「——なぁ、ここって………」
「ん?どうしたのかな?」
「——古着屋街、ですよね」
「ですね」
「………」
「………」
「結衣。きょうはありがとう。たのしかった」
「いや、せっかく来たんだからお店入ろうよっ。それに決め顔は最後に取っておいてよ」
「お家帰る!!」
「駄々もこねないの!!」
「………」
「………」
「………古着屋入るほうがまだ恥ずかしくないかもしれない」
「すごい見られた……八幡のせいだからね………」
* * *
「結衣が案内してくれると聞いたからには、かなりオシャレな服屋を覚悟していたが、まさか古着屋とは……ハードル高ぇ……——あっ、結衣が連れて来てくれたのにごめん」
「ふふっ、八幡誠実だね。大丈夫だよ。——それにね……わ、わたしも緊張しています………」
「えっ!?」
「だっ、だって!古着屋だよ!?なんか街を歩いてるひとたち、みんなしゃれてるし!全員モデルか芸術家なの!?」
「お、落ち着け結衣っ、見られてるぞ……」
「ご、ごめん。つい………」
「その、じゃあどうして古着屋にしたんだ?」
「………前々から興味はあったんだけど、中学生だしともだちとだって気軽に行けないから、もしいっしょにお出かけするなら年上で気心が知れた八幡とがいいなって………」
「んんっ。ん、そうか。まあ、結衣が行きたいところに着いていくのが俺の役目だからな」
「………ありがと」
「よしっ。とりあえず………——どこ入る?」
「き、緊張してきた………いま、あたまのなかでターミネーターのテーマ曲が流れてる………」
「俺はバックトゥーザフューチャーだ………」
「実は八幡たのしみにしてる………?」
* * *
「さて、いろいろ店前を偵察した結果、『初心者でもさりげなく入店できるくらいある程度のお客さんがいて、キョロキョロしていても店員さんにぐいぐいされなさそうな』古着屋に来たけれど」
「改めてことばにするとちょっと悲しいね」
「それは言わない約束だ、結衣………よし、古着はさっぱりわからん。結衣、あとは任せた」
「えっ!?ち、ちょっと待ってよ。いっしょに選ぼうよ!」
「し、しかしただでさえ服はわからないのに、『古着』なんて未知の世界だから……」
「それはわたしもだよ。でも、古着も別段ハイランクのファッションってわけでもないんじゃない?さっき取り乱しておいてなんだけど……」
「たしかにそうかもしれん……古着は古着。実質服と変わらん」
「そうそう。『実質』って付け加えなくてもそりゃ服だけどね」
「目を凝らせ……こころの声を聴け……」
「ああ……八幡が支離滅裂なこと言い出した……古着に恨みでもあるの………?」
「もう大丈夫だ。俺はおしゃれ人間になる」
「うん。大丈夫じゃなさそうだね」
「辛辣だ………ただな、結衣」
「ん?」
「——古着はどう着れば『おしゃれ』になるのかわからない」
「それは同意します………あれ、なぜかわたしまでよくわからなくなってきた………よしっ。大丈夫、わたしたちなら大丈夫………所詮は服なんだから………——八幡、いっしょにがんばろう。おしゃれ人間になろう」
「さ、さっきの俺の発言に感化されてないか?ほんとに大丈夫なのか?」
「行くよ」
「へ?もう店内だそ?ちょっ、ゆ、結衣!て、手が………!——」