比企谷八幡と船見結衣の会話   作:風吹18号

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「………着いた」

 

「………着いたね」

 

「………まさか『ニュー・シネマ・パラダイス』がほんとに上映中だったとは………」

 

「わたしもびっくりした。探してみるもんだね」

 

「俺では探せなかったから、ありがとな。——前よりは少し遠いシネマだけど、ここはビルの上の階にあるんだな」

 

「ミニシアターもいろんな形があるんだね。——それにしても、朝早くに集まってもらってごめんね。きょうの朝で終映だから、急いで決めて来てもらったんだけど……」

 

「いや、むしろこっちがありがとうと言いたい。結衣は二回目だろ?それこそ良かったのか?」

 

「おもしろい映画は何度観ても飽きないよ。いまみたいに入れ替え制じゃなかった時代は、一本か二本かの映画が一日中流れるから、ずっと観続けて内容を覚えきってくるひともいたらしいしね」

 

「それはすごいな……——じゃ、さっそく入ってみるか」

 

「うんっ」

 

* * *

 

「おお……うまくことばでは言い表せないけど、良い雰囲気だな、ここ」

 

「ね!映画がすきなひとが集まりそうな感じがする。前のところも良かったけど、ここはよりオシャレだね」

 

「パンフレットも机の上にずらっと置いてあるんだな」

 

「あ!この映画観たかったんだよね!来月上映されるのかぁ。……うう、お金がいくらあっても足りないよ」

 

「まぁ、一生それが再映されないわけではないと思うし、映画は長い目で見る趣味と捉えたら良いんじゃないか?」

 

「そうだね。映画産業が衰退しないことを祈るよ……」

 

「そ、それはフラグになるぞ……」

 

「おっと、いけない。えへへ。——でも、映画を撮りたい人はまだまだたくさんいるみたいだから、なくなることはないと願いたいなぁ」

 

「………結衣も、撮るんだろ?」

 

「んんっ。わ、わたしは、その、とりあえず撮って作品として残したいだけだから、ね?」

 

「まぁ、なんでもまずはやってみることではあるよな」

 

「………八幡も出演するんだよ?」

 

「………結衣が撮りたいなら、俺はそれを応援するだけだから、出てほしいなら出るさ」

 

「おお、八幡がすごい肯定してくれる……あ、いや、からかってるわけじゃなくてね、うれしいんだよ。——わたしの『やりたい』をちゃんと受容してくれて」

 

「……おう」

 

「照れてる、ふふ。——お、そろそろ時間だね、行こっか」

 

「この羞恥のままスクリーンに行くのか……」

 

「ご、ごめんって!からかうつもりじゃなかったからっ——」

 

* * *

 

「………泣いた、ほんとに」

 

「うん……何度観ても良い映画だよ………八幡、なんだかきょうは素直?」

 

「まあ、そんな日もある」

 

「そっか。………もちろん、素直かそうじゃないとか関係なく、 わたしは『八幡自体』をありのままに受け入れていることは覚えていてね」

 

「………結衣も今日はなんというか……アグレッシブだな」

 

「………急に恥ずかしくなってきたよ」

 

「あ、いや、からかっているわけではなくてだな………俺も、その、結衣のことを自然に受け入れられてきていると思う。はじめて会った頃よりも、『結衣自体』を見られるようになったというか………俺は、『どんな結衣も受容する』とか、そういう言い方をするつもりはない。人間は流動的だから、『どんな』と表現することで、ある種結衣の性質を固定させたくない。人間は多面的どころか、その面と面の境界線もあやふやだと思うから。………変な表現になるが、曖昧な『結衣自体』を真正面から受け止めて認めたいと考えている。これも結衣の内面を固定させているかもしれないし、偉そうな言い草だが………」

 

「………ううん、ありがとう。とってもうれしいよ。それぞれ、『お互い自体』を愛しあえたらいいね………あっ」

 

「………」

 

「あ、愛すっていうのは、その、え、映画的な?意味でっ。ね?映画でいうラブみたいに、もっと広い概念で言ってるからねっ。あ、あれ?広いのかな?そ、その、あの………」

 

「お、おう。そうだな。………と、とりあえず、喫茶店で感想会でもし、しないか?」

 

「う、うん。………は、恥ずかしいぃ………——」

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