書きかけのまとめ   作:一般的な犬

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こっちは結構頑張ったやつ。というかこれだったら普通に続き書けそう。独自解釈の説明ばっかで読みにくいけども。


クロ猫 (東方Project 八雲一家)

「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度……」

「なぜあの子が……」

 

無感情にお経を読み上げる音が轟く

 

「一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空……」

「うぅ…… ────ちゃん……」

 

誰かがすすり泣く音が聞こえる

 

「即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相……」

「……にゃーん」 

 

どこか物悲しい猫の鳴き声が響く

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 

 

 

 

【吾輩は猫である。名前はまだない】

 

 

と、【】(格好)を付けたはええけどしっかり名前は持っとる。

 

ワイの名前はクロ 黒猫のクロや。

 

シンプルやろ?

 

しかも猫の妖怪やぞ。

 

妖獣とも言うな。

 

 

 

 

 

 

妖怪とはなんぞや?と思うやつもおるやろう。

 

代表的なのは鬼や天狗、鎌鼬に座敷童子。

 

怪談だと船幽霊の「柄杓くれ〜」というのが結構有名だっけか。

 

まあ最近は可愛らしくデフォルメされた妖怪が出てくるアニメとかが流行ってたらしいし、妖怪をしらん人間は少なくともこの島国にはおらんやろ。

 

んで、妖怪の発祥やな。

 

ずっと昔から、古来の人々は理解できない様々な現象を妖怪とすることによって無理矢理納得してきた。まあ、今でも説明不可能な現象は幽霊やUMAやなんてテレビで騒いどるがな。

 

そんな妖怪やけど、人間の思い込みや迷信が具現化したもの、と思ってくれたらええ。実際のところはワイらにも分からんからな。

 

そいでたいがいの妖怪は人の恨みつらみ、恐れに畏れやらの悪感情からうまれた、言わばバケモノ足る存在や。もちろん人間は本能に刻まれた恐怖には勝てないように、妖怪には勝てへん。まあ人間の中には修業を積んで妖怪へと立ち向かう奴らもおる。

 

筆頭としては安倍晴明とかやな。アイツはヤバかったぞ。流石のワイでも仏さんになるかと思ったからな。

 

まあ、そうして人間は妖怪への対抗手段の一つを持っていたわけやけど。時代が移り変わると、人間は霊的な視点を捨て、科学的な視点を持ってをもって妖怪に対抗してきた。

 

 

科学的解明というのは、分かりやすい例を挙げるならのっぺらぼうや鎌鼬やな。

 

たとえばのっぺらぼう。顔のパーツがなくて、のっぺらとした顔で人を驚かす妖怪やが、お偉い学者さん達によると、夕暮れ時の逆光で偶然顔が見えなかっただけやとな。

 

それに鎌鼬。その妖怪はつむじ風に乗って人を斬る妖怪なんやが、近年 鎌鼬は実際はただのあかぎれが切り裂かれた跡に見えた、と解釈してるみたいやな。

 

あいつらは実際に存在していたし、なんならワイの知り合いにもおる。

 

まあ大事なのは合ってるか合ってないかじゃない。これはワイの考えやねんけど、妖怪はその成り立ちから精神的、あるいは非物質的なものやと思うねん。

 

物質が否定されてもそれは間違いなくそこに存在するけど、非物質……たとえば、古い言葉や風習が否定されればそれはいつしか消滅するやろ。

 

妖怪も同じや。この現代にて、彼等が生きるにはここはあまりにも窮屈で、危険や。

 

そういう妖怪のお前はどうか、やって?

 

ワイは曲がりなりにも古くから生きてきた大妖怪様やぞ。

この迷信が否定された世界に弱い妖怪が放り出されようものなら、ものの数日で存在そのものを否定されて消滅させられてまう。やけど、ワイみたいに長生きしてきた妖怪や知名度のある妖怪、そう奴らは今だにこの社会の隙間に潜んどる。

 

ワイの場合は知名度はそんなにないから、少しずつ力を削られながらも普通のにゃんことして人間社会を眺めてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「───ちゃんの飼い猫、見つかった?」 

 

「いいえ、ご近所さんの話だと 亡くなった時に玄関で見かけたきりだそうよ」

 

