実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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感想は時間ある時にゆっくり返しますんでよろしくです。

2日に一回ぐらいの投稿ペースになるかな?
今日買ったプヨテトがおもろすぎてやめられんくなってたらごめんな。


七の拳

 

「お邪魔しま〜す」

 

「お、お邪魔します」

 

問題だったのが家庭学習の時間だったことが判明したので、椎名と石崎はとりあえず勉強の習慣をつけるために花山の部屋に上がり込んでいた。

 

花山の部屋はデフォルトと殆ど変わっておらず、強いて言えば香水なんかが置いてある程度だろう。

 

「男の子の部屋に入ったのは初めてです。凄くさっぱりしてますね。男の子の部屋ってみんなこんな感じなんでしょうか?」

 

「いや、花山さんの部屋が綺麗なだけだと思うぞ?俺の部屋なんかはもっと汚えし……」

 

「へー…今度石崎くんの部屋にも行きましょうか」

 

「いや、それはやめてくれ。マジで」

 

「…なんか飲むか?」

 

「あ、俺は全然大丈夫です!」

 

「私はなんでも良いですよ」

 

「ん」

 

コップを用意し始める花山を見て、石崎が腰を上げる。

 

「花山さん、それぐらい自分がやりますよ!」

 

「座ってろ」

 

「花山さんに飲み物を注がせるなんて」

 

「良いから座ってろ」

 

「でも………」

 

「お前らは俺のお客だ。座ってろ」

 

「……………はい」

 

花山の意思が固いことが分かった石崎は渋々と言った様子で座り直す。

花山は義理人情を重んじている。当然そこに形式的な礼儀なんかもあるわけで、客に飲み物なんかを出すというのはその最たるもてなしの礼儀の一つだ。

それを客にやらせるというのは花山的にはあってはならない訳で、そういうもてなしをした事がない花山ではあるが、ここでは筋を通そうとしていた。

 

炭酸水の入ったコップを椎名の前に持っていく。

 

「こんなもんしかねぇが……」

 

「いえいえ、ありがとうございます」

 

コップを受け取った椎名が一口飲んだところで、本題を切り出す。

 

「それでは、お勉強しましょうか」

 

「おう」

 

「……ん」

 

一人では集中して勉強出来ないが、人が見ている中でなら集中出来るという人も多い。

逆におしゃべりをしてしまい効率が落ちるという事もなくはないが、花山にそれは当てはまらないだろう。

 

とにかく勉強をする習慣をつけることによって、一人になっても勉強が出来るようにしようという意図があっての花山の部屋での勉強会となっている。

 

 

 

しかし、カリカリとペンを動かす音が鳴り始めて僅か20分。

 

既に花山の集中力は限界を迎えていた。

勉強をする習慣が無い上に、自分の空間に他人ーーそれも友達ーーがいるという状況に慣れていないこともあって、花山のペンを動かす手は完全に止まっている。

 

そして自然と視線は一つの引き出しに寄せられる。

最も下の教科書などを入れる事が多い引き出しだが、そこに入っているのは教科書では無い。

入っているのは、花山が愛飲しているワイルドターキーの入ったボトルである。

敷地内のバーで酒を飲む…なんて事が出来ないために、いつも机をバーカウンターがわりにして酒を嗜んでいるのだ。

 

(酒が呑みてぇ……)

 

もはや習慣化している宅飲みを、いきなり勉強に変えられる筈もない。

 

 

そんな花山の集中が切れた様子に目敏く気付いた椎名が声を掛ける。

 

「どうしましたか?花山くん」

 

「………いや、なんでもない」

 

「もしかしてもう集中が切れたんですか?」

 

「…………………」

 

煽っているように聞こえるが、椎名自身にそのような意図は無い。だが花山のメンタルをえぐるには十分な攻撃力を持っていた。

 

「そうですか……思ったよりも集中力が無いみたいですね……」

 

静かに顔を伏せる花山に更なる追撃を喰らわせる鬼畜天然少女椎名。

とっくに花山くんのライフはゼロになっていた。

 

そしてつい引き出しに目を向けてしまった花山を、椎名は見逃さなかった。

 

「……花山くん、そこに何かあるんですか?」

 

「…………いや」

 

「じゃあ見ても良いですよね?」

 

そう言ってスクッと立ち上がり引き出しの方へ歩き出す椎名の前に花山は立ちはだかる。

 

「……………………」

 

「花山くん、見せてください」

 

「…………………」

 

花山がここまで頑なに拒むのは珍しいことだ。

それほど見られてはいけない何かなのだろうか………。

 

そこまで考えたところで、健全な一般男子高校生の石崎に天啓が訪れる。

 

 

さてはエロ本か……?

