実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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さあさ来たぜ例のシーン!相手は適当だぜ!!


十五の拳

須藤を無実にするために動き出して数日、綾小路達Dクラスは進展がなくなり、事態は停滞を始めていた。

 

進展と言うのは目撃者の発見。これだけ聞けば起死回生のジョーカーのようなカードに思えるかもしれないが、そうはならなかった。

いくつか理由はあるが、まず一つ目、目撃者がDクラスの生徒だったから。今このタイミングで目撃者だと名乗り出た所で、口裏を合わせ目撃者に仕立て上げただけの生徒だと思われることだろう。これが他クラスであれば、間違いなく有効な証言になり得た。

二つ目、彼女(目撃者は女子だった)が積極的な性格では無いこと。クラスにおいても無口で影が薄く、所謂引っ込み思案な性格のため、他人や事件に積極的に関わろうとはしなかった。それが事件が公になった日のホームルームで名乗り出なかった理由に繋がっているのだ。

そして三つ目、彼女が協力することに消極的なこと。二つ目に挙げたものと被るが、彼女は事件に関わろうとする気がないようである。そもそも彼女が目撃者だと発覚したのは彼女自身が名乗り出た訳ではなく、堀北が少ない材料から推理し問い詰めた末に発覚したのだ。その為、彼女自身の性格と相まって声を掛ける度に逃げられているという状況になっている。

 

さらにその進展の無さに拍車をかけるのが、クラスメイト全体のやる気の低下。

元々クラスメイトに好かれておらず、それどころかヘイトを買いまくっている須藤。

進展の無い停滞した現状は、クラスメイトのやる気を削ぐには充分過ぎるほど機能していた。

 

 

 

そんなある日のこと。

 

綾小路はつい先日知り合った一之瀬帆波と通学路を歩いていた。

 

一之瀬帆波はBクラスの生徒で、ストロベリーブランドのロングヘアーと顔立ちと性格や人当たりの良さ、(どことは言わないが)デカさが特徴的な生徒だ。クラスでもリーダー的な立場に立っており、『委員長』と呼ばれ親しまれている。

彼女は個人的ながらも今回の事件に対して協力してくれる姿勢を見せており、世間話も兼ねてこうして一緒に道を歩いているのだ。

 

 

「あ、そうだ。綾小路くんは夏休みのこと聞いた?」

 

「夏休み?いや……夏休みは夏休みじゃないのか?」

 

「南の島でバカンスがあるって噂、耳にしてないんだ」

 

そう言われて、バカンスがどうとかの噂を聞いた事を思い出した。

 

「信じてなかったんだが、本当にバカンスなんてあるのか?」

 

これだけの設備や待遇だけを見ればバカンスがあったとしても不思議ではない。しかし、この学校がまともなバカンスを用意してくれているとはとても思えない。

 

「怪しいよね、やっぱり。私はそこがターニングポイントだとみてるんだよ」

 

「つまり、夏休みに大きくクラスポイントが変動する可能性があると?」

 

「そそ。中間テストや期末テストよりも、グッと影響力のある課題ってやつ?そうじゃないとAクラスとの差って中々埋まっていかないからさ。私たちもジワリジワリ離されていっちゃってるし」

 

「今Aとの差ってどれくらいなんだ?」

 

「うちが660ちょっとだから、もう350近く離されてるね。問題はどれくらい動くかだね、そのイベントで」

 

「ウチは逆にピンチだな。これ以上差が広がったら詰めようがなくなる」

 

「お互い頑張らないとだね」

 

 

しばらく軽い雰囲気で雑談も兼ねた情報交換をしながら歩いていたのだが、一之瀬がふと思い出したように真剣な様子で切り出す。

 

「あのさ……参考までに綾小路くんに聞いてみたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

先程までとは変わった様子の一之瀬に、綾小路は少し身構える。

 

「答えられることなら答えるぞ」

 

「“女の子に告白”ってされたことある?」

 

「……それはあれか?今時告白されたのとのない男子って、みたいな?」

 

思っていたのとは違うベクトルで少々拍子抜けしつつも言葉を返すと、一之瀬はブンブンと手を振りながら否定する。

 

「違う違う!ごめん、なんでもないの」

 

『なんでもない』と言った一之瀬は真剣そのものの表情で、ただの興味本位だけで聞いたようには見えなかった。

 

「もしかして告白されたとか?」

 

「え?あー………うーん………。まあ大体そんな感じ……かな……」

 

かなり歯切れが悪い様子だが、色恋沙汰であるのは確かなようだ。

 

見抜かれたことに観念したのか、話してくれるようだ。

 

「あのさ、良かったら今日の放課後時間貰えないかな?告白のことでちょっと問題を抱えててね。事件のことで忙しいのは百も承知なんだけどさ」

 

「別に大丈夫だ」

 

「そっか。ありがとう!放課後、玄関で待ってるね」

 

