実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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いやポケモン楽しすぎ
ポケモンのSS書いてみた杉内

次から無人島で、今回は息抜き回?的な。


十八の拳

既に夏休みまであと数日となったある日の放課後の事である。

 

「花山さん!帰りましょう!」

 

「ん」

 

いつものようにHRが終わると即座に石崎が駆け寄り、それに椎名がひょっこりと付いて行き帰路につく。

 

先日の事件以降は特に何事も無く、非常に平和な学生生活を満喫している。もうすぐ夏休みということもあって、どこか浮かれた雰囲気が漂っている。

流石の龍園も昨日の今日で忙しなく動く気は無いようで、表面上は大人しく学生生活を送っているらしい。どうせ裏で何か根回しやら下見やらしているんだろうが。

 

 

「ちょっと」

 

歩きながら何気ない雑談をしていたところに声が掛かる。

 

見れば、青みがかった髪をショートカットに切り揃えた少女、同じくCクラスの伊吹澪が立っていた。比較的身長も小さく華奢な印象を受けるが、体育なんかは女子の中では1番成績が良かったと記憶している。

 

「あ?なんだよ」

 

「アンタには用は無いから」

 

バッサリと切り捨てられた石崎。あまりにもぞんざいな態度に最近優しさの化身と化してきている石崎もイラつきを禁じ得ないが、ここは花山の舎弟に足る器の大きさを見せる為溜飲を下げる。

 

「伊吹さん、でしたよね?何か御用でしょうか?」

 

人の名前を覚えるのが得意では無い、と豪語する天然記念物椎名と言えど、流石にクラスメイトの顔と名前ぐらいは既に一致している。

特に話した事もなく、関わりは無かったように思える。加えて言えば一人で行動していることが多く、一匹狼のような印象を受けるが、授業などは真面目に受けていた。

 

人との関わりを避けている伊吹が、生粋の有名人である花山へ声を掛けたのは些か不自然に思えた。

 

 

「……アンタさ。なんであんな奴のやり方を許してるわけ?」

 

「“あんな奴”?」

 

確かな不快感を纏わせながら花山に問い掛ける伊吹。

 

「龍園のこと!」

 

半ばイラついたような声音で伊吹が答える。花山にそんな態度で物を言える女子など、この学校にもそうはいないだろう。それだけの度胸と胆力を持ち合わせていることの証明だ。

 

「…と、言うのは?」

 

流石に質問の意図を測りかねていた椎名が問い掛ける。

なんで椎名はバッサリ切り捨てられないんだ…とは、石崎の心の声である。

 

「……アイツのやり方が嫌い。あんな風に正々堂々戦わずに裏で陰湿な事をして、他人を貶めるような事をするのが気に入らないのよ」

 

この前の事件だって…と伊吹は吐き捨てる。

言わんとすることは分からないでもない。生真面目な伊吹は、龍園の邪道のやり方が気に入らないということだろう。

 

ただ、それで何故花山達に物申しているのかが分からない。

 

「えっと……それをなんで私達に?」

 

「そうだよ。龍園に直接言えば良いじゃねぇか」

 

「言って、アイツが何か変えると思う?」

 

「……確かにな」

 

それはそうだ。女子一人の意見など龍園は気にも止めないだろう。適当にあしらうだろうし、あまりにしつこければ力で分からせられる事は想像に難くない。

 

「ってことはよ。自分の意見じゃ通らねぇから花山さんに泣きつきに来たってことじゃねぇの?」

 

「違う!」

 

石崎の言葉を即座に否定する。

 

「ただ……アンタも私とおんなじようにーーー」

 

と、そこまで言いかけたところで言葉を止める。

言うかどうかを迷っているように口をパクパクと何度か開いて閉じてを繰り返す。

 

「〜〜っ!やっぱもう良い!帰る!」

 

だが言う気が失せてしまったのか、突然ズカズカと帰って行ってしまった。

 

