実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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この事件の間ってCクラスは殆どやることないんで、他クラス視点から書いてくぜ!


十四の拳

Cクラスの花山薫。

その名を知らない生徒はおそらく居ないだろう。

 

曰く、エンジンを一撃で破壊した。

 

曰く、トランプの束を引きちぎる。

 

曰く、泳ぐだけで津波が起こる。

 

曰く、ヤクザ。

 

曰く、それどころかヤクザの組長。

 

そんな根も葉もない、誰も信じないような噂が多く出回っている。

 

『物凄い噂が出回っている、ガタイのデカい男』

 

それが今現在、Cクラス以外のクラスが結論付けている花山の印象であった。

 

 

しかし、生徒会長と初めて会ったあの日の夜、あの場にいたDクラスの綾小路清隆はあながち嘘ではないと思っていた。

 

堀北学の腕は本物だ。それはあらゆることに経験が豊富な綾小路自身がその身で実感している。

そしてあの時の正拳突き。あれは間違い無く全力の踏み込み、突きだった。

並の人間……でなくとも、大の大人だろうと、アスリートだろうとあれほどの正拳突きをその身でまともに受けて平然としていられるはずがない。

にも関わらず、あの時花山はまともに受けても平然としていた。

 

さらに言えば、武術をやっているような歩き方では無かったが、スーツの上から見て取れる程の異常な筋肉量。

あれだけの筋肉量であれば、トランプを引きちぎる程の握力があってもおかしくはない。

 

綾小路が現在分かっていることで判断するとすれば、『総じて得体の知れない男。特に身体能力に関しては想像もつかない』…だろう。

少なくとも今現在分かっている段階では最も警戒しなければならない生徒だ。

 

 

 

そして今回、須藤が嵌められた事件。

相手がCクラスだと聞けば、嫌でも花山と結びつけてしまう。

もしこれを花山が仕組んだのならば、花山は身体能力だけでなく頭を使うことも出来るということになる。知恵比べであれば負けはしないだろうが、身体能力も含めた総合力で勝負すればどうなるか分からない。

 

 

 


 

 

 

「今日はお前達に報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。そこに座っている須藤とCクラスの生徒との間でトラブルがあったようだ。端的に言えば喧嘩だな」

 

朝のホームルームでDクラスの担任である茶柱先生が告げた事実に、クラスの面々は驚きを隠せないでいた。それは前日に須藤自身から相談を受けていた綾小路と櫛田桔梗も例外では無かった。

というのも、昨日須藤から相談を受けた時に、出来るだけ穏便に済ませたいと言っていたからだ。レギュラーに入りかけている須藤の喧嘩が顧問などの耳に入れば、レギュラーが取り消しになることは十分にあり得る。

それを避けるために誰にも知られずに穏便に済ませたいと言っていたのだが、その願いは無情にも打ち砕かれてしまった。

 

「その……結論が出ていないのはどうしてなんですか?」

 

クラスの中心である平田洋介から、至極当然の質問が飛ぶ。

 

「訴えはCクラスからだ。一方的に殴られたらしい。ところが真相を確認したところ、須藤はそれは真実ではないと言った。彼が言うには自分から仕掛けたのではなく、Cクラスの生徒たちから呼び出され、喧嘩を売られたとな」

 

「俺は何も悪くねえ、正当防衛だ正当防衛」

 

悪びれた様子もない須藤に、クラスメイトは冷ややかな視線を向ける。

実際、0ポイントから87ポイントへと増えたと喜んでいたところに水を刺された訳であるので、須藤にヘイトが向かうのも仕方の無いことだろう。

 

「だが証拠が無い。違うか?」

 

「証拠ってなんだよ。そんなもんあるわけないだろ」

 

「つまり今のところ真実は分からない。だから結論が保留になっている。どちらが悪かったのかでその処遇も対応も大きく変わるからな」

 

「無実以外納得いかねーけどな」

 