 

 

と。

 

ここまで見せるのを頑なに拒むということは、人には見せられない、見せづらい何かであることは想像がつく。となるとそれが何なのか………男子高校生であればエロ本が真っ先に思いつく。

花山とて男子高校生だ。エロ本の一冊や二冊持っているだろうし、そういうことをしたくなる時だってあるだろう。

引き出しの中なんてベタなところに隠すとは、まだまだ分かってないなぁ……と思いつつ、花山の尊厳を守らんと石崎も花山側に加勢する。

 

「あー、椎名、勘弁しちゃくれねぇか?」

 

「え?どうしてですか?」

 

「なんでって……ほら、花山さんにだってその………色々あんだろ?」

 

「大地………」

 

花山が救世主を見るような目で見てきたので、グッとサムズアップしておく。

 

「色々…とはなんでしょう?」

 

「そりゃお前……色々っつったら色々だろうがよ」

 

「例えば?」

 

「た、例えば?えーっと………あー、アレ……とか?」

 

「アレってなんですか?」

 

「うぇっ!?え、えーっとだな……アレってのはその、アレの事で……」

 

「アレだけで説明されても分からないんですけど……」

 

だが椎名の固有スキル“天然”の前では石崎の援護など無いも同然だ。

躱そうにも躱せず徐々に追い詰められていく。

 

 

数分程石崎も頑張ってはいたが、最後には「いや、やっぱ分かんないです……」と折れてしまったのだった。

 

天然恐るべしである。

 

 

自らの不甲斐なさに項垂れる石崎だったが、その肩に大きな手がポンと置かれた。

 

「花山さん………」

 

「大地、もう良いんだ」

 

「良いって…………」

 

「ひよりに見せる」

 

「あ、諦めるんですか!?」

 

「…………………」

 

遠回しに伝える方法では椎名は察してくれないから直接的な言い回しをする他無いが、直接的な言い回しをするなら実物を見せるのと殆ど大差ないだろう。

こうなった椎名を引き下がらせるのは不可能。ならば見せる以外の選択肢は無いと花山は考えた。

 

しかし、石崎は違う。

石崎は隠されている物がエロ本だと思っているのだ。

『エロ本がある』という事実だけでも口頭で伝えれば、流石の椎名も実物を見ようとまではしないはずだ。

だが花山は『見せる』と言っている。

つまり、花山は自らの性癖を曝け出すつもりだと言うことになる。

自らの性癖をバラすなど自殺行為だ。椎名は言いふらすような性格では無いとは言え、女子に性癖をバラすなど全裸で女子の前に立っているようなものだ。

石崎とてそれを看過することは出来ない。

 

「そ、それはダメですよ花山さん!」

 

「なんでだ」

 

「………え?」

 

「なんで見せちゃならねぇ」

 

「え、そりゃあ……まぁ……その……尊厳……と言いますか……」

 

「隠し事をしてまで守るような事か?」

 

「え、俺はそうだと思いますけど……」

 

「俺はそうは思わねぇ。生のままだ。生のままでいなきゃいけねぇ……そう思ってる」

 

「隠し事はしない……と?」

 

「あぁ」

 

花山は既に一皮剥けていた。

クラスメイトの前で学力の無さが白日のもとに晒され、友人にこうして家まで来てもらっている始末。

これ以上、一体何を取り繕う必要があろうか。

これ以上無いほどの弱みを見せた花山は、ある意味で腹を括ってしまったのだ。

 

対して石崎は、深い感銘を受けていた。

 

(そうか……ありのままの自分を、性癖すらも取り繕う事なく曝け出す………それが花山さんのあり方なんだ……それが『漢』なんだ………)※勘違い中

 

「………分かりました。もう止めはしません」

 

「ん。………ひより、開けて良いぞ」

 

「……良いんですか?」

 

「……あぁ」

 

