東方六雄伝   作:紡ぐ者

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博麗神社

「ふーん・・・如何にも古臭い造りの家屋だな・・・。いや、と言うよりもこれは神社か寺か・・?」

 

ボケーッとしていた頭が漸くまともに動く様になった俺は、のそりと布団から這い出して立ち上がる。極自然に動かした右腕は僅かな痛みしか感じず、ほぼ通常通りに動いてくれている。

独り言を呟きながら辺りを見回すも、俺のトレードマークたる紅いレザージャケットも中に着ていた黒のTシャツもない・・・。この部屋にはない様なので仕方なく包帯だけを巻いた半裸の状態でうろつく事を決め、古びた畳を踏締め、和紙が丁寧に張られた障子へと歩を進める。

 

「このご時勢に障子と木造建築か。随分と金があるのか・・・それとも重要文化財入りになってそうな何処かの名家の家にでも拾われたか・・・・?」

 

頭に浮かぶ疑念はそのままに、悩んでも仕方がないとばかりに、疑念を振り切り、家主を探すべく右腕で障子をスライドさせた。

スーッとつっかかりも感じずに滑らかに動いた障子を抜け、ピシャリと閉めた俺は左右を見渡す。どちらを見ても木造の廊下が続いており、どちらも角を曲がって行く様だ。

 

こういう時は迷ったら左の法則だ。

 

特に考えずに左へと進んでいく。服を着ていない状態の為、寒いかと思われたが春先であり、暖かな陽気がポカポカと差し込んでいる廊下の先は寒気を孕んだ寒風も吹きつけずに、麗らかな春の様相を照らし出している。

床の感触を確かめる為に足音を鳴らさずに、滑る様に歩くと、足の裏に感じる木床のひんやりとした冷たさを何処か懐かしく感じながら角を曲がった。

 

そこには当然の如く家主は居らず、右手の方にはこれまた如何にもらしい頑丈な石造りの古井戸が蓋をされてポツンと佇んでおり、その近くには薪を置く場所だろうか。小さな瓦屋根の小屋があり、薪用の原木や割られた薪がそれなりにある。

 

「う~ん・・・古風的だな・・・。今更薪ストーブか?」

 

この家屋の造りからしては電気ストーブを使用しない拘りは理解も納得は出来るが、国家解体戦争後とはいえ、石油ストーブ位は安価で使用できるはずだぞ?何故、使わないんだ・・・?今は季節とは違うとは言え、薪、薪か・・・・。

 

疑問が浮かんだが、それも含めて後で家主に聞くかと考えを纏め、改めて廊下を渡るのを再開する。

 

「・・・見れば見る程信じられんな。こんな家屋がまだ日本に残っているなんてな。もう全部焼き払われたと思ってたぞ・・・」

 

小さな子供の頃の記憶と相違ない木造建設の家屋が物珍しく色々と見回すが、特に木造建築と言う珍しさ以外変わった物は見られない。何処かに武器が隠されている訳でもなく、本当に古き良き時代の日本ののどかさを感じられるだけだ。

 

『それ』自体が今の日本の・・・いや、世界では有得ない様相だとしても。

 

「まるでタイムスリップでもした気分だ・・・」

 

何処か此処に自分がいるのが強烈な違和感を感じるがそんなものは後回しだ。本当に、俺は通常時は要らない事に頭が回るなと自分自身に胸中で苦言を漏らしつつ、偶々気になった左手の障子を開けてみることにし、躊躇もなく開けた。

 

「邪魔するぜ」

 

中を開けると、此処が居間なのだろう。こじんまりとしたちゃぶ台に、周りには綿があまり入っていないかの様な座布団が3枚程ちょこんと、置かれているだけだ。

何となく中身の綿の量が気になった俺はそれを持ち上げ、繁々とそれを眺める。手に持った感触では綿はあまり・・・いや、全然入っていない。

 

「・・・・」

 

何とも言えない侘しさを感じた俺は、何も見なかったとばかりにそっと手に取った座布団を元の場所に戻し、渋い面を晒しながら微妙になった心持ちを頭を左右に振って元に戻す。

綿のない座布団って凄い・・・何と言うか・・・残念な気持ちになるんだな。

 

座布団を戻した俺は、ふと人の気配を感じ、居間の奥の方にある障子を見つけ、躊躇いもなくその障子を開ける。

 

「あら・・?起きたのね。傷の具合はどう?」

 

「!?・・・っ・・・あ、ああ・・・大丈夫だ。問題ない」

 

躊躇いもなく開けた障子の先には、人は居た。居たが、想像だにしない人物がその先に居た・

 

 

――――黒曜石と見間違うばかりの煌びやかな美しさを備えた黒髪。

 

 

 

――――その美しき黒髪を結わえた紅白のシンプルな大きなリボン。

 

 

 

――――神事に就く巫女の正装たる巫女服にしては有得ないような大胆に脇が晒されている巫女服に、膝下までの短さの紅いスカートの巫女服。

 

 

 

――――端正な美しさの中に、まだあどけなさが残る顔立ちには心底面倒くさいという感情を張り付かせ、スッと通った鼻筋、初雪の様に儚い白さを表す肌に、淡い桜色の唇は微笑めばそれはそれはいい画になっているであろうそれは、今は見事にへの字を描いていた。

 

 

 

其処には、俺の勘違いでなければ、『博麗霊夢』本人が其処には居た。

唐突に投げつけられた俺の具合に、戸惑いながらも問題がない事を伝え、それを見せるかの様に右腕を軽く掲げ、直ぐに下ろす。家主にあったらまずは助けて貰った礼を言わなければな、とか考えてはいたがいきなりの理解できない状況に一瞬頭が真っ白になった俺は口を噤んで、気付けば睨み付けんばかりの勢いで霊夢を凝視していた。

 

「何よ?私の顔に何か付いてるの?」

 

「あっ・・、いや、すまない。何も付いてはいない・・・」

 

怪訝な表情を浮かべ、俺に問う霊夢に慌てて何も付いていない事を伝え、状況は理解できないが、一先ずは俺を救ってくれた霊夢に礼を告げる事にした。

 

「助けてくれてありがとう」

 

「別に、大した事じゃないわ。偶々見つけただけで、目の前で死なれたら寝覚めが悪いと思っただけよ」

 

そっけなくそう言い放った霊夢にたまらず俺は苦笑を漏らし、自分の名を告げないのは失礼に値すると考え、自らの名を告げた。

 

「俺はセイジ・・・。シノノメ セイジだ。あんたは?」

 

「私・・・?私は、博麗霊夢。此処、博麗神社の主にして」

 

 

「この世界、幻想郷の博麗の巫女よ」

 

霊夢の心底面倒くさそうに告げられた言葉に俺は愕然としながら呟いた。

 

「・・・・・夢じゃないよな・・・?」

 

試しに頬を殴ってみたが、痛いだけで夢から覚める感覚もなく、これが紛れもない現実なのだと、この頬を熱す痛みが痛烈に現状を叩きつけていた。

 

 

 

 




はい、満を持して脇巫女登場。基本、面倒臭そうにしてるイメージしかない。
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