後に残ったのは不自然な沈黙。

 

 

「……なんだったんでしょう?」

 

「……さあな」

 

結局なぜ声を掛けられたのか理由を知ることは出来ずに、伊吹を見送っていく事となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み。

 

学生にとって最も尊く、聞くだけで嬉しくなるような言葉。

宿題さえ終わらせてしまえば、何の憂いもなく一夏の思い出を作る事が出来る。

 

だが残念な事にこの政府が建てた東京都高度育成高等学校では夏休みが存在しない……なんて事はなく、一般的な学生と同じように夏休みが存在している。

家に帰る事は出来ないが、敷地内に建てられたあらゆる娯楽施設は学生を飽きさせる事はない。加えて一年生には“バカンス”までもが用意されているらしく、そこらの学生よりも良い生活をしていると言えなくも無い。

 

 

さて、先程述べたように、この学校にはそれもう楽しい楽しい夏休みが設けられている。

だがそれを楽しむには、一つの試練が残されていたのだったーー!!

 

 

 

「…………」

 

夏休み初日。何やら腕を組んで目の前に並べられた教材を睨みつける大男。誰あろう……。

 

そう、我らが花山薫である。

 

目の前並べられているのは、夏休みを楽しむ為の試練ーー宿題ーーである。

 

 

「さ、花山くん。ササっと終わらせて、夏休みを思い切り楽しみましょう!」

 

ムン!と両手で握り拳を作る椎名。

だが対する花山の顔は晴れない。

と言うのも、実はこの花山、夏休みの宿題は最終日までやらないタイプである。ある意味で夏の風物詩とも言えなくもないが、とても自慢できるようなものでもない。

実際中学の時はエリートである木崎と決死の追い込みを行ったものの、九九という初歩の初歩で躓き、間に合わなかったという過去がある。

夏休みの宿題など早くやっておいた方が良いに決まっている。決まっていることを分かっているはずなのだが……やはり花山も男子高校生。宿題がめんどくさいという気持ちがどうしても出てしまうのだ。

 

「…?どうしました?花山くん」

 

「……いや……何から手を着けるか考えてたとこだ」

 

 

チラリと隣を伺えば、石崎がカリカリと問題を解き始めており、出遅れた事を察した花山は一番上にあった教材を開き問題を解き始める。

 

 

この場にいるのは三人。花山、石崎、椎名のいつメンだ。

椎名は宿題が出た瞬間から取り掛かり、既に殆ど終わっているらしく、石崎は椎名に比べてペースは遅巻きながらも、真面目に宿題をこなしている。

そして最もヤバそうな花山に椎名が張り付いて勉強を教え、石崎がつまづいた所は椎名が教えているという形だ。

 

 

「あ、違いますよ花山くん。ここはこの公式を使うんです」

 

開始僅か15秒で本日一つ目のミスが指摘され、即座に解き直す。非常に先が思いやられる、順調とは言えない滑り出しから花山は夏休みをスタートすることとなった。

 

 

 

 

 

「そろそろ休憩にしましょうか」

 

椎名の一言で、空気が弛緩し脱力感溢れる溜息が花山の自室内に広がる。

 

昼過ぎから始めたこの勉強会だったが、既に夕方になっており、かなり長い時間集中していた事が分かる。

 

「あ〜づがれだ〜」

 

「頑張ってましたもんね、石崎くん」

 

「おうよ。けっこー終わったぜ」

 

そう言って、ドサリと終わった分の宿題を見せてくる。

 

「わ、すごいですね……」

 

パラパラと椎名がページをめくると、字の荒々しさはあるものの、真面目に取り組んだ事が分かる程出来が良かった。

 

そんな石崎の今日の成果を見た後に、花山は自身の成果へと視線を向ける。

 