引き出しを開けようと手を伸ばす椎名。

 

(南無三……)

 

石崎は心の中で合掌をして、花山の性癖公開の時を待っていた。

 

 

 

「これは……お酒……ですか……。どうして花山君がこんな物を?」

 

「自分で持って来た」

 

「お家から……なるほど……」

 

「…飲むか?」

 

「いえ、遠慮しておきます。未成年ですし」

 

 

「……………………ゑ」

 

 

石崎はようやく自らの勘違いに気付き、気恥ずかしさからか暫く天を仰いでいたという。

 

 

この後、テストが終わるまでの禁酒と毎日の勉強会が約束され、花山は絶望に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

5月初日に衝撃の事実が告げられてから、一週間が経った頃の夜。

 

 

「鈴音。ここまで追ってくるとはな」

 

「もう、兄さんの知っている頃のダメな私とは違います。追いつくために来ました」

 

二人の生徒が寮の裏手で話をしていた。

『兄さん』と呼ばれた生徒は眼鏡を掛けた知的な生徒ーー生徒会長の堀北学であった。

もう一人は『鈴音』と呼ばれた黒髪の少女。

 

名前呼びであることなどからも察せられるように兄妹である。

 

「追いつく、か」

 

呆れたような声音で堀北会長が続ける。

 

「Dクラスになったと聞いたが、3年前と何も変わらないな。ただ俺の背中を見ているだけで、お前は今もまだ自分の欠点に気付いていない。この学校を選んだのは失敗だったな」

 

「それはーー何かの間違いです。すぐにAクラスに上がって見せます。そしたらーー」

 

「無理だな。お前はAクラスにはたどり着けない。それどころか、クラスも崩壊するだろう。この学校はお前が考えているほど甘いところではない」

 

「絶対に、絶対にたどり着きます……」

 

「無理だと言っただろう。本当に聞き分けのない妹だ」

 

堀北会長は妹の手首を掴み、強く壁に押し付ける。

 

「どんなにお前を避けたところで、俺の妹であることに変わりはない。お前のことが周囲に知られれば、恥をかくことになるのはこの俺だ。今すぐこの学校を去れ」

 

「で、出来ません……っ。私は、絶対にAクラスに上がって見せます……!」

 

「本当に愚かな妹だ。お前には上を目指す力も資格も無い。それを知れ」

 

堀北会長が腕を引いて、妹を手で突こうとする。

 

だがその腕を掴んで止める生徒がいた。

堀北妹と同じくDクラスの綾小路清隆である。

 

「あ、綾小路くん!?」

 

「あんた、今本気で撃ち込もうとしただろ。彼女を離せ」

 

睨み合う堀北会長と綾小路。

 

「……やめて、綾小路くん」

 

だがそれは、彼女が初めて見せた絞り出すような声によって中断される。

これまで見てきた生意気で強気な少女の面影からは打って変わったその声に、綾小路は堀北会長の腕を離した。

 

その瞬間、とてつもない速度の裏拳が綾小路を襲うが、それを綾小路はそれを躱す。さらに追撃で蹴りが飛んでくるが、それも躱す。

少しだけ疑問の表情を浮かべた堀北会長が手を突き出してくるが、掴まれると直感した綾小路は手の裏で叩くことで対処する。

 

「良い動きだな。何か習っていたのか?」

 

攻撃を止めた堀北会長が綾小路に問いかけた。

 

「…ピアノと書道なら」

 

「…中々ユニークな男のようだな。鈴音、お前に友達がいたとはな。正直驚いた」

 

「彼は……友達なんかじゃありません。ただのクラスメイトです」

 

はぁーと溜息をついた後に堀北会長は続けた。

 

「相変わらず孤高と孤独を履き違えているようだな」

 

 

 

「何をやってんだ?」

 

 

 

そこへ新たな声が掛かる。

 

そちらを振り向くと、とても高校生とは思えないガタイの持ち主が立っていた。

さらにその顔には大小様々な傷痕があり、日常生活でつくような傷の量では無い。

 

制服ではなく真っ白いスーツを着ておりパッと見では学生には見えないが、その姿を見たことがあった堀北会長が新たな来客者の名を呼ぶ。

 

 

「Cクラス……花山薫か」

 

 




はい。
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