因みに序盤はただのギャグ。折角考えたのに出さずに封印するのも勿体無いと思って出してみた。
「凄かったですね、あの生徒会長さん」
「……俺はあーゆう真面目ちゃんタイプは嫌いなんだよ」
説明会を終えて体育館を出た花山達は体育祭の外で雑談に興じていた。
「…結局ひよりは茶道部に入るのか?」
「はい、そうしようと思います」
「入部受付をしてる今の間に行ってきたらどうだ?」
「良いんですか?」
「あぁ、行ってきな」
「では、お言葉に甘えて…」
そう言って、椎名は茶道部の受付の方へ歩いていく。
「なぁ、ちょっといいか?」
後ろから聞こえた声に花山と石崎が振り向くと、そこに立っていたのは一人の男子生徒だった。
「あ?なんだテメェ、花山さんに気安く話しかけてんじゃねぇぞ?」
「俺は3年の水上。君、水泳部に入る気は無いかい?」
石崎に凄まれても動じる事なく答えた水上と名乗った三年生。見るからに不良の石崎に凄まれても動じないのは、三年生であるが故の落ち着きなのか、それだけの経験をしてきたということなのか。
「だからよぉ……花山さんに話しかけてんじゃーー」
「ーーやめろ大地」
「ハイッ!!」
「すいやせん、先輩。連れが失礼をしやした…」
「いや、気にしないでいいよ。それで、どうかな?君の体格なら……」
「すいやせんがーーー」
「ちょっと待って貰おうか!」
「っ!?…お前は…!サッカー部キャプテンの丸山!」
「待ちなよ一年生。水泳なんてダサい競技しないで、一緒にサッカーやろうぜ!!」
「なんだと貴様!」
「ふん…水泳なんて古いんだよ。時代はサッカーだ。一緒にゴッ○ハンドを習得しようぜ!」
「待て。貴様ら」
「お前は…!」
「…ウェイトリフティング部部長の山重!」
「一年生、君のカラダをイカせるのはウチの部だけだ。共に全国制覇を目指そうじゃないか!」
「待てぃ!」
「お、お前は……!」
「ラグビー部キャプテンの十郎丸!」
「君の体格を真に活かせるのはラグビーだけだ!君ほどのFWが入れば、全国一位間違いなしだ!さぁ、ONE TEAMになろう!」
「待てよ、脳筋」
「何!?」
「今度は誰だよ……」
「俺はバスケ部キャプテンの八村・ステフ・レブロンだ。バスケなら君ほどの体格があれば日本なんてチャチな次元じゃない、NBAだって夢じゃないんだ!一緒にNBAを目指そう!」
「冗談は名前だけにしろよ……なんなんだよその名前。有名選手を組み替えただけみてぇなダッセェ名前しやがって」
「思いつかなかったんだよ!悪かったな!」
「待ちなさぁい」
「「「!?」」」
「ねぇ、坊や。こんな男どもほっといて、オネェさん達と“イ・イ・こ・と”しなぁい?」
「料理部の奈須!?」
「君ほどの体付きの子がウチに入れば、毎日美味しいお弁当が(自分で作って)食べれるようになるわよぉ?」
「「「いや、ガタイ関係ねぇじゃん」」」
「えっ」
「花山くん、いつの間にか人気者になっちゃってますね」
部長達があーだこーだと言い合っている間に椎名が戻って来ていた。
「入部出来たのか?」
「はい!バッチリでした!」
「……じゃあ帰るか」
「あの先輩方は良いんですか?」
「……………ほっとけ」
すっと一瞥したが、さすがに面倒くさいと思い放って帰ることにした花山であった。
因みに、彼らの議論は7時過ぎまで続いていたとかいなかったとか……。
それから数日が過ぎ、授業にも慣れて来た頃のある日のこと。
「次は水泳ですね」
「………………………」
「どうしたんですか?」
「………………いや。行くか」
「はい!」
次のプールの授業の為に更衣室に向かう花山と石崎。
「………………ハァー………」
「ど、どうかしましたか?」
「………………いや、なんでもない」
「そ、そうすか………」
花山の気分はどん鬱であった。
その理由は、次の時間に待ち受けるプールにある。
プールの時間が憂鬱……と聞けば、大抵がカナヅチであるという理由を思い浮かべるだろう。
しかしながら花山はカナヅチではない。
ならばなぜ………?