「本人はこう言っているが、今現在信憑性が高いとは言えない。須藤がいた気がするという目撃者が本当にいれば少しは話も変わってくるんだがな。どうだ、喧嘩を目撃した生徒がいるなら挙手をしてもらえないか?」

 

茶柱先生が問うが、手を挙げる者はいなかった。

 

「残念だが須藤、このクラスに目撃者はいないようだな」

 

「……のようだな」

 

「学校側としては目撃者を探すために、今各担任の先生が詳細を話しているはずだ」

 

「は!?バラしたってことかよ!」

 

当事者のクラスだけでなく、学校全体にまで事件の事が周知されてしまったのは須藤にとっては良くない状況だ。

 

「とにかく話は以上だ。目撃者のいるいない、証拠があるない含め最終的な判断が来週の火曜日には下されるだろう。それではホームルームを終了する」

 

 

 

そして昼休み、食堂には綾小路、当事者である須藤、堀北、山内、池、櫛田が集まっていた。

 

当初は須藤にヘイトが集中し、見捨てようという流れになりかかっていたが、櫛田がこれまでの学校生活で培ってきた人望を駆使し、須藤を助ける流れにシフトチェンジさせたのだ。

今この場に集まっているメンバーは、中間テストの時に池、山内、須藤の赤点組(通称3バカ)を退学させないために協力していたメンバーである。

 

 

「あなたは次から次へとトラブルを持ってきてくれるわね、須藤くん」

 

呆れるようにため息をつく堀北。

 

「ま、仕方ないから友達として助けてやるよ須藤」

 

池がそう言うが、何を隠そう須藤を見捨てる動きを作り出したのは池本人である。池が言わずともその流れになっていた可能性は大いにあるが、結果として池の言葉が発端でその流れが生まれたのには変わりはない。

 

そんなことをホームルームの直後に教室から出て行ったために知る由もない須藤は、悪いなと言った。

 

「それと堀北。また迷惑かけちまって悪い。でもよ、今回オレは無実だからよ。何とかしてCクラスの連中に一泡吹かせてやろうぜ」

 

「申し訳ないけれど、私は今回の件、協力する気にはなれないわね」

 

他人事のように言う須藤の言葉を、堀北は一刀両断で斬り伏せた。

 

「Dクラスが浮上していくために最も大切なことは、失ったクラスポイントを1日でも早く取り戻してプラスに転じさせること。でも、あなたの一件でポイントは支給されることはなくなる。水を差したということよ」

 

彼らDクラスは四月の一月の間にクラスポイントを全て吐き出し、0ポイントからのスタートになっている。そんな中でようやく手に入れた貴重な87のクラスポイントが、須藤の一件によって水泡に帰そうとしているのだ。

 

「待てよ。そりゃそうかも知れないけどよ、マジで俺は悪くないんだって!あいつらが仕掛けてきたから返り討ちにしたんだよ!それのどこが悪い!」

 

「あなたは今どちらが先に仕掛けてきたかを焦点にしているようだけど、そんなことは些細な違いでしかない。そのことに気がついてる?」

 

「些細ってなんだよ。全然ちげぇよ、俺は悪くねーんだ!」

 

「そう。じゃあ、精々頑張ることね」

 

立ち去ろうとする堀北に、須藤は言葉をぶつける。

 

「助けてくれねーのかよ!仲間じゃねえのか!」

 

「笑わせないで。私はあなたを一度も仲間だと思ったことはないわ。何より自分の愚かさに気付いていない人と一緒にいると不愉快になるから。さよなら」

 

呆れたように露骨にため息を吐いた堀北は立ち去っていった。

 

 

 

 

 

その日の放課後、クラス全体としては手分けして聞き込みをすることに決定した。

当然櫛田や綾小路一行も聞き込みをすることになるのだが、櫛田と綾小路は再度堀北へ協力を頼みに行っていた。

 