「猫の死に目には会えないと言うけれど、もしかしたら向こうで───ちゃんと一緒に仲良くやってるのかもね」

 

「そうだといいわね……」

 

 

そう言えば、ワイは今葬式会場におる。

 

まあ会話から察せると思うが、これはワイの飼い主、いや、元飼い主の葬式や。

 

辺りには悲しみや憂い、色んな負の感情が渦巻いとる。

 

やけど、負の感情なんて不味くて食うてられへんわ。

 

 

元飼い主はお人好しでお節介焼きで、正義感が強い何処にでも居るような大学生の女の子やったんけど、その性格のせいで死んでしまった。

 

たまたま近所の男の子がボール追いかけて道路に飛び出て、たまたま酒に酔ったオッサンが運転をしていた車が走っておって、たまたまそこに居合わせた飼い主が男の子を突き飛ばして助けた。

 

本当に、本当に運が悪かった。誰のとは言わんが。

 

だが、なぁ……

 

「にゃー……」

 

思わずため息をつくぐらい、やるせないわ。

 

こういうのは、飼い猫やる上で覚悟してるんやけどな。

 

もともと、飼い猫として色んな人間に飼われてんのは理由がある。一番は食事のためやな。

 

普通の妖怪は人の恐怖や畏れ、時には人間そのものを喰らうんやけど、ワイの好みは正の感情、それも幸せの味が好みや。もちろん他の感情や普通の飯でも補えるけど、負の感情は不味くてかなわん。

 

で、妖怪に襲われる人間なんかが正の感情を持つ訳ない。やったら飼い猫として人間を癒したりする方がええわ、って結論に至ったのが400年程前の話やな。その前は普通の食事やったり、山とかで遭難してる人間を案内したったりで腹を満たしてたんやが……

 

まあそんなワイのことを「人間に尻尾を振る野良猫」って馬鹿にする輩もおったが、ワイ直々に根性叩き直したった……ってそれはどうでもええわ。

 

で、どんな飼い主との出会いも、ワイが適当に街を歩いて、猫を飼いたそうにしてる奴に飼ってもらう、ってだけやったけど。自慢じゃないけど、ワイはそれなりに陰陽道や道術、仙術に儒教、まあ妖怪のくせして色々と技術を覚えとる。まあそれを駆使して些細やけど運気を上げたり心を癒したりできたから、飼い主にワイの正の感情()を提供してもらって、変わりにちょこっとええ事起こるようにおまじないを掛けてやる、こういうのなんて言うんやっけ? マッチポンプやったかな。

 

まあそうやって……ええと、ワイが産まれたんが確か人間がなんや農作を始めた頃で、飼い猫始めたんが……400年位前やから確か幕府が無くなってからかな。当時のワイはあのでっかくて黒い船に忍び込んで日本の外にも出たな。ああでも、初めての飼い主は都が平安京になった頃やったか。……ってあかんあかん、また話が逸れたな。

 

コホン、まあいままで何度も様々な飼い主に飼われ、三分の一位の数は葬式を見てきたんや。飼い主の幅も様々で、精神医学を修めた医者、前衛的なロック作曲家、目の死んだ学生、シングルマザー、貴族の隠し子、人の骨を加工して使うサイコパス、etc.(その他色々)

 

今回のように早死する場合もあれば、天寿をまっとうして逝く場合もあるし、警察とかに御用になることもある。その前にワイが設定上の寿命に達してふらっと消える場合も何回かあった。

 

それで、や。

 

ある時から、ワイはなるべく人間に深入りせんようにしてる。人間は脆くて、寿命は短い。ふとした拍子にワイの飼い主を続けられなくなって、別れる。どんなに親しくなっても、情が移っても、や。いくら妖怪のワイが人間の生死や人生に対してドライとはいえ、親しみを感じるやつと別れるのは少し、悲しい気分になるからな。

 

 

 

 

 

 

はぁ、気分が憂鬱になってきたわ。

 

 

ワイが考え事してたら葬式も終盤、その場を後にして路地裏へと潜り込む。

 

さて、これからどうしよう。

 

 

 

新しい飼い主を探すのは気分じゃないしなぁ、暫く路地裏ぐらしでもええかな?

