「——いろいろ話してきたけど、まだ音楽の話、そういえばしてなかったね」
「!ん……た、たしかにそうだったな」
「八幡がどんなの聴くのかすごい気になるな」
「お、俺はなぁ……いままではアニソンか最近の邦楽ばっかだったんだが……少し恥ずかしい話、洋楽も聴くようになった」
「おお!良い趣味だね、洋楽。すごいかっこいいと思うよ?恥ずかしくもないと思うけど」
「いや、いまのでもっと恥ずかしくなった……」
「?」
「……正直に言うと、結衣に『かっこいい趣味してるね』と言われたいがために、洋楽を聴きはじめたんだ………」
「そ、そうなんだ………」
「………でも、いまになってわかった。音楽の話題を振られた時点でこのことは言わなきゃいけなかったし、結果として全然かっこよく見えないな、これ……」
「で、でも、はじめた理由を言わなければ良かったんじゃ……?」
「それだと結衣を騙してるみたいで嫌だ。あぁ、なんてめんどうくさい人間なんだ俺は……」
「………ふふっ。——あっ、ごめんね、笑っちゃって。その、八幡がわたしに対してそう思ってくれてることがなんだかうれしくって」
「んんっ。まぁ、結衣が良い趣味いっぱい持ってるから、俺もなにか一つしゃれた趣味を披露して、結衣に『かっこいい!』と言われたいがために洋楽、それも古めのを聴き始めたんだが……」
「う、うん……」
「あっ待って引かないでください………——それでも、いざ聴いてみると結構ハマってな、いままで知らなかったのが損だったくらいたのしいんだ」
「へぇ、おもしろそうだね。古いというと、どれくらいの?」
「結衣の映画ほどではないが、70、80年代くらいだな。基本はロックだ」
「かっこいい!」
「待ってくれ恥ずかしい、すんげえ恥ずかしい……」
「ち、違う違う!からかってないよ!ほんとにかっこいいよ、洋ロックなんて」
「やさしさがこころに染みるぜ……」
「な、慰めてるつもりもないんだけど……わたしはほんとに門外だけど、どういうところがすきなの?」
「ヘタに言うとロックファンの人たちに怒られそうなんだが……別にいま怒るひとがいるわけじゃないし、良いか。——なんというか、洗練されすぎてないところかな」
「どういうこと?」
「それこそ当時は最先端の垢抜けた音楽だったと思うんだが、いま現在の視点で言えば、昔のロックは少し野暮ったい。音質って意味ではなくて、音自体が比較的シンプルだし、複雑すぎるわけじゃない。でも、逆に言えばメロディーがキャッチーなのが多くて、しかもシンプルな分インパクトが強い。野暮ったいってのは失礼だけど、でも明快で荒っぽいのが何とも言えず好きなんだ。怒るかもしれないけど、これって結衣の言うところのモノクロ映画にも言えるんじゃないか?」
「たしかに……現代から見たらもう『古っぽい』印象を受ける映画って、洗練されすぎていないから逆に新鮮だし、ストーリーもシンプルな分無駄がないから迫力もある」
「そうそう。多すぎる他要素でこちらを騙そうとしてこないから、より純粋に楽しめるというか……それに、曲が出てから年月も大分経過して、良くも悪くもいろんな批評を受けた後だから、いま話題のものよりも落ち着いて聴けるというか……うまく表現できんが」
「いや、わかるよ。『いま』のものじゃないから、現在進行形の批評に左右されないでありのままで作品に触れられるからね」
「そんな感じだ」
「それに、さっき八幡が言った『多すぎる他要素でこちらを騙そうとしてこない』って良い言葉だね。確かにその通りだ」
「よ、良かったか?」
「うん。……それって、八幡がわたしに対して『結衣を騙してるみたいで嫌だ』と言ったのと同じ意味合いなのかな?」
「ぶっ!!……ちょっ………」
「違うの?」
「いや………——ち、違くない。結衣に対しては俺のありのままで接したいと思ってるさ」
「……何回照れさすのさ」
「結衣から言ったんだろが………」
「ごめんごめん。………ありがとね。——そうだ。わたしもそういった音楽聴きたいし、なにかおすすめのアーティスト、いる?」
「ん?まぁ、いろいろいるが、例えば——」