「ひさしぶり、比企谷くん。待たせちゃったかな?ごめんね」
「いや、さっき来たところだから大丈夫だ。まだ十五分も前なのに、船見も来るのが早いな」
「この前も待たせちゃったからね。結局また遅れちゃったけど」
「集合時間より早いからまったく問題ないけどな——それにしても、その、だな、きょうも似合ってるな、服。いつも以上に似合ってる気がする」
「ふふ、ありがとう。私服でスカートはめったに履かないけど、今日は着てみたの。褒めてくれてうれしいな」
「フレアスカートっていうのかな。上品で女の子らしいと思う。ああ、気持ち悪くてごめん」
「ううん、うれしいよ。妹さんにアドバイスされたの?」
「服の褒め方もそうだけど、エスコートの仕方までレクチャーされたよ。完全にデートと思い込んでやがる——でも、似合ってるのはほんとうだからな」
「えへへ、ありがと。きょう行くミニシアターはここから電車で三〇分くらいかかるけど、大丈夫かな?」
「まったく問題ないぞ。きょうはどんな映画を観るんだ?」
「着いてからのおたのしみということで。なにを観るかいろいろ悩んだけど、比企谷くんがすきそうな映画かな」
「それはたのしみだな」
「期待しすぎないでね。持ち上げておいて、期待値以下だったときに申し訳ないから」
「了解」
* * *
「ふぅ、着いたね。比企谷くん、ありがとうね」
「どうしたんだ?」
「車内であえて話しかけないでくれたでしょ。わたしが自分の話を他人に聞かれることが苦手だから。気を遣ってくれてありがとうね」
「まあ、電車のなかで話すのは多少迷惑だし、そもそも三〇分も会話を続けられる自信がなかったからな」
「それでもありがとう」
「船見はよくお礼を言ってくれるな。どういたしまして——それで、ここがミニシアターか。ほんとに街のなかにポツンとあるんだな」
「ワクワクしてきたよ。上映時間から逆算してここまで来たから、ちょうど良い時間だ。さあ、なかに入ろう——」
* * *
「おお、今日観るのは邦画か。しかもこれ結構昔に流行った映画だよな」
「比企谷くん、邦画の方がよく観てるから、この映画が良いと思ってね。あ、もしかして観たことある?」
「いや、観たことないぞ。ちょうど気になっていた映画だ」
「良かった。学生二枚お願いします——」
「これくらい払わせてくれ」
「いやいや、自分の分は自分で払うのが、自然にできた私たちのルールでしょ。映画のチケットくらい払えるから大丈夫だよ」
「船見が良いならそれで良いんだが——まあ、この前作ってくれたコーヒーとクッキーのお礼はいつかさせてくれよ」
「律儀だね、了解——さあ、映画を観ようか」
* * *
「——ミニシアターって、良いな」
「だよねだよね!なんというか、映画館自体は小さいのに、なんだか贅沢をした気分になれたよね」
「そうそう。小さい分、客の数も少ないし、より集中して映画を観られることができたよな。映画自体も面白かったし、ミニシアターの醍醐味が知れて良かった。ありがとうな、船見」
「わたしもたのしかったな。また機会があれば一緒に観に行かない?」
「もちろん——さて、午前中に映画を観終わったわけだが、これからのことを考えていなかったな。どうしようか?」
「とりあえずお昼ごはんにしよっか」
「そうするか。どこにしよう——」