「——あのさ、昔ラノベ書くかどうかって話をしただろ。そのことについてなんだが……」
「もしかして、八幡くんラノベ書いてきてくれたの!」
「ああ、思ったより進まないけどな。たった原稿用紙三枚、一二〇〇字だけ……」
「それでもすごいよ、創作するなんて——その、見せてもらうってこと、できる?あ、いや、嫌だったらいいんだけど……ほんとズルいね、このことば」
「いや、そんなことない。それに、結衣に読んでもらうために、この話を持ち出したからな」
「ありがとう……あのときは、結構強引に最初に読ませてってせびったと思うけど、思い返せば少し思い上がってた気がするよ」
「思い上がってなんかないぜ。俺だって、結衣が淹れたコーヒー飲みたいっつったし、それならそれも思い上がりってことになる。でも結衣は俺が偉そうだとは思わなかっただろ?」
「うん、そうだね。ありがと……」
「まぁ、これを見せる俺が一番の思い上がりな気もするが……これが原稿用紙。ここでもいいし、帰ってから読んでもらっても構わない」
「せっかくだから、ここで拝読させていただきます」
「献本いたします……たったの一二〇〇字だが」
* * *
「ふっふふふ。くくっく、うぶっ……」
「どど、どうした?およそ女の子がする笑い方じゃないぞ……?」
「い、いやだって……八幡くんがまさか初っ端にギャグを入れてくるとは思ってなかったから……うくく……しかもおもしろい……」
「俺自身がびっくりしてるよ、設定もプロットもしっかり考えたはずなのに、なぜがネタを冒頭に書いてしまった……まぁ、ネタのないラノベはあんまりないけど、な。いずれにせよおもしろいと言ってくれるなら、よかった……」
「ふーっ、くくくっ、ちょ、ちょっと待ってね……う、うぶっ……——ふぅ、なんとかおさまった。いや、やっぱり八幡くんのこと、まだまだ知らないな。こんなに茶目っ気があるひとだったなんて。普段がおもしろくないって言ってるわけじゃないよ。ただ、また違った八幡くんが見られてすごいうれしい。ほんとにほんと——それにこのラノベ、ギャグを入れつつちゃんとストーリーがうまく機能してる。心情表現も厚く書いてあるし、読んでて楽しいな……あ、偉そうだよね、ごめん」
「——い、いや、まさかそこまで褒めてくれるとは思ってなかったから、めっちゃうれし……——くくっ……うぶぶっ、くっ……やべぇ、ほんと舞い上がりそう。はじめて創作を友人に見せて、ここまで詳しく感想を言ってもらえてよかった」
「ふふっ、どういたしまして。小町ちゃんにはこのラノベを見せたの?」
「いや、これは結衣がはじめてだ。そのな……昔、中二病ノートを小町に見られてドン引きされたことがあるから……見せたというより、見られただな。いまでもベッドの上でたまに思い出して煩悶する」
「そ、そうなんだ……——あ!じゃあこのラノベ、小町ちゃんにも見せて感想もらったら」
「いやいやいやいや。そ、それはやめとく。マジで、ほんと、軽いトラウマになってるから……いまは結衣だけでいい」
「そ、そか。わかった——きょうは八幡くんの氷山の下を見られた気がするよ。失礼な言い方になるかもだけど、人間って思った以上にいろいろな側面があって深いんだね。そ、それにしても、うくっ……ツボった……いやぁ、サイコーだ、冒頭のモノローグ、主人公が——」
「ち、ちょっと待て!頼むここでは言わないでくれ!店員さんこっち見てるからっ!——」