 

一之瀬ほどの美少女の色恋沙汰に興味が無いと言えば嘘になる。

ついでに放課後にまた一之瀬に会えることにわずかに胸を高鳴らせながら二人は別れたのだった。

 

 

 

そしてその日の放課後。

約束通り綾小路と一之瀬は落ち合い、体育館の裏手へと移動した。体育館の裏手は殆ど人通りは無く、まさに告白にはうってつけの場所だ。

 

「さてと………」

 

息を整えてからそう言いながら振り返る一之瀬。

 

緊張した面持ちで、僅かに頬を赤らめながら話し始める。

 

(これはあれか……告白されるんだが、傷付けることなく断りたいから彼氏役を頼みに来たとかそんな感じじゃないか?)

 

そう綾小路は予想を立てる。まさかそんなベタな展開は無いだろうと思いながらも、半ば超展開を諦めていた。

 

 

「私、告白するつもりなの」

 

 

が、その予想は思いもよらぬ方向へ裏切られることになった。

 

「……………え?」

 

かなり間抜けな声が出てしまったが、すぐに思考を切り替える。

 

「……それって俺が居ない方がいいんじゃないのか?」

 

「あのね、どんな風に告白したら良いか分からなくて……どういう風に告白したら良いか意見を聞こうと思ってね」

 

面倒なことになったなと心の中で愚痴を零す。

 

『彼氏役をしてくれ』のような比較的軽いお願いかと思っていたが、まさか告白の仕方を相談されるとは思ってもいなかった。

常人を遥かに上回る知識を蓄える綾小路と言えど、告白の仕方など知るはずも無い。

 

「悪いが、生憎俺も告白されたことなんてないから上手く答えられそうにない」

 

「……どうにかならないかな?」

 

綾小路は首を横に振る。

 

「そっ……か………」

 

悲壮感溢れる様子で残念がる一之瀬。

そんな一之瀬の様子を見て罪悪感に苛まれる綾小路。

 

「…………………」

 

「……参考までに聞くが、相手はどういう生徒なんだ?」

 

流石に見ていられないと思ったのか、綾小路は少しでも助力をしようと情報を集める。

 

「優しい人だよ」

 

全く参考にならない。

大多数の人間は優しくない人間に惚れたりはしないだろうに。

 

「他には?」

 

「逞しいところ……かな」

 

「へぇ……」

 

『逞しい』となると、随分と絞られてくる。

『頼もしい』でなく『逞しい』であれば、恐らくは体型や筋肉量を指しているのだろう。つまりマッチョ。

 

そこまで来ると、人物像はある程度分かってくる。

一之瀬に優しさを見せる場面があったということは、クラスで日陰のインキャマッチョなどでは無く、陽キャマッチョ。

つまり運動部。であれば体育会系。とくれば、変に曲げずに直球勝負で決めるのが無難だろう。多分。知らんけど。

 

「普通に直球勝負で良いと思うぞ?」

 

「ほ、ほんと?普通の告白で大丈夫なのかな?ボキャ貧だって思われたりしない?」

 

「それは流石にしないだろ……。で、その相手はいつ来るんだ?」

 

「4時って伝えたから、もうそろそろじゃないかな?」

 

時計を見ると、既に4時まで残り10分を切っていた。

 

「そろそろ俺は離れた方が良さそうだな」

 

「うん、そうだね……。ありがとう綾小路くん!助かったよ!」

 

「あぁ。頑張れよ」

 

「うん!」

 

 


 

 

「付き合ってるヒト………とか……いますか?」

 

花山薫は困惑していた。

 

放課後、女子からの呼び出し。

これだけでもある程度要件は察する事が出来るだろうが、やはりどうしても動揺は隠し切れない。

 

 

長い沈黙が下りる。

 

 

「それは…………………いない」

 

たっぷり間を置いてから答えた花山の言葉を受けて、それを待ち望んでいたかのように一之瀬は口を開く。

 

「わたし……ダメですか?花山くんの彼女になれませんか?」

 

「ーー!」

 

花山は少し目を見開く。

 

「ダメ………ですか………?」

 

「………………」

 

「ご、ごめんね。困っちゃうよね。いきなり……こんな………」

 

ワタワタと焦るように言葉を紡ぐ一之瀬。

 

「あ、あの………でも」

 

そこで一度言葉を切る。

 

「…………本気だから」

 

赤くなった顔を隠そうと花山に背を向けて、念を押すように続ける。

 

「伝えた言葉はホントの本心だから……。考えといてね」

 

そう言って走り出そうとする一之瀬。だがそれを、他ならぬ花山が止める。

 

「知ってるのかい」

 

その言葉を受けて、一之瀬は振り返る。

 

「男と女、付き合うってどういうことか……知ってるのか」

 

花山のいつもより幾分か鋭い視線を一之瀬は真正面から受け止める。

 

