「目的地までどれくらいだ?相棒?」
「このペースなら大体、20分位だろう。どうした?」
「いや、ただ気になっただけだ。しかし、この面子が全員集まったのは初めてじゃねぇか?」
「まぁな・・俺やマコト、キョウは何度か会った事はあるが・・・全員揃うのは始めてじゃないか?」
マコトの言葉に返答しながら、荒ぶった先程の遊びの運転を止め、ゆったりとした安全運転に切り替えた俺は呑気に煙草を片手で吹かせながら悠々とハンドルを操り、目的地に向けて車を走らせる。
チラリとバックミラーで、キャイキャイと後ろで何やら盛り上がっている男の娘1人に笑顔で話しかけている少年と真ん中に挟まれて苦笑しながら煙草を吹かすイケメンの姿を確認しながら、ポツリと呟く。
「全く、今日はツイてるぜ。死ぬには良い日だ」
「縁起でもねぇ事言うんじゃねぇよ。相棒」
「なに、インディアンの挨拶を俺なりに解釈して、『今が幸せだ』と言っただけだが?」
「お前のソレは回りくどいんだよっ!」
「悪かったな。性分だから、仕方がないな」
マコトのツッコミを軽くスルーしながら、煙草を咥え直し、大きく煙を肺に詰め込んだ後に一気に吐き出す。
「ふぅぅ・・・・」
「しっかし、随分吸うな。セイジさん。体壊さないか?」
「コレ位ならまだ序の口だ。それに体は壊さないから安心しろ・・・。壊れたのならそれは自己責任だ」
助手席で俺の喫煙した煙草の数を数えていたであろう、引き攣った笑みを浮かべたカイの言葉にニヤリと笑いながら、フィルターギリギリまで吸った煙草を灰皿に押し付け、火を消しながら返事を返す。
車が出発して今までに吸った本数は7本。まだまだ吸えるし、俺以上に吸う奴なんていくらでもいる。そんな事を思いながら、ポツリと呟く。
「しっかし・・・幻想郷なんて本当にあるのかねぇ・・・」
「どうだろう・・・何とも言えないけど、俺は・・あって欲しいと思うよ。セイジさんは?」
「俺か・・・」
俺の漏らした言葉に反応したカイがあって欲しいと、そう俺に告げ、俺の考えを聞いてきた。その言葉に、溜息にも似た吐息を漏らしながら、この車に乗る前から、思っていた事を俺は今一度軽く自問自答してみる。
(俺自身は、幻想郷に行きたいか?)
是。これは変えようのない願望。鬱屈した現実に縛られ、磨耗して果て、自身の人生の意味すら見出せぬまま、年を取り、衰えて最後は何も出来ぬまま、土の下に帰るのは嫌だ。
そんな事位しか浮かばなかった俺だが、考える様に今一度己自身が、その言葉の意味を噛み締める様にカイに伝えていく。
「俺は・・・お前と同じだ。あって欲しいと思う。否、あるべきだと思う・・・。どこかの奴らの様に『~~~が俺の嫁!』とかは言うつもりはないが・・・俺は、あの世界を見たい。行ってみたい。俺の魂が、乾いていた心が求めた場所だから・・・。うまく言葉には出来ない。だが・・・俺は、行かなければならない。そんな・・・気がするんだ・・・」
前に車両がいない事を確認しながら、少し自分の世界に入り込みながら呟いた臭い台詞に、言い終えた瞬間、ハッとすると興味深そうに後部座席ではしゃいでいた男の娘に少年とイケメンがニヤニヤ笑いながら俺をバックミラー越しに見詰めていた。
「いやぁ、青春してますな。セイジさん」
「・・・・コクコク」
「ふっ・・これが若さか・・・」
「うるせぇっ!俺はそんなに年は食ってねぇし、それに今更青春だ何だって年齢でもねぇよっ!!それにお前も大して俺と年が変わらねぇじゃねぇかっ!この愉悦野郎っ!!!そしてりるの奴も何言ってやがる?!俺みたいな奴にフラグが立つと思うなよ?!」
一息に全員のツッコミを終えた俺は大きく息を吸い込みながら溜息を吐き出す。りるの言葉は特殊で、表情でりるのしたい事や、言いたい事を把握する為、俺達や波長の合う相手にしか分からない。いや、まぁ・・本人は喋れるんだけど、滅多に喋らないから俺達が慣れただけで、大した理由もないんだがな。
因みにりるはこう言っていた。【そういいながらもセイジちゃんは、色んな女の子にフラグ建てまくるんでしょ?】だとよ。生まれてこの方告白もされたこともねぇのにどうやって幻想乙女みたいなレベル高い相手達にフラグ建てるんだよ?!ったく・・・冗談が過ぎるぜ。
「それより、愉悦野郎ぉ・・・何時までニヤニヤ笑ってやがる・・っ!」
「いやぁ、想いの外、ツボに入ったらしくてな・・・。これが愉悦・・・っ!!」
「本当に良い性格してるぜ・・・。お前・・」
見る人が見れば背筋に悪寒が走るレベルの下衆い笑いを浮かべたイケメン・・・キョウの顔をバックミラーで軽く睨め付けながら、呆れたとばかりに溜息を吐き、運転に集中し直す。こうなったら襤褸出して更に弄くられない様に黙って運転だけするぜ。俺は。
「しかし・・・こっち方面は人の一人も歩いてないな・・・少し、様子が可笑しくないか?」
「ああ、真昼間にこれは・・・幾ら田舎の方に走らせているからとは言え、車の通りが異常にないな。俺らがたまたまそういう時間に当たっただけとも考えられるが・・・用心しよう」
カイの助手席の窓から覗きながら言った言葉に同意し、確かにこの状況は可笑しいと思いながらセレナを操り、目的地へ向けて、俺達は前進して行った。
大分、待たせたね・・・。仕方ないね。忙しいもの・・・