「おっす、八幡くん」
「おう。おっす、結衣」
「本日はカジュアルな挨拶を試みました」
「その挨拶の次に出たことばがカジュアルじゃなくてフォーマル寄りなんだよなぁ……」
「ふふっ、かもしれないね——待った、かな?」
「いんや、ぜんぜん」
「わたし、けっこう早めに来たはずなんだけど、八幡くん、いつから待ってくれてるの?」
「毎日同じ時間からここで待ってるよ」
「え?……えっ!」
「くくっ、冗談冗談——この前あげた本に挟んでる栞に集合時間を書いてあったはずなんだが」
「そ、そうだったの?ごめん!すぐ確認してくる!……って本をもらった記憶ないんだけど……?」
「カジュアルなノリツッコミの誘発を試ませてみました」
「はめられた……八幡君、冗談もたくさん言ってくれるようになったね。もっともっと打ち解けてきていてうれしいな」
「まあ、なんだかんだで長い付き合いだしな……あと、実はさっきのは半分冗談だな」
「半分本当ってことは、毎日このカフェにいるってこと……?」
「い、いや、二人のときしかここには来ないから——ほれ、これ良かったら」
「え……これ、ラノベ?あ、タイトルは知ってる。すごい有名だよね?アニメも昔流行ってたらしいし」
「うむ。さっきの冗談が半分本当ってのは、本を結衣に渡したいのと、その冗談の元ネタがこの本にあるってことだな」
「なるほど……——ほんとにもらっていいの?」
「ああ。布教のためってのもないことはないが、結衣にはお世話になってるし、いままでコーヒーにクッキー、それにミラノ風ドリアまでご馳走になってるから、ぜんぜん恩を返しきれてないけど、せめてなにかお返ししたいと思ってな」
「——八幡くん、ありがとう!ちゃんと読むね!」
「おう。まあ、結衣がこの前言ったように、どんな作品も自分がおもしろいと思えばそれでいいから、すきなように使ってくれ」
「そうだけど、八幡くんからもらったことに意味があって——その時点で、なんというか、この本は『名作』だよ」
「……そうか、ありがとな」
「えへへっ。読むのがたのしみだなぁ」
「喜んでもらえてよかったよ——なにか頼むか?」
「あ、そうだね。えっと、きょうはどうしようかな——」
* * *
「くぁぁ……」
「八幡くん、疲れてるの?大丈夫?」
「ああ、すまん。大丈夫だ。ひとまえであくびなんて失礼だよな、ごめん」
「そんな!ぜんぜん気にしないでっ。疲れてるときも隠してほしくないし、繰り返しになるけど、そっちの方が打ち解けられてると思うし、八幡くんの健康のためにも遠慮しないでほしいな」
「ありがとう……最近奉仕部がまた少し動き出しててな。別に忙しくなったわけではないんだが」
「そうなんだね。やっぱり八幡くんはえらいよ。ひとのためにそこまで行動できるなんて」
「……いや、そこまで俺はできた人間じゃないんだ。奉仕部だって自分の意思で入部したわけでもないし、人を助けることを純粋にできない自分が少し嫌いだ」
「でも……」
「……少し、俺の話をしてみるか——」