「男と女は………“キレイ事じゃすまされない”とか、そういうことかな?」

 

花山は「参ったな」とでも言いたげなように天を仰ぎ、ズレてもいない眼鏡を直す。その顔にはやや冷や汗が浮かんでいた。

 

「まぁ、そういうこともだ…」

 

「ハッキリ言っていいよ。“セックスもするんだぞ”……って」

 

ざわり、と、空気が揺らいだ気がする。

それは単に風によってか、はたまた花山の動揺によってか。

 

そんな空気に耐え切れなくなったのか、慌てて一之瀬が言葉を繋げる。

 

「あ、あの………し…知ってるよ。わ……わたしもそう思うから」

 

花山の表情は眼鏡が反射して分かりにくい。

 

「彼女になる……って、そういうことだって」

 

カチャカチャ。

 

「恋人どうしになれば……」

 

ジィィー…。

 

と、妙な音に気付いたのか一之瀬は「え」零す。

 

ズルリ。

 

 

そして花山は、徐にズボンを脱ぐッッ!!

 

 

「えッ!えッ!今するの!!?」

 

そしてベリっとふんどしを剥がすと、花山の逸物が露わになる。

 

「いいのか……こんなだが…」

 

それは、チ○チ○というには余りに大き過ぎた。

大きく、太く、そして長すぎるチ○チ○だった。

 

「あえて言うなら……まあ……あれだ……ホンバンでは、これの1.5倍だ」

 

その言葉を受けて、帆波に電流走る。

 

「イケるのか…オマエ()で」

 

カチャカチャとズボンを履き直す花山。

 

 

「花山くん」

 

顔を真っ赤に染め上げながら、一之瀬は覚悟を口にする。

 

「わたしやるよ」

 

これにはさしもの花山にも冷や汗を隠し切れない。

 

「女のヒト()は赤ちゃんだって産める。だったら花山くん()だって……」

 

 

逡巡。

 

 

「……そうか」

 

そして、花山は覚悟を決める。

 

「よし。一之瀬帆波は、今から俺の彼女(スケ)だ」

 

 

了承の返事に、一之瀬は思わず泣き出してしまう。

 

「…………………」

 

「嬉しい……」

 

それを見つめる花山の目は男……いや、漢の目をしていた。

 

「わたし…頑張る…」

 

 

ガシリ、と一之瀬の両腕を正面から掴む。

その力が強かったのか一之瀬は苦悶の声を上げるが、構わず花山は続ける。

 

「顔を上げろ…」

 

そして近づく二人の唇。

 

交わされる熱い熱いキスーーーー。

 

「〜〜〜〜!!!!」

 

ーーーーでは無かったッッ!

 

ギャババババ!と音を立てそうな程に一之瀬の唇を吸い上げる花山。見るものが見れば、化物に喰われているのかと勘違いしてしまいそうだ。

 

あまりのキスの激しさ()に花山の腕を何度もタップして止めるよう乞うが、キスが終わった時には一之瀬の唇は腫れ上がっていた。

 

「どうした……」

 

花山は白々しくも、何か変なことでもあったかとばかりに問い掛ける。

 

「…ちょっと…」

 

「乳を出せ」

 

突然告げられた言葉に一之瀬は困惑を隠せない。

 

(ち……乳ッ……!??)

 

そして鮮明に思い出されるのは、つい先程のキス。

 

もし………。

 

もしあのキスのように乳を吸われれば……。

 

でろんと垂れ下がるのを容易に想像出来てしまった。

 

ーーーーーーーー。

 

「あっ……あの……あの………花山くん…。わたしたち……もう別れよ……ね?」

 

その言葉を了承したとばかりに掴んでいた手を離すと、一之瀬は一目散に走り去っていく。

 

 

ーーそれでいい。

 

花山は安心したように、道端の雑草の茎を少し千切る。

 

これが花山の狙いであった。

花山の歩む人生は些か過激過ぎる。そのため、彼女を巻き込ませまいと、自分を好きだという気持ちを根本からへし折ったのだ。

 

ーーこれでいい…。

 

パク……と茎を口に咥える。

 

ーーだがよ……。

 

もぞもぞと口を動かす。

 

ホントはよう……

 

ボソリと言い、ペッと茎を吐き出すと、その茎はキレイに結ばれていた。

 

ーー俺は上手いんだぜ!!!

 

 

 

それから数日、一之瀬はマスクをつけて登校したらしい。




別に一之瀬が花山に惚れててもいいよなぁ!??だってギャグなんだもん!!
もし万が一白波ちゃんの告白が何かの伏線やったりしたらちょっとヤバいけど流石に無いでしょ?いや、流石にね?

携帯で書いてる時に間違えて一之瀬を“ちちのせ”って書いちゃったんやけど、実に的を射た表現やなって我ながら感心してしまった。
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