「……ようこそ!いらっしゃいませー!」
「ど、どうも……」
「一名様ですか?靴を脱いでおすきな席へどうぞっ」
「はい……お、お邪魔します」
「どうぞどうぞ——ふふっ、ひさしぶりだね、八幡くん」
「くくっ。ああ、そうだな。ひさしぶり、結衣——その、この前はすまなかった。……もう大丈夫だ。最近はよく眠れてるから」
「よかった……ほんと、ごめんね」
「結衣はなんも悪くないから気にするな。むしろ、悩んでることを聞いてもらってよかったよ。おかげで元気だ」
「うんっ。ささ、上がって上がって。さっそくだけど、コーヒー淹れるね」
「おう。……まだ二回目なのに、思ったより自然に異性の部屋に入れてる自分がなんか怖いな——」
* * *
「淹れてるところを見たい、か……」
「あ、すまん。だめだったか……?」
「ううん、違うの。ただ緊張するなぁって——よし。ネルドリップ、いっちょやってみますっ」
「どんな感じでコーヒーつくるのか、たのしみだ」
* * *
「時短と、なるべくコーヒーを冷ませないために、同時並行で進めていくよ——まずは小鍋でお湯を沸かします。それで、沸騰するまでにコーヒー豆をミルで挽くよ。どの量をどう挽くかは本当にまちまちだけど、わたしの好みでは一二〇ミリリットルに対して豆が二〇グラム。おそらくすごい多い方だと思う。挽き目は粗めがオーソドックスらしいから、このミルのダイヤルでいうと五番かな」
「すごい本格的な電動ミルだな……」
「長い趣味になりそうだと実感したから、少しずつミルのレベルを上げるよりかは、最初からちょっと良いのを買った方が結果的に安上がりかなぁって思ってね」
「たしかにその通りだな」
「うん——よし、挽けたね。次はネルの煮沸です」
「これがネルなのか。なんというか、クリーミー?な色をしてるな」
「そうだね。最初は白に近い色をしてるフィルターが多いけど、何度も使ううちにコーヒー豆の色と混じってこういった色になるね」
* * *
「よし、お湯も準備オッケーだ。このミルを沸騰した小鍋に入れて、少し煮ていくよ」
「なんで煮沸するんだっけ?」
「ネルフィルターは再利用できる分、使えば使うほどコーヒーの豆が繊維に詰まっちゃうんだよね。だから、そういったいわゆる目詰まりを取り除くために、毎回煮沸するのがベストみたい。まぁ、かなり面倒くさいから、しないひともいるみたいだけど」
「たしかに、面倒だな」
「そして、煮沸が終わるタイミングに合わせて、カップとかを温めるためと、コーヒーに注ぐためのお湯を電気ケトルで沸かすよ」
「ん?ここにドリップ用のケトルがあるよな?これで直接沸かさないのか?」
「そのポッドは銅製なんだけど、そのまま沸かしちゃうと焦げついて黒くなっちゃうのと、熱が通りやすいから取手まですごく熱くなっちゃうんだよね。だから、電気ケトルで沸かせたお湯を後からドリップポッドに入れるのがベターかな。あと、なんで電気ケトル自体でコーヒーを淹れないのかはいろいろ理由があるけど、やっぱりドリップ専用のポッドで淹れるのがいちばんだからだね」
* * *
「五分経ったかな。……それじゃあ、熱いからネルを箸で鍋から取り出してから、流水で冷ますよ——そして、手で持てるようになったら、絞って水気を切ります。……で、電気ケトルで沸騰させた量多めのお湯をドリップ用のポッドと、目盛りのついたコーヒーサーバーに注ぎます」
「サーバーって、このビーカーみたいなやつだな——それにしても、かなり忙しなくなるな……」
「うん——そしてサーバーが温まり終わったら、お湯をそのままカップに移して、今度はカップを温めるよ。カップ自体が大体一二〇ミリリットル分だから、そのままドリッパーから淹れてもいいんだけど、口が小さいからはみ出ちゃうこともあるので、サーバーに淹れてから移すことにしてます」
「……見てるからなんとなくわかるけど、なんだかこんがらがりそうだ……」
「まだ淹れる前の段階でこれだからね、あはは……それじゃあ、どんどん進めていくよ——」