邪道の戦法。

事実、今回のように監視カメラの穴を突いたり、5月頃のように暴力で訴えてきたりしてきた。

 

「俺はそういうやり方を取る。だが、そういうやり方が気に入らない奴だって中には居る」

 

龍園は自分に敵意を向けてくる少女を1人思い浮かべながら話し続ける。

 

「それがもう一つ、お前がこういうやり方に対してどう思うのか。それを知りたかった」

 

「……………」

 

「お前がこういうやり方を好まないってんなら……まぁ、色々考え直す必要が出てくるんだが……どうだ?」

 

他人を伺い、そして場合によっては自身を捻じ曲げる気すらある……そんな事は、龍園には初めてのことだろう。

 

何よりも花山との協力関係を、龍園は選んだのだ。

 

 

「好きにしな」

 

 

だが、花山は変える事を強要しなかった。いや、と言うよりも、そのやり方自体に対する嫌悪感などはハナから持ち合わせていなかったのだ。

 

「ただしーー」

 

「!」

 

「ーーそういうことは…俺にやらせるなよ」

 

その言葉の意味を、龍園は正しく理解した。

 

花山は正攻法、堂々の正面突破を好む……いや、それ以外存在しない。罠があろうと真っ直ぐ踏み越えるし、避けることすらしない。

 

そんな花山は邪道なやり方は取らない。

例えば、今回の小宮や近藤のように相手を罠に嵌める役目はやらない。体育祭などで相手をこかすような事もやらない。

 

戦術として許容もするし、ある程度の指示にも従う。

だがそういう役割をする事はない……いや、やらせるなと言っているのだ。

 

「…分かった。肝に命じておく」

 

 

 

 

 

会計を済ませ、カラオケを出た一行。

 

石崎はアルベルトと意気投合したらしく、和気藹々と話し(かけて)いた。

椎名は相変わらずマイペースに歩いていた。

 

そんな彼らの後ろを歩く花山に、龍園が声を掛ける。

 

「花山」

 

「どうした、翔」

 

何の用かと問いかけると、龍園は嫌そうな顔を見せる。

 

実は龍園、下の名前で呼ばれる経験が殆ど無かった。

昔、それも小学校辺りまでは下の名前で呼ばれていたこともあったが、恐怖を忘れたあの日以降、龍園は呼び捨てか“さん”付け以外で呼ばれることはなくなった。

その為、こうして花山に呼ばれる度にむず痒さが走ってしまうのだ。

 

 

「……俺は『お前が測り知れない』…そう言ったな」

 

「あぁ」

 

「……だがこれからもずっとそのままでお前の事を知らないでいるつもりもねぇ」

 

「…?」

 

 

「俺に……お前を測らせてくれ……!」

 




翔「もっと知りたいんだ…お前のこと……///」

ずっとこれを言わせたかった……。
残念ながらBLタグを付けてないことからも分かるように、この作品では龍園くんとイチャイチャ♂したりはしません。
描写してない裏でシてるかどうかまでは知らん!!
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