というのも、堀北鈴音という少女のスペックは非常に高い。協調性や人間性に難があるという事を除けば、この学校においてもトップクラスのスペックがあると言えるだろう。

そんな彼女の手助けがあれば非常に大きな戦力になる。

 

「堀北さんっ」

 

「……何かしら」

 

櫛田が堀北の背中に声を掛けると、立ち止まり振り返った。

 

「須藤くんの件、堀北さんにも協力してもらいたいなって……ダメかな?」

 

「その話なら断ったはずよ?」

 

「そうなんだけどね……。けど、Aクラスを目指すために必要なことだと思うの」

 

「Aクラスを目指すために必要なこと、ね」

 

気が変わらない様子の堀北は続ける。

 

「あなたが須藤くんのために奔走するのは自由よ。それを止める権利は私にはない。人手が必要なら他を当たってもらえるかしら。私は忙しいから」

 

そう言ってこちらに背を向け歩き出す堀北。

 

 

「いいのか?」

 

「……何?」

 

だが去ろうとする堀北を綾小路が呼び止めると、堀北は不機嫌そうな顔を隠そうともせず振り返る。

 

「今回の事件が偶発的なものであったにせよ、人為的なものであったにせよ、Dクラスのマイナスになるのは変わりはない。それに、相手はCクラスだ。一つ上のクラスにも差をつけられるのは良くないんじゃないか?」

 

「……しつこいわね。何を言われても協力する気にはなれないわよ」

 

「何より、Cクラスには『花山』がいる。今回の事件に絡んでいるのかは分からないが、無視できるような生徒じゃないだろ」

 

「…………」

 

そう言うと、堀北は考え込む素振りを見せる。

 

実際に目の当たりにしたのは僅か数分だが、明らかに一般人を大きく凌駕するポテンシャルを持っている事は堀北にだって分かったはずだ。

もしも今回の事件が花山の目論見なのであれば、これから先も後手後手に回ってしまう可能性だって十分に考え得る。

 

しばらく考え込んでいた堀北は、観念したように口を開く。

 

「……今無理に彼を助けたところで彼はまた繰り返すだけよ。それは悪循環じゃない?あなたは今回須藤くんを被害者だと思っているようだけれど私の考えは違う」

 

「え……?須藤くんは被害者、だよ……?だって、嘘をつかれて困ってるんだもん」

 

「もし今回の事件、本当にCクラスの生徒から仕掛けたものだったとしても、結局は須藤くんも加害者なのよ」

 

「ま、待って。どうしてそうなるの?須藤くんはただ巻き込まれただけなんだよ?」

 

櫛田は、堀北の言っていることが理解出来ない様子だ。

 

「どうして彼が今回事件に巻き込まれたのか。その根本を解決しない限りこれから永遠に付き纏う課題だってわかってる?私はその問題が解決されない限り協力する気にはなれないわね」

 

そう言い、今度こそ去って行く堀北。

今回はどちらも呼び止める事なく、堀北を見送った。

 

 

今回の事件、須藤が狙われたのは普段の態度にある。

喧嘩っ早い、短気で粗暴。周囲の印象は最悪。

これらを改善しなければ、これから先も同じような事件を起こすだろう。

それが堀北の言っていた“根本”に当たる部分だ。

その根本を解決するために今回の事件で罰を受けさせる方が良いと判断したのだろう。

 

それを櫛田に伝えたのだが、それでも櫛田は助けるつもりのようだ。

堀北の考えや判断は間違っていないが、櫛田の考え方と判断も間違っていない。

 

 

教室に戻り池達と合流して他クラスを回ったところで、今日の活動は終わりとなったのだった。




待ってくれ。違うんや。
失踪したわけじゃないんや。一応ちょびちょび書いてたんや。アレよ、夏休みってなんでも出来るやん?なんでも出来るけど何もしない事も出来るわけで、結局何もせずにぐうたら過ごしてたって訳よ!ごめん。

今んとこの想定では次は両クラスの話かな?知らんけど。
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