比企谷八幡と船見結衣の会話   作:風吹18号

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「——最近ね、コーヒーの新しい淹れ方を開拓したんだ」

 

「お湯の注ぎ方を変えたとか?」

 

「ううん——いや、それもあるかな。いままでやってきたのは紙のフィルターで淹れるペーパードリップってやり方だったんだけど、最近はネルドリップっていうのも試してるんだ」

 

「ネル?」

 

「ネルっていうのはフランネルの略で、織物の一種なんだけどね、それをドリッパーとして使って淹れるのがネルドリップのことなんだ」

 

「フランネルか、たしか服にも使われてるよな?」

 

「そうそう!それをコーヒーにも応用してるんだ」

 

「ペーパードリップとは味が変わったりするのか?」

 

「うん——なんというかね……正直に言うと、異次元の飲み物になる」

 

「い、異次元……」

 

「良い意味で、だよ。ペーパーももちろんおいしいけど、ネルで淹れたコーヒーは、すんごく重厚でオイリーなんだ。ネルはペーパーと違って生地の網目が大きいから、その分コーヒー豆の油分が濾過されずに通り抜けやすいんだ。ひとによって好みややり方は違うらしいけど、わたしが試してる方法では、ペーパーで淹れるときよりもかなり多めに豆を使うの。そうすると……とてもよろしくなります」

 

「よろしくなるのかぁ……オイリーなコーヒーってあんまり想像できないな」

 

「最大限オイリーにさせるためには、さっき八幡くんが言ってくれたように、お湯の注ぎ方も重要でね——点滴ドリップって言われる淹れ方が必要なの。普通挽いた豆にお湯を注ぐときは、まずはサッと注いで蒸らしたあと、円を描いて何回かに分けて注ぐんだけど、点滴ドリップは病院の点滴がポタッ、ポタッ、って垂れるように、お湯を一滴一滴、丁寧に注いでいくんだ」

 

「なんというか、すごい時間がかかりそうだな」

 

「そうなの!一滴ずつ注ぐのは結構集中力や忍耐力が必要だし、最初やったときはうまくできなかった。しかも、一杯分淹れるのにもネルの準備から淹れ終わるまで、ペーパーの五倍以上の時間はかかるかもしれない——まぁ、まだ慣れてないだけかもしれないけど」

 

「でも、よろしいくらいうまいわけだ」

 

「うん……ちょっとコーヒーの人生観変わったくらいには」

 

「……飲んでみたいな」

 

「えっ!ほんとっ!やったっ。やっぱりひとに——ともだちに飲んでもらって感想もらうのはとってもうれしいことだから」

 

「……うん。熱弁してくれてるし、すごい興味持ってきたわ」

 

「えへへ、少し恥ずかしい——ネルはこだわると際限がなくて、ネルは何度も使える分、本当にちゃんとするなら、淹れる前にネル本体を煮沸してからドリッパーとして使って、淹れ終わったあとも水につけながら冷蔵庫で保管、そして毎日その水を取り変えるみたいなことをしないといけなくて……」

 

「おぉ……でもコーヒーマニアの結衣なら案外こまめにできそうだな」

 

「いや、流石にちょっと面倒だなとは思うよ、あはは……でも、ペーパーとは違うコーヒーをつくるのは、手間がかかってもたのしいね、今度淹れるよ。——その……また、ウチ、来る?」

 

「んんっ!……あー、えっと、まぁ……そうな、結衣が嫌じゃなきゃ、またお邪魔するよ」

 

「うん!……次は気まずい空気にはならないと思うよ、多分……」

 

「ちょ、結衣!そこにはあえて触れなかったんだがなぁ……」

 

「………」

 

「………よし、とりあえず釣りについて、いまから計画練るか」

 

「そ、そうだね!この前メールで話したあたりから進めようかっ——」

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