そうだ、旅に出よう。
一年ほど前から何をしてもつまらないと感じていた俺に、天からのアイデアが降りる。
そうと決まれば話は速い。ネットでぶらり旅に必要なものを調べあげてゆく。
ふむふむなるほど。
時間は通信制高校に通う俺には有り余ってる。貯金は高一の春から貯めたものがある、リュックは中学校の修学旅行の時に買ったものを使おう。あとは丈夫な下着やタオル、まだ寒いから紺のストールに折り畳み傘。ビニール袋と……お気に入りの小説も持っていくか。
あっ、一応叔父さんに旅に出る旨をメールで送っておいて………ま、いいか。あの人も忙しいだろうし。
さて、宛もなくぶらり旅スタートだ!
◆
宛がないとはいえ目的ぐらいは決めておかないと。
うーん……そうだ、温泉に行こう。
それも東北の方の。
ふむ、まずは市駅だな。
ルートはどうしようか……適当にそっち方面の電車乗り継いでから考えようかな。
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ん? おいでよ柴又……? ふーん、こっち方面にも行ってみるか。
◆
お、ここのローカル線だとこんな弁当が食えるのか。うん、やっぱこっちに行こう
◆
んー? 乗る電車間違えたかな。誰も乗ってないし、なんかやけにボロいような……まあいいっか。
というかこの稲荷弁当すごく美味しいな。是非帰りにも食わねば。
◆
おー……駅がただのコンクリートの台座で、電車は速攻で引き返して行った。時刻表すらねぇ。
秘境駅ってみんなこんな感じなのか。
にしても、この雄大な自然、見渡す限りの緑。田舎通り越して未開の地にも見えるな。
というか、地名とか調べようとしても圏外だし。基地局すらないのか。あぜ道はあるから、人は住んでるのか?
まあいいや。とりあえず、今晩の宿探すかな。
道辿っていけばそのうち人が居そうなところに着きそうだし。
◆
あぜ道を歩いていると第一村人とあぜ道の分岐点発見。第一村人は人形みたいな金髪の可愛らしい幼女だ。
「あなたは食べてもいい人類?」
お腹がすいているのか? よしよし、じゃあ飴玉をあげよう。イチゴ味でいい?
「おいしー!」
おお、そうかそうか。あんまりにも美味そうに食うし、もう一個あげるわ。買っても結局ほとんど食わなかったしね、俺。
「ほんと?! うれしい!」
おう、焦って喉に詰めるなよー……というかお嬢ちゃん、ここら辺で誰か住んでるとこ知らない?
「んー? たしかこっちの道を真っ直ぐ行くとアリスが住んでた家が見えるはずだよ?」
アリス、か。この子の容姿といい、外国人が住んでるのかな?そういやお嬢ちゃんの名前も聞いてないな。
お嬢ちゃん名前は?
「私はルーミア! お兄さんは?」
俺か? 俺の名前は――
◆
ルーミアの言う通りに進むと、鬱蒼とした森の中だった。途中から荒れ放題でもはや道として機能しておらず、本当に合ってるかどうか分からなかったが、別に無駄足でもいいやって感じで歩いてた。
なんだか途中、乗り物に酔ったみたいに体調が悪くなったが、木の根に座ってカ〇リーメイトを齧っていたらケロッと治った。
そうしてしばらく歩いていると、本当に家が見えてきた。
インターホンは無かったが、ドアノックはあった。聞きかじりの知識だが、ノックは四回が正しいらしいので家のドアをコンコンコンコンとノックすると、少ししてから今度は俺と同い年ぐらいの美少女が出てきた。
「はい、どちらさまですか?」
ここまで来た経緯を簡単に説明すると、彼女は驚きと呆れを交えた顔で、「あなた、本当に人間なの?」と言われた。
俺はそこまで変な人間ではないと思うのだが……誰だってぶらり旅ぐらいやるよな?
「そういうことじゃないのだけれども……まあいいわ。一晩ぐらいだったら泊めてあげるし、ここの場所のことも説明してあげる」
ん? いや、ここらで宿泊施設がないか教えてくれるだけでも……
「いいから、ほら早く入って」
あっはい、お邪魔します。
◆
家の中は人形だらけだった。
ぶっちゃけここまで多いと不気味なのだが……これに囲まれて寝れます?
「そうかしら? 可愛らしいと思うけれど」
限度があると思う。まあこちらは泊めてもらう身、贅沢は言うまい。