「……引き止めておいて申し訳ないけど、次になにするのか考えてないや」
「それは構わないが、ほんとうに長居して良いのか?」
「うん。一人暮らしもたのしいけど、ずっと一人でいると寂しくなるし、やっぱりともだちを呼んで一緒に遊びたくもなるよ」
「そんなもんか。まあ、俺もぼっちと言えども、小町が家にいないと寂しくなるときもあるしな」
「比企谷君」
「ん?」
「比企谷君がぼっちだとしたら、わたしは比企谷くんの『ともだち』ではないの?」
「い、いやそういうわけではなくてだな……そんなにじっと見つめないでくれ——わかったよ、俺はぼっちじゃない。船見が『ともだち』だからな」
「ふふ、ありがとう」
「なんだか照れるな」
「そうだね、私も急に恥ずかしくなってきた——ええと、あ、そうだ。ゲームでもしない?」
「あ、ああ。そうしよう」
* * *
「船見は普段どんなゲームをするんだ?」
「わたしの場合はちょっと変わっててね、インディーズゲームをよくするんだ」
「インディーズゲーム?」
「誰もが知っているような有名なゲームを作っている大手のゲーム会社ではなくて、小規模で予算の少ないゲーム会社が独立して制作するゲームのことを、インディーズゲームって言うんだけど、最近はそればっかりやってるかな」
「大手ゲーム会社のゲームとはどう違うんだ?」
「比企谷くんがこの前に、ライトノベルの良さは自由奔放なところにあるって言ったように、インディーズゲームも大手ゲーム会社よりもしがらみが少ない分、より自由度の高いゲームが多いことが特徴なんだ。低予算で小規模なゲーム会社が知恵を出しながらつくったゲームは、ときには大手ゲーム会社のゲームをも凌駕することがあるんだ。わたしはそんなところに惹かれて、インディーズゲームをよくやっているよ」
「インディーズ音楽とも似たところがあるな」
「そうかもしれないね——あと、インディーズゲームの良いところは、なんといっても安いところ。最近は大手ゲーム会社がフリーマーケット会場のようにゲームの売り場を提供していて、そこでインディーズのゲーム会社がゲームを販売することが多いから、膨大な数のおもしろいインディーズゲームがあるよ」
「なにか一つプレイさせてくれないか?」
「もちろん!比企谷くんにおすすめのゲームがあるんだ、早速やってみよう」
* * *
「……どうだった?」
「たしかに大手ゲーム会社のゲームにはないおもしろみを感じたよ。世のなかにはまだまだ俺の知らないたのしみがたくさんあるんだな」
「良かったよ、たのしんでもらえて——まだこんな時間だね。次はどうしよっか?」
「迷惑になるし、そうそろそろ帰——……いや、まだここにいようかな、船見が良ければ」
「うん!」
「あんな寂しそうな顔されたらな。『ともだち』として帰るわけにはいかないさ」
「は、恥ずかしいな……」
「船見は俺のことを『ともだち』と言ってくれたはじめてのひとだからな」
「わたしも異性の『ともだち』は比企谷くんがはじめてだよ」
「………」
「………」
「恥ずかしいから、別の話をしないか」
「そ、そうだね——」