「——ごめん!待たせちゃったよね。貴重な休日なのに、遅れちゃってほんとにごめん」
「気にするな、俺も遅れてきたから。たまたま先に着いただけだ」
「それでもごめんね。もう比企谷くんはなにか頼んだ?」
「いや、まだだ。それよりさ、えっと……そのだな……」
「?」
「あの、その——服、似合ってるな。いつも制服姿だから、新鮮だ」
「えっ……ど、どうしたの突然?」
「すまん、気持ち悪かったよな、忘れてくれ。いや、忘れてください」
「いやいや、そんなことないよ。ただ、えっと、突然だったから——ありがとう。たしかに、お互い私服で会うのはめったにないもんね。えへへ、うれしいな」
「その、もちろん私服は似合ってるんだが、理由があってだな——出かける前、妹の小町に『今日は休日に結衣さんに会うんだから、私服、褒めないとダメだよ』って言われてな——いや、そう言われはしたけど、ほんとに似合ってるんだぞ」
「ありがとっ。比企谷くんも、私服姿、かっこいいよ」
「お世辞は良してくれ」
「お世辞じゃないよ、ほんとに似合ってるよ」
「……ありがとう。実は小町にコーディネートしてもらったんだ。『小町が結衣さんに相応しい服装を選んであげる』ってな」
「そうなんだ。本当に比企谷くんは妹さんと仲が良いんだね。羨ましいな」
「まあ、世界一かわいい妹だからな。ただ、小町には『お兄ちゃんと血がつながってなかったら、学校が同じでも一度も話さないただの他人だったと思う』って言われてるよ」
「結構キツい言葉だね……」
「それでも、そのとおりなんだ。俺が小町と血がつながっていない赤の他人だったら、きっと小町に告白して玉砕して、それからは金輪際話さない仲だったと思う」
「玉砕しちゃうんだ……」
「でもさ、他人だとしたら話さない仲でも、『兄妹』だから話せるって、なんだか不思議なことだと思うんだ——『兄妹』だから見捨てないでいられる。『兄妹』だから一緒にいられる——血が繋がっているだけで、結びつかないものが結びつき合う。不思議なことだ」
「不思議で、そしてすてきなことだよね、『兄妹』でいられるって——ああ、ますます羨ましいな」
「もちろん、一長一短だけどな。船見は兄弟姉妹がほしかったのか?」
「うん、わたしは比企谷くんと同じで妹が欲しかったかな。親戚にちっちゃい女の子がいるんだけど、それがかわいくってかわいくって。たまにうちにくるんだけど、懐いてくれていてね」
「気持ちはとてもわかるぞ。妹はかわいくて仕方がない——ちなみに小町はやらないぞ」
「あはは、わかってるよ。比企谷くん、妹のことになるとアグレッシブになるよね」
「妹が嫁に出る日には多分号泣すると思うぞ」
「本当に妹さん想いだね」
「そう思ってくれることがどれだけありがたいことか——他のやつらは異口同音で言うからな、『シスコン』って」
「シスコンも、良い意味で捉えれば妹想いだよ」
「船見のやさしさがこころに染みる………」
* * *
「それにしても、今日は休日だけど良かったの?比企谷くん、休日はゆっくりしたいんでしょ?」
「そうだけど、平日だとお互いなかなか予定が合わないからな。それに、この前公園で会った時はひさびさすぎたから、今回は間隔狭めて会おうって決めてたしな」
「ありがとね。公園で会ってから、二週間ぶりくらいだっけ?」
「それくらいだな。今後は休日に会うのも良いな。いや、船見が良ければなんだがな」
「わたしも休日に会うの、良いと思うよ。休日は、たまに友達と遊ぶかゲームするか、ぐらいだから、空いてる日が多いし」
「サンキューな——おっと、話しすぎた。そろそろオーダーしないと」
「そうだったね。なににしようか——」