最初は一之瀬の告白イベントと並行した時間に花山も『一方その頃……』的な感じでやろうと思ってたんですけど、それやったらただ創面を文字に起こして原作を丸写ししただけみたいな感じになるやないですか?流石にそれは…ってなるやん?そこでどう変化させるかってなった時に、「あれ?別に原作でも重要なシーンじゃないんやったらバキバキに変えても問題なくね?一之瀬が告白しちゃっても良くね?」ってなったのよ。急な展開になったのはホンマごめん。俺の話作る才能やったらこうせざるを得なかったと理解してくれたら助かります。
「おはようございます。花山くん」
花山が登校すると、いつものように椎名が花山に挨拶をする。
「あぁ」
「昨日はどうしたんですか?“先に帰っててくれ”なんて」
「……用事だ」
「……?そうですか…」
あまり言いたくない事のようだ……と椎名は察し、これ以上追求することは辞めておいた。
「あ、そうです!花山くん、夏休みの事を聞きましたか?」
「夏休み?」
「あれ、知らないですか……石崎くんは?」
「いや、俺も何も聞いてねぇけど…」
「夏休みにバカンスがあるそうですよ?」
「へぇー…それってマジなのか?」
疑い深い視線を向ける石崎。この学校が本当にバカンスなんてものを用意しているとは正直思えない。
「他のクラスでは先生から言われたそうですし、本当だとは思うんですけど……」
「ま、十中八九“何か”あるだろうな」
3人の会話に、新たな声が入って来た。
「あ、龍園くん。おはようございます」
「よう」
「あぁ」
椎名、花山が挨拶をすると龍園も挨拶を返す。
そして、先程の龍園の言葉の真意を問おうと石崎が口を開く。
「何かってなんだよ?」
「さあな。ただ今までのちゃちな試験とは違うって事は確かだろうぜ」
「ほーん?」
龍園は優秀だ。まだ花山と敵対していた時は花山がデカすぎて小物に思えてしまったが、味方になればよく分かる。
龍園という男は頭が切れる。今回のDクラスとの事件だってポイントを掻っ攫う以外にも、学校側のこういう時間に対するスタンスを把握したりするといった目的もあるのだ。唯一目立った失敗はと言えば、花山に敵対してしまったことぐらい。
であれば、夏休みのバカンスにも“何か”があるという龍園の予想もバカに出来ないだろう。
「DクラスがBクラスと手を結んだようだ」
僅かに、ほんの僅かに花山がピクリと反応を見せる。
「……それって不味いんじゃねぇの?」
「不味いことなんてねぇよ。やれることなんて精々目撃者を募る事と罰を軽くするように訴えることぐらいだ」
「でも、Bクラスから目撃者だと名乗り出る生徒が出て来たらどうすんだよ?」
「変わらねえよ。最初の段階で名乗り出なかった時点で目撃者は居ないとほぼ確定してるんだ。今更出て来た所で口裏を合わせただけだって丸わかりだしな。何より証拠が無けりゃ有力な証言にはなり得ない」
「………………」
椎名は違和感を感じていた。
一見完全に詰ませているこの状況。万が一目撃者が出て来たとしても、龍園の言う通り証拠が無ければ証言としての力を持たない。完全な証拠を持った証言があった時点で此方の負けは確定するが、誰も名乗り出なかった事から恐らくは居ない。
しかし何故だろう。自分がもしDクラスだったとして、この状況が本当に詰んでいると言えるのだろうか。
何処かに抜け道があるような気がしてならなかったのだ。
何やら考え込んでいる椎名に龍園が問いかける。
「どうした、ひより」
「……いえ、なんでもないです」
「……………そうか」
訝しく思った龍園だったが、椎名を追求することはしなかった。
その数日後の放課後。
龍園、アルベルト、花山、椎名、石崎の5人はカラオケルームに集まっていた。
もちろん、カラオケをしに来たわけではない。
今日は先日の事件についての裁判の日だ。その為、その結果を即共有出来るように集まっているのだ。
実際の所、既に計画の成功が確実とも言っても良い現状で、態々全員揃って結果を待ちわびる程の重要度は無い。
それでもこうして集まっているのは、“仲間”になってから初めてのアクションであるためだ。何事も最初、出だしというのは重要だ。勢いや他クラスに与える精神面での影響は言うまでも無い。
椎名がいつも通りのマイペースさを発揮し、椎名の歌声を聴きながら小宮と近藤の二人を待っていると、一時間程で二人はやって来た。
「すみません、遅くなりました」
「で、結果は?」
「………あの……」
さっさと結果を言うように龍園が促すが、二人の反応はあまりよろしく無かった。