 

「あら、それなら私のとこへ来ない?」

 

「に゛ゃっ!?」

 

後ろから突然抱き上げられ、頬ずりされた。

 

これでも妖怪、それ以前に猫や。ただの人間やったら背後から忍び寄ってきても気配が分かるし、布ズレの音や呼吸音で簡単に把握できるんやけど、突然背後に気配が現れたかのように出てきおった。もちろん音も無かった。

 

少なくとも、こんなことを出来るのはアイツかアイツぐらいやし、いきなり抱き上げるのはアイツしか思いつかんわ。

 

「紫ィ! 毎度毎度突然後ろに現れんな! 抱き上げんな! 頬ずりすなぁ!」

 

抱き上げおったのは少女と女性の狭間辺りの女、その実はワイと同じぐらい長生きしとる妖怪。八雲紫、通称スキマ妖怪や。

 

こいつとは昔色々とあったけど、今では数少ない大切な友人でもある。こいつにそんなこと言ったら付け上がるから口が裂けても言わんけど。

 

「えー。だってクロって毎回いいリアクションしてくれるじゃない。数少ない友人の中で、唯一驚かせ甲斐のある友人だから自然と、ね?」

 

「 「ね?」じゃねーわこの阿呆! 毎回付き合わされてるこっちの身にもなれや!」

 

じたばたと紫の腕の中で暴れるけど、腹の辺りに腕を通され、完全にホールドされてしまった。くっ、今だけはワイの愛くるしいボディが憎い!

 

「まあまあ、とりあえず私の御屋敷……いえ、橙にも会わせたいしマヨヒガに行きましょう」

 

「誰も行くとは言っとらんぞ」

 

昔のワイならまだしも、長らく妖怪としての自分を()()されてきた今のワイでは無理矢理抵抗しても勝てる訳はないし、観念して身を任せる。

 

 

はぁ、今日は厄日やな。

 

僅かな浮遊感の後、そんなことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、紫様。お久しぶりです、師匠」

「ただいま、藍」

「おう、久しぶりやな藍。何年ぶりや?」

 

あっちゅーまに紫の屋敷……の別邸 マヨヒガへと着いた。一昔前、明治頃の日本家屋風みたいやな。

 

ああ、もちろんここまで単純に歩いてきたわけやない。物理的にさっきの路地裏とは離れとるし、そもそもここの周りには色々と()()してあるようやし。

 

紫には[境界を操る]とかいう反則じみた力を持ってる。

 

その力の代表として、[スキマ]っつーのがある。

 

 

 

「そうですね、江戸幕府が落ちてからですから……400年程前ですね」

「おお、そんな前やったか。まあなにあともあれ元気そうでなによりや」

 

目の前におんのは八雲藍。紫と同じ流れるような金の髪に、こがね色の九つの尻尾と耳を持つ狐の妖怪や。

 

こいつとも色々あったんやが……めちゃくちゃ簡単に説明すると、ワイが拾って陰陽道を中心に色々と叩き込んでやった、ってことやな。

 

今では紫の式、これまた簡単に説明すると、陰陽道に通ずる術によって妖怪や無機物を使役するっつー式神の派生技術なんやが、まあそれによる一種の雇用形態って考えてもらえばええ。藍は紫に仕える代わりに紫は藍に式神を憑依させて妖力やらを分け与えるって辺りやろ。

 

「ええ、師匠もお元気そうでなによりです。……ところで、何故紫様は師匠を抱き上げているのですか?」

「だって話したら引っ掻かれそうだし」

「引っ掻かん。だからはよ下ろせ」

 

ようやく地面に降りれたわ。

 

うーん、やっぱり大地は偉大やな。

 

「お帰りなさいませー、紫様。お客様ですか?」

 

ワイが偉大な大地に感謝しながら畳の上で地面で伸びをしとると、庭の方から幼い少女の声が聞こえた。

 

「あら橙、ただいま。確か前に話したことあったわよね?この子が藍の師匠のクロ。クロ、こっちが藍の式神の橙よ」

 

そう紹介されたのは、黒い2本の尻尾をもつ少女やった。

 

「よろしくお願いします! クロ様」

「おう、よろしゅう。にしても黒猫の猫又か。なんや親近感湧くわなぁ」

 

 

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