見れば、量にして石崎の3分の2程の積み上げられた宿題。

理由は分かり切っている。一重に解くスピードの問題だ。スラスラと問題を解く石崎と、間違いを指摘されて直しながら進めていくのとでは速度に大きな差が出るのは自明の理。

 

だが、自分の事をを慕っている存在である石崎に負けているという事実は、花山に危機感とモチベーションを与えるには十分であった。

 

 

「……ひより」

 

「どうしました?花山くん?」

 

「今日予定はあるか?」

 

「いえ、特には無いですけど……」

 

「もう少し付き合ってくれるか?」

 

「…!」

 

椎名は驚きを露わにする。

事勉強に関して、花山にはさぼりぐせがある。早めに宿題をやっておかなければズルズルと最終日まで宿題が持ち越される事を懸念しての、半ば無理矢理の勉強会だったのだ。

 

だが、まさかまさかの、花山本人からのおかわり要求。

つい先程まで限界までやり切った所で、精魂ともに尽き果てたと思っていただけに、椎名は驚きを隠し切れない。

 

「えっと……私は大丈夫なんですけど、花山くんは大丈夫ですか?何時間もずっと集中してやってたわけですし……」

 

勉強の習慣自体はついてきているものの、こう何時間も続けて休憩無しで脳を酷使するのはかなり堪えるはずだ。

 

「問題ねぇ」

 

「……そうですか」

 

そう思っての椎名の心配だったが、花山の活力のある視線にやる気がある事を感じ取り、再び教材を開き勉強を再開させる。

 

 

何がトリガーになったのかは分からないが、花山が自分から『勉強したい』と言い出す事は珍しい。このモチベーションがいつ無くなるか分からないと考えた椎名は、先程までよりも早いペースで宿題を捌かせていく。

先程までより格段に早いペースに付いていくことが出来たのも、花山のモチベーションが上がった事が大きな要因である事は言うまでもない。

 

なお、そのモチベーションの発端となった石崎は既に寝息を立てていたのだった。

 

 


 

 

氏名:石崎 大地  いしざき だいち

 

クラス:1年C組

 

部活動:無所属

 

評価

 学力 D+

 知性 D-

 判断力 E

 身体能力 C+

 協調性 C+

 

面接官からのコメント

 運動能力は平均よりやや上のレベル程度ではあるが、中学校では少々有名な不良生徒だったことを把握している。当校ではこういった生徒にも救済措置を与え成長を促す必要があると考える。同クラス、花山薫との関係には最大限注意を払う必要がある。

 

担任メモ

 予想に反し、非常に大人しく学生生活を送っている。学力面でも大きな改善が見られており、粗暴さや喧嘩っ早さなどは見られない。いつも一緒に行動している花山の影響が大きいものと思われる。

 

 


 

 

氏名:椎名 ひより  しいな ひより

 

クラス:1年C組

 

部活動:茶道部

 

評価

 学力:A-

 知性:A-

 判断力:C

 身体能力:E

 協調性:C+

 

面接官からのコメント

 物静かな生徒で、提出された資料によると幼少期から一人を好む傾向が強い。友人と呼べる存在は殆どおらず、またそれを望んでいる様子も見られない。学力、勉強に取り組む姿勢や知性には問題が見られないため、協調性や友人や構築する力を身につけ社会への対応力をあげていってもらいたい。

 

担任メモ

 花山や石崎と友人関係にあるようで、彼らを通じてクラスメイトの繋がりもあることから、協調性に問題は見られない。椎名の影響で花山の学力も上がっているようなので、これからも頑張ってもらいたい。頼むから花山を退学させないでくれ




花山が活躍する機会無かったからインタビュー形式しばらく無かったけど、そろぼち来るから待っててくれな!早く書きてえ。


〜次回予告〜

豪華客船に乗る花山達一年生。2週間のバカンスの旅の最初の一週間を無人島の浜辺で過ごす為に移動する。
楽しい楽しいバカンスのはずが……。

『特別試験やるやで〜^』
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