「——そうそう。どのタイミングで言おうか迷ってたんだけどさ、この前八幡からもらったラノベ、読破してみたよ」
「ぜ、ぜんぶ読んでくれたのか?それはうれしいな」
「プレゼントしてくれる前に八幡が言ってた、毎日同じところで待っているとか、本の栞とかの意味がわかったよ、ふふ……それに、このラノベ自体すっごいおもしろかった。こんな壮大なストーリーがあるんだ!って」
「だよな。はちゃめちゃだけど繊細なヒロインが、実はSF的な自然を超越した存在かもしれないって、これまでにない内容だったから、ラノベもアニメも興奮して観てたな………あっ、すまん、キモかったよな……」
「なんでさ、八幡。まったくそう思わないし、すきなことにワクワクしするのはなにも悪いことじゃないよ。わたしも映画のときは興奮して話しちゃうし……」
「世界が結衣ばっかりだったらいいのにな……」
「………え?」
「あっ、待ってくれ、少し語弊があった………その、俺の周りにはこういった話をすると嫌な顔をして避けるやつが多いから、結衣みたいにやさしくて理解がある人間ばかりだったら生きやすいなぁと思ってな……」
「あ、ありがと……ちょっとびっくりしちゃった。八幡以外の人間全員がわたしだったらすごい世界だろうなって一瞬想像しちゃって」
「………それでも良いけどな」
「えっ!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれっ!なんかよくわからないことを言った気がする………す、少しご失念してくれませんか……?」
「す、少し失念すればいいの……?」
「あっ、いやっ、ことばの綾というか……まぁ、うん、なんだ。みんな結衣だったら世のなかは丸く収まるってことだ。平和そのもの。モーマンタイ」
「は、八幡落ち着いて……少なくとも八幡はその世界にいてもらわないと………あっ、ちょっと待ってこれ語弊ある………あの………八幡も少しご失念してくださいませんか……?」
「……お、おう。少し、忘れようかいまの会話、お互いに……——」
* * *
「——お互い落ち着いたね」
「そ、そうだな。なんか最近こんな雰囲気になってばっかりな気もするが………」
「そ、それは言わないっ!」
「あ、まあ、あれだ、ラノベの話に戻るが、続刊買って読み進めるのも良いし、アニメ版を観るのもたのしいと思うぞ」
「あっ、アニメの方も興味あるな……」
「すべて観ようと思ったら結構長いし、なんなら劇場版もあるからなぁ」
「えっ、映画もあるのっ!」
「お、おう……流石、映画には目がないな」
「い、いや、テレビアニメが嫌だってわけじゃなくてね、なんでだろうね、映画で観られるとわかった途端に興奮してしまう……」
「またテレビアニメとはつくりや表現が違うだろうからな。……でも、劇場版はテレビアニメ版をさきに観ないと内容は理解できないと思う。時系列からして」
「そっか。もちろん、アニメも観るよ。………そ、そのさ……テレビアニメの方を観てみるからさ、映画はいっしょに観てくれない……?」
「い、いいぞ。………それに、テレビアニメ版もいっしょに観るぞ、良ければだが」
「いいの?うれしい……!」
「あー……その、なんだ。そのときはだ………うち、来るか?」
「!!!行くっっ!!!」
「め、めっちゃ食い気味ですね……」
「そ、そりゃ食い気味にもなりますよ………行きたい、八幡のおうち」
「まぁ、妹いるかもしれんが、それで良ければ……」
「小町ちゃんにも会いたいな。だって、わたしのことは小町ちゃん知ってるんでしょ?」
「結衣とデー……いっしょに出かけるときに、いろいろと小町に相談したからな」
「デー……」
「小町のことばがうつっただけだ。頼む、失念してくれ……」
「こ、これは『少し』じゃない失念のお願いだり、了解。……行っても良いなら、ぜひお邪魔したいな。八幡の家でアニメ観るってことだよね?」
「そう。小町がどう思うかわからんから、リビングのテレビを使わず、俺の部屋になるかもしれんが……あと、俺の両親がいない平日に来てもらうか……いや、でも結衣の帰りが遅くなるし、途中で親が帰宅する場合も……」
「け、結構難しそう?」
「いや、両親がネックでな、結衣に会わせるってのは、な……」
「わたしは問題ないけど……?」
「んんっ。……し、しかしだ、両親が、いままでともだちのいなかった俺が突然友人、しかも異性といっしょいるのを目撃したら、いろいろ勘繰るに………——いや」
「?」
「——俺が間違ってたわ。両親に会ったら普通に紹介するよ、『親友』って」
「!!………えへへ、ありがとう」
「結衣に来てもらうってのに、こっちがあれこれ心配するのは馬鹿らしいし、なにより結衣に失礼だった。親にはどう邪推されてもいいか」
「邪推って、なにを……?」
「な、なんでもない……失念してくれ」
「き、きょうはどれだけ忘れたらいいのかな……?——」