TS少女は堕としたい   作:鏑木ハルカ

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第62話 禁断の魔法

 僕の服は白衣を除くと、全体的に丈が短い。

 しかもそれでいてサイズが小さくピチピチというわけではなく、各所がゆるゆるの隙間だらけの服装だ。

 それもこれもミィスを挑発するためなのだが、このある意味痴女一歩手前の服装に首輪が付くとどうなるか?

 その答えが目の前にある。

 

「ほらほら、ミィス。シャンと背筋を伸ばして」

「そ、そんなこと言ったって……」

 

 背徳的な格好になった僕を見Tえ、ミィスは膝をすり合わせるようにモジモジし始めた。

 僕はミィスとは逆に、仰け反るほどに胸を張る。

 丈の短い上着はそれだけで胸を覆いきれず、下半球がチラリと顔を覗かせた。

 

「もう、やめてよ、シキメさん!」

「ん~、なぁんのことかなぁ?」

「分かってて言ってるでしょ」

「今さらでしょ」

 

 僕とミィスは、いつも一緒にお風呂に入っている。

 胸だって散々見られていた。今さら下半分チラ見せしたところで……

 

「あ、ひょっとして、これがチラリズムの効果!」

「うぬ~」

 

 ポンと手を打つ僕に対し、唸り声一つ上げてミィスは背後に回り込んだ。

 そのまま背中に抱き着いてくる。

 

「なるほど、こうすれば確かに『前』は見えないね」

「ふふ~ん」

 

 しかも抱き着かれている以上、振り返ってもそこにミィスはいない。

 僕の動きと一緒に、振り回されてしまうからだ。

 

「しかし甘いよ、ミィス君」

「んぇ?」

 

 ミィスは背後から僕に抱き着いている。

 つまり、その手は僕の前に回されていた。

 

「ンフフ、僕のお腹、すべすべでしょ」

「ひゃ」

 

 白衣越しに抱き着いていた手を、お腹の前に移動させる。

 上着の丈が短いので、そこはおへそが丸出しになっている場所だった。

 更に上着の下から胸元へ、逆の手を移動させた。

 言うまでもなく、見せるために下着は着けていない。

 着けないと形が崩れるとよく聞くが、その辺は魔法万歳でどうにかなるだろう。

 

「ん?」

 

 そこで僕はお尻に当たる異物感を覚えた。

 そんな物は言うまでもない。ミィスの持つ凶悪兵器の感触に違いない。

 身長差があり、服や白衣越しでも、なお感じ取れる大きさとは……

 

「あー、その、うん、ちょっと離れようか、ミィス」

「……うん」

 

 その感触にミィスも自分で気付いていたのだろう。そそくさと僕から離れクルリと背中を見せる。

 感触が分かるくらいなのだから、外から見ても一目瞭然。それがミィスクォリティである。

 だからと言って放置するわけにもいかないので、僕はミィスの背中に白衣をかけてあげる。

 彼には少し丈が長いが、前を隠すくらいの余裕はある。

 おかげで露出多めの首輪少女と化した僕が剥き出しになってしまったが、これはある意味自業自得と言えよう。

 

「あのー、お客さん。いい加減店の前でイチャつくの、やめてもらえませんかねぇ?」

「あ、すみません」

 

 僕たちは首輪を買ってその場で身に着け、店先で騒いでいたのだから、店の人が不快に思うのも無理はない。

 ミィスは見かけ少女にしか見えないので、一見すると女の子同士がじゃれ合ってるように見えたから、放置されていたのだろう。

 これが男女のじゃれ合いだと知られていたら、もっと早く『出てけ!』と言われていたはずだ。

 

「お騒がせしましたぁ!」

「ごめんなさーい!」

 

 僕たちは店の人にそう告げて、てってけとその場を後にした。

 もちろん、この行為に頭を悩ませる人物は他にもいる。

 

「おい、お前ら! 護衛を置いて先に行くな!?」

 

 体格の大きいハーゲンは、僕たちと違って人込みを縫って走ることに向いていない。

 ましては、大戦斧を背負っているので、なおさらだ。

 もちろん通行人を傷付けないよう、刃にカバーはかけられているが、大きいことに違いはない。

 そんな彼が、美少女二人を追いかけているのだから、不審に思われるのも無理はない。

 