あわや失敗かと思ったが、もし失敗したのであれば、部屋に入って来た瞬間に土下座をしていたであろうから、おそらく違う。
「どうした?」
「いえ………その………“保留”になりました……」
保留。つまり、結果が出なかったということだ。
「は?保留?」
「はい………」
「……詳しく話せ」
小宮と近藤は、概ね裁判の流れは想定通りだったと言う。
裁判に参加していたのは、Cクラス側は小宮、近藤、そして担任の坂上。Dクラス側は須藤、堀北、綾小路、担任の茶柱。そして裁判官的な立場として生徒会の堀北会長、そして書記の橘。
最初は事件のあらましの説明。
次に互いの言い分の確認。
予め用意していた嘘の事実や坂上の援護射撃、向こうの付き添いが何も言わない事もあってCクラス有利かと思われたが、Dクラスが攻勢に出始めた。
引き合いに出されたのは、不自然な程に怪我を負っている小宮と近藤だ。『喧嘩を先に仕掛けたのは須藤で一方的に殴られた』と主張するCクラスだが、本当に無抵抗だったのであればそこまでの怪我を負うのは不自然だとDクラスは主張した。
「……なるほどな。悪くねえ着眼点だ。ソイツの名前は?まさかあのバカが言ってた訳じゃねぇだろ?」
「確か、堀北って名前だったと思います」
「堀北か……。続けろ」
確かにエネルギーのぶつかり合いである喧嘩は、互いが力をぶつけ合うことで怪我が出来るのであって、一方的に殴られた場合には怪我が出来にくくなる。
その点に注目したのは悪くないと、龍園は評する。
そして、誤算だった目撃者の登場。
Dクラスの生徒だから、自クラスの不利益を避ける為に嘘の証人を立てたのかと思われ、証拠能力は低いかと思われた。
しかし彼女が、事件があった現場に居た事がデジカメによって証明された。とは言え、写真のみでは当時現場に居た事は証明出来ても証言に正当性を持たせる事は不可能だ。結局証言自体はクラスを守る為の嘘だと思われてしまう。
最初龍園が言っていた通り、事件の説明があったホームルームの時点で名乗り出ていれば変わっていただろうが、今になって名乗り出れば疑われるのは当然だった。
そこでCクラス側は落とし所を見つけないかと提案した。
内容としては、Dクラス側には2週間、Cクラス側には1週間の停学。罪の違いは相手を傷つけたかどうかの違いだ。
Dクラス側としてはこれ以上無い程の好条件。このまま須藤のみが悪いということになれば、一ヶ月以上は停学にされていただろうからだ。
断る理由が無いように思われたが、なんと堀北はその提案を蹴った。
完全無罪以外は認めないと啖呵を切ったのだ。
そうしてどちらの証言が正しいのか、嘘なのかを証明するため、一日の猶予が設けられたのだと言う。
「……バカか?その堀北ってやつは」
どこからどう見たって、Dクラスは詰んでいる。
今の今まで見つからなかったのだから、今更証拠や証拠を持った目撃者が見つかるはずなどない。
須藤の無実を証明する方法など存在しはしない。
そもそも、須藤が殴ったという事実がある時点で罰があることは確定している。例えこちらから仕掛けたと証明出来たとしても、須藤に罰が下るのは避けようがない。
「……悪足掻きだな」
炭酸水の入ったコップを弄び、失笑しながらそう呟く。
やはり不可能だ。どう考えても須藤の完全無罪を証明する方法など存在しない。
「ど、どうしますか?」
近藤が恐る恐ると言った様子で尋ねる。
「どうする必要もねぇよ。変わらず今日と同じスタンスでいけ」
「分かりました」
リラックスしたようにソファにもたれかかる龍園は、気楽そうに変更が無い旨を伝えた。
「お、おい、椎名。どうしたんだ?」
ふと、石崎が何かに気付いたように椎名に声を掛ける。
見れば、椎名は先程までバクバクと口に運んでいたフライドポテトが口の前でちょうど止まっており、行動を完全に停止していた。
常に我が道を征くクイーン・オブ・マイペースの名を冠する椎名ではあるが、ボーっとしているような事はあまりない。そんな椎名が、間抜けな所で固まっているのが物珍しく石崎は思わず声を掛けたのだ。
「…分かってしまったかも知れません」
「あ?」「は?」「え?」「what?」
「分かってしまったかも知れません」
「……何がだ?」
「須藤君を無罪にする方法が、です」
ちょっと短いけど、ちょうどキリが良かったんでね。
前話の事をちょっと考えてたんやけど、一之瀬って絶対初心で男のアソコなんかパパ以外の見たこと無いやん?で、次に見たのが花山のでしょ?これから出会う男とか、パパとか、めっちゃ可哀想やな〜って。「花山くんのより……ちっちゃいね」とか言われたら泣くわ。