「——ここのコーヒーも凝ってるみたいでおいしいね」
「そうだな。……そいや、あれからもコーヒー道に精進してるのか?」
「うんっ。一時期はネルばっかりだったけど、いまはペーパーと交互にやって、どっちも練習してる感じかな」
「前に結衣に淹れてもらったネルドリップのコーヒー、すんごいまろやかでうまかった」
「えへへ、ありがとう。自分で淹れて飲むのも良いけど、誰かのためにつくってご馳走するっていうのが、コーヒーやっててうれしいことだね。特にネルドリップは手間ヒマかかるけど、その分愛情がこもって……的な……的なアレがアレなので、自分以外の人に振る舞うのがいちばんかな……うん」
「そ、そだな。アレがアレだからな」
「そ、そうなんです。アレなので」
「………」
「………」
「まぁ、親愛なる的な意味で、だもんな」
「!う、うん……そう……——やっぱり会うたびにこんな雰囲気になってしまう……」
「い、言わない約束だったろ、それは………」
* * *
「——長らく置いていたけど、釣りも計画はほとんどできたわけだし、あとは日を決めて実行するだけだね」
「おう。……最初だから、結局手ぶらで行けるようなやさしい釣り堀に決めたけど、良かったか?」
「ぜんぜん大丈夫だよ。むしろ、二人とも初心者なんだからこれくらいじゃないと。最初、海上釣り堀おもしろそうってメールでやりとりしたけどさ、なかなか難易度が高いことがわかったからね……」
「だな……釣りについてまだなんにも知らないわけだし、まずはハードルは低めに、な。……それでもその釣り堀自体が県外で遠いし、丸一日外出するわけだから、一応お互いの両親には連絡しておくというわけなんだが……結衣はしてるもんな」
「うん。えっと、八幡は……?」
「いや、まだだ………——でも、今夜にでも親に会ったら伝えて許可もらうわ。いろいろと逡巡していたけど、いずれ結衣をうちに呼んで紹介するとも言ったしな」
「……照れるね」
「……まぁ、俺に親友がいると突然両親に告白したらびっくり仰天されるとは思うが……なんせともだちすら皆無の人間だったからな」
「その、八幡はもっとともだちをつくろうとは思わないの?その気があればいくらでもできると思うけど……」
「……どうだろな。——前よりかは捻くれ具合もやわらいで、自分の殻から少し出られるようになったが、これは結衣に出会ったおかげだ。いま、割と素直にいられるのは結衣の前だけだし、仮にこれからその素直さを誰に対しても出せるようになったところで、特に友人をたくさんつくりたいとも思わん。急に増えても困るしな。だから——いまは、ともだちは一人で良い」
「……そっか。でも、無理にこれからもわたしだけを友人にしなくて良いからね?」
「——俺は無理をしたくない怠惰な人間だから、『自然に』ともだちでいたいのが結衣なんだ。ともだちでいることに無理させないでくれ」
「……おお、かっこいいセリフ。映画俳優だね、八幡」
「ちょっ、きゅ、急に自分がキザで偉そうに思えて恥ずかしくなってきた……なんか既視感のあるやりとりだな……」
「ふふっ、ごめんごめん……——ありがとっ、八幡」
「……おう。それにしてもなんてナルシな言葉を吐いたんだ俺は。うぐぐ、黒歴史がまた……——」