「おい、待て! 俺は違う、俺はあいつらの護衛だから!」

 

 案の定、見回りの兵士に声をかけられ、不審者として尋問されていた。

 僕とミィスは、その様子を見て笑いを堪えることができなかった。

 

 

 午後からは、ナッシュたちの遺体を埋葬することとなった。

 強力なデュラハンに変化した死体なので、形を残す土葬とはならない。

 骨になるまで焼き尽くし、浄化され、町外れの無縁墓地に捨てられるように廃棄される。

 謎の石に踊らされた結果とはいえ、少々可哀想になった。

 

「まぁ、井戸に毒を投げ込んだんだから、まだマシな方さ。普通なら首を晒されるぜ」

「うわぁ」

 

 ハーゲンの説明に、僕は思わず声を上げた。

 街道沿いの水源は、旅人にとってはまさに命綱だ。

 そこを汚染したという事実は、いかな理由があれど決して赦されない。

 それほどの罪を犯して首を晒されることなく火葬されるのは、まだマシな末路ということは、なんとなく理解できた。

 

「まぁ、連中の首はギルドに提出してるから、晒そうと思えば晒せるんだが……また別のアンデッドになられちゃ敵わんからな」

 

 今回の騒動で、少数ながら死者が出ている。これ以上の危険は、ギルドとしても侵せないというところだろう。

 その当人であるゴステロ支部長が、僕たちの元にやってくる。

 

「聖水の提供、感謝する。前回の回復ポーションの費用を含め、後で報酬を支払うことを約束しよう」

「いや、元はと言えば、僕たちの処理が甘かったからですし」

「処理した内容はハーゲンから聞いている。風の刃の面々の証言とも、食い違いはない。デュラハンの発生は、何らかの異常事態であると認定できる」

「なら、いいんですけど」

「お前らに罪が問われることはないから、安心しな」

 

 デュラハンにまでなってしまったナッシュの死体は、焼いただけでは不安ということで、聖水を使った浄化まで行われている。

 この町の教会で作られている聖水は、最下級の十級の品質がせいぜいだった。

 そこで僕が、さらに高位の聖水を提供して、徹底的に浄化してもらった。

 この聖水は鑑定してもらったうえで使用されているので、今回の浄化についてはギルドの保証付きということになる。

 

 教会の司祭が進み出て、焼き尽くされた骨に聖水をかけつつ、死霊浄化の魔法をかける。

 この魔法は死者を浄化する、僧侶系の対アンデッド用の魔法だ。

 ナッシュの残された骨は、この魔法を受けてさらに崩れ、完全に塵へと変化してしまう。

 ゲーム内では、こうなってはもはや、蘇生魔法すら力を及ぼさない。

 

「蘇生魔法か……」

 

 ここはゲームではなく現実。蘇生の魔法がゲームにはあったが、この世界でその力がどういう結果を及ぼすのか、僕では把握しきれない。

 そもそも、そのレベルの魔法を使える人間なんて、見たこともない。

 

「実験するから死体ください、なんて言えないもんなぁ」

「ん? なんか言ったか?」

「いえ、なんでも」

 

 僕たちのそばには、ハーゲンとゴステロがいる。

 これ以上不穏なことを口に出すのは危険だ。

 それでなくとも、僕は思ったことが口から洩れてしまうようなのだから。

 気を引き締めるために口元をぎゅっと(つぐ)み、同時にミィスの手を強く握った。

 

「――シキメさん?」

 

 僕の行動に、ミィスが不審そうにこちらを見上げてくる。

 いつものおちゃらけた態度と違うので、不安に思ったのかもしれない。

 僕は彼を不安にさせないよう、できる限りの作り笑いを浮かべる。

 

「大丈夫だよ」

 

 それでももし、ミィスが死ぬようなことになったら、蘇生魔法を僕はためらいなく使うだろう。

 そうならないためにも、彼の身は絶対に守ろうと心の中で誓う。

 ミィスを死なせないために、彼自身にももっと強くなってもらう必要があるはずだ。

 そのためには、彼自身のレベルアップが不可欠になるだろう。

 

 

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