「……そういえば」
「ん?」
「釣りももちろんそうだけど、今度、また映画、観に行かないか」
「おっ!いいねっ!行こう行こう」
「この前のところでもいいし、調べてみるとまだミニシアターはところどころにあるみたいだな。どこも結構遠いけどな」
「そうだね。この前の映画館がここからいちばん近かったかな。——でも、違うところもできれば行ってみたいよね。急ぎすぎる必要はないけど、今後もそういった単館の映画館が存続するかどうかはわからないから、応援するためにもいろいろ行ってみたいかな。行くにも観るにもお金も結構かかるから、映画館で映画を観るのはすごい贅沢なことだけどね」
「たしかに贅沢なことだよな。昔のひとはもっと気軽に観られていたはずなのに——いずれにせよ、まだ一回しか行ってないけど、ミニシアターが良いところってのはよくわかったから、他のところにも行ってみたいと思う。調べて観に行くか」
「やったっ。……映画自体がおもしろいものだし、多少お金がかかっても、暗闇で誰かと共有しながら映像を観るのは、不思議ととってもたのしいからね」
「……そうだな。映画館だけで経験できる暗闇の娯楽だ」
* * *
「映画といえば、結衣は最近なにか観たか?」
「前に言った、よく観る映画の年代までは古くないんだけど……『ニュー・シネマ・パラダイス』って映画を観たよ」
「……聞いたことあるな」
「おっ、うれしいな。イタリアの映画なんだけどね、たくさんの映画賞を取った名作と呼ばれる映画なんだよ。八〇年代の映画だね」
「十分古いんだが……」
「あはは……でもね、いまでもときたま上映されているらしくてね、それくらい評価の高い映画なんだ」
「それこそミニシアターでいまやってたら観に行きたいな」
「ねっ!あとで調べてみるよ。……配信サービスでたくさん観てるけど、やっぱり映画館でみたいよね。高校生になったら、バイトして映画館に通ってみたいなぁ」
「いいな。しかし、随分と入れ込んでるんだな。もちろん非難しているわけではなくて、趣味に良い意味で没頭してるなと思ってな」
「うんっ。——映画の良いところって、飽きる可能性がほとんどないってことなんだよね。映画って、一人の人間が何回人生を繰り返してもすべて観られないくらい膨大な数があって、それでも同じ内容の映画なんてなに一つないわけだから、ある映画に飽きたとしても、まだまだ観てないおもしろい映画はたくさんある。だから、『映画』それ自体に飽きることってあまりないと思うんだ。そして、なにより映画は『たのしい』」
「……すごいな、結衣は」
「たまたま良い趣味に出会えただけだよ。……それに、八幡は趣味と言えるものがないって昔に言ってたけど、趣味って好きなことや興味のあることの延長線上にあるものだと思うから、本がすきならそれは趣味と言っていいし、興味が少しでもあるものは趣味になりうると思うんだ」
「……その通りだ。本も好きだし、結衣のおかげで最近は映画の良さにも気づいて、前より観るようになったから、興味を持てるものが増えた」
「良かったよ。また映画、観てくれてたんだね。最近はなにを観たの?」
「その、結衣が前に言ってたような、二〇世紀初めくらいの映画を観たんだが……」
「えっ!なに観たのっ!」
「お、おう。えっとだな——」