表ということは裏もあるということで、裏では登場キャラの心理なのを書いていい感じにしたかった。裏は文字数が足りなかったので後ろに結合した。
○月✕日 雨
拾った狐について、経過観察がてら日記を付けることにした。三日坊主にならないよう祈ろう。
本日、通院からの帰り道、家のすぐ近くの山の麓の雑木林で狐を拾った。身体から血を流し、酷い火傷を負っているように見えたため、直ぐに家に戻ってバスタオルやケージを取りに行った。
我が家は代々獣医で、幸運にも今日は
経験豊富な父主導の元、自分も狐の治療に参加したが、裂傷による出血だけでなく火傷や骨折もしていたため、大変な施術となった。
瀕死の狐の意地か、それとも現代獣医学のおかげか。幸いにも一命は取り留めた。しかし、痛みでマトモに動けないだろうから家で……正確には俺が面倒を見る事になった。
家具も少なく、なにかあっても直ぐに病院側へと連れて行けるということで、俺の部屋に狐の寝床を置くことにした。
以下、簡単に狐のデータを書いておく
発見場所 近所の雑木林
性別 メス
体重 7.6kg
体長 62.3cm(尾を含めず)
色 黄色と白
種類 不明 雑種?
また骨折やその他の傷は兎も角、火傷跡については明らかに人為的であるため、虐待の跡の可能性がある。張り紙や回覧板でご近所に情報提供を呼びかけるが、飼い主が見つかっても一度話し合いの席を設けた方がいいかもしれない。
○月▽日 曇り
狐の意識が回復した。知らない場所に驚いたのか、暴れようとしたものの直ぐに痛みで動かなくなってしまった。
胃腸などの内蔵にはダメージは少なかったため、食事や排泄はサポート程度で済んだ。栄養調整した胃に優しい人工餌には少々の躊躇を見せるも、最終的にはしっかりと完食した。
しかし食事の時はとても大人しかったのだが、排泄の時は物凄く嫌がった。あまりにも嫌がるため、念の為再検査を行うが異常なし。排泄後は大人しくなったため、何らかのパニックを起こしていたのだろうか。
それと、いつまでも狐、と呼ぶには不便なので名前をつけることにした。母に相談したのだが、俺のネーミングセンスは良くないらしく、どんな名前も却下された。狐も何処か呆れた目で見ていた気がするが、明日までにはマトモな名前を考えることとする。
追記。あの狐について近所の方々に聞き込みをしたり、カルテを調べてみたのだが、あの狐の情報は一切なかった。一応、市役所や交番にも行って見たが、届出などは無かったという。
田舎というのは情報の広がりは意外と早い。野生動物の行動範囲は山ひとつと言ったところか、ここまでして出てこないのはやはり野生で生まれ育ったのだろうか。その割には自分を含めた人間に慣れすぎているような気がする。
それと、火傷跡は山に入った人間の手で行われた、というのが濃厚か? その場合、面白半分で山に入っている人間がいることになる。一応、この推測を父にも話しておくことにする。
○月〒日 雨
奇妙な夢を見た。今の日本じゃ考えられない自然に溢れた景色と、稲穂のように垂れ下がった赤い花。そこに件の狐が佇んでいた。その目はなんというか、感謝してるような、非難しているような複雑な心境を示しているかのようであった。
起きてから夢や花について調べた。夢に関してはこれと言って収穫がなかったが、花はアイという、青の染料になる花である事が分かった。
花言葉は「美しい装い」「あなた次第」。なるほど、怪我していた時は血や泥で気が付かなかったが、包帯の間から見える毛並みはとても綺麗なものだ。その美しい狐の名前は、安直に
そう藍に言うと、満足そうに頷いた……ように見えた。狐がいくら賢い動物とはいえ、野生に生きてきたであろう藍が人語を理解してるはずもない。
自分の薬の量が先月より少し増えていたのに気がついた。
△月〇日 晴れ
驚くべきことに、藍は既に自力で立ち上がることが可能のようだ。常識外れの回復力に、少々の疑問を覚えるも異常は発見出来なかった。
医学とは無縁の先住民族には治療薬の効果が跳ね上がる、という眉唾物の情報をテレビなどでみた記憶がある。狐と先住民族は一緒に出来ないが、案外間違ってないのかもしれない。
藍は立ち上がることは出来たものの、やはり痛みはあるようで必要な時以外は動かなかった。強いて言うなら、排泄を自力でするようになったぐらいか。
不可解な所もあるが、この調子であるなら自然に帰れるレベルに回復するまですぐだろう。
△月▽日 晴れ後曇り
藍は歩き回れる迄になった。特に後遺症も無く、しばらくの経過観察を経て野生に返すことになった。
その一環として、藍が見つかった雑木林に散歩に行くことにした。しかし藍は首輪を物凄く嫌がった。かと言ってハーネスでは傷に触れてしまうため、どうしようかと悩む。
結局、家の庭に放したが縁側に座った俺の隣から全く動かなかった。そのまま家の中に戻ろうとすると、後ろをトコトコと付いてくる。まるで親鳥に着いて回る雛鳥だ。既に藍は成獣であるため、刷り込みのようなことは無いはずだが。あるいは、自分の身を庇護してくれる保護者として認識されているのだろうか?
こっから日記の裏(結合)
しくじった。
そう感じた時には、目の前は白い閃光によって全て吹き飛んでしまった。
唐突に幻想郷を襲った、無差別傷害事件。
紫様と私は犯人であるとち狂った妖怪を追い詰めるところまでは成功した。
しかし、窮鼠猫を噛むと言うべきか。一瞬の隙を突かれ、自分自身全てを注ぎ込んだ自爆攻撃を使わせてしまった。
マトモに受ければ一溜りもない、辺り一帯を吹き飛ばす圧倒的な暴力。
咄嗟にスキマを開いて逃げようとした。試みは半分成功し、死そのものは回避出来たが、目が覚めれば狐の姿に戻って見知らぬ森の中に倒れていた。
そもそも、スキマは主からの借り物の力。平時でも集中しないと制御も出来ないのだ。咄嗟に使えば何処に飛ばされるかも分かったものでは無い。
とにかく状況を整理すべく、辺りを確認しようとするも身体が全く動かない。
そう認識してしまったら、途端に全身に雷が走るが如く、強い痛みに襲われた。生まれてこの方、これほどの痛みに苛まれるなんて初めてだ。なにか打開策を打ち立てようにも、思考が全て痛みに流される。意識を手放す寸前、最後に見たのは何とも幸薄そうな人間の顔だった。