「結局、まったりできずに話し込んじゃったね。ごめん……」
「自然にまったりするのがいいわけだから、自然と話し込むのも悪いことじゃないと思うぞ。それに………たのしいからな、結衣との会話は」
「………照れるね」
「お、おう………」
「………」
「………」
「………これは、『自然な』沈黙なのかな……?」
「い、いや……どうだろうな……」
* * *
「……いつか言おうとは思ってたけどさ——八幡ってやさしいよね」
「んんっ。ど、どした急に」
「いや、よいしょとかそういうつもりではないんだけど、ずっと思ってたからさ」
「なぜその年齢で『よいしょ』を知っているんだ………」
「え、映画の影響かな?……それこそ映画の俳優みたいなやさしさがあるよね、八幡は。それも、性格もキリッとした男前俳優と、少し道化っぽいけどこころが純粋な俳優を組み合わせたような……別にこっちを喜ばせようみたいなわかりやすい意図を見せているわけじゃないのに、話をちゃんと聞いてくれる、二種類の俳優のいいとこ取り……みたいな?………あっ、ご、ごめんっ!なにかすごい失礼なことを言ってるよねっ」
「………むしろすげぇうれしいな。そこまでちゃんと考えてくれて。ここまで深く褒められたことないから、結構感動してる………」
「そ、そこまで……?」
「ああ………——いまではもう、嫌われつづけてきた人生だったとは思っていないが、それでも『ひとに認められる』って経験がほとんどなかったからな……うれしい、ほんと」
「その………認める認めない以前に、わたしは八幡を自然に受け入れられてるから。もし『ともだち』の定義があるとするなら、それは『定義がなくてもともだちになれること』だとわたしは思ってるよ。認めるかどうかを超えて、八幡とありのままでこれからも接したいな」
「………グッときた。そのとおりだな。………そんで、いまのめちゃくちゃいいセリフだった。銀幕女優だったぞ、結衣」
「は、恥ずかしい……!自分でもだいぶキザだと思ったから……!」
「いや、ほんとに良い画だったと思うぞ。……この前俺にラノベを書くことをすすめてくれただろ?そのだな………結衣は演技には興味ないのか?」
「えっ………考えたことなかったな。いや、なってみたいなとは軽く思ったことがあるけど、夢としては考えたことがないかも………」
「別に夢までの話ではなくても、映画がすきなら演技も経験してみるのもおもしろいんじゃないかと思ってな………すまん、俺の勝手な提案だ。無視してくれ」
「そ、そんなことないよっ。………逆になんで思いつかなかったんだろうと考えていてね。こころのどこかでためらってたのかもしれない。………たしかに、たのしそうだと思う。演技についてほとんど知識がないから、もっと調べなきゃだけど、興味はすごいある。………ありがとう、八幡」
「おう。それに、自分でつくってみるのも一興じゃないか?自主制作ってやつだな」
「!良いっ!すごい良いねっ!………そうだっ!——いっしょにつくろうよ!」
「えっ……?」
「別にいますぐにってわけじゃないよ。それに、わたしたちの他に、もっと人数が必要でもあると思うから。……でも、知恵を出し合いながら準備をして映画をつくるってすごいおもしろそう!……それで、八幡とわたしも演技するのっ!」
「お、俺もか?」
「うんっ、もちろん!」
「………」
「………だ、だめかな?」
「………正直、結衣にすすめたときから、こういう話になるんじゃないかとは心中思っていた。昔の俺なら断っていただろうが、結衣と出会ってから、いろんな面で穿った見方をすることがなくなってきたからな——だから……そうだな、やってみるか」
「!………ありがとうっ!八幡!」
「まあ、モラトリアムはまだあるからな。ゆっくりやってこう」
「うんっ!」
「俺も映画の世界を広げていきたい。……そういやさっき言ってくれた、俺の性格を構成する二種類の俳優って、特にモデルとしている俳優がいるのか?」
「い、いるんだけど………それを言うのは、ちょっと恥ずかしいかも」
「お、おう、そうか。無理には言わせるつもりはないが………」
「………いつかかならず言うよ」
「………わかった」