突然だが、『
遥か昔、山賊に襲われた際に旅の博徒が花山家の幼子に寺の鐘を被せて背負い、死してなおその幼子を守り抜いたとされている。
その博徒を侠客の鏡として崇め、『侠客立ち』と称した彫物として代々花山家に現在まで語り継がれている……というものである。
要は彫物……刺青、タトゥーだ。
つまり、花山の背にも『侠客立ち』が刻まれているのだ。
花山に限ってはこの『侠客立ち』にまつわるもう一つの伝説があるのだが、一先ずそれは置いておこう。
そして彫物を刻んだまま学校のプールには………というわけで、花山の気分はどん鬱になっているのである。
中学の時は、木崎がウェットスーツのような競泳水着を用意してくれて、彫物がバレることもなかった。
だが今は競泳水着を持ち合わせていない。
となると学校から支給されるオーソドックスな海パン……つまり彫物を隠すことが出来ないのである。
ならばどうするのか…………。
どうしようもないのである。大人しく彫物を曝け出すしかないだろう。
とは言え、この学校のルールに彫物を禁止するような校則は無かったし、プールの利用規則にも彫物を禁止するようなルールは無いことは確認済みだ。
だから怒られる謂れは無い。無いが…………。
善良な学生として生きる事が不可能になる可能性が高い。
故に、花山史上最も重い足取りで学校を歩いているというわけだ。
考えている内に更衣室に到着してしまった。
既に何人かは着替え始めており、自分だけ着替えないと怪しまれる。
花山は意を決してーーーーーー。
当時の様子を、同じクラスの鈴木英俊が話してくれた。
「まぁ……みんな興味深々でしたね」
「そう、興味深々です。なんて言ったってあのガタイですからね」
「そりゃどんな体をしてるのか気になりますよ」
「だからですかね?彼がこちらに背中を向けながら服を脱ぎ始めた時、男子みんな彼を見てたんですよ」
「そしたら………ねぇ?」
「まさかあんなのが出てくるとは思わなかったですよ!ホントに」
「何というか、只者じゃないって感じはしてましたけど、アレは…こう、ねぇ?」
「あんな刺青見たこと無かったですよ」
「みーんなポカーンとしてましたね」
「それに、見ました?アレ本物の傷痕なんですよ」
「やばく無いですか?最初はあの傷も刺青なのかと思ってたんですけど、よくよく見たら本物なんですよ」
「いや、ホント只者じゃ無かったですね」
「あんなに傷がつくなんて普通はあり得ないでしょ?」
「薄々分かってはいたんですけど、この時確信しましたね」
「『あ、この人ヤクザだ』って」
「石崎くんもビックリしてましたね」
「当時は怖いが先行してましたけど、なんというか、カッコいい……ですよね。こう、背中で見せる漢って感じがして」
「そのあとですか?僕は花山くんよりも先に着替え始めてたので、早めに更衣室を出たんですよね」
「プールの広さとか設備について話していると、花山くんよりも先に女子が出て来ました」
「僕らは先に見てしまったから大丈夫だけど、女子は大丈夫なのかなーって思ってましたね」
「何人かはアルベルトくんを見てビックリしてましたけど、『あんなので驚いてたら花山くんを見たら泣き出すんじゃないか?』って思っちゃいました」
「で、ついに花山くんが来たんですよ」
「普通に正面から歩いてきたのでまだ背中は見えてないんですけど、それでも凄い体してましたね」
「筋肉とかも凄いんですけど、何よりやっぱり無数の傷痕ですかね」
「女子の方からちょっと悲鳴が聞こえてきましたもん」
「『おいおい、君達、こんなんで驚いてたら背中見た時卒倒するぜ?』って変な余裕みたいなのが出てきちゃいましたよ」
「それで、花山くんが歩いてくるわけですよ」
「そしたら花山くんの背中も女子達の視界に入ってくるわけで……」
『『『キャァァァ!!!』』』
「まぁ予想はしていましたね」
「悲鳴ぐらい上がるんじゃないかなーとは思ってました」
「いや、仕方ないですよ。だってあんなの見たらだれでもビビりますしね」
「気がついたら、何人かを除いて殆どの男女が固まって花山くんの所がぽっかりと空いてる状況になってました」
「僕も怖かったですし、みんな怖かったんじゃないですか?」
「みんな…は嘘でしたね」
「一人、そんなことをモノとも思わない生徒がいたんですよ」
「誰か分かります?」
「……そうです。椎名さんです」
『うわー』
「そんな風に感嘆の声を上げながら近づいて行ったんです」
