「ひさしぶり、比企谷くん」
「ひさしぶりだな、船見」
「今回は一ヶ月以上空いちゃったね」
「お互い予定がなかなか合わなかったからな」
「本当にきょうは公園で良かったの?わたしの部屋でもまったく構わないんだけど」
「前にも言ったけど、男女二人きりというのは個人的にも世間的にも良くないと思ってな。申し訳ないけど、きょうのところは公園で勘弁してくれ」
「そんな、謝らないでよ。比企谷くんはなんにも悪くないわけだし。それに、比企谷くんにぜひとも飲んでほしかったからね。ちゃんと魔法瓶に入れて持ってきたよ」
「サンキューな」
「あと、コーヒーだけじゃ物足りないと思って、クッキーも持ってきたよ」
「わざわざすまないな。ん?そのかたちと感じ、もしかしてクッキーも自分でつくってきたのか?」
「うん。あんましうまくできなかったけどね」
「いやいや……本当にありがとう。しかしクッキーまでごちそうになるとはますます申し訳ないな。今度カフェで会うときはこっちがごちそうするよ」
「良いの良いの。そうだ、それなら代わりに、この前にも言ったけど、もし比企谷くんがライトノベルを書いたら、わたしに読ませてね」
「うっ、覚えていたか。実は船見と会っていないあいだに、少し書いてみたんだ、ライトノベル」
「おお!書いてくれたんだ。ぜひ読んでみたいな」
「でもな、他人の添削をしているわりには、いざ自分で書いてみると、なかなか筆が進まないんだ。まずストーリーを練るのが大変だ。ちゃんとつくろうとしても、どうしてもいままで読んだことのある作品の模倣になってしまう」
「たしかに、オリジナルのストーリーを創造するのってすごく大変そうだよね」
「添削していたわりに、自分ではうまく書けないのがすごい悔しい。書くことと評価することは別ものだってつくづく実感したよ。いずれにせよ、船見に見せられるレベルまでには到達していない。すまないけど、気長に待っていてくれないか」
「もちろんだよ。催促するつもりはないよ。無理しなくて良いからね」
「でもいつか作品を書き上げたら、最初に船見に読んでもらいたいな——おっとっと。それより、まず船見が淹れてくれたコーヒーが先だな」
「ふふ、コーヒーのことをすっかり忘れていたよ。じゃあ、飲んでもらおうかな」
* * *
「はい、どうぞ」
「ありがとう。じゃあ、いただきます——……うん、おいしい。すごくおいしいよ」
「良かった。緊張しながら淹れたから、心配してたんだ」
「前にも話したけど、ブラックで飲んでるのに、甘みがあるな。それに、あの喫茶店のコーヒーと同じくらいにおいしい。もしかしたらこっちの方が甘みがあるか?」
「コーヒーショップに行って、なるべく甘い豆を選んだの。比企谷くん、マックスコーヒーが好きだから、なるべくブラックのでも甘味が強いのが良いと思って」
「そこまで考えてくれたのか、ありがとう。それにしてもだ、すごくおいしいぞ、これ。これ以上語彙が出てこないのが申し訳ないくらい」
「たくさん練習したんだ。豆の挽き具合で味が変わるから、一番おいしい挽き方はどれか試したり、ドリップするときは手がブレちゃうから、なるべくブレないように淹れる方法を試したりしたの。比企谷くんにはいまのベストのコーヒーを飲んでもらいたかったから」
「なんだか照れるな——クッキーももらって良いか?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、いただきます——これもうまい。甘さが控えめで、コーヒーの邪魔をしていない」
「ふぅ、良かった。こっちはあまり練習できてなかったから。コーヒーもクッキーもまだまだあるから、良かったらどうぞ」
「じゃあ、遠慮なくいただきます」
* * *
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
「めちゃめちゃおいしかった。やっぱり船見は才能があるな」
「えへへ、ありがとう。また練習するからさ、良かったらまた淹れてきて良いかな?」
「もちろん。楽しみにしてる。きょうは本当にありがとう」
「どういたしまして。今度はもっと早くに会えたら良いね」
「そうだな——じゃあ、またな」
「またね」