「その時女子の誰かが『ダメッ…危ない!』って小声で言ってて、今思えばちょっと笑えますよね」
『凄いですね……触っても良いですか?』
『ん…』
『おーー…すごい……』
「天然って怖いなって思いましたよ」
「いえ、花山くんの方が怖かったんですけどね」
「というか、平気で花山くんに触ろうと思うの凄いですよね」
「僕だけじゃないと思うんですけど、今でも怖いですもん」
「で、その後先生が来たんですね」
『よーし、じゃあ授業を始めるぞー………ん?どうしたんだ、おまえ………ら………』
「人の顔色があんなに分かりやすく変化したのは初めてでした」
「真っ青でしたよ」
「でもまぁ、流石は教師……っていうべきなんでしょうかね?」
『お、おい花山。それは…………』
『なんすか』
『い、いや〜……なんというか……その……背中の……』
『……これですか。実はバイクの事故でやっちゃいまして……』
「絶対嘘だと分かりましたよ」
「バイクの事故でどう転がったら刺青入れることになるんでしょうね」
『事故で……?い、いや、流石にそれは…………いや、うん。そうか、事故ならしょうがないな。うん』
「後から聞いたんですけどこの学校、刺青を規制するようなルールが無かったらしいです」
「だから教師も強くは出れなかったってことじゃないですか?」
「その後は、準備体操をして軽く泳いでから、50M自由形の競争をすることになったんですよ」
「一位になったら5000ポイントが貰えるって言うんで、結構張り切ってたんですけど………」
花山はスタート位置に着く。
既に石崎や女子達は泳ぎ終えており、残っているのは花山を含む男子数人だ。
「花山さーん!頑張って下さーい!!」
「……ん」
「用意………スタート!!」
体育教師の号令で一斉にスタートする。
だが、花山はまだスタートしない。
訝しく思った教師が声を掛けようとしたところで膝を曲げ、飛び込む姿勢のようなものをとった。
当時の状況を、園田正志に聞くことができた。
「あの時ですか?」
「僕は花山くんの隣のコースだったんですけど、最初は一位だったんですよ」
「まぁ、中学の頃は水泳部でしたし、5000ポイントは頂きだなーって思ってました」
「横を見ても花山くんは付いて来ていなかったんで、余裕だなって思いました」
「で、息継ぎの為に顔を上げたんですよ」
「そしたら驚きましたよ」
「花山くんが水上を飛んでるんですもん」
「しかも目の前を通り過ぎて行っているんで、追い抜かれたってことになるんですかね?」
「何をどうやったら人間が水上を飛んでるのかと思ったら、後から聞けば普通に飛び込んだだけ見たいですよ?」
「普通に……って言って良いんですかね?」
「普通に飛んだら水面と平行に飛んだ…なんて信じられます?」
「……これだけでも十分凄かったんですけど、これで終わりじゃないんですよ」
「飛んだ…なんて言ってもいずれ着水するわけで、花山くんも例外では無かったんですね」
「問題はその後ですよ」
「突然、水流が乱れたんですよ」
「いや、そんな言い方じゃ生温いですね。津波が起こったんです」
「ビックリしましたね。普通に泳いでいたら、突然プールサイドに打ち上げられるわけですから」
「いやいや、ホントなんですって!他の人にも聞いてみて下さいよ!」
「打ち上げられた後、ようやく何が起こったのか分かったんです」
「その津波を花山くんが起こしてたんですね」
「ホント、どんな泳ぎ方をすれば津波が起こるんでしょうね」
「僕らは座礁したからまだ良かったんですけど、一人溺れちゃってましてね……」
「もうトラウマ……でしょうね。学校のプールで溺れるなんて夢にも思わないでしょうし」
「え?タイムですか?」
「19秒……ぐらいでしたかね」
「すいません。タイムよりもそっちの方が印象が強くて、あんまり覚えてないんですよ」
「……あ、でも、割と早いタイムの人には先生が水泳部に入らないか声を掛けてたんですけど、花山くんには掛けてなかったってことは覚えてます」
花山が履いてるのってアレふんどしって事で良いの?
前から聞いときたかったのが、刃牙だと花山が握り潰しても割と普通に治ってるやん?握りつぶしてもいいんかな、死なへんのかなって。
別に握り潰す予定が確定してるわけじゃないんやけど、それぐらいの怪我がどれぐらいで治るのかは知っておきたい。有識者カマン!
(追記)森重くんはAクラスって指摘受けたんで鈴